外国人採用ガイド

「縫製業」で特定技能外国人を雇用する方法と受け入れの流れについて解説

縫製工場では、慢性的な人手不足が続く一方で、

「縫製業で特定技能外国人を海外から直接採用できるのか」
「技能実習生をそのまま特定技能1号に切り替えられるのか」

など、具体的なイメージがつかめず不安を感じている担当者の方も多いのではないでしょうか。

この記事では、特定技能制度における「縫製業」の位置づけや就業可能な業務範囲、繊維業に求められる4つの追加要件、試験ルートと技能実習からの移行ルート、受け入れまでの基本的な流れを整理して解説します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

 

特定技能制度の基本概要

特定技能制度は、深刻な労働力不足が生じている産業分野において、即戦力となる外国人を受け入れる仕組みとして創設されました。

この制度では対象となる分野ごとに業務区分が設定されており、受け入れる企業にとっては、自社の事業が制度上の要件に適合しているかを確認しながら利用を検討することが重要となります。

16種類の特定産業分野

2025年12月現在、特定技能制度では16の産業分野(特定産業分野)が設定されており、さらにそれぞれの分野で複数の業務区分に細分化されています。

以下の16分野が現行の受け入れ対象分野です。

・ 介護
・ ビルクリーニング
・ 工業製品製造業
・ 建設
・ 造船・舶用工業
・ 自動車整備
・ 航空
・ 宿泊
・ 自動車運送業
・ 鉄道
・ 農業
・ 漁業
・ 飲食料品製造業
・ 外食業
・ 林業
・ 木材産業

なお、現在「物流倉庫管理」「廃棄物処理」「リネン製品供給」の3分野の追加が検討されており、対象は19分野へ拡大する予定です。

特定技能1号と2号

特定技能には、相当程度の技能水準を必要とする業務に従事する1号と、熟練した技術を必要とする業務に従事する2号の2つの在留資格があります。

それぞれの在留資格の特徴は以下の通りです。

特定技能1号・2号の特徴比較表

在留資格 特定技能1号 特定技能2号
在留期間の上限 原則通算5年が上限 更新回数の上限なし
技能水準 相当程度の技能 熟練した技能
日本語能力水準 JLPT N4以上またはJFT-Basic合格水準
※一部分野で例外あり
法律上の要件なし
※一部分野で例外あり
実務経験 法律上の要件なし 管理者として一定年数以上の実務経験が必要
家族の帯同 原則不可 配偶者と子の帯同可
支援義務 企業側に支援義務あり 支援義務なし

縫製業は工業製品製造業分野に属している

縫製業は、特定技能「工業製品製造業分野」に含まれる業務区分のひとつとして位置づけられています。

ここからは、特定技能「工業製品製造業分野(縫製区分)」の詳細について解説します。

縫製区分で認められる業務内容

縫製区分の主な業務は、服飾品や寝具などを専用の機械で縫い合わせる作業を中心とするもので、婦人子供服や紳士服、下着類、寝具の製造に加え、帆布製品や座席シートの縫製など多様な製品づくりが対象になります。

また、これらの作業に関連して、日本人従業員が通常行う周辺業務に付随的に従事することも認められています。

関連業務には原材料の調達や搬送、前後工程の作業、フォークリフトなどの運転作業、設備の清掃や保守といった補助的な作業が含まれます。

ただし、関連業務は主たる縫製作業に付随する範囲に限られ、関連業務のみを担当することは制度上認められていません。

「縫製」は特定技能1号のみ

縫製分野では、特定技能として受け入れが認められているのは特定技能1号のみであり、熟練水準に位置づけられる特定技能2号は現時点で対象に含まれていません。

今後の制度改正により2号が追加される可能性は高いですが、採用計画を立てる際は、最新の情報を公的資料で確認しながら行うことが重要です。

外国人側の許可要件

外国人が特定技能の在留許可を取得するためには、技能水準や日本語能力など一定の条件を満たす必要があり、縫製分野でも同様に基準が設けられています。

ここからは、特定技能での就労を希望する外国人が満たさなければならない許可要件について解説します。

製造分野特定技能1号評価試験(縫製)

製造分野特定技能1号評価試験(縫製)は、日本で縫製業務に従事するために必要な技能が備わっているかを確認する目的で実施される試験です。

この試験は学科と実技で構成され、縫製に関する基本知識と作業能力を総合的に評価する内容になっています。

試験はCBT方式で行われ、学科30問・実技10問の合計40問を80分以内に解答する形式が採用されています。

合格基準は学科65%以上・実技60%以上と定められており、一定の技能水準を満たすことが求められています。

JLPT(N4以上)またはJFT-Basic

特定技能の在留資格を取得して縫製業で就労するには、日本語能力を示す基準として JLPT(N4以上)またはJFT-Basicのいずれかに合格する必要があります。

JLPTは言語知識や読解力を測定する筆記中心の試験で、7月と12月に年2回実施されます。

JFT-Basicは日本で生活するために必要なコミュニケーション力を評価するCBT方式の試験で、多くの国・地域で随時受験でき、生活場面を想定した問題構成が特徴です。

