歌手やダンサー、スポーツ選手などが日本で活動する際に必要となるのが「興行ビザ」です。
通常の就労ビザと比べて審査が厳しく、興行内容や受入機関の信頼性が重視されます。
基準1号から3号まで種類があり、それぞれ条件が異なる点も特徴です。
本記事では、興行ビザの種類や審査の厳しさ、取得のための条件や手順、さらに必要書類までを整理し、わかりやすく解説します。
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この記事の監修(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人・外国人含め全国で「300社・5,000件」以上の採用支援実績を持つ人材採用コンサルタント。監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用にも取り組んでいる。外国人雇用労務士、外国人雇用管理主任者資格、採用定着士認定保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
興行(こうぎょう)ビザとは?

興行ビザとは、日本で歌手、ダンサー、演奏家、俳優、スポーツ選手、芸能タレントなどが公演・競技・撮影・テレビ出演などの「興行活動」を行い、報酬を得るための在留資格です。
通常の就労ビザとは別枠で扱われ、単発の出演から長期の公演ツアーまで対象になります。
審査では活動内容の具体性や契約書、受け入れ先の信用性が重視され、基準1号〜3号に分類された要件に沿って許可が判断されます。
受け入れ側による招へいや在留資格認定証明書(COE)の取得が必要になる点も特徴です。
興行ビザの種類

興行ビザは基準1号(演奏等)、基準2号(スポーツ等)、基準3号(報酬なし短期活動)に分かれます。
基準1号
基準1号は、日本側の主催者や興行団体から報酬を受け取って日本で公演・興行を行う場合に該当する基準です。
審査では「誰が」「いつ」「どこで」「どのような報酬で」興行を行うかが明確であること、主催者の信用性や資金力が裏付けられていることが重視されます。
申請時には契約書や招聘理由書、出演スケジュール、会場契約書、主催者の登記簿謄本や納税証明、広告・公演案内など興行の実態を示す資料を揃えて、報酬の妥当性と受け入れ体制を示す必要があります。
公演の規模や反復性が不明確だと却下されやすいため、詳細な説明と証拠が重要です。
基準2号
基準2号は、主に日本側の主催者や興行主に招かれて、定められた報酬や契約に基づいて活動するプロの出演者を想定した区分です。
具体例としては、コンサートや舞台に招かれる歌手・ダンサー、スポーツイベントの招待選手などが該当します。
審査では出演契約書や招へい理由書、報酬や旅費の支払い方法を示す書類に加え、申請者の経歴や過去の実績(媒体掲載、公演実績、評価など)を示す資料が重要視されます。
また、受入団体の資金的裏付けや公演計画の具体性も審査ポイントとなるため、詳細なスケジュールや会場確保の証明を整えておくことが取得の近道です。
基準3号
基準3号は、地域の文化イベントや小規模な公演、ワークショップなど、営利性が比較的低く「文化交流」や地域振興につながる活動に該当するケースで適用されることが多い基準です。
審査では単に一回だけの公演か否かよりも、主催者側の運営能力や開催実務の確かさ、活動の社会的意義が重視されます。
主に確認されるポイントは以下の通りです。
- 招聘状や主催者の説明:開催目的、日程・会場、参加者構成、主催団体の連絡先や代表者情報
- 契約・報酬の明示:出演の条件や報酬の有無、経費負担の内訳(主催者負担か出演者負担か)
- 実施計画の具体性:集客見込みや告知計画、当日の運営体制(スタッフ配置や安全対策)
- 出演者の経歴・実績:過去の公演記録や写真、メディア掲載、推薦状などで信頼性を裏付ける資料
- 財務的裏付け:主催者の資金力やスポンサーの存在、必要に応じて入場料収入の見込み資料
申請時は、上記を分かりやすく整理した書類(詳細スケジュール、チラシやウェブページのスクリーンショット、過去公演の資料など)を揃えると審査がスムーズになります。
基準1号・2号と比べて柔軟な適用が可能な場面もありますが、主催者の実績や興行の実現性が薄いと認められると不許可になりやすいため、不明点は入国管理局や専門の行政書士に相談するのが安心です。
興行ビザの審査は厳しい?
