「技能実習生が失踪する理由は?」
「どれぐらいの技能実習生が失踪しているの?」
このような疑問をお持ちの方もいるでしょう。
技能実習生が失踪する主な理由は厳しい労働環境や生活のストレスです。
技能実習生の失踪者数は、令和5年に1万人ほどと過去最多を記録しました。
令和6年には前年比33%減少し、6,500人程度となっています。
年度によって技能実習生の失踪者数に増減はあるものの、依然として深刻な課題であることに変わりはありません。
本記事では、技能実習生の失踪の現状や失踪理由、企業への影響、失踪防止の対策について詳しく解説します。
技能実習生が失踪した際の対応手順についても紹介していますので、参考にしてみてください。
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この記事の監修(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人・外国人含め全国で「300社・5,000件」以上の採用支援実績を持つ人材採用コンサルタント。監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用にも取り組んでいる。外国人雇用労務士、外国人雇用管理主任者資格、採用定着士認定保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
INDEX
技能実習生の失踪の現状と統計

技能実習制度における失踪者の問題は深刻化しており、関係者の間で懸念材料となっています。
ここでは、以下の5つの技能実習生の失踪に関する最新の統計データを基に、その実態について詳しく見ていきます。
- 技能実習生の失踪者数の推移
- 国籍別の発生状況
- 職種別の発生状況
- 都道府県別の発生状況
- 失踪した技能実習生の発見状況
技能実習生の失踪の現状を理解して、対策を立てるのに役立てましょう。
技能実習制度については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【関連記事】
技能実習制度をわかりやすく解説!目的や条件、受け入れ方法を紹介
技能実習生の失踪者数の推移|令和6年は減少傾向
令和6年の技能実習生の失踪者数は6,510人となり、過去最多を記録した令和5年から3,000人以上減少しました。
過去6年間の失踪者数の推移は、以下の表をご覧ください。
| 年度 | 失踪者数 | 備考 |
| 令和元年 | 8,796人 | - |
| 令和2年 | 5,885人 | コロナ禍で減少 |
| 令和3年 | 7,167人 | 増加傾向へ転換 |
| 令和4年 | 9,006人 | - |
| 令和5年 | 9,753人 | 過去最多を記録 |
| 令和6年 | 6,510人 | 前年比33%減 |
参考:技能実習生の失踪者数の推移|法務省
表から分かるように、新型コロナウイルスの影響で一時減少した令和2年を除き、右肩上がりだった数値が令和6年で減少に転じました。
減少した理由の1つとして、このあとで詳しく解説する政府の施策実施が影響していると考えられます。
【国籍別】技能実習生の失踪者の発生状況|ベトナムが最も多い
以下のデータは、国籍別における技能実習生の失踪者数を示しています。
出典:技能実習生の失踪者数の推移|法務省
令和6年には、主要な送出国すべてで失踪者数が減少しています。
前年比では最大-60%と大幅な改善がみられました。
入国審査の厳格化や送出機関への指導強化など、国籍ごとの事情に合わせた対策が、着実に数字へ表れていると言えます。
【職種別】技能実習生の失踪者の発生状況|建設関係が最多
以下は令和6年度における職種別の失踪者数を示したグラフです。
建設関係が最多で、全体の約半数を占めています。
以下は令和5年度の失踪者数を比較している表です。
出典:技能実習生の失踪者数の推移|法務省
国籍のデータと同様に、令和6年度では全体的に失踪者数が減少していることがわかります。
【都道府県別】技能実習生の失踪者の発生状況|大都市圏で多い傾向
都道府県別の失踪者数では、大都市圏や工業地帯での発生が目立つ傾向にあります。
以下は、失踪者数が多い都道府県トップ3をまとめた表です。
| 順位 | 都道府県 | 失踪者数 | 失踪率 |
| 1 | 愛知県 | 585人 | 1.4% |
| 2 | 大阪府 | 472人 | 2.1% |
| 3 | 東京都 | 428人 | 2.5% |
参考:技能実習生の失踪者数の推移|法務省
特に愛知県は、実習生の受け入れ人数自体が多いこともあり、失踪者数で全国最多となりました。
一方で、在留者数に対する「失踪率」で見ると、東京都が最も高い数値を示しています。
これは都市部は仕事の選択肢が多く、失踪後の生活が維持しやすい環境にあることが、数字を押し上げる要因と考えられます。
失踪した技能実習生の発見状況|約8割が発見されている
令和元年から令和6年までの間に失踪した技能実習生は、累計で47,117人に上ります。
そのうち、約8割にあたる37,193人の所在が確認されており、「失踪=行方不明」とは限りません。
失踪した年度別の発見率(所在確認率)の推移は、以下の表の通りです。
| 年度 | 発見率 |
| 令和元年 | 94.2% |
| 令和2年 | 93.3% |
| 令和3年 | 89.1% |
| 令和4年 | 74.4% |
| 令和5年 | 69.4% |
| 令和6年 | 54.7% |
参考:技能実習生の失踪者数の推移|法務省
発見率は、その年度に失踪した失踪者に対する割合なので、過去の年度ほど捜査期間が長くなるため発見率が高くなっています。
例えば、令和元年の失踪者が令和6年に発見されても、令和元年の発見率に計算されます。
技能実習生の受け入れやサポートは自社でおこなうには手間やコストがかかるため、監理団体への委託は方法の1つです。
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技能実習生の5つの主な失踪理由