どちらの試験に合格しても特定技能の日本語能力要件を満たすため、受験しやすい試験を選択することがおすすめです。

技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除される

技能実習2号を良好に修了した外国人については、特定技能1号への移行時に課される技能試験と日本語試験が免除される仕組みが設けられています。

ただし、技能試験については移行対象の職種・作業を修了した者のみが試験免除の対象です。

以下は、製造分野特定技能1号評価試験(縫製)の技能実習2号良好修了者の試験免除対象一覧表です。

技能実習2号良好修了者の技能試験免除対象一覧表(縫製区分)

特定技能1号の業務区分 試験免除等となる技能実習2号
職種 作業
縫製 婦人子供服製造 婦人子供既製服縫製
紳士服製造 紳士既製服製造
下着類製造 下着類製造
寝具製作 寝具製作
帆布製品製造 帆布製品製造
布はく縫製 ワイシャツ製造
座席シート縫製 自動車シート縫製

企業側の許可要件

特定技能の在留許可を取得するためには、企業側も複数の基準を満たすことが求められます。

ここからは、特定技能外国人を雇用する企業側の許可要件について解説します。

日本産業分類上の繊維工業を営む事業者であること

日本産業分類における「繊維工業」には、製糸や紡績糸のほか、織物やニット生地の製造、染色整理、衣服の縫製といった繊維製品の製造を行う事業所が含まれます。

この繊維工業に該当する事業のうち、特定技能の「縫製」区分に関係するのは、衣類や寝具などを機械で縫い合わせる作業など、仕立て工程を担う事業者が該当します。

同じ繊維工業でも生地そのものを作る工程は「紡織製品製造」の業務区分として扱われるため、受け入れに必要な技能試験の区分が異なる点に注意が必要です。

特定技能外国人受入事業実施法人の構成員となること

製造業分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、在留資格の申請前に経済産業大臣の登録を受けた特定技能外国人受入事業実施法人(以下、登録法人)の構成員となることが求められています。

この仕組みは、特定技能外国人の適正かつ円滑な受入れを進めるために整備されたものです。

登録法人に加入した企業は、法人が定める行動規範を遵守し、受入れ体制の適正化に向けた取り組みを行うことが義務付けられています。

地方出入国在留管理局で在留諸申請を行う際には、登録法人の構成員であることを証明する書類の提出が必要となるため、受入れ準備の初期段階で加入手続きを済ませておくことが重要です。

経済産業省が行う指導・現地調査などに協力すること

特定技能外国人を受け入れる企業は、経済産業省が実施する指導や報告徴収に対し、必要な協力を行うことが義務付けられています。

これには提出書類の提示や業務状況に関する説明だけでなく、求めに応じた資料提供や意見聴取への対応も含まれます。

また、現地調査やオンラインによる確認が行われる場合には、担当職員が円滑に調査を進められるよう、職場の状況や雇用管理の体制を適切に示すことが求められます。

これらの協力義務は制度の適正運用を確保するために定められているため、日頃から記録管理を徹底し、行政からの要請に迅速かつ正確に応じられる体制づくりが重要です。

必要に応じて訓練・各種研修の実施等を行うこと

特定技能外国人を受け入れる企業は、業務内容に応じて必要な訓練や各種研修を適切に実施することが求められています。

特に技能実習で経験した職種と異なる作業に従事させる場合には、労働災害を防ぐために、安全衛生教育を含む十分な研修を計画的に行う必要があります。

機械操作や作業手順に関する初期教育を実施することで、外国人本人の理解度を高め、職場でのトラブルや事故を未然に防止できます。

研修内容や実施状況を記録として残しておくことにより、行政からの確認にも対応しやすく、適正な受け入れ体制を維持することが可能となります。

繊維工業区分の上乗せ基準に適合すること

縫製業で特定技能外国人を受け入れるためには繊維工業特有の上乗せ基準に適合することが求められます。

上乗せ基準は以下4点です。

  •  国際的な人権基準に適合し事業を行っていること
  •  勤怠管理を電子化していること
  •  パートナーシップ構築宣言を実施していること
  •  特定技能外国人の給与を月給制とすること

