外国人労働者を採用する際、思わぬところでつまずき、損失や被害を被るケースは少なくありません。
外国人雇用を成功に導くために、在留資格や文化の違い、トラブル事例など、事前に知っておくべき注意点は数多くあります。
この記事では、外国人採用で失敗しないための重要ポイントをわかりやすく解説します。
在留資格別の採用条件や、求人から入社までの採用プロセス、受け入れ後の育成や定着に必要な取り組みまで、押さえておくべきエッセンスを凝縮してお伝えします。
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(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
外国人採用の現状と意義
近年、少子高齢化に伴う人手不足や国際化の進展により、外国人労働者の採用に注目が集まっています。
外国人採用を検討する上で、まずはその現状と意義を正しく理解することが重要です。
外国人労働者の推移と予測
厚生労働省の統計によると、2024年10月末時点の外国人労働者数は過去最多となる230万人に達しています。
前年比で約25万人以上増加しており、今後もこの傾向は続くと予測されています。
産業別割合では、「卸売業・小売業」が18.7%、「製造業」が16.6%、「宿泊業・飲食サービス業」が14.4%と上位3位を占めています。
この背景には、少子高齢化による労働力不足や国際化の進展があります。
日本国内の生産年齢人口は減少の一途をたどっており、外国人労働者への期待が高まっているのです。
また、グローバル化に伴い、多様な価値観や言語を持つ人材の必要性も増しています。
厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
外国人採用のメリットと課題
外国人採用には、さまざまなメリットがあります。
まず、人手不足の解消や業務の効率化が期待できることです。
優秀な外国人材を確保することで、生産性の向上や新たな事業展開も可能になるでしょう。
加えて、多様な視点や発想を取り入れることで、イノベーションの創出や職場の活性化にもつながります。
一方で、外国人採用には課題もあります。
言語や文化の違いによるコミュニケーションの難しさ、在留資格の取得や労務管理の煩雑さなどがその例です。
また、外国人材の定着率の低さや、社内の受け入れ体制の整備不足なども指摘されています。
これらの課題を克服するためには、適切な採用プロセスの構築や社内の体制整備が不可欠です。
言語教育や生活支援、キャリア形成の仕組みなどを用意し、外国人材が働きやすい環境を整えることが求められています。
日本企業の外国人採用状況
日本企業の外国人採用の状況はどうでしょうか。
大手企業では、グローバル人材の獲得に向けて積極的に外国人採用を行っていますが、中小企業では、人手不足の解消を主な目的として外国人材を受け入れるケースが多いようです。
業種別に見ると、建設業や介護業、製造業や飲食業などで外国人材の活用が進んでいます。
特に、技能実習制度や特定技能制度を利用した現場作業員の受け入れが多く行われているのが特徴です。
また、IT業界では、高度な専門性を持つエンジニアの採用ニーズが高まっています。
企業規模や業種によって、外国人採用の目的や方法は異なりますが、戦略的な人材活用の重要性は共通して認識されつつあります。
グローバル市場での競争力を高めるためにも、外国人材の登用は今後ますます広がっていくでしょう。
外国人採用前の準備と確認事項
外国人を採用する際には、事前の準備と確認が非常に重要です。
ここでは、外国人採用を成功させるための重要ポイントを解説します。
在留資格の種類と条件
外国人を雇用する際、まず確認すべきは在留資格です。
在留資格は、外国人が日本で活動できる範囲を定めたものであり、適切に就労が認められる在留資格でなければ雇用することはできません。
就労可能な主な在留資格としては、「技術・人文知識・国際業務」、「技能実習」「特定技能」「技能」「介護」などがあります。
それぞれ、学歴や職歴、技能水準などの要件が異なるため、採用する外国人の条件に合った在留資格を選ぶ必要があるでしょう。
また、在留カードの真偽確認や有効期限のチェックも欠かせません。
オーバーステイや就労が許可されていない在留資格者の雇用は不法就労助長罪となり、会社に重大なリスクをもたらします。
必要な届出と手続き
外国人の雇用が決まったら、行政機関への届出と手続きが必要です。
主な手続きは以下の通りです。
