外国人採用ガイド

外国人労働者の長期休暇や一時帰国について企業が知っておくべき法律や国ごとの休暇時期などを解説

外国人労働者の受け入れが進む現代社会において、企業には従業員の一時帰国に伴う休暇の取得を尊重しつつ、入管手続きや労務管理を適切に行い、外国人が安心して働ける環境を整えることが求められます。

この記事では、外国人労働者の長期休暇に関係する労働法や入管法のルールを解説するとともに、各国の伝統文化や宗教行事に基づく長期休暇の時期や特徴について紹介します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

長期休暇に関する労働法のルール

長期休暇は、法律で定められた「法定休暇」と、企業が自主的に設ける「法定外休暇」に分類されます。

法定休暇とは、労働基準法や育児・介護休業法などの法律に基づき、企業が労働者に与えなければならない休暇のことです。

例えば、年次有給休暇(労働基準法第39条)や産前産後休業(同法第65条)、育児休業・介護休業(育児・介護休業法)などが該当し、これらの制度を活用することで労働者の健康や仕事と生活の両立が支えられています。

一方、法定外休暇とは、法律上の義務ではなく、企業が独自に設定する休暇制度のことをいいます。

法定外休暇の代表例としては、夏季休暇やゴールデンウィーク(GW)などが挙げられますが、取得の可否や条件は企業ごとに異なります。

年次有給休暇

年次有給休暇は、労働基準法第39条に基づき、一定の条件を満たした労働者に与えられる有給の休暇制度です。

具体的には、雇入れ日から6か月間継続勤務し、その間の全労働日の8割以上を出勤した労働者に対し、10日の有給休暇が付与されます。その後、継続勤務年数に応じて付与される日数が増加し、6年6か月以上の勤務で最大20日間となります。

年次有給休暇は、労働者の請求する時季に取得することが原則ですが、休暇を与えることで業務に支障が生じる場合には「時季変更権」が認められます。

外国人労働者が母国の長期休暇時期に合わせて一時帰国を希望する場合、年次有給休暇を活用することが一般的です。

出産・育児・介護に関する休暇

労働基準法および育児・介護休業法には、出産、育児、介護に関する休暇制度が定められており、国籍を問わず全ての労働者に適用されます。

産前産後休業は労働基準法第65条に基づき、出産予定日の6週間前から出産予定の女性の請求により取得することができます。出産後の就業の再開は、原則として、8週間を経過してからでなければ認められません。

育児休業は育児・介護休業法により、子が1歳に達するまで取得可能で、保育所などに入所できない場合に限り、最長2歳まで延長できます。

介護休業は、要介護状態の家族1人につき通算93日まで取得でき、3回まで分割取得(例:30日・30日・33日など)することも可能です。

これらの休業制度は外国人労働者にも同様に適用されるため、例えば介護対象の親が国外にいる場合でも、要件を満たせば介護休業を取得できます。

その他の休暇(法定外休暇)

ゴールデンウィーク(GW)、夏季休暇、年末年始休暇など、法律で定められていない休暇のことを「法定外休暇」といいます。

法定外休暇は、特別休暇とも呼ばれており、「リフレッシュ休暇」「結婚休暇」「バースデー休暇」などもこれに含まれます。

なお、福利厚生の一環として「一時帰国休暇」を付与することも可能ですが、企業が帰国費用などを負担する場合は、外国人の給与所得の一部として課税対象とならないかなど、税法上のルールについてもしっかりと検討する必要があります。

外国人の休暇に関する入管法のルール

日本に在留する外国人が出国する方法は、「単純出国する方法」と「再入国許可を取得して出国する方法」の2種類があります。

「単純出国」は、日本での活動を終えた外国人が出国する手続きのことで、再入国するためには新たに上陸許可を受けて在留資格を新規取得することが必要です。

一方、「再入国許可を取得して出国する方法」は、一時帰国後に出国前の在留資格を維持したまま日本に戻ることを前提とした出国手続きです。

再入国許可を取得して出国する方法には、「事前に地方出入国在留管理局で申請する方法」と「出国時に空港等でみなし再入国許可を申請する方法」があります。それぞれ許可の有効期間などが異なるため次項で詳細を解説します。

