外国人採用ガイド

特定技能「航空分野」の業務内容と在留資格の特徴、許可の要件を解説

訪日客の回復と便数の増加に伴い、空港現場では人材不足が続き、現場の負担が大きくなっています。

その解決策として特定技能制度を活用して即戦力となる外国人労働者を受け入れる方法がありますが、制度利用のためには事前に多くの情報収集や複雑な手続きを要します。

本記事では、特定技能「航空分野」の制度概要や対象業務の範囲、特定技能1号・2号それぞれの技能水準と試験、日本語要件、受入れ企業に課される基準や航空分野特定技能協議会への加入義務などについて解説します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

特定技能とは

特定技能は、人材の確保が困難な産業分野において、即戦力となる外国人を受け入れるために設けられた在留資格であり、専門的な技能を持つ人材を労働者として迎え入れる仕組みです。

この在留資格には技能水準の異なる1号と2号があり、1号は基礎的な技能を持つ人材を対象とし、2号はより高い熟練度を備えた外国人材を受け入れるために設けられています。

こうした枠組みにより、企業は育成負担を抑えつつ必要な人材を確保でき、特に深刻化する人手不足への対策として活用が進んでいます。

特定技能1号の概要

特定技能1号は、産業分野別に定められた一定水準以上の技能を要する業務に従事する外国人を受け入れるための在留資格です。

令和7年6月末時点では333,123人がこの特定技能1号で日本に滞在しており、そのうち航空分野の在留者は1,818人となっていて、フィリピンが約800人と最も多く、次いでネパールの301人が続いています。

特定技能1号の在留資格の特徴は以下の通りです。

特定技能1号の特徴

技能水準 産業分野別に定められた一定水準以上の技能
日本語能力 JLPT N4以上またはJFT-Basicに合格
実務経験 定めなし
在留期間 通算5年の上限あり
支援義務 企業側に支援義務あり
家族帯同 原則不可

特定技能2号の概要

特定技能2号は、熟練技能を要する業務に従事する外国人を受け入れるための在留資格です。

特定技能2号は制度の運用開始から日が浅いため、令和7年6月末時点の在留者数は3,073人にとどまり、航空分野ではまだ該当者がいない状況です。

特定技能2号の在留資格の特徴は以下の通りです。

特定技能2号の特徴

技能水準 産業分野別に定められた熟練技能
日本語能力 定めなし(一部例外あり)
実務経験 必要
在留期間 通算上限年数なし(更新は必要)
支援義務 支援義務なし
家族帯同 配偶者と子の帯同可

特定技能と技能実習の違い

技能実習にも航空分野の職種があります。ただし、技能実習の場合は、あらかじめ認定を受けた技能実習計画に沿って雇用をする必要があり、業務内容についても計画通りに割り当てをする必要があります。

一方で、特定技能の場合は、許可された業務区分の範囲内であれば担当する作業量を柔軟に調整できます

例えば「空港グランドハンドリング」の業務区分で就労する外国人は、航空機地上走行支援業務、手荷物取扱い業務、貨物取扱い業務などに従事しますが、これらの業務の割合や修得の順序などについて特段の定めはありません。

特定技能「航空分野」の業務内容

航空分野の特定技能では「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2つの業務区分が設定されています。

それぞれの業務内容について解説します。

空港グランドハンドリング

空港グランドハンドリングでは、航空機の地上走行を支援する作業や手荷物・貨物の仕分けと運搬、航空機への搭降載業務などが主要業務として位置づけられています。

また、客室や機体の清掃・洗浄、遺失物の確認といった航空機内外の清掃整備業務も主要業務の一部です。

また、同じ仕事をする日本人スタッフが通常担当する業務であれば、事務処理や作業エリアの整理、積雪時の除雪などの関連業務に付随的に従事することは差し支えないとされています。ただし、関連業務のみに従事することはできません。

