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特定技能「工業製品製造業」の受け入れ基準や業務区分、在留許可要件を解説

日本の製造業は慢性的な人手不足に直面しており、特に中小企業では熟練工の高齢化や若手人材の確保が大きな課題となっています。

技能実習だけでは人材が定着しにくく、長期的な雇用を見据えた仕組みを求める声が強まっています。こうした背景のもと導入されたのが特定技能制度であり、「工業製品製造業」分野もその対象に含まれています。

この記事では、特定技能「工業製品製造業」の在留資格を取得するための要件や受け入れ可能な業務区分、企業側が満たすべき基準についてわかりやすく解説します。

制度の全体像を把握し、自社での活用を検討する際の参考にしてください。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

特定技能「工業製品製造業」とは?

特定技能「工業製品製造業」は、深刻化する人材不足に対応するため2019年に導入された特定技能制度の一分野で、一定の技能を有する外国人が製造現場で働くことを可能にする仕組みです。

この在留資格には1号と2号があり、1号は基礎的な知識や技能を前提として幅広い工程に従事できる水準とされています。

一方、2号はより高度な経験や専門性を求められ、将来的に職長や管理職として現場を担う人材となることを想定しています。

工業製品製造業の分野には10の業務区分が設けられており、いずれの区分においても試験によって能力を確認し、合格者のみが該当する業務に従事することが認められます。

工業製品製造業分野の在留者数

令和6年12月末時点で、特定技能の在留資格を持つ外国人は全体で284,466人に達しています。

そのうち工業製品製造業分野に従事しているのは45,279人であり、割合にすると全体の15.9%を占めています。

この人数は全16分野の中で飲食料品製造業分野に次いで2番目に多く、特定技能制度において製造業が占める比重の大きさを示しています。

特定技能1号と2号の概要と許可要件

特定技能「工業製品製造業」では、1号と2号の区分ごとに必要な技能水準が定められており、いずれも従事する業務に対応した評価試験に合格することで要件を満たす仕組みとなっています。

特定技能1号

特定技能1号の在留資格を取得するには、製造分野特定技能1号評価試験に合格することが求められます。

加えて、日本語力については国際交流基金日本語基礎テストの合格、もしくは日本語能力試験でN4以上の水準をクリアする必要があります。

なお、同一分野の職種において技能実習2号を良好に修了している場合には、これらの試験は免除され、そのまま特定技能1号へ移行することが可能です。

特定技能1号(工業製品製造業)の概要
在留資格 特定技能1号
在留期間 通算最大5年
業務内容 相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務
技能試験 製造分野特定技能1号評価試験
日本語試験 日本語能力試験でN4以上または国際交流基金日本語基礎テスト合格
支援義務 あり
家族帯同 不可

特定技能2号

特定技能2号は、より高度な技能や経験を持つ人材を対象とした在留資格であり、取得には複数の条件が課されています。

必要とされるのは「製造分野特定技能2号評価試験」に加えて、「ビジネス・キャリア検定3級」や、「一定の実務経験または技能検定1級」に合格することです。

これらの要件を満たすことで、管理業務や高度な専門作業に従事できる資格が認められます。

特定技能2号(工業製品製造業)の概要
在留資格 特定技能2号
在留期間 上限の定めなし(更新は必要)
業務内容 熟練した技能を要する業務に従事する活動
技能試験 製造分野特定技能2号評価試験
日本語試験 要件なし
支援義務 なし
家族帯同 「家族滞在」の在留資格で配偶者と子の帯同可

受け入れ対象の業務区分

特定技能「工業製品製造業」では、2025年9月現在で10の業務区分が定められており、それぞれの分野ごとに従事可能な作業内容が明確化されています。
以下では各区分について順に解説します。

機械金属加工

機械金属加工区分には特定技能1号と2号の二種類が設けられており、それぞれ求められる役割が異なります。

1号は、指導者の指示を理解したうえで、または自身の判断に基づいて、素形材製品や産業機械などの製造工程に関する作業を行います。

一方で2号は、複数の技能者を取りまとめながら、同様の工程に従事しつつ作業全体の管理や進行を担う役割が想定されています。

対象となる業務は以下の通りです。

機械金属加工区分の対象業務
・鋳造
・鍛造
・ダイカスト
・機械加工
・金属プレス加工
・鉄工
・工場板金
・仕上げ
・プラスチック成形
・機械検査
・機械保全
・電気機器組立て
・塗装
・溶接
・工業包装
・強化プラスチック成形
・金属熱処理業

電気電子機器組立て

電気電子機器組立て区分には特定技能1号と2号があり、それぞれに求められる役割が定められています。

1号は、指導者からの指示を理解したうえで、または自身の判断に基づき、電気電子機器の製造や組立に関連する工程に従事する立場です。

2号は、複数の技能者を指導しながら同様の工程に携わり、工程全体の管理や進行を担う役割を持ちます。

対象となる業務は以下の通りです。

電気電子機器組立ての対象業務
・機械加工
・仕上げ
・プラスチック成形
・プリント配線板製造
・電子機器組立て
・電気機器組立て
・機械検査
・機械保全
・工業包装
・強化プラスチック成形