- 外国人雇用状況の届出(ハローワーク)
- 雇用保険の加入手続き
- 社会保険の加入手続き
- 在留資格の変更・更新の支援
これらの手続きは、日本人の雇用と比べて複雑で時間もかかります。
専門家の助言を得ながら、計画的に進めていくことが大切です。
書類の不備や期限の失念は、外国人の就労資格に影響を及ぼしかねません。
受け入れ体制の整備ポイント
外国人材を受け入れる企業には、適切な労働環境の整備が求められます。
異文化コミュニケーションや生活支援など、日本人社員以上のケアが必要となるでしょう。
職場環境づくりのポイントは、次のような点が挙げられます。
- 多言語での社内文書、マニュアルの整備
- 宗教や習慣への配慮(食事など)
- 生活ガイダンスや住居手配などの支援
- キャリア育成プランの提示
- トラブル対応窓口の設置
単に雇用するだけでなく、外国人材が能力を発揮し、定着できる環境を整えることが重要です。
そのための体制づくりは、採用前から計画的に進めておく必要があります。
受け入れ担当者の選任や教育も忘れずに。
外国人の採用は、企業の成長戦略としても注目されています。
しかし、その実現のためには入念な準備と確認が不可欠です。
在留資格、行政手続き、受け入れ体制など、確認すべき点は多岐にわたります。
外国人の採用プロセスと注意点
外国人の採用は、日本人を採用する場合とは異なる注意点があります。
ここでは、外国人の採用プロセスにおける各段階での留意点について解説します。
募集・選考における留意点
外国人を募集する際は、在留資格や日本語能力など、外国人特有の条件を明確にする必要があります。
また、採用基準や労働条件を多言語で提示し、理解を得ることが重要です。
選考プロセスでは、在留資格の真偽確認と期限チェックを必ず行ってください。
偽造在留カードの見破り方を事前に学んでおくとよいでしょう。
また、在留資格に付随する就労制限の確認も欠かせません。
日本語能力については、総合職であればN1〜N2、一般職ではN3程度、現場作業ならN4〜N5が目安となります。
業務内容に応じて、必要な日本語レベルを設定しましょう。
面接時の評価ポイントと質問例
面接では、専門スキルや経験だけでなく、日本での就労への適応性を見極めることが肝心です。
コミュニケーション能力や、文化の違いを受け入れる柔軟性があるかどうかを確認しましょう。
質問例としては、以下のようなものが考えられます。
- 日本で働く上で、何か不安はありますか?
- 母国と日本の文化の違いで、戸惑ったことはありますか?
- 日本語の勉強を続ける意欲はありますか?
- チームワークを大切にできますか?
母国の文化や価値観を尊重しつつ、日本の職場に順応していく意欲や適応力を見抜くことが重要といえます。
採用決定後の手続きと準備
採用が決まったら、在留資格の取得・変更手続きを速やかに進める必要があります。
入管への申請や、各種届出の提出をサポートしてあげましょう。
また、社会保険の加入手続きや、給与振込口座の開設なども外国人労働者にとってはハードルが高いものです丁寧なサポートを心がけましょう。
加えて、住居の手配や生活に必要な情報の提供など、生活面でのサポートも重要です。
日本での生活にスムーズに適応できるよう、必要に応じて多言語での生活ガイダンスを実施するなどの配慮が求められます。
採用後の教育や職場の受け入れ体制の整備など、入社後も外国人材の定着に向けた継続的な取り組みが必要不可欠です。
日本人との文化差を理解し、お互いを尊重し合える組織づくりを目指しましょう。
外国人社員の教育と定着のコツ
外国人社員を採用したら、次に重要なのは社内教育と定着支援です。
ここでは、外国人社員の教育と定着のコツを具体的に解説していきます。
入社時研修の内容と方法
外国人社員の入社時研修では、日本人社員以上に丁寧な指導が求められます。
まず、社内ルールや業務内容について、多言語の資料を用意し、分かりやすく説明することが大切です。
また、職場の安全教育や緊急時の対応なども、外国人社員に適した形で実施する必要があります。
研修では、言語面だけでなく、文化面での配慮も欠かせません。
日本特有のビジネスマナーや慣習について、具体例を交えて丁寧に教えていくことが求められるでしょう。
言語サポートと文化対応
外国人社員の定着には、継続的な言語サポートと文化対応が重要なカギを握ります。
社内の各種資料や連絡事項は、できる限り多言語化し、外国人社員にも理解しやすいようにしておくことが望ましいといえます。