結論から言うと、興行ビザの審査は「厳しめ」と考えてよいです。
通常の就労系在留資格よりも、興行内容の具体性や主催者(招聘側)の信頼性、契約や報酬の明確さが重視され、申請の目的が曖昧だと却下されやすくなります。
特に短期のイベントやツアー、無名の団体による招聘は慎重に見られ、過去の実績や募集・集客方法、会場の確保状況なども評価対象です。
ただし、必要書類を丁寧に揃え、出演契約書・詳細なスケジュール・招聘理由を明確にし、受入れ側の法人登記や税務書類などで信頼性を示せれば、十分に取得可能です。
審査で追加資料を求められるケースも多いので、余裕を持ったスケジュールで準備することをおすすめします。
興行ビザを取得するための条件

基準1号:主にプロの芸能活動で報酬が発生する場合。
基準2号:短期の公演や講演での招へい。
基準3号:報酬なしの邦内活動や試演等。
基準1号
基準1号は、主に短期の興行活動で来日し報酬を得る個人やグループを想定した区分です。
コンサートや舞台公演、ダンス、スポーツの試合参加など、特定の興行に招かれて出演・実演する場合に該当します。
審査では招聘者(主催者)との契約内容や報酬の有無、活動日程・会場、主催者の信用性、出演者の経歴・実績が重視され、単発公演や短期ツアーで用いられることが多いのが特徴です。
基準2号
基準2号は、主催者(プロモーターやイベント企画会社)に招聘され、報酬を受けて日本で公演・出演するケースを想定した基準です。
申請では主催者との契約書に公演日程、出演内容、報酬額、支払条件が明記されていることが必須となります。
加えて、公演計画書、会場の予約確認書、チラシや広告など「実際に公演が行われる」ことを裏付ける資料が求められます。
主催者側の法人登記簿謄本や決算書、銀行残高証明などで資金的裏付けを示すと審査が通りやすくなります。
申請者は履歴書や過去の公演実績、宣材(音源・映像・メディア掲載)を添付し、出演者としての専門性と実績を明確に提示することが重要です。
虚偽や不明確な点があると却下されやすいため、主催者の信頼性と興行の具体性を揃えて提出してください。
基準3号
基準3号は、単発や短期の公演・イベントに対する興行ビザで適用されることが多く、審査では「申請者の専門性・実績」と「受入れ側の信頼性」が特に重視されます。
具体的には、出演契約書や報酬の支払方法、滞在日程と会場予約証明、過去の出演実績やメディア掲載、演目の内容を示す資料が必要です。
受入れ団体の登記簿謄本や資金裏付けがあると審査が通りやすく、短期性や帰国意思が明確であることも重要です。
申請前に出演動画や評判、契約条件を整理しておくとスムーズです。
興行ビザを取得するまでの手順
準備→書類作成→入管へ提出→審査・追加資料→COE受領→在外公館で査証申請→査証発給→来日→再入国許可申請
1. 申請の準備をする
興行ビザ申請の第一歩は「準備」です。まずは公演内容・日程・報酬・会場など興行の具体的計画を明確にし、招聘側(受入機関)と契約書を交わします。
受入機関の登記簿謄本や過去の興行実績、資金証明など信頼性を示す資料も揃えてください。
主な準備項目は次の通りです。
- 興行概要(日時・会場・出演者・演目)
- 契約書または招聘状
- 受入機関の法人情報・実績資料
- 報酬・経費の見積りと資金証明
- 出演者の経歴書、写真、パスポートコピー
- スケジュール表および宣伝資料(チラシ等)
申請書類は日本語が基本のため、必要に応じて翻訳や行政書士への相談を早めに行い、余裕を持って準備することをおすすめします。
2. 申請書類を作成する
この段階では、実際に入管へ提出する書類を揃え、所定の様式に正確に記入します。
主な書類は以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請書(所定用紙)
- 顔写真、パスポートの写し
- 出演契約書または招聘状・出演依頼書
- 出演スケジュール(旅程・出演計画)
- 報酬や支払条件を示す書類
- 身元保証書・招聘理由書
