外国人採用ガイド

特定技能外国人や技能実習生を解雇することはできる?手続きの方法や注意点を解説

外国人労働者を解雇する際は、日本人労働者と同様に労働法令を遵守し、適切な手続きを行う必要があるほか、入管法や技能実習法など、外国人労働者特有の追加ルールが適用されます。

本記事では、特定技能外国人や技能実習生を雇用する企業が法的リスクを回避するために知っておくべき解雇のルールや注意点、手続きの流れなどについて詳しく解説します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

労働者を解雇する際の基本ルール

日本人・外国人を問わず、労働者を解雇する場合は、労働基準法や労働契約法、その他関連法令の規定に従う必要があります。

有期雇用(契約期間が定められている場合)と無期雇用(契約期間が定められていない場合)では、適用される解雇のルールが異なるため、以下に解説します。

有期雇用と無期雇用の解雇ルールの違い

有期雇用の場合、契約期間内の解雇は原則として禁止されており、解雇するには「やむを得ない事由」が必要とされています。

やむを得ない事由の例は以下の通りです。

  • 会社の倒産や業務縮小などの経営上の重大な理由
  • 労働者の重大な服務規律違反や著しい勤務態度不良
  • 業務遂行が著しく困難となる健康上の問題

無期雇用の場合、契約期間が定められていないため、解雇には「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要とされます。無期雇用の解雇事由の例は以下の通りです。

  • 労働者が著しく業務能力を欠き、業務遂行が困難な場合
  • 職場の秩序を乱す重大な問題行動がある場合

整理解雇と退職勧奨について

整理解雇とは、企業の経営上の理由により労働者を解雇することを指します。解雇を有効とするためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

•人員削減の必要性
会社の経営悪化や業務縮小など、解雇の必要性があること

•解雇回避努力
配転や希望退職の募集など、解雇を避けるための努力を尽くしていること

•解雇対象の選定基準の合理性
解雇される労働者の選定基準が公平で合理的であること

•解雇手続きの妥当性
労働者や労働組合との十分な協議が行われていること

また、退職勧奨とは、会社が労働者に対し退職を提案し、労働者が自主的に退職を選択する手続きのことです。

解雇とは異なり、労働者が同意しない限り退職にはなりません。なお、外国人雇用において退職勧奨による離職は「非自発的な離職」とみなされます。

外国人を解雇する場合の特有のルール

外国人労働者を解雇する場合は、在留資格や雇用契約の特性を考慮し、追加の手続きが必要かどうかを検討します。

特に、特定技能外国人や技能実習生の解雇には、特有のルールが適用されるため注意が必要です。

特定技能外国人を解雇する場合のルール

特定技能外国人を解雇する際は、外国人側に重大な責任がある場合を除き、通常の解雇手続きに加えて、外国人の就労継続の意思を確認し、転職支援を実施する義務が生じます。

転職支援の方法には、「ハローワークへの同行」や「社会保険関係手続の案内」などが含まれます。転職支援を実施した場合は、特定技能定期届出の際に「転職支援実施報告書」を作成し、支援の実施状況を報告しなければなりません。

また、特定技能雇用契約の終了前後には、「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」「受入れ困難に係る届出書」「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」を、地方出入国在留管理局に提出する必要があります。

届出の提出期限は、「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」は特定技能雇用契約終了日から14日以内ですが、「受入れ困難に係る届出書」と「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」は、解雇事由が生じた日から14日以内に提出しなければならないため、注意してください。

加えて、特定技能特有のルールではありませんが、外国人を雇用する企業は、外国人が離職した日の翌月末日までに、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する義務があります。

なお、離職した外国人が雇用保険被保険者である場合、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、「外国人雇用状況の届出」も同時に行ったものとみなされます。

技能実習生を解雇する場合のルール

技能実習生を解雇する場合、受入れ企業は、実習の継続が困難である旨を、速やかに監理団体に通知しなければなりません。

その後、監理団体が外国人技能実習機構へ「技能実習実施困難時届出書」を提出します。届出書には、実習実施が困難となった原因や時期などを記載する必要があるため、監理団体へ通知する際は、できるだけ詳細な情報を伝えるようにしましょう。