金属表面処理

金属表面処理区分には特定技能1号と2号があり、求められる役割に違いがあります。

1号は、指導者の指示を理解するか自らの判断で表面処理に関わる作業を行う立場として従事します。

2号は、複数の技能者を指導しながら同じ工程に携わり、作業全体の管理を担う役割を持ちます。

対象となる業務は以下の通りです。

金属表面処理の対象業務
・めっき
・アルミニウム陽極酸化処理

紙器・段ボール箱製造

2025年9月現在、紙器・段ボール箱製造の分野は、現時点では特定技能1号のみが対象となっています。

業務内容は、指導者の指示を理解するか自らの判断により、紙器や段ボール箱の製造工程に従事します。

対象となる業務は以下の通りです。

紙器・段ボール箱製造の対象業務
・紙器・段ボール箱製造

コンクリート製品製造

2025年9月現在、コンクリート製品製造の分野は、特定技能1号のみが対象として認められています。

業務内容は、指導者の指示を理解し、あるいは自ら判断して、コンクリート製品の製造工程における作業に従事します。

対象となる業務は以下の通りです。

コンクリート製品製造の対象業務
・コンクリート製品製造

RPF製造

2025年9月時点において、RPF製造の分野は、特定技能1号に限定されています。

業務内容は、指導者からの指示を理解し、または自身の判断によって、破砕や成形などの工程に関する作業を担います。

対象となる業務は以下の通りです。

RPF製造の対象業務
・RPF製造

陶磁器製品製造

陶磁器製品製造の分野は、2025年9月時点において、特定技能1号のみ受け入れが認められています。

この区分では、指導者の指示を理解しながら、または自ら判断して、陶磁器製品の製造工程に関わる作業を担います。

対象となる業務は以下の通りです。

陶磁器製品製造の対象業務
・陶磁器工業製品製造

印刷・製本

2025年9月現在、印刷・製本の分野の受け入れは、特定技能1号に限定されています。

この区分では、指導者の指示を理解しつつ、または自ら判断して、オフセット印刷やグラビア印刷、製本などの工程に携わります。

対象となる業務は以下の通りです。

印刷・製本の対象業務
・印刷
・製本

紡織製品製造

2025年9月現在、紡織製品製造の分野は、特定技能1号のみが認められています。

この区分では、指導者の指示を理解しつつ、または自らの判断によって、紡織製品の製造工程に関わる作業を行うことが求められます。

対象となる業務は以下の通りです。

紡織製品製造の対象業務
・紡績運転
・織布運転
・染色
・ニット製品製造
・たて編ニット生地製造
・カーペット製造

縫製

縫製の分野は、2025年9月時点において、特定技能1号のみが受け入れ対象となっています。

この区分では、指導者の指示を理解しながら、あるいは自身の判断によって、縫製工程に関わる作業に従事することが求められます。

対象となる業務は以下の通りです。

縫製の対象業務
・婦人子供服製造
・紳士服製造
・下着類製造
・寝具製作
・帆布製品製造
・布はく縫製
・座席シート縫製

受け入れ企業が満たすべき基準

特定技能制度を活用して外国人材を受け入れる際には、雇用する側に一定の条件が課されています。

ここからは、受け入れ企業側が満たすべき具体的な要件について整理していきます。

受け入れ対象となる産業分類に該当していること

特定技能外国人を工業製品製造業で受け入れる場合、事業所が受け入れ対象となる産業分類に該当している必要があります。

特定技能1号のみ対象の産業分類(2025年9月時点)
①繊維工業
②パルプ製造業
③洋紙製造業
④板紙製造業
⑤機械すき和紙製造業
⑥塗工紙製造業(印刷用紙を除く)
⑦段ボール製造業
⑧紙製品製造業
⑨紙製容器製造業
⑩その他のパルプ・紙・紙加工品製造業
⑪印刷・同関連業
⑫プラスチック製品製造業
⑬コンクリート製品製造業
⑭食卓用・ちゅう房用陶磁器製造業
⑮陶磁器製置物製造業
⑯高炉による製鉄業
⑰高炉によらない製鉄業
⑱製鋼・製鋼圧延業
⑲熱間圧延業(鋼管、伸鉄を除く)
⑳冷間圧延業(鋼管、伸鉄を除く)
㉑鋼管製造業
㉒鉄鋼シャースリット業
㉓他に分類されない鉄鋼業(鉄粉製造業に限る。)
㉔鉄骨製造業
㉕金属製サッシ・ドア製造業
㉖製缶板金業(高圧ガス用溶接容器・バルク貯槽製造業に限る。)
㉗金属製品塗装業
㉘他に分類されない金属製品製造業(ドラム缶更生業に限る。)
㉙他に分類されないその他の製造業(RPF製造業に限る。)
㉚こん包業
特定技能1号と2号どちらも対象の産業分類(2025年9月時点)
①鋳型製造業(中子を含む)
②鉄素形材製造業
③非鉄金属素形材製造業
④機械刃物製造業
⑤作業工具製造業
⑥配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
⑦金属素形材製品製造業
⑧溶融めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
⑨電気めっき業(表面処理鋼材製造業を除く)
⑩金属熱処理業
⑪その他の金属表面処理業(ただし、アルミニウム陽極酸化処理業に限る。)
⑫ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
⑬はん用機械器具製造業(消火器具・消火装置製造業を除く。)
⑭生産用機械器具製造業
⑮業務用機械器具製造業(医療用機械器具・医療用品製造業及び武器製造業を除く。)
⑯電子部品・デバイス・電子回路製造業
⑰電気機械器具製造業(燃機関電装品製造業を除く。)
⑱情報通信機械器具製造業
⑲工業用模型製造業