- 履歴書・経歴書(芸歴・代表作や実績を添付)
- 受入れ機関の登記簿謄本や税関連書類
- 滞在先の証明
外国語文書は原則として日本語訳を添付し、訳者名と連絡先を明記してください。
原本とコピーを分けて整理し、必要箇所は押印や署名を忘れずにしましょう。
銀行残高証明などは発行日から日数制限があるため最新のものを用意しましょう。
提出前にチェックリストを作成し、書類の不備や記載漏れがないか十分に確認することが審査をスムーズに進めるポイントです。
3. 入管に申請書類を提出する
準備が整ったら、管轄の出入国在留管理局に申請書類を提出します。
申請は本人、受入機関、または行政書士等の代理人が行えます。
窓口提出が基本で、書類は原本とコピーを揃え、日本語で記入した申請書を含めて順序よくまとめておくと審査がスムーズです。
提出時に受理票や受付番号が発行されるので必ず保管してください。
なお、添付書類に外国語のものがある場合は日本語訳(翻訳者の署名・連絡先を付す)の提出を求められることが多く、書類不備や追加資料の要求が来ると審査が遅れるため、事前に不備がないか再確認することをおすすめします。
4. 審査を受け、追加資料を提出する
入国管理局が書類を確認すると、記載の不明点や裏付けが不足している場合に追加資料の提出を求められます。
よく求められるのは、出演契約書の詳細、報酬の支払証明、公演スケジュール、招聘側の法人登記簿謄本や財務資料、会場の予約・チケット情報などです。
指示が来たら期限内に正確な原本や翻訳を添えて提出し、提出方法(郵送・窓口)や問合せ先を確認してください。
回答が遅れると審査期間が延びたり不許可になる可能性があるため、速やかで整合性のある資料提出を心がけましょう。必要なら行政書士や弁護士に相談すると安心です。
5. 在留資格認定証明書(COE)を受け取り送る
COE(在留資格認定証明書)が交付されたら、入国管理局から受取人(申請者または受入れ機関)へ交付通知が届きます。
交付原本は多くの在外公館が査証申請時に原本提出を求めるため、原本を速やかに送付する必要があります。
送る前に必ず確認すること
- 氏名・パスポート番号・在留資格・在留期間に誤りがないか
- COEの交付日と在外公館での有効期間(原則3か月以内)を確認
- 代理で申請する場合は委任状や受入れ機関の連絡先を同封
注意点
- 内容に誤りがあれば入管へ再交付を依頼する(訂正は原則不可)
- 原本は重要書類なので、受領確認と追跡番号を共有し、コピーやスキャンデータを手元に保管しておくこと
- 有効期間内に在外公館で査証申請できるよう、余裕を持って発送しましょう。
6. 在外公館で査証を申請する
在外公館(大使館・総領事館)で査証を申請する際は、まず該当公館の公式サイトで必要書類・受付方法(窓口か予約制か、代理申請の可否)と手数料を確認します。
一般的な提出物は、在留資格認定証明書(COE)原本、パスポート、査証申請書、写真、招聘状や滞在予定表、滞在費用の裏付け書類(銀行残高証明など)です。
窓口での提出後、通常数日〜2週間程度で査証が発給されますが、公館により処理期間や追加書類、面接や指紋採取があるため余裕を持って申請してください。
発給後はパスポートに査証が貼付されて返却されるので、渡航前に内容(在留資格・期間・入国回数)を必ず確認しましょう。
7. 査証の発給を受ける
在外公館で査証(ビザ)を受け取る際は、申請時に示したパスポートと在留資格認定証明書(COE)を提示し、所定の手数料を支払います。
発給されるとパスポートに査証シールが貼付され、入国可能な期間・在留期間・出入国回数(単回/複数)や活動内容などが明記されます。
受け取り後は氏名や査証の種類、有効期限、在留活動が正しいか必ず確認し、誤りがあればその場で在外公館に訂正を依頼してください。
受け取り方法は窓口受取か郵送の場合があるため、事前に確認し余裕を持って手続きを進めましょう。
8. 来日する
ビザが発給されたら来日の準備を整え、当日はパスポートと査証(ビザ)、在留資格認定証明書(COE)の原本(求められる場合がある)や受入れ先の連絡先、契約書・公演日程の写しを携行してください。
