日本に滞在する外国人にとって、在留資格は法的な滞在根拠となる重要な制度です。一方で、外国人を雇用している企業担当者を含め、その種類や取得方法について正確に理解している方は意外と少ないのが現状です。
この記事では、在留資格の基本的な仕組みや申請手続き、全29種類の活動内容について、外国人を雇用する企業の担当者が理解しておくべきポイントをわかりやすく解説します。在留資格に関する正確な知識を身につけ、安心して外国人材を受け入れられる体制づくりに役立ててください。
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きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)
在留資格とは
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な法的資格のことです。出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づいて定められており、滞在目的や活動内容に応じて29種類に分類されています。
すべての外国人は、日本に入国・滞在する際に適切な在留資格を取得する必要があります。在留資格には「制限の範囲内で就労可能な資格」「就労不可の資格」「就労制限のない資格(居住資格)」があり、それぞれ認められる活動内容や滞在期間が異なります。また、在留資格を持たずに日本に滞在することは不法滞在となり、処罰の対象となるため注意が必要です。
在留資格の確認方法
在留資格の把握は、主に「在留カード」の券面を確認する方法で行います。在留カードは中長期在留者に交付される証明書で、氏名、生年月日、性別、国籍・地域、住居地、在留資格、在留期間、就労制限の有無などが記載されています。
短期滞在者の場合は、在留カードが交付されないため、パスポートに押印された上陸許可証印で在留資格を確認します。在留カードには、保有する在留資格、在留期間の満了日、就労制限の有無などが記載されているため、外国人雇用を開始した後も定期的に確認することが重要です。また、在留カードは常時携帯が義務付けられており、紛失や破損した場合は速やかに再交付申請を行う必要があります。
在留カードはICチップが搭載されており、偽造防止措置が施されていますが、稀に偽造カードが存在するため、入管庁の「在留カード等番号失効情報照会」や「在留カード等読取アプリケーション」を活用するなどの方法で有効性確認を行うことが推奨されます。
資格外活動許可
資格外活動許可とは、現在の在留資格で認められた活動以外の収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行う場合に必要な許可です。たとえば「留学」の在留資格を持つ外国人は、この許可を取得することでアルバイトに従事することが可能になります。
ただし、資格外活動許可には時間制限や業務範囲の制限が設けられています。留学生の場合、一般的に週あたり28時間以内に制限され、風俗営業などの一部業種は対象外です。これらの制限を超えた場合、資格外活動許可を得ていても不法就労と見なされるため、十分注意する必要があります。
雇用者は在留カード裏面の資格外活動許可欄に記載された範囲を確認し、許可内容に従った雇用を行うことが求められます。不明点があれば、地方出入国在留管理局で確認を行い、適正な雇用に努めることが重要です。
主な在留資格申請の種類と取得方法
在留資格申請には複数の手続きが存在し、目的に応じて適切な申請が求められます。この章では、在留資格認定証明書交付申請、在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請、永住許可申請の4つの手続きについて概要を解説します。
在留資格認定証明書交付申請
在留資格認定証明書交付申請(COE申請)は、日本国外から新規入国する外国人が必要とする手続きです。日本の地方出入国在留管理局で企業担当者などが代理人として申請を行い、審査を経て認定証明書を取得します。
次に、申請者の居住国にある日本大使館や領事館で査証(ビザ)の発給申請を行います。その後、空港での入国審査でパスポートやCOE、査証を提示し、上陸許可を受けることで正式に在留資格が付与されます。
COEは在留資格の取得を約束するものではなく、査証審査や入国審査で問題があれば上陸許可が下りない可能性があることに注意が必要です。
在留期間更新許可申請
在留期間更新許可申請は、日本に滞在している外国人が現在の在留資格を変更せずに在留期間を延長するための手続きです。
申請は在留期間の満了日以前に行う必要があり、更新の可否は現行の在留資格に基づく活動状況、素行の良否、税金や年金など公的義務の履行状況によって判断されます。
転職や離婚、活動内容の変更が生じた場合には、更新申請ではなく在留資格変更許可申請が必要となることがあるため、事前に確認することが重要です。
不許可となる主な要因には、犯罪歴、税金の滞納、活動実績の不足、就労制限違反などがあり、外国人の在留状況を定期的に確認する仕組みとなっています。
