外国人採用ガイド

#特定技能

特定技能の在留資格とは?受入れの流れや対象の特定産業12分野とは

特定技能の在留資格とは?受入れの流れや対象の特定産業分野14種とは

特定技能とは、2019年4月に追加された新たな在留資格です。人手不足が顕著な産業に対して、特定技能を用いて即戦力となる外国人採用を進めていく狙いです。この特定技能の新設を機に、「単純労働」とされていた一部労働も認められることになりました。

また、2024年度から5年間における特定技能外国人の受入れ枠の上限数が、これまでの2倍超となる「82万人」となり、特定技能1号の分野に、新たに「自動車運送業」「鉄道」「林業」「木材産業」の4分野が追加されることが閣議決定されました。

本記事では、特定技能の概要や受入れ方法などの基礎知識を解説します。

 

 

この記事の監修
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。
自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。

特定技能の受入れ可能な特定産業分野14種

特定技能の受入れ先として特定産業12分野が定められています。

従事できる仕事内容や試験の内容は次のとおりですが、12分野それぞれに必要な基準や管理する省庁が異なるので注意してください。

産業分野

従事できる仕事内容

人材基準 受入れ見込人数(5年間の最大値)
技能試験 日本語試験
介護 身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)(注)訪問系サービスは対象外 介護技能評価試験 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験(上記に加えて)介護日本語評価試験 50,900人
ビルクリーニング 建築物内部の清掃 ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 20,000人
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 ・機械金属加工
・電気電子機器組立て
・金属表面処理
製造分野特定技能1号評価試験 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 49,750人
建設 ・土木
・建築
・ライフライン・設備
建設分野特定技能1号評価試験等 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 34,000人
造船・舶用工業 ・溶接 ・仕上げ
・塗装 ・機械加工
・鉄工 ・電気機器組立て
造船・舶用工業分野特定技能1号試験等 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 11,000人
自動車整備 自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随 自動車整備分野特定技能評価試験等 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 6,500人
航空 ・空港グランドハンドリング(地上走行支援業務、手荷物・貨物取扱業務等)

・航空機整備(機体、装備品等の整備業務等)

特定技能評価試験(航空分野:空港グランドハンドリング、航空機整備) 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 1,300人
宿泊 宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供 宿泊業技能測定試験 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 11,200人
農業
※派遣可
・耕種農業全般(栽培管理、農産物の集出荷・選別等)

・畜産農業全般(飼養管理、畜産物の集出荷・選別等)

農業技能測定試験(耕種農業全般、畜産農業全般) 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 36,500人
漁業
※派遣可
・漁業(漁具の製作・補修、水産動植物の探索、漁具・漁労機械の操作、水産動植物の採捕、漁獲物の処理・保蔵、安全衛生の確保等)

・養殖業(養殖資材の製作・補修・管理、養殖水産動植物の育成管理、養殖水産動植物の収獲(穫)・処理、安全衛生の確保等)

漁業技能測定試験(漁業、養殖業) 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 6,300人
飲食料品製造業 飲食料品製造業全般(飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生) 飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 87,200人
外食業 外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) 外食業特定技能1号技能測定試験 国際交流基金日本語基礎テスト又は、日本語能力試験 30,500人

特定技能の1号・2号とは

特定技能には、特定産業分野の知識・経験が相当程度ある人に与えられる「1号」資格と、熟練したスキルを求められる「2号」資格に分かれます。特定技能の立ち位置を理解するために、ほかの在留資格と比較して説明します。

技能実習生は非専門的・非技術的分野で働くのに対し、特定技能は専門的・技術的分野の在留資格となります。また、専門的・技術的分野の在留資格として「高度専門職」「教授」「技術・人文・国際業務」「介護」「技能」等がありますが、特定技能の1号はこれら既存の在留資格と同等レベルにあり、2号は中間の立ち位置と受け取ることができます。

特定技能1号の条件

特定技能1号は、4か月、6か月、1年ごとの更新となり通算上限は5年間です。

技能や日本語の水準は試験などで確認し、日本語能力は生活や業務に必要なレベルが求められます。

家族を連れてくることが認められない点と、受入れ機関または登録支援機関の支援対象である点が2号との主な相違点です。

特定技能2号の条件

2号は、1号よりも技能レベルが高い在留資格となり、在留期間は6か月、1年、3年ごとの更新となります。技能水準は試験等で確認しますが、日本語能力を計る試験は不要となり、要件を満たせば配偶者や子どもを連れて滞在が可能です。