航空機整備

航空機整備では、運航整備や機体整備、装備品・原動機整備などにおいて航空機の機体や部品を点検・交換する一連の整備業務が主要業務とされています。

また、日本人整備士が通常行う業務であれば、事務処理や作業場所の整理、積雪期の除雪といった関連業務にも付随的に従事することが認められています。

ただし、関連業務のみに従事することはできません。

外国人側の許可要件

特定技能の在留資格を得るためには、外国人本人と受け入れ企業の双方が定められた基準を満たす必要があります。

以下では、外国人が満たすべき要件について順を追って解説します。

特定技能1号は2つの試験の合格が必要

特定技能1号は、一定の技能と知識を備えた即戦力外国人を受け入れる制度であり、その能力を証明するため技能試験と日本語試験の両方に合格する必要があります。

航空分野特定技能1号評価試験

航空分野特定技能1号評価試験には「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2つの区分があり、従事する予定の業務に応じた試験を受験する必要があります

「空港グランドハンドリング」の区分では、航空機の誘導補助や手荷物・貨物の仕分けなどを行うため、現場で安全に作業できる基礎技能が求められ、試験ではこれらの作業を担当するために必要な技能の有無が確認されます。

「航空機整備」の区分では、機体や装備品の点検・交換といった整備作業を行うため、整備の基本技術を理解し、指導者の監督下で基礎的な整備業務を遂行できるかどうかが試験で問われます。

JLPT(N4)またはJFT-Basic

JLPT(N4)またはJFT-Basicは、特定技能1号の外国人に求められる日本語能力を確認するための試験であり、どちらか一方に合格すれば要件を満たします。

JLPT(N4)は日常生活で使われる基本的な語彙や文法を理解し、比較的ゆっくりとした会話であれば内容を把握できる水準の日本語能力を測定する試験として世界各国で実施されています。試験の日程は7月と12月の年2回、会場試験で実施されます。

JFT-Basicは日本で生活するために必要な基礎的コミュニケーション力を確認することを目的とした試験であり、生活に即した場面設定を用いながら日本語の理解度を評価する試験です。

試験は年6回に設定された期間内に、任意の日程を選んで試験センターで受験するCBT方式の試験です。

特定技能2号は試験合格と実務経験が必要

特定技能2号は、高度な熟練技能を備え、自ら状況を判断して作業を進めたり、周囲の従業員を指導したりできる水準が求められるため、所定の試験に合格することに加えて一定の実務経験が必要とされています。

航空分野特定技能2号評価試験

特定技能2号評価試験は、熟練した実務能力を備えているかを確認するための試験です。

1号評価試験と同様に、「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2種類の試験があります。

「空港グランドハンドリング」の区分では、運航を支える地上支援業務に関する熟練度が問われ、航空機の誘導や手荷物・貨物の搬送など、的確な判断力と高度な作業能力が試験で確認されます。

「航空機整備」の区分では、安全を確保する専門的な整備技能が評価対象となり、機体の点検や部品交換に関する高いレベルの実務能力を証明する必要があります。

実務経験

空港グランドハンドリングの実務経験としては、航空機の駐機場への誘導や移動、手荷物・貨物の仕分け、搭降載、客室内清掃などに従事し、安全管理規定の理解や必要な作業資格を取得したうえで、新入社員への指導を行った経験が求められます。

空港グランドハンドリングでは、実務経験の年数について明確な基準は定められていません。

航空機整備の業務区分では、専門的な知識・技量を要する作業について3年以上の実務経験が必要とされ、日常点検から部品交換に至るまで高度な技能を長期間にわたり発揮してきたことが審査で確認されます。

企業側の許可要件

特定技能外国人を受け入れる企業には、適切な雇用環境の整備や法律違反の有無など、複数の基準を満たすことが求められます。

ここからは企業側の要件について解説します。

適格な事業者であること

空港グランドハンドリングの業務区分では、空港管理規則や関連する条例に基づき、空港管理者から営業を認められた事業者であることが求められます。

航空機整備の業務区分で特定技能外国人を受け入れる場合は、航空法に基づき国土交通大臣の認定を受けた整備事業者、またはその事業者から適法に業務委託を受けている者であることが求められます。

航空分野特定技能協議会に加入すること

航空分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、入管庁に在留資格申請を行う前に、国土交通省が運営する航空分野特定技能協議会へ加入することが義務づけられています。

そして、加入後は協議会が求める報告や情報提供に対応し、国土交通省が実施する調査や指導にも適切に協力することが求められます。

なお、協議会への加入に際して、会費等の支払いは不要です。

適正な雇用契約を結んでいること

特定技能外国人の受け入れは、フルタイム雇用が前提となり、同じ業務に従事する日本人と同等か、またはそれ以上の報酬を支払うことが求められます。

また、勤務時間や福利厚生などに不合理な差を設けることは認められず、外国人が一時帰国を希望する場合には有給休暇の取得や勤務日の調整などの配慮を行うことが求められます。