在留資格変更許可申請
在留資格変更許可申請は、日本国内に滞在中の外国人が、就職、転職、結婚、離婚などにより、当初の在留資格の許可内容に合わなくなった場合に、新たな在留資格に変更するための手続きです。
変更申請は、在留資格の変更理由が生じた時点から在留期間満了日以前に行う必要があります。審査では、過去の在留状況や公的義務の履行状況、新しい在留資格の基準に適合するかどうかなどが慎重に確認されます。
過去の在留状況に問題がある場合や、新たな在留資格の要件に適合しない場合は、許可されない可能性があるため注意が必要です。
永住許可申請
永住許可申請は、日本に永住を希望する外国人が行う手続きです。原則として、引き続き10年以上の日本滞在歴が必要であり、そのうち5年以上は就労系在留資格(特定技能1号や技能実習を除く)または居住系在留資格であることが求められます。
申請には、素行が善良であること、独立した生計を営めること、日本国の利益に合致することなどの要件を満たす必要があります。
ただし、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者として滞在している場合には、年数要件の短縮や他の要件の適用が免除されるなどの緩和措置があります。
在留資格の種類と活動内容(全29種類)
在留資格の分類はさまざまですが、ここでは就労資格、非就労資格、居住資格、特定活動の4つに分類し、それぞれの活動内容を解説します。
就労資格
就労資格とは、日本での就労を目的とした在留資格で、19種類が該当します。各資格において認められる活動は、特定の就労を伴う活動を目的とした内容となっており、その範囲を超える業務に従事することは許されません。
転職や部署異動、昇進によって業務内容が変更となる場合、在留資格変更許可申請が必要になることがあります。
就労資格の一覧は以下の通りです。
就労系在留資格一覧 | |
在留資格名 | 活動内容 |
外交 | 外国政府の外交使節団、領事機関の構成員またはその家族としての活動など |
公用 | 外国政府や国際機関の公務またはその家族としての活動 |
教授 | 日本国内の大学などにおいて研究、研究の指導又は教育をする活動 |
芸術 | 収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動 |
宗教 | 外国の宗教団体により派遣された宗教家の行う布教その他の宗教上の活動 |
報道 | 外国の報道機関との契約に基づいて行う取材その他の報道上の活動 |
高度専門職 | 高度の専門的な能力を有する人材として行う学術的素養を要する就労、研究、経営などの活動 |
経営・管理 | 貿易その他の事業の経営を行いまたは当該事業の管理に従事する活動 |
法律・会計業務 | 外国法事務弁護士、外国公認会計士その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律又は会計に係る業務に従事する活動 |
医療 | 医師、歯科医師その他法律上資格を有する者が行うこととされている医療に係る業務に従事する活動 |
研究 | 日本の公私の機関との契約に基づいて研究を行う業務に従事する活動 |
教育 | 日本の小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、専修学校または各種学校もしくは設備及び編制に関してこれに準ずる教育機関において語学教育その他の教育をする活動 |
技術・人文知識・国際業務 | 理系・文系学問に関する学術的素養を必要とする業務に従事する活動または外国文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動 |
企業内転勤 | 日本に本店、支店その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行うこの表の技術・人文知識・国際業務と同様の活動 |
介護 | 日本の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護または介護の指導を行う業務に従事する活動 |
興行 | 演劇、演芸、演奏、スポーツ等の興行に係る活動又はその他の芸能活動 |
技能 | 日本の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動 |
特定技能 | 1号:特定産業分野において相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動
2号:特定産業分野において熟練した技能を要する業務に従事する活動 |
技能実習 | 認定を受けた技能実習計画に基づいて技能等を要する業務に従事する活動 |
非就労資格
非就労資格には、留学や家族滞在など5種類があり、原則として就労は認められていません。これらの資格は、日本での滞在目的が就労以外にあることを前提としているため、活動内容に制限が設けられています。