再入国許可制度

日本に在留する外国人が一時的に国外に出国し、在留資格を維持したまま再入国するためには、再入国許可の取得が必要です。

再入国許可には、1回限り有効なものと、有効期間内であれば複数回使用できる数次有効の許可があり、申請時に選択することができます。許可の有効期間は、最長5年(特別永住者は6年)ですが、出国前に保有している在留資格の有効期限の満了日を超える期間の再入国許可を取得することはできません。

外国人が一時帰国をする場合は、原則として、地方出入国在留管理局で事前に再入国許可の取得が必要ですが、短期的な帰国の場合は、後述する「みなし再入国許可」の制度を利用することで特別な審査を受けることなく再入国許可の取得が可能です。

みなし再入国許可

みなし再入国許可は、一時的に日本を出国する外国人が、1年以内に再入国する場合に、事前の再入国許可申請を不要とし、手続きを簡素化するために設けられた制度です。

有効期間は最大1年(特別永住者の場合は2年)ですが、出国前に保有している在留資格の有効期限の満了日を超えて再入国することはできません。

みなし再入国許可を取得するためには、出国時に空港等で、再入国出国記録(再入国EDカード)の「一時的な出国であり、再入国する予定です。」と記載された欄にチェックを入れ、入国審査官に提示し、みなし再入国許可による出国を希望する旨を伝えます。

なお、みなし再入国許可は延長が認められないため、一時帰国の予定期間が1年以内であっても、期限間近の再入国予定の場合は、正規の再入国許可を取得した上で出国することをおすすめします。

在留資格申請中の一時帰国

在留資格の変更や在留期間の更新を申請する場合、申請手続き自体は日本国内で行う必要がありますが、審査期間中に一時帰国をすることは可能です。

ただし、審査中に一時帰国する際は、再入国許可(みなし再入国許可を含む)を取得する場合でも、申請前の在留資格の有効期間満了日から2か月以内に再入国し、審査結果を受け取る必要があります。

また、審査の過程で、日本国内の住所宛に郵送で追加書類の提出要求が届くことや、申請内容に関する確認の電話連絡が入ることがあるため注意が必要です。

一時帰国中であることを理由に追加書類の提出ができない場合は、審査結果に影響が出てしまう可能性もあるため、可能な限り審査が完了するまで出国を控えることが望ましいでしょう。

特例期間中の一時帰国

在留資格の変更や在留期間の更新を申請する際に、審査が長期化し、申請時点で有している在留期間の満了日までに審査結果が出ないことがあります。

審査中に在留期間の満了日を過ぎた場合、「特例期間」として、「審査完了日」または「在留期間満了日から2か月が経過した日」のうち、どちらか先に到来する日まで、元々保有していた在留資格の活動を継続して行うことが認められます。

特例期間中に一時帰国を希望する場合、再入国許可(みなし再入国許可を含む)を取得すれば出国は可能ですが、審査中に追加書類の提出要請や申請内容の確認連絡が入ることがあり、これらの対応が遅れると審査に影響が及ぶ可能性があります。

特例期間中の出国についても、できる限り審査が完了するまで出国を控えることが望ましいでしょう。

一時帰国時の航空券代の費用負担

一時帰国にかかる航空券代の費用負担については、在留資格の種類に関係なく、原則として帰国する本人が負担することが一般的です。

例えば、技能実習生や特定技能の在留資格を持つ外国人であっても、自己都合による一時帰国の費用は本人の負担となります。

一方で、企業が業務上の必要性に応じて一時帰国を命じた場合や、特定の契約に基づいて航空券代を支給するケースもありますが、これは雇用契約や企業の判断によるものであり、法的に義務付けられているものではありません。

また、技能実習制度においては、実習が修了し帰国する際の費用負担について監理団体が負担する旨の規定がありますが、これは最終的な帰国に関するものであり、一時帰国には適用されません。

そのため、外国人労働者が母国の長期休暇に合わせて帰省する際などは、自己負担での対応が基本となります。企業側としては、従業員が一時帰国を希望する場合の負担を明確にし、契約時にルールを明示しておくことが重要です。

国・地域ごとの長期休暇の時期

各国の長期休暇の時期は、文化的な背景や宗教上の慣習などによって異なりますが、日本で働く外国人労働者の中には、出身国の休暇シーズンに合わせて一時帰国を希望する人も多いです。

