外国人採用ガイド

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特定技能「ビルクリーニング分野(清掃業)」の業務内容、試験概要、許可要件について解説します

少子高齢化や人手不足が深刻化する中、ビルクリーニング分野でも即戦力となる外国人材の採用が急速に広がっています。しかし、「どのような業務が認められているのか」「採用時に必要な手続きや試験内容は?」など、受け入れを検討する企業担当者にとっては分かりにくい点も多く、不安や疑問を感じるケースも少なくありません。

この記事では、特定技能「ビルクリーニング分野(清掃業)」における在留資格の概要や許可要件、評価試験のポイント、受け入れ企業が満たすべき基準、実際の業務範囲や注意点について分かりやすく解説します。ビルクリーニング業界で外国人採用を検討している方に必要な情報を整理していますので、ぜひ参考にしてください。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

ビルクリーニングとは

ビルクリーニングとは、主に建物内部の衛生状態や美観、機能の維持、安全性を保つことを目的とした清掃業務を指します。床や壁、トイレ、洗面所などの汚れやほこりを除去し、発生した廃棄物を収集したうえで、定められた保管場所まで運搬する作業も含まれます。

単なる清潔さの維持にとどまらず、利用者の健康を守るために建物全体の環境を良好に保つ専門的な業務であると言えるでしょう。ビルクリーニングは特に、不特定多数の人が利用する特定建築物の内部を対象に行われる清掃業務を指し、日常的な維持管理を通じて快適で安全な空間づくりに貢献しています。

特定建築物とは

特定建築物とは、多くの人が出入りする施設や商業スペース、オフィスビル、学校、百貨店、店舗、事務所などの大型の建築物を指します。

このような建物は日常的に多くの人が利用するため、衛生面や環境面で特に気を配る必要があり、建築物衛生法に基づき、法的に管理や清掃の基準が定められています。

なお、住宅やアパートなどの居住空間については、基本的に住んでいる個人が自ら掃除や片付けを行うことが一般的であり、個人宅の室内清掃は、ハウスクリーニングに該当し、ビルクリーニングとは異なる扱いとなります。

特定技能ビルクリーニングの受け入れ対象事業者

特定技能ビルクリーニング分野で外国人材を受け入れるには、事業者が建築物衛生法第12条の2に基づき、「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録を受けていることが求められます。

建築物清掃業は、建物の内部を中心に床や天井、トイレなどの清掃作業を事業内容とし、外壁や窓ガラスのみ、あるいは給排水設備のみの清掃を専業とする場合は対象となりません。

一方、建築物環境衛生総合管理業は、建物内部の清掃に加えて、空調設備や換気装置の運転、日常的な点検・補修、空気環境の測定、給水や排水設備の運用・管理、さらには水質の検査まで広く含み、特定建築物の衛生状態を総合的に維持する役割を担っています。

これらいずれかの登録を受けている企業だけが、特定技能外国人を雇用可能です。

特定技能1号の主な業務内容

特定技能1号における主な業務は、建物内部の清掃作業を中心に構成されています。この清掃業務には、オフィスや商業施設、病院など多様な建物内の床や壁、天井、トイレ、洗面所など、日常的に利用される空間の衛生維持が含まれます。

ホテルや旅館など宿泊施設においては客室清掃も対象となっており、床や浴室、トイレ、洗面台などの清掃を行いながら、アメニティの補充やベッドメイク作業まで一連の流れを担当します。

なお、機器や設備の内部を分解して行うような特殊な清掃作業は、特定技能1号の対象範囲から外れる点に注意が必要です。

特定技能1号の関連業務

特定技能1号では、主たる業務である建物内部の清掃に加え、同じ現場で日本人が日常的に従事している関連業務を付随的に担当することが認められています。

この関連業務には、複数の作業員をまとめて指導したり、現場全体の進行管理や計画の作成を行ったりする業務が含まれ、これらの経験は特定技能2号への移行要件にもつながる重要な実務経験となります。

ただし、ここで「日本人」とされるのは、建築物清掃業および建築物環境衛生総合管理業における「清掃作業に従事する者」のことであり、会社ごとに従事できる業務内容が異なる場合があるため、日本人が行うすべての作業を担当できるとは限りません。

また、建物と構造上一体とみなせる外周部の清掃や資機材倉庫の整備、高所作業に該当しない範囲での外壁や屋上の洗浄、ベッドメイク、建築物内外の植裁管理なども関連業務と位置付けられています。