ただし、留学生や家族滞在の在留資格を持つ場合、資格外活動許可を取得することで、一定条件下でのアルバイト等の就労が可能となります。
一方で就労活動が主な在留目的とみなされると、在留期間更新の許可が下りない可能性があるため、特に留学生は学業を継続し、在留資格本来の活動をおろそかにしないよう注意が必要です。
非就労系在留資格一覧 | |
在留資格名 | 活動内容 |
文化活動 | 収入を伴わない学術上もしくは芸術上の活動または我が国特有の文化もしくは技芸について専門的な研究を行いもしくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動 |
短期滞在 | 日本に短期間滞在して行う観光、保養、スポーツ、親族の訪問、見学、講習または会合への参加、業務連絡その他これらに類似する活動 |
留学 | 日本の大学、高等専門学校、高等学校もしくは特別支援学校の高等部、中学校もしくは特別支援学校の中学部、小学校もしくは特別支援学校の小学部、専修学校もしくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動 |
研修 | 日本の公私の機関により受け入れられて行う技能等の修得をする活動 |
家族滞在 | 就労資格(外交、公用、特定技能1号、技能実習を除く)及び留学、文化活動の在留資格をもつて在留する者の扶養を受ける配偶者または子として行う日常的な活動 |
居住資格
居住資格には、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4種類があり、日本人と同様に業務内容の制限なく働ける点が特徴です。
これらの資格では、雇用形態や就労内容に制限が課されないため、多様な職種での就労が可能です。しかし、永住者以外の居住資格は在留期間が設けられており、期間更新の許可申請が必要です。
万が一更新を忘れて期限切れの状態で就労を続けると、不法就労として外国人と雇用主双方が処罰対象となる可能性があるため、企業側も在留期間を正確に把握しておく必要があります。
居住系在留資格一覧 | |
在留資格名 | 活動内容 |
永住者 | 法務大臣が永住を認める者 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者もしくは特別養子または日本人の子として出生した者 |
永住者の配偶者等 | 永住者等の配偶者または永住者等の子として本邦で出生しその後引き続き本邦に在留している者 |
定住者 | 法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者 |
特定活動
特定活動は、法務大臣が個別に指定する活動内容に基づき日本への滞在を認める在留資格で、活動内容によって就労の可否が異なります。
具体的には、ワーキングホリデーやEPA介護福祉士など、法務大臣の告示で事前に活動内容が定められている「告示特定活動」と、告示に該当しない特別な事情を考慮して許可される「告示外特定活動」があります。
告示特定活動は、活動の範囲や条件があらかじめ決められているため、事前に取得の可否を検討することが可能ですが、告示外特定活動は個別の事情に応じた例外的な許可で、申請内容に基づいて法務大臣が在留可否を判断する仕組みです。
特定活動は在留資格としては1種類ですが、あらかじめ定められた告示特定活動は約50種類存在します。主な告示特定活動について紹介します。
特定活動の一覧 | |
特定活動名 | 活動内容 |
告示特定活動 | ワーキングホリデー、インターンシップ、サマージョブ、EPA看護師、EPA介護福祉士、日系四世、国際文化交流、医療滞在、特定研究等活動、特定情報処理活動、本邦大学卒業者、スキーインストラクター、デジタルノマドなど |
告示外特定活動 | 法務大臣が個々の外国人に対して指定する告示特定活動以外の活動 |
在留資格管理の重要性
在留資格は日本の入管制度の根幹を成す重要なものであり、活動範囲を逸脱すると不法就労となり、罰則を受けるおそれがあるほか、在留期間更新や在留資格変更が不許可となるなどの不利益が生じる場合があるため注意が必要です。
日本で長期的かつ安定したキャリアを形成するには、在留資格制度を正確に理解し、遵守することが欠かせません。在留資格ごとに認められる活動範囲の誤解はトラブルの原因となるため、事前にしっかりと理解しておく必要があります。
まとめ
この記事では、日本の在留資格制度について、その種類ごとの特徴や手続き、注意点を解説しました。就労資格、非就労資格、居住資格、特定活動の概要と在留資格変更や更新の流れを把握することの重要性を説明しました。
外国人の雇用を進める企業担当者の方は、在留資格ごとのルールや各種の在留手続きに関する理解を深め、計画的な雇用管理を徹底することが重要です。不安がある場合は、専門機関に相談し、適切な対応を進めることをおすすめします。
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