さらに、外国人社員の母国の文化や慣習を理解し、尊重する姿勢も大切です。
例えば、宗教上の理由で特定の食べ物を避ける必要がある場合や、重要な祝日には休暇を取りたいといった要望にも、柔軟に対応していくことが求められます。
社内に相談窓口を設けるなど、外国人社員が安心して働ける環境づくりに努めることが重要です。
キャリアアップとモチベーション管理
外国人社員の定着を図るには、キャリア開発の機会を提供し、モチベーションを高く維持することも重要です。
日本人社員と同様に、外国人社員の希望に応じた育成プランを用意し、スキルアップを支援していくことが求められます。
また、外国人社員のモチベーション管理では、文化的背景を考慮したアプローチが欠かせません。
例えば、評価制度や報酬体系について、外国人社員の価値観に合わせた説明を行い、納得感を持って働けるようにすることが大切です。
定期的な面談の機会を設け、外国人社員の要望や不安を汲み取り、適切にフォローしていくことが、離職防止につながるでしょう。
外国人雇用の法的留意点
外国人を雇用する際には、日本人と同様に労働関連法規が適用されますが、一部適用除外となる部分もあります。
また、国籍や人種による差別は禁止されており、公平な処遇が求められます。
また、在留資格の管理と更新も重要なポイントとなります。
労働関連法規と適用除外
外国人労働者にも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など、日本の労働関連法規が適用されます。
これにより、労働条件や安全衛生の確保、適正な賃金の支払いなどが義務付けられています。
ただし、一部の法規については、外国人労働者に対する適用除外や特例措置が設けられています。
例えば、労働者災害補償保険法では、在留資格が「外交」や「公用」である外国人は適用除外となります。
差別禁止と公平な処遇
労働基準法第3条では、国籍による差別が禁止されています。
つまり、外国人労働者に対しても、日本人と同様の労働条件を適用し、公平な処遇を行う必要があります。
賃金や労働時間、休日・休暇などの面で不当な差別を行ってはいけません。
また、人種、信条、社会的身分を理由とする差別的取扱いも禁じられています。
外国人労働者の文化的背景や宗教上の慣習を尊重し、差別や ハラスメントのない職場環境を整備することが求められます。
適切なダイバーシティ・マネジメントを実践し、多様な人材が活躍できる企業文化を育むことが重要といえます。
在留資格の管理と更新
外国人を雇用する際は、在留資格の確認と管理が非常に重要です。
具体的には、在留カードや旅券を確認し、在留資格の種類と就労可能な範囲を把握する必要があります。
また、在留期間の満了日を確認し、更新手続きを適切に行わなければなりません。
在留資格の管理を怠ると、不法就労につながり、会社に対する罰則規定(最大3年以下の懲役または300万円以下の罰金)が適用される可能性もあります。
外国人労働者の在留資格の管理体制を整え、定期的なチェックと更新手続きを確実に実施することが求められます。
また、在留資格の変更や更新が必要な場合は、速やかに手続きを行い、適正な雇用管理に努めましょう。
外国人採用の失敗事例と対策
外国人採用を成功させるためには、失敗事例に学び、適切な対策を講じることが重要です。
ここでは、外国人採用における典型的な失敗パターンと、その防止策について解説します。
採用ミスマッチのパターンと防止策
外国人採用における最も深刻な失敗は、採用ミスマッチです。
求める人材像と実際の応募者のスキルや経験にギャップがあると、業務遂行に支障をきたす可能性があります。
採用ミスマッチを防ぐためには、以下のような対策が有効でしょう。
- 求人票や面接時に、必要なスキルや経験を明確に伝える
- 応募者の日本語能力を適切に評価する(N1/N2:総合職、N3:一般職、N4/N5:現場作業など)
- 技能評価テストや適性検査を活用し、実務能力を確認する
- 在留資格や就労制限を確認し、業務内容との整合性を確保する
これらの対策を講じることで、採用ミスマッチのリスクを大幅に軽減することができるでしょう。
応募者の能力と求める人材像のマッチングを丁寧に行うことが、外国人採用の成功の鍵を握っているといえます。
コミュニケーション不足によるトラブル
外国人社員とのコミュニケーション不足は、様々なトラブルの原因となります。
言葉の壁や文化の違いから、意思疎通がうまくいかず、業務の効率が下がったり、人間関係が悪化したりするケースが少なくありません。