特に、配偶者や子どもと離れて暮らしている外国人労働者にとって、長期休暇は家族と過ごす貴重な機会となるため、企業側は外国人従業員の休暇取得の希望を事前に把握し、業務に支障が出ないよう調整することが求められます。

次項では、各国の主要な長期休暇について詳しく解説します。

旧正月(太陰暦の正月)

旧正月は、旧暦に基づく新年の祝祭であり、国によって春節、ソルラル、テトなど異なる名称で呼ばれていますが、中国、台湾、韓国、ベトナム、シンガポール、マレーシアなど、アジアの多くの国で広く祝われています。

旧正月は旧暦の1月1日にあたり、新暦(グレゴリオ暦)では毎年異なりますが、通常1月下旬から2月中旬にかけて訪れます。

この時期に合わせて一時帰国を希望する外国人労働者も多く、日本で働く外国人従業員にとって家族と過ごす大切な機会となります。こうした国の出身者を多く雇用する企業にとっては、従業員の帰省希望を事前に把握し、業務スケジュールを調整することが重要です。

クリスマス(キリスト教の祝祭日)

クリスマスは、イエス・キリストの誕生を祝うキリスト教の重要な祝祭日であり、多くのキリスト教国では12月25日が法定の祝日とされています。

アジア地域においても、国民の大多数がキリスト教徒であるフィリピンでは、クリスマスは最も重要な祝日の一つとされ、12月24日のクリスマスイブから1月1日の新年にかけて、多くの企業や学校が休業し、家族と過ごす期間となります。

また、日本で働くフィリピン人労働者の中には、配偶者や子どもを母国に残している人も多く、この時期に一時帰国を希望するケースが多く見られます。

ラマダン(イスラム教の断食月)

ラマダンは、イスラム教徒にとって最も神聖な月であり、ヒジュラ暦(イスラム暦)の第9月にあたり、この期間内、イスラム教徒は日の出から日没までの間、飲食や喫煙を控える断食を行います。

ラマダンの期間は30日間で、開始日と終了日は新月の観察により決定されるため、時期は毎年異なります。

この期間、多くのイスラム教国では労働時間の短縮などの特別な措置があり、ラマダン明けの祭り「イード・アル=フィトル」の前後には長期休暇が設けられます。

アジア地域においても、インドネシア、マレーシアなどでは、政府機関や企業が休業し、大規模な祝祭が行われます。

日本に在留するイスラム教徒の中では、インドネシア人が最も多く、令和6年末時点で約173,813人が在留しており、その多くが特定技能や技能実習の在留資格で働いています。

この時期に一時帰国を希望するイスラム教徒の在留者も多く、また、ラマダン中は断食の影響で体力が低下することも考えられるため、柔軟な勤務体制を導入するなど労働環境の配慮が求められます。

ダサイン(ヒンドゥー教の祝祭日)

ダサインは、ネパール最大の祝祭であり、毎年9月から10月にかけて約15日間にわたって行われ、期間中は多くの学校や企業、行政機関が休業し、都市部で働く労働者などは故郷に帰省して家族と過ごします。

ダサインの時期は、最後の日が必ず満月となるため、月の動きにより毎年開始日が若干前後します。

令和6年末時点で、日本には206,898人のネパール人が在留しており、「留学」「技能」「技術・人文知識・国際業務」「家族滞在」などの在留資格を保有している人が多いです。

日本に在住するネパール人にとっても、ダサインは最も重要な行事の一つであり、この時期に一時帰国を希望する在留者も多いです。

まとめ

この記事では、外国人労働者の長期休暇に関する労働法や入管法のルール、各国の主要な長期休暇の時期や特徴について解説しました。

外国人を雇用する企業にとって、従業員の出身国の文化や宗教的な背景を理解し、できる限り長期休暇取得の希望が叶うよう配慮をすることは、業務の円滑な運営や従業員の満足度の向上につながります。

長期休暇の取得が予想される時期には、業務スケジュールの調整や再入国に関する手続きのサポートを行い、必要に応じて監理団体や登録支援機関などの専門機関の助言を活用することで、企業と従業員双方にとって最適な対応を取ることが可能となります。

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