なお、技能実習制度は原則として外国人の転籍を認めていません。しかし、受入れ企業の経営上の都合などにより解雇された場合は、転籍が可能です。その際、受入れ企業や監理団体は、転籍手続きが円滑に進むよう、転籍先企業や監理団体との連絡調整などの必要な措置を講じる義務を負います。

また、技能実習制度に特有のルールではありませんが、受入れ企業は、実習生が離職した日の翌月末日までに、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する義務があります。

なお、離職した技能実習生が雇用保険の被保険者である場合、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、「外国人雇用状況の届出」も同時に行ったものとみなされます。

解雇後の新規外国人採用への影響

外国人労働者の受入れは、定期的な在留資格審査を経て就労許可を取得する制度であるため、過去に従業員を解雇したことが原因で、その後の在留資格審査に影響を及ぼす可能性があります。以下に詳細を解説します。

特定技能の受入れ審査で不許可事由になる場合がある

特定技能の在留資格を取得する際の審査基準には、「過去1年以内に、同一業務で労働者を非自発的に離職させていないこと」という要件が設けられています。

「非自発的に離職していないこと」とは、定年退職や自己都合退職を除き、整理解雇や退職勧奨、その他経営上の都合による離職が該当します。

特定技能雇用契約を締結する前の1年以内に、同一業務で日本人を含めた労働者を非自発的に離職させた場合、在留資格の審査で不許可の原因となる可能性があるため、注意が必要です。

特定技能受入れ機関として欠格事由に該当する場合がある

従業員を不当解雇し、労働法令に違反した場合、その後5年間は特定技能外国人の受入れが認められなくなる可能性があります。

特定技能の受入れ企業には、特定技能雇用契約を適正に履行することが求められます。 しかし、過去5年以内に入管関係法令や労働関連法令に違反した企業は、適正な履行体制が確保できていないとみなされ、特定技能の受入れにおける欠格事由に該当することとなります。

従業員を解雇する際は、労働法令を遵守し、適正な手続きを行うことが重要です。

妊娠や出産は解雇理由にならない

労働基準法や男女雇用機会均等法により、妊娠や出産を理由とする解雇や従業員に対する不利益な取り扱いは違法とされています。外国人労働者も同様に保護されており、以下のような理由で解雇することはできません。

  • 育児休業の取得を理由にした解雇
  • 妊娠・出産後の職場復帰を妨げる解雇
  • 出産後の働き方に関する希望を理由とする解雇

また、育児休業を取得したことを理由に解雇することも、育児・介護休業法により禁止されています。

外国人労働者を解雇するために必要な手続き

外国人労働者を解雇する際は、日本人労働者と同様に適切な手続きを踏む必要があります。

また、労働法令や入管法令に基づく外国人雇用に関する届出義務が複数あるため、状況に応じて適切に手続きを行うことが求められます。

労働法上の解雇手続き

日本人・外国人問わず、従業員を解雇する場合、以下の手続きが必要です。

① 解雇予告(30日前通知)
従業員を解雇する場合、労働基準法に基づき30日前に解雇予告を行う必要があります。解雇予告なしで解雇する場合は、労働者に解雇予告手当(30日分以上の賃金相当額)を支払う必要があります。

② 解雇理由証明書の交付
労働者から求められた場合、解雇理由を記載した証明書を交付する義務があります。

③ 社会保険・雇用保険の資格喪失手続き
従業員の退職後は社会保険・雇用保険の資格喪失手続きを行います。

入管法・技能実習法の解雇手続き

外国人従業員を解雇する場合、入管法や技能実習法、その他の法令に基づき、以下の手続きが必要です。

1. 特定技能・技能実習の届出
特定技能外国人を解雇する場合、企業は「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」「受入れ困難に係る届出書」「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書を出入国在留管理庁へ届け出る必要があります。

技能実習生の場合、外国人技能実習機構への「技能実習実施困難時届出書」の提出は、監理団体が行うため受入れ企業が実施する必要はありませんが、技能実習生を解雇した場合は速やかに監理団体に通知しなければなりません。