なお、特定技能外国人の労働時間全てが関連業務となることは認められていないため、主たる業務とのバランスに十分な注意が求められます。

ベッドメイクに従事する場合の注意点

特定技能「ビルクリーニング」分野では、ベッドメイク業務は主たる業務と関連業務の両方に含まれますが、その扱いには微妙な違いがあります。

具体的に、ホテルや旅館の客室清掃を担当する際には、床や浴室、トイレの清掃、アメニティの補充などを一連の流れで実施する客室清掃業務の中でベッドメイクも行うため、この場合は主な業務として扱われ、継続的に従事しても問題ありません。

一方で、ビルの宿直施設や病院のベッドメイクのように、客室ではない場所でのベッドメイク業務は関連業務となり、それだけを専従で担当することは認められていません。

また、ホテルや旅館であっても、ベッドメイクのみを専属的に行い、他の清掃作業やアメニティ補充などを伴わない場合は、特定技能ビルクリーニングの主たる業務として評価されない可能性が高くなります。清掃用洗剤の取り扱いや専門性が問われる内容でなければ本来の趣旨から外れてしまうため、ベッドメイク業務だけの担当は注意が必要です。

特定技能2号の主な業務内容

特定技能2号では、建築物の内部清掃に携わりつつ、複数の作業員を指導しながら現場全体を管理する役割を担います。加えて、現場ごとの清掃計画の作成や作業進行の管理など、業務全体を統括するマネジメント業務も主な職務内容です。

ただし、建築物清掃業や建築物環境衛生総合管理業以外の作業は認められていないため、注意が必要です。

特定技能2号の関連業務

特定技能2号では、現場の清掃作業監督者としての役割も関連業務に含まれます。加えて、資機材倉庫の整備や建物外部の清掃、植裁管理など、特定技能1号と同様の業務範囲が関連業務として認められています。

ただし、関連業務のみを担当し続けることは制度上認められていないため、主な業務と合わせて従事することが求められます。

特定技能「ビルクリーニング分野」の在留資格の概要

特定技能「ビルクリーニング分野」には1号と2号の在留資格があり、それぞれ在留期間や業務内容、家族帯同の可否などに違いがあります。

1号は最大5年間の在留が認められ、主に建築物内部の清掃やホテル客室清掃などを担うことができますが、家族の帯同は認められていません。

一方、2号はより高度な業務管理や作業員の指導を行う役割が求められ、通算の在留期間に上限はなく、条件を満たせば配偶者及び子の家族帯同も可能です。

また、特定技能2号の在留期間は、永住許可申請の際に必要な5年以上の就労系在留資格の年数にカウントされます。1号の在留と合わせたトータルの在留期間が10年以上、そのうち2号で5年以上となれば、永住許可申請が可能です。

ただし、永住許可申請の要件には、素行善良要件や独立生計要件、国益要件など複数の審査基準があるため、年数要件だけで許可が確定するわけではないことに注意をしてください。

特定技能外国人の能力要件

特定技能外国人をビルクリーニング分野で雇用する場合、外国人材が満たさなければならない能力基準が設けられています。
ここでは、これらの要件の詳細や注意点について詳しく解説していきます。

特定技能評価試験

特定技能1号を取得するには、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験に合格する必要がありますが、技能実習2号(ビルクリーニング職種・作業)を良好に修了した場合はこの試験が免除され、直接移行することが可能です。

特定技能2号の場合は、ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験、または技能検定1級(ビルクリーニング)に合格することが要件となっています。

評価試験は日本国内の主要都市のほか、インドネシア、フィリピン、ネパールなど海外複数国でも開催されていますが、試験の実施頻度は国によって異なります。試験は学科試験と実技試験の2部構成で、受験者は事前に公益社団法人全国ビルメンテナンス協会のホームページから申し込み、合格後は就職先の企業が証明書の発行手続きを行う流れです。

日本語能力試験

特定技能1号でビルクリーニング分野に従事する場合、日本語能力の証明として日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の基準点以上を取得する必要があります。ただし、技能実習2号(職種・作業の内容は問わない)を良好に修了した外国人については、日本語試験が免除されます。

どちらの日本語試験も、日常会話や基本的な日本語の理解力が求められるため、学習には一定の時間と対策が必要となります。

なお、特定技能2号に移行する際は、日本語要件が設定されていません。

実務経験

特定技能1号については、所定の評価試験に合格することで、一定水準の技術や知識があることを証明できるため、実務経験は不要とされています。

一方で、特定技能2号への移行には、建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の現場で、複数の作業員を指導しながら現場管理をする業務について2年以上の実務経験が必要となります。