協議会に加入していること

特定技能外国人を採用する企業は、製造業分野に設けられた「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への加入が義務になっています。

この協議会は、制度の適正な運用や受け入れに関する情報共有を目的に設立されており、加入を怠ると在留資格の申請自体が進められません。

そのため、在留資格変更や在留資格認定証明書交付の申請に先立って、必ず協議会への加入手続きを完了させる必要があります。

経済産業省|製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会(協議会)

適正な雇用契約を結んでいること

特定技能の外国人を受け入れる際には、労働条件が適切であることが前提とされています。

具体的には、同じ職務に従事する日本人と比較して、報酬水準が同等以上でなければならず、不当に低い給与設定は認められません。

さらに、休暇の取得や社会保険、福利厚生の面においても差別的な取り扱いをしてはならず、日本人労働者と同様の環境が確保される必要があります。

適正な支援体制を確保していること

特定技能1号外国人を雇用する企業は、入管法により定められた支援義務(義務的支援)を果たさなければなりません。

義務的支援10項目は以下の通りです。

義務的支援一覧
①事前ガイダンスの実施
②入国・帰国時の送迎
③住居の確保や生活に必要な契約支援
④生活オリエンテーションの実施
⑤公的手続等への同行
⑥日本語学習の機会の提供
⑦相談・苦情への対応
⑧日本人との交流促進支援
⑨転職時の支援(人員整理等の場合)
⑩定期的な面談と行政機関への報告

労働関係法令などを遵守していること

特定技能所属機関は、労働基準法や最低賃金法といった労働関係法令に加え、社会保険制度や税に関する法令を適切に遵守していることが求められます。

雇用保険や厚生年金への未加入、賃金の遅配や未払い、税金の不適切な処理などは、特定技能の在留資格申請において不許可事由となり得ます。

なお、この法令遵守の要件は、在留資格の申請時点だけでなく受け入れを継続する限りにおいて、満たし続けなければなりません。

欠格事由に該当していないこと

特定技能所属機関として認められるためには、欠格事由に該当しないことが求められます。

たとえば、過去1年以内に非自発的な離職者を発生させていないことは、受け入れの必須要件になっています。

また、過去5年以内に受け入れ機関やその役員が、禁錮以上の刑を受けた場合や、入管法、労働関係法令、社会保険法令などに違反して罰金以上の刑を受けた場合は欠格事由となります。

なお、これらの要件は外国人だけでなく、日本人に対する違反による刑罰を受けた過去も含みます。

業務区分ごとの追加要件

受け入れ企業が日本産業分類における「繊維工業」、「印刷・同関連業」、または「こん包業」に該当する場合には、通常の基準に加えて追加的な要件が設けられています。

繊維工業

繊維工業において特定技能外国人を受け入れる場合、以下4つの追加基準を満たす必要があります。

  • 国際的な人権基準に適合し事業を行っていること
  • 勤怠管理を電子化していること
  • パートナーシップ構築宣言を実施していること
  • 特定技能外国人の給与を月給制とすること

印刷・同関連業

印刷・同関連業で特定技能外国人を受け入れる場合には、以下いずれかの業界団体への所属が条件です。

  • 全日本印刷工業組合連合会
  • 全国グラビア協同組合連合会
  • 全日本製本工業組合連合会

こん包業

こん包業に該当する受け入れ企業は、「日本梱包工業組合連合会」に所属していることが必要です。

この要件は、業界の適正な運営を確保し、特定技能外国人の雇用環境を安定させる目的で設けられており、加入をしない場合は受け入れ基準に適合しないものとして取り扱われます。

まとめ

本記事では、特定技能外国人を受け入れる企業に求められる条件として、協議会への加入、適正な雇用契約や支援体制の確保、そして業種ごとの追加要件などについて整理しました。

これらはいずれも制度を適正に運用し、安心して働ける環境を整えるために不可欠な基準です。

特定技能外国人の受け入れを検討している企業担当者は、要件をひとつずつ確認し、自社が該当する業務区分や法令上の義務を早めに把握することが大切です。

適切な準備を進めることで申請の不備を防ぎ、スムーズな受け入れにつながります。

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