空港の入国審査ではこれらを提示して上陸許可を受けます。
主要の空港ではその場で在留カードが交付されるため、記載事項を必ず確認しましょう。
到着後は受入れ機関と連絡を取り、勤務開始日や移動・宿泊の最終確認を行ってください。
楽器や舞台機材を持ち込む場合はインボイスや通関書類の準備、不明点は輸送業者や税関に確認しておくと安心です。
来日後14日以内の住所登録(市区町村役場)も忘れずに行い、在留資格で認められた活動範囲を超えないよう注意してください。
9. 再入国許可を申請する
在留資格を維持したまま日本を出国・再入国するには、出国前に「再入国許可」を取る必要があります。
出国日から1年以内に戻る場合は、在留カードを持っていれば特例再入国許可が適用され、原則として申請手続きは不要(出国時に出国印で処理)。
ただし帰国が1年を超える、あるいは特例が使えない場合は、出国前に入国管理局や空港の出国カウンターで単回または複数回の再入国許可を申請してください。
申請時は在留カードとパスポート、申請書が必要で、当日中に発行されることが多いです。
長期滞在や頻繁な出国予定がある場合は、事前に入管へ相談し、許可期間を十分に確保しておきましょう。
再入国許可を取らずに長期間出国すると在留資格を失う可能性があるため注意が必要です。
興行ビザの申請に必要な書類

申請書、旅券写し、写真、招聘理由書、契約書、出演経歴や報酬証明、滞在予定表など。基準ごとに追加書類あり。
基準1号
基準1号は、単発または短期の興行に参加する外国人向けの区分で、コンサートや舞台、ダンス公演、スポーツイベントの出場などが該当することが多いです。
主に「来日して特定の興行に出演し、報酬を得る」ケースを想定しており、入管は興行の実在性や受入れ団体の信頼性、契約の有無や報酬の支払い根拠を重視します。
申請時には出演契約書や招聘状、スケジュール、過去の活動実績や報酬の支払証明などを用意しておくと審査がスムーズです。
短期滞在が前提となるため、興行の期間や目的が明確であることが重要です。
基準2号
基準2号は、主に報酬を受けて日本で公演・出演する個人や団体を想定した基準です。
ポイントは「受入れ側が興行の企画・運営責任を負うこと」「出演者に対する報酬や費用負担の根拠が明確であること」「公演日程や会場が具体的に確保されていること」です。
申請時には契約書や招聘状、興行スケジュール、会場使用許可、受入機関の実績や財務裏付け(収支見込みや過去の主催実績)などを揃える必要があります。
審査では受入れ機関の信頼性や興行の実現可能性が重視されるため、曖昧な企画書や資金計画だけでは不十分になりやすいです。
採否を高めるには、過去の公演記録や報道、チラシ・動画などの具体的な証拠を添え、契約内容や報酬の支払方法を明確に示すとよいでしょう。
基準3号
基準3号は、短期かつ単発の公演や、海外側が主催して来日する興行に適用されることが多い基準です。
特徴としては滞在期間が短い点、報酬の支払い方法や資金源が明確であること、そして主催者(招聘者)側の責任と準備が重視される点が挙げられます。
審査では公演の日時・会場・出演者リスト・契約書や招聘状、過去の公演実績や宣伝物、滞在先・旅程、報酬や旅費の負担者を示す資料などが求められ、これらが不十分だと認定が難しくなります。
海外主催で来日する場合は特に、受入側(日本の共催者や会場)との連携を明確にし、資金面と公演内容の信頼性を証明できる書類を揃えることが重要です。
まとめ
興行ビザは活動内容や受入れ機関の信頼性が重視され、基準1号〜3号で求められる条件が異なります。
審査は厳しいため、出演契約や招へい理由書を整え、必要書類を漏れなく揃えることが重要です。
申請はCOE取得→在外公館での査証申請が基本。早めの準備と、必要に応じた専門家への相談で合格率を高めましょう。
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