このため、1号から2号に移るには、最長5年の在留期間のうち少なくとも2年以上は現場管理者としての経験を積む必要があります。

その他外国人が満たさなければならない要件

留学生や技能実習生など日本に既に在留している人が、特定技能の在留資格に変更を希望する場合、税金や社会保険料を適切に納付していなければ、許可をする相当性がないと見なされ、不許可となる場合があります。このほか、法令違反により罰則を受けた経歴がある場合も、在留資格変更や更新の審査で不利益となることがあります。

海外から新たに入国する場合には、在留中の者とは異なる観点から審査が行われ、入国目的が虚偽でないか、感染症など上陸拒否事由に該当しないかなど審査されることとなります。

受け入れ企業側が満たさなければならない要件

ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れるにあたっては、企業側も複数の基準を満たさなければなりません。建築物清掃業や建築物環境衛生総合管理業の事業登録をはじめ、確認すべき点が多岐にわたるため、具体的なポイントを順に解説していきます。

適正な雇用契約を結んでいること

特定技能「ビルクリーニング」分野で外国人を受け入れる際は、同様の業務に従事する日本人と比較して、報酬や福利厚生について不当な格差がないことが求められます。

また、雇用形態は原則フルタイムが基本となり、週5日以上・年間217日以上、週30時間以上の労働条件を確保する必要があります。加えて外国人従業員が一時帰国を希望した際には、業務上やむを得ない場合を除き、休暇取得や無給・特別休暇の付与など、対応しなければなりません。

労働法、社会保険法、税法を遵守していること

特定技能外国人の受け入れにあたり、雇用主は労働法や社会保険法、税法といった関連法規を確実に守ることが重要となります。

過去にこれら法令違反があった場合や未納が続いている場合は、たとえ罰則を受けていなくとも受け入れの許可が下りない可能性が高まります。

非自発的離職者・行方不明者を出していないこと

特定技能外国人を受け入れる企業や機関は、雇用契約を結ぶ前の1年間に、会社都合による解雇や組織側の責任による失踪など、同種の業務に従事する労働者の非自発的離職者を発生させていないことが求められます。

なお、非自発的離職者には日本人も含まれます。

欠格事由に該当しないこと

特定技能の所属機関となるには、法令で定められた欠格事由に該当しないことが必要です。

たとえば、禁錮刑以上の刑を受けた場合や、出入国管理や労働関連の法令違反による罰金刑、暴力団関係法令や刑法違反による罰金刑がある場合、社会保険や労働保険の義務違反で罰金刑を受けた場合などは、欠格事由に該当することとなり、以降5年間は特定技能外国人の受け入れが認められません。

適正な支援計画を作成し実施すること

特定技能1号の外国人を雇用する場合、受け入れ企業は義務的支援10項目を盛り込んだ支援計画を作成し、計画通りに支援を実施しなければなりません。加えて、義務項目以外の支援内容(任意的支援)を計画書に記載した場合は、それも必ず実施する必要があります。

義務的支援の内容は、以下の通りです。

1. 事前ガイダンスの実施
2. 出入国時の送迎
3. 適切な住居の確保・生活に必要な契約支援
4. 生活オリエンテーションの提供
5. 公的手続きへの同行
6. 日本語学習の機会の提供
7. 相談・苦情対応
8. 日本人との交流促進
9. 転職時の支援(人員整理等の場合)
10. 定期的な面談、行政機関への通報

なお、特定技能2号については受け入れ企業に支援義務は課されていません。

ビルクリーニング分野特定技能協議会に加入していること

ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れる際は、在留資格申請よりも前に必ず特定技能協議会への加入手続きを済ませておく必要があります。申請から加入審査が完了するまでには約1か月かかるため、事前にスケジュールを立てて余裕を持って手続きを進めることが重要です。

なお、2025年6月時点では、協議会への入会金や年会費などの費用負担はありません。

まとめ

本記事では、特定技能「ビルクリーニング分野」の在留資格取得に必要な要件や業務内容など、制度全体の流れとポイントを整理して解説しました。

今後、外国人材の採用や制度利用を検討している企業は、最新の運用ルールを確認し、事前準備と体制構築を整えたうえで受け入れをすることが重要です。不安な点がある場合は、専門機関に早めに相談し、手続きや社内体制の構築を進めることが円滑な受け入れにつながります。

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