労働、社会保険、租税に関する法令を遵守していること

特定技能外国人を受け入れる企業は、労働基準法や社会保険関係法令、税法などの義務を常に遵守し続けなければなりません。

企業は、特定技能外国人の雇用を続ける限り、法令違反のない健全な運営体制を維持する必要があり、違反した場合には受入停止措置が取られる可能性があります。

過去1年以内に非自発的離職者を発生させていないこと

特定技能外国人を受け入れる企業は、募集する職種において過去1年以内に日本人を含む非自発的離職者を発生させていないことが求められます。

非自発的離職者とは、定年退職や有期雇用の契約期間満了などを除く、解雇など企業側の都合で離職した労働者を指します。

この要件により、安易な人員調整や不当解雇を防ぎ、安定した雇用管理を維持する仕組みとなっています。

過去1年以内に外国人の行方不明者を発生させていないこと

特定技能外国人を雇用する企業には、過去1年以内に企業側の管理不備などに起因して外国人の行方不明者を発生させていないことが求められます。

この基準は、受け入れ機関として適切な労務管理や生活支援が実施され、安全に働ける環境を維持できているかを確認するためのものです。

万が一、企業側の責任により、行方不明の外国人が発生した場合は、以降の特定技能外国人の雇用が認められなくなります。

過去5年以内に出入国・労働に関する不正を行っていないこと

特定技能外国人を受け入れる企業は、過去5年以内に出入国や労働に関する不正または著しく不当な行為を行っていないことが条件となります。

この不正には、旅券や在留カードの取上げ、不当な外出制限、未払い賃金、暴力や脅迫、パワハラ・セクハラなどの人権侵害行為が含まれ、刑事処分などの処罰を受けたか否かを問わず受け入れ停止事由となり得ます。

特定技能1号の場合は支援計画を策定し実施すること

特定技能1号で外国人を受け入れる企業は、入管法令に基づき、就労後の生活と職場への定着を支えるための支援計画を作成し、継続的に支援を実施する義務があります。

入管法令により定められた義務的支援10項目は以下の通りです。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国する際の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  •  公的手続等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

支援義務の履行方法

特定技能1号の支援業務は、受入れ企業が自ら実施する方法のほか、登録支援機関へ委託する形で行うことも認められています。

以下に「自社支援」と「登録支援機関への委託」のそれぞれの概要を解説します。

自社で支援業務を実施する

自社で支援業務を行う場合は、社内の人員配置など適切な体制を整えていることが求められます。

この支援体制は単に担当者を置くだけでなく、過去の受入れ実績や相談対応の経験など、一定の基準を満たす必要があります。

企業が自社支援をする際に必要な体制基準は以下の通りです。

  • 過去2年以内に就労系在留資格の外国人の受入または管理を適正に行った実績があること、または生活相談業務に従事した経験のある役職員を配置していること
  • 支援責任者と支援担当者を選任していること
  • 外国人が十分に理解できる言語で支援を行う体制があること
  • 外国人及びその監督者と定期面談を行える体制を有していること

登録支援機関に委託する

自社で十分な支援体制を確保できない場合は、登録支援機関へ業務を委託する方法を選択できます。

登録支援機関は出入国在留管理庁の名簿に登録された外国人支援の専門機関です。

特定技能1号外国人への支援を登録支援機関に委託すると、受入れ企業は支援義務を適切に履行したものとみなされます。

また、委託費用は登録支援機関ごとに異なりますが、一般的には1名あたり月2~3万円程度が目安とされています。

まとめ

本記事では、航空分野の特定技能の業務内容や在留許可の要件、特定技能1号の支援業務、さらに支援を自社で行う場合と登録支援機関へ委託する場合の違いなどについて整理しました。

特定技能制度を利用するためには、制度上求められる義務を適切に理解し、外国人材が安心して働ける環境を整えることが重要になります。

これから受入れを検討する企業にとって、支援体制の構築や必要書類の準備には専門的な判断が必要となる場面もあります。

要件に不安がある場合や体制整備に迷う場合は、早めに専門家へ相談し、自社に合った方法を確認しながら準備を進めることをおすすめします。

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