特定技能外国人を雇用する流れ

雇用契約を締結した企業と外国人の双方が、定められた基準を満たしていれば、特定技能の在留資格を取得することができます。

ここからは、実際に雇用契約を締結し就労開始するまでの流れを解説します。

外国人材を採用し雇用契約を結ぶ

特定技能で外国人を雇用するために、最初にやるべきことは、制度上求められる技能水準や日本語能力などの基準を満たす人材を選考することです。

そして、採用する人材が決まった段階で、企業と本人の間で雇用条件を確認し、雇用契約を締結する手続に進みます。

特定技能の在留申請では契約書類の提出が必要なため、許可前に契約内容を整備し双方が合意した状態を証明できるようにしておくことが求められます。

特定技能外国人受入事業実施法人に加入する

特定技能外国人を縫製業で受け入れる場合は、特定技能外国人受入事業実施法人への加入が必須です。

在留許可申請の際は、加入証明書の提出が求められるため、申請の前に加入手続を済ませておく必要があります。

入管庁に在留資格申請を行う

特定技能の在留資格申請は、管轄の地方出入国在留管理局で行います。

許可が出れば雇用を開始できますが、採用時の申請には2つの種類があるため、それぞれ解説します。

海外から入国する際は在留資格認定証明書交付申請

海外在住の外国人と雇用契約を結ぶ場合は、企業が代理人として在留資格認定証明書交付申請を行い、入国審査官の審査を受けます。

認定証明書が交付された後は企業が証明書を本人へ送付し、外国人は所在国の日本大使館や総領事館で査証の発給手続を進めます。

査証を取得した外国人は航空機などで来日し、空港で入国審査官の上陸許可を受けることで正式に日本へ入国できます。

留学生などを採用する場合は在留資格変更許可申請

日本に既に在留している留学生や技能実習2号修了予定者を採用する場合は、特定技能で就労できるよう在留資格変更許可申請を行う必要があります。

この申請は原則として外国人本人が手続きを行いますが、申請書には企業側の情報や提出資料が含まれるため、採用企業が適切に協力する体制を整えることが欠かせません。

また、特定技能で在留中の外国人が別の企業へ転職する場合も、新たな就労先との雇用契約の内容について審査を受ける必要があるため、同じく在留資格変更許可申請を行います。

許可が出るまでは転職先で就労を開始することは認められないため注意が必要です。

特定技能外国人を雇用する際の注意点

特定技能外国人の受入れに際しては、制度上の義務や企業側の管理体制など、事前に押さえておくべき重要なポイントが存在します。

ここからは、受入れ企業が特に注意すべき3つのルールについて詳しく解説していきます。

雇用を継続する限り支援義務がある

特定技能1号の在留許可が得られれば雇用を開始できますが、受け入れ企業には外国人が安心して就労・生活できるよう継続的な支援を実施する義務があります。

そして、この支援は特定技能1号の雇用契約が続く限り途切れることなく履行しなければならず、制度上求められる内容を適切に実施する体制を整えることが不可欠です。

入管法により義務付けられた支援内容は以下の通りです。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保、生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

なお、これらの支援義務の実施は、入管庁の名簿に登録された「登録支援機関」に委託することができます。

登録支援機関とは、受け入れ企業に代わって特定技能外国人に対する支援を行う専門機関のことです。

在留期限前に在留期間の更新が必要

特定技能で雇用している外国人の在留期間の満了前に、在留期間更新許可申請を行う必要があります。

期限切れのまま就労を継続させると本人は不法就労となり、企業側にも不法就労助長の責任が問われるおそれが生じます。

このため、受け入れ企業は従業員の在留期限を正確に把握し、適切な管理体制を整えておくことが不可欠です。

定期届出と随時届出の義務がある

特定技能の受入れ企業には、受け入れ状況を定期的に報告する定期届出を行う義務があります。

この届出は毎年4月1日から翌3月末までの状況を取りまとめ、翌年度の5月末までに提出する必要があります。

加えて、所在地変更や雇用契約の変更など所定の事由が生じた場合には、事由発生日から14日以内に随時届出を行わなければなりません。

まとめ

本記事では、縫製業で特定技能外国人を受け入れるために求められる外国人・企業双方の許可要件と、実際の雇用手続きの流れについて整理しました。

制度特有の上乗せ基準や各種届出義務に加え、受入事業実施法人への加入や適切な研修体制の整備が不可欠である点を確認し、在留資格申請の方法や更新時の注意点まで一連のプロセスを紹介しました。

特定技能の受け入れを検討している企業にとって、制度を正確に理解し準備を整えることは後のトラブル防止につながります。

許可要件の確認や申請書類の整備に不安がある場合は、早い段階で専門家へ相談し、自社に適した雇用計画を具体化していくことが次の一歩となります。

「外国人採用の窓口」が
あなたの採用活動をサポート!

外国人採用の窓口は
外国人採用に特化したBtoBマッチングサービスです。

日本全国 10,000社 を超える
監理団体・登録支援機関・外国人紹介会社を一括で検索し
簡単に比較・相談・検討することができます。

「外国人の採用方法が分からない」
「技能実習生や特定技能外国人の依頼先が分からない」
「監理団体や会社がたくさんあって探すのが大変」
「手続きや申請が複雑で自社では行えない」

といったお悩みのある方は
今すぐ無料相談ダイヤルまでお電話ください!

外国人採用の専門家が丁寧に対応させていただきます(全国対応)。

「外国人採用の窓口」にできるコト

・外国人採用のご相談
・監理団体のご紹介
・登録支援機関のご紹介
・外国人紹介会社のご紹介
・行政書士事務所のご紹介

ご利用料金

ご利用料金は完全無料です。
サイトのご利用から監理団体・登録支援機関等のご紹介まで
一切料金はかかりません。
安心してご利用くださいませ。

Copyright© 外国人採用の窓口 , 2025 All Rights Reserved Powered by STINGER.