受入れ機関または登録支援機関の支援対象外となります。

特定技能の受入れの流れ

特定技能の受入れの流れは、海外にいる外国人を採用するパターンと日本国内で中長期滞在している外国人を採用するパターンに分かれます。1号、2号で受入れのフローが少し異なるためそれぞれのフローを確認してみましょう。

(1)海外から来日した外国人を採用

1号の場合は、始めに技能や日本語力を確認しなければならないため、国外で実施される指定の試験を受けなくてはなりません。

一方、2号の場合は試験がないため、求人募集に自ら申し込むか人材紹介会社などのあっせん会社から求人の案内を受けます。

その後、受入れ機関である企業と雇用契約を結び、ほかの労働者と同様に雇入れ時の健康診断の受診と事前ガイダンスを実施します。ガイダンスのタイミングで特定技能が外国人の支援計画を策定してください。

雇用契約を締結した後は、出入国在留管理局にて在留資格認定証明書の交付申請・交付を経て、在外公館での査証(ビザ)の発給を行い、入国し就労開始の流れとなります。

(2)日本国内の中長期滞在者である外国人を採用

すでに日本に滞在している外国人や、技能実習2号を修了した人を採用するフローを確認します。

技能実習制度のもと2号を良好に修了した外国人は、試験が免除となるため、求人募集に自ら申し込むか民間の人材紹介会社などを利用して求人応募に進みます。

留学生などの中長期滞在者は試験を受けてから求人応募のステップに進みます。

その後、海外から来訪した外国人と同じステップでガイダンスや健康診断の受診へ進み、特定技能が外国人の支援計画を策定します。その後、在留資格変更許可申請を出入国在留管理局にて行います。

すでに日本に滞在しているため、査証(ビザ)発給は不要です。特定技能1号に在留資格が変更された後、就労開始となります。

受入れ機関(採用する企業)の条件

受入れ機関である企業は、次の基準を満たす必要があります。

  1. 外国人と結ぶ雇用契約が適切(最低賃金を守り、日本人と同等以上の報酬額を設定)
  2. 機関自体が適切(過去5年に出入国・労働法令の違反がない)
  3. 外国人を支援する体制を整える(外国人が理解できる言語で支援を行うなど)
  4. 外国人の支援計画が適切(日本での生活支援を行う)

また、基準とあわせて次の3つが義務となります。

  1. 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(雇用契約通りの賃金支払いを行う)
  2. 外国人の支援を適切に実施(支援が難しければ登録支援機関に委託してもよい)
  3. 出入国在留管理庁への各種届出を行う

とくに、外国人を採用する際は、居住地の確保や日本のルールに沿った各種公的な手続き(納税や保険加入など)のサポートが必要になります。

すでに日本で働いていた外国人であっても、個々の日本語力や日本文化・ルールの理解度は異なります。

「人手不足だからとにかく採用してみよう」と安易に考えず、これらの適切な対応ができるか、義務を守り続れるか検討してみましょう。

登録支援機関とは

受入れ機関である企業の義務を説明する際に、登録支援機関という名前が出てきました。

ここでは登録支援機関の概要と役割を解説します。

登録支援機関とは、特定技能外国人を受入れる際の支援計画の一部または全てを受託できる機関です。外国人の適切な支援を行い、受入れ機関に代わって出入国在留管理庁へ各種届出を行う義務があります。

登録支援機関の役割として、受入れ機関に代わって次の10項目を実施します。

1.事前ガイダンス

雇用契約を結んだ後、採用する外国人に対して労働条件や具体的な活動内容、その後の入国手続・保証金徴収の有無などについて、対面またはオンラインのWeb会議で説明を行います。

2.出入国する際の送迎

海外から来日する外国人の入国を迎え入れに行き、空港や事業所、住居へ送迎を行います。帰国時も同様に、空港の保安検査場までの同行して送迎します。

3.住居確保・生活に必要な契約支援

外国人がスムーズに住居を見つけられるよう、連帯保証人になったり、社宅の提供を行います。その他、銀行口座やスマートフォン、水・電気・ガスまわりのライフラインの手続をサポートします。