コミュニケーション不足によるトラブルを防ぐためには、次のような工夫が必要です。
対しても、異文化理解や多様性尊重の意識を醸成する
外国人社員とのコミュニケーションを円滑に行うためには、言語面でのサポートだけでなく、お互いの文化や価値観を理解し合う努力が不可欠です。
多様性を受け入れ、インクルーシブな職場環境を築くことが、外国人採用の成功につながるでしょう。
早期離職を防ぐ工夫
せっかく採用した外国人社員が、早期に離職してしまうことは、企業にとって大きな損失となります。
異国での生活や仕事に不安を感じて、離職を選択するケースが少なくありません。
早期離職を防ぐためには、外国人社員の定着支援に力を入れることが大切です。
具体的には、以下のような取り組みが考えられます。
- 入社後の定期面談を実施し、悩みや不安を早期に把握する
- 住居手配や口座開設など、生活面でのサポートを行う
- 社内でのコミュニケーションを促進し、孤立感を解消する
- キャリア形成の機会を提供し、長期的な働きがいを感じてもらう
外国人社員が安心して働き続けられる環境を整備することが、早期離職の防止につながります。
企業としても、採用コストを無駄にせず、多様な人材の力を長期的に活用できるというメリットがあるでしょう。
外国人採用の失敗事例から学び、適切な対策を講じることで、多様性に富んだ活力ある職場を実現することができます。
採用から定着までの一連のプロセスを丁寧に設計し、外国人社員の力を最大限に引き出していくことが、これからの時代に求められる経営戦略といえるでしょう。
外国人採用の効果測定と改善
外国人採用の取り組みを継続的に改善していくためには、効果の測定と評価が欠かせません。
ここでは、採用の費用対効果、定着率と生産性、採用プロセスの見直しについて詳しく解説します。
採用の費用対効果の評価
外国人採用にかかる費用と、それによってもたらされる効果を定量的に把握することが重要です。
採用関連費用、住居支援費、教育研修費、手続費用など、外国人採用に特有のコストを明確にしましょう。
一方で、外国人従業員がもたらす価値として、多様な視点によるイノベーションの創出、語学力を活かした海外展開の促進、人手不足の解消による生産性の向上などが挙げられます。
これらの効果を可能な限り数値化し、費用対効果を評価することをおすすめします。
定着率と生産性の把握
外国人従業員の定着率と生産性は、採用の成否を判断する上で重要な指標となります。
入社後の一定期間(例えば3ヶ月、6ヶ月、1年)ごとの定着率を調査し、離職理由を分析することで、改善点が明らかになるでしょう。
また、外国人従業員の生産性を日本人従業員と比較することで、採用の効果を実感できます。
業務の特性に応じて、適切な生産性の指標(例:営業成約件数、製造ライン出荷数量など)を設定し、定期的にモニタリングすることが肝心です。
採用プロセスの見直しと改善
効果測定の結果を踏まえ、採用プロセスを定期的に見直すことが求められます。
応募者の母集団形成、選考基準の設定、入社後の教育研修など、一連の採用プロセスを可視化し、ボトルネックとなっている部分を特定しましょう。
改善策としては、求人広告の多言語化、技能評価方法の見直し、日本語学習支援の拡充など、具体的なアクションプランを立てることが効果的です。
外国人従業員の意見を積極的に取り入れ、継続的にプロセスを進化させていくことが、採用の成功につながります。
以上のように、外国人採用の効果測定と改善は、一過性の取り組みではなく、継続的に実践していくべき経営課題といえます。
費用対効果、定着率、生産性など、重要な指標を定め、PDCAサイクルを回すことで、外国人材の力を最大限に引き出していきましょう。
まとめ
外国人採用は、人手不足解消やグローバル化対応に有効ですが、在留資格や文化の違いなど押さえるべき注意点は多岐にわたります。
在留資格の確認、必要な届出と手続き、受け入れ体制の整備など、採用前の入念な準備が欠かせません。
募集・選考では、母国文化への理解や適応力を見極めることが重要です。
入社後は、言語サポートやキャリア支援を通じて、定着を図ることが求められます。
法的には、労働関連法規の遵守、差別の禁止、在留資格管理が重要なポイントです。
採用ミスマッチやコミュニケーション不足によるトラブルを防ぐ工夫も必要でしょう。
外国人採用の効果を定期的に測定し、採用プロセスを継続的に改善していくことが、成功の鍵を握ります。
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