2. 転職支援の実施
特定技能外国人が非自発的に離職する場合、受入れ機関はハローワークへの同行や求人情報の提供など転職支援を実施する義務があります。

技能実習の場合は、受け入れ企業は、転籍先企業や監理団体との連絡調整など、転籍が円滑に行われるよう必要な措置を講じる義務があります。

3. 外国人雇用状況の届出
外国人労働者を解雇した場合、離職日の翌月末日までに、ハローワークに「外国人雇用状況の届出」を提出する義務があります。

ただし、離職した外国人が雇用保険被保険者である場合、「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出することで、「外国人雇用状況の届出」も同時に行ったものとみなされます。

解雇時(転職時)に本人が行う在留資格手続き

外国人労働者が解雇された場合、そのまま放置すると「保有する在留資格に該当する活動を行っていない」と判断され、在留資格が取り消される可能性があります。

また、解雇された外国人が転職する場合は、在留資格変更許可申請などの適切な手続きを行わなければなりません。

特定技能・技能実習のどちらの場合も、転職(転籍)を行う際には在留資格変更許可申請が必要です。

しかし、在留資格変更許可申請や技能実習計画の認定申請には長期間を要するため、すぐに新たな就労先で働けるわけではありません。

そこで、やむを得ない事由により転職(転籍)する特定技能外国人や技能実習生には、「特定活動」または「資格外活動許可」を認めることで、一定の条件下で収入が途絶えないよう配慮する措置が講じられています。

外国人を解雇する際に生じるトラブル

外国人労働者を解雇する際は、日本人労働者以上に慎重な対応が求められます。

不適切な解雇が行われた場合、労働法令だけでなく入管法上のペナルティが科される可能性があるほか、日本政府と各国政府の間で締結された二国間協定に基づき、改善命令を受けた受入れ企業の情報が外国側で公表され、その後の受入れが制限される場合があります。

労働法上の不当解雇とみなされるケース

外国人労働者であっても、日本の労働法に基づいて保護されています。

以下のようなケースでは、不当解雇とみなされる可能性があります。

  • 合理的な理由のない解雇:業績悪化や勤務態度不良を理由とする場合でも、解雇の合理性や手続きの適正性が求められます。
  • 解雇予告を行わない:労働基準法に基づき、解雇の30日前に通知するか、解雇予告手当を支払う必要があります。
  • 差別的な解雇:国籍、性別、宗教などを理由に解雇することは違法です。
  • 契約違反となる解雇:有期雇用契約の途中解約は、特別な理由がない限り認められません。

入管法・技能実習法違反に該当するケース

外国人労働者の解雇に伴う手続きが適切に行われない場合、企業側が入管法違反とみなされる可能性があります。

•届出義務違反
入管法の届出義務違反で罰則を受けた場合は、特定技能外国人受入れの欠格期間に該当し、その後の受け入れが停止される可能性があります。

•転職支援の義務違反
転職の支援を適切に行わない場合、出入国または労働法令上の不当行為とみなされ、その後の受け入れが停止される可能性があります。

•不法就労のリスク
外国人労働者が転職する際は、在留資格の変更などの手続きを適切に行わなければ、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。

•事業所名の公表
特定技能の改善命令や技能実習の計画認定取消処分を受けた場合は、関係省庁により企業名が公表され、企業の信用失墜につながる可能性があります。

外国側の法令や二国間協定上問題となるケース

特定技能や技能実習の制度は、日本政府と各国政府の間で二国間協定締結されており、外国側の法令や二国間協定に違反すると、さまざまな問題が生じる可能性があります。

• 二国間協定の規制
二国間協定には改善命令を受けた企業などが外国側で公表される規定が存在している場合があり、不当な解雇を行うとその後の受け入れに影響が生じる可能性があります。

• 外国法令の遵守
外国人労働者を受入れするためには、日本の法令だけでなく外国側の人材送り出しに関する法令の遵守も求められ、不当な解雇を行うと、その後の受け入れに影響が生じる可能性があります。

まとめ

外国人労働者の解雇には特有のルールが複数あり、日本人労働者を解雇する以上に慎重な対応が求められます。

特定技能や技能実習の制度では、労働法による規制に加え、入管法の罰則や事業所名の公表といった行政処分のリスクが伴うほか、各種の届出義務や転職支援も求められます。 そのため、緊急時に企業単独で対処するのは容易ではありません。

トラブルを未然に防ぐためにも、専門家の助言を得ながら適切に対応できるよう、事前に準備を整えておくことが重要です。

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