4.生活オリエンテーション

日本の社会生活を営めるよう、日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や災害時の対応を伝えます。

5.公的手続き等への同行

公的な手続のサポートをします。主に役所関係の手続、社会保障や税金まわりの書類作成が挙げられます。

6.日本語学習の機会の提供

日本語の学習に必要な情報を提供します。

7.相談・苦情への対応

職場や住まい周りで起きうる相談や苦情に対して、外国人本人が十分に理解できる言語で対応したり、助言・指導したりします。

8.日本人との交流促進

地域住民や自治体の行事があれば案内し、積極的に交流できるよう支援します。

9.転職支援(人員整理等の場合)

特定技能は転職も可能なため、転職先を探す手伝いや推薦状の作成、新たな仕事を探す際に必要な有給休暇の付与や行政手続情報の提供をします。

10.定期的な面談・行政機関への通報

支援責任者は、外国人と受入れ機関(企業)の上司などと3か月に1回以上の面談を行い、労働基準法違反などないかチェックします。

外国人材は採用業界のトレンドでもあるため、営利目的で登録支援機関として登録する企業も多くあります。企業だけでなく個人(士業など)での登録も可能ですが、国が定める支援体制が整っていなければ登録支援機関として認可されることはありません

登録支援機関は、出入国在留管理庁サイトで随時公表されています。

また、登録支援機関になるための要件は外務省サイトでも確認可能です。

特定技能の特徴

最後に、特定技能の特徴を技能実習制度と比較しつつご紹介します。

特徴1.技能実習制度と目的が異なる

特定技能の特徴の1つ目は、技能実習制度と異なる目的を置いている点です。

特定技能は、日本の労働力として外国人を迎え入れることが焦点となっていますが、技能実習制度は労働力の調整手段として利用することを禁止しています。これが大きな違いです。

技能実習制度は国際貢献を目的とし、特定技能は日本の人手不足解消を目的としている

特徴2.単純労働とされる産業で働けるようになった

今までの在留資格では、外国人は単純労働とされる業務に就けないと定められていました。単純労働とは、特定の学歴や経験がなくてもできる仕事を指します(簡単な仕事という意味ではありません)。

この背景としては、今までは単純労働のため禁止とされていた介護の仕事やビルクリーニング、外食業といった産業の人手不足が顕著であり、日本人の労働力では追い付かなくなった点が考えられます。

特徴3.受入れ人数の制限がない

3つ目の特徴は、特定技能には技能実習制度のように、受入れ人数の上限がないことが挙げられます。

技能実習制度は国際貢献を目的としながら、技能実習生に日本の技能を伝承していく制度です。確実に技能を教えていく狙いから人数制限がかけられています。

一方、特定技能は日本の人手不足を補う目的のため、とくに上限は設けず採用を進めることが可能です。

ただし、海外から特定技能外国人を受入れる際は、空港への出迎えや居住まわりのサポートなど、さまざまなケアが必須となります。それに伴い、1人の採用にかける費用も大きくなる傾向にあるため、ある程度の資金力が必要です。とはいえ、技能実習制度よりは費用を抑えられるという見方もあるため、一度専門機関に相談してみると良いでしょう。

特徴4.一部の在留資格よりも受入れハードルが低い

特定技能は、従来の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格のように、学歴基準が設けられていません。技人国ビザを取得するには、一定の短大や大学を卒業し、かつ学習した分野と関連のある仕事にしか就けないという制約がありました。

これに比較すると、特定技能は学歴も実務経験もさほど問われていません(一定の基準として試験合格は問われます)。今までの高度な在留資格と比較すると、採用ハードルが低い点も大きな特徴といえるでしょう。

まとめ

特定技能は2019年4月に新設された、外国人を特定産業で採用できる在留資格す。

従来の高度な学歴を求められる在留資格や複雑な仕組みの技能実習制度と比較すると、受入れ条件が一部緩和された印象を持てるでしょう。登録支援機関との協業や、海外から迎え入れる際の生活サポートなどやるべきことはありますが、人手不足が続く特定産業14分野の方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

 

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