技能実習生が失踪する主な理由は以下の5つです。
- 過酷な労働環境
- 生活面でのストレス
- 実習内容と期待のギャップ
- 転職の自由がない
- 悪質なブローカーや送り出し機関の関与
技能実習生を受け入れる際は、自社の状況が当てはまっていないか事前に確認しておきましょう。
過酷な労働環境|長時間労働、低賃金など
技能実習生が失踪する大きな原因として、過酷な労働環境が挙げられます。
実際に失踪者が発生した実習先では、賃金や労働時間に関する不適切な扱いが多く見受けられます。
具体的な問題点は、以下の通りです。
労働環境の問題点
- 残業時間の誤魔化しや割増賃金の未払い
- 契約内容と異なる低い賃金設定
- 最低賃金を下回る違法な報酬
実習生の中には、送り出し機関に支払う手数料や渡航費の負担など借金を抱えて日本に来ている人も多いです。
借金を返済する立場で低賃金の労働環境だと、経済的な不安がつのり、失踪に至るケースも少なくありません。
生活面でのストレス|言語の壁、文化の違いなど
労働面だけでなく、日常生活で抱えるストレスも失踪を招く要因です。
特に来日直後は日本語が通じず、周囲との意思疎通に苦労する実習生が多くいます。
生活面における主な課題は以下の通りです。
生活面の主な課題
- 日本語能力不足によるコミュニケーションの断絶
- 異文化や習慣への不適応によるホームシック
- プライバシーの確保が難しい住環境
都市部では家賃相場の影響で、狭小な部屋での共同生活を強いられるケースも見られます。
言葉も通じず相談相手もいない孤独感から精神的に追い詰められ、最終的に失踪という選択に至っています。
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実習内容と期待のギャップ|安価な労働力としての扱い
来日前に抱いていたイメージと、実際の実習内容にギャップがある点も問題視されています。
本来、技能実習制度は「技能移転」による国際貢献を目的としています。
しかし、実際には人手不足を解消するための「安価な労働力」として扱われるケースが少なくありません。
実習生が直面する期待と現実のギャップは、以下の通りです。
直面するギャップ
- 高度な技術習得を望んでいたが、単純作業に終始する
- 専門的な指導がなく、ただの労働者として扱われる
- キャリア形成につながる経験が積めない
学びの場を求めて来日したにもかかわらず、成長の機会がない現実に実習生は失望します。
その結果、本来の目的を果たせない焦りから、失踪へとつながっています。
転職の自由がない|問題や不満から逃れられない
技能実習生が失踪を選ぶ背景には、原則として「転職」が認められていないという制度の仕組みがあります。
嫌な職場なら辞めるという選択ができる日本人や、一定の条件下で転職可能な「特定技能」とは以下のように異なります。
在留資格による違い
- 技能実習:原則として転職不可
- 特定技能:同一分野内なら可能(別分野は試験合格が必要)
特定技能には一定の自由度がありますが、技能実習生はどんなに過酷な環境やハラスメントに直面しても、合法的に職場を変えられません。
その結果、問題から逃れるための唯一の手段として、失踪を選択せざるを得ない状況に追い込まれています。
特定技能外国人の転職については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
悪質なブローカーや送り出し機関の関与|多額の保証金や手数料
実習生を日本へ送り出すブローカーや送り出し機関が悪質であるケースも失踪の理由の1つです。
現地業者の中には、事実と異なる好待遇を伝え、不当に高額な費用を徴収するケースが見受けられます。
実習生を経済的に追い詰める主な手口は、以下の通りです。
悪質な手口の例
- 虚偽の労働条件による勧誘
- 高額な保証金や手数料の徴収
- 離脱を防ぐための不当な違約金設定
その結果、実習生は来日時点で多額の借金を背負ってしまいます。
借金返済のプレッシャーから逃れるために、連絡が取れなくなったり、より高い収入が得られる違法就労先を求めるケースにつながります。
優良な監理団体の選び方については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
【関連記事】
監理団体の選び方|失敗しない5つのポイントと注意点を徹底解説
なお「外国人採用の窓口」では、希望するエリアの監理機関を一括検索できるサービスを提供しています。
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失踪した実習生はその後どうなるの?【強制送還や在留資格取り消しの可能性】

失踪した技能実習生がそのまま日本に留まると「不法残留者」として扱われます。
入管法に基づき在留資格が取り消される可能性が高く、摘発されれば強制送還の対象になりかねません。
具体的なリスクや処分内容は以下の通りです。
失踪した実習生の処罰の例
- 3年以下の懲役・禁錮、または300万円以下の罰金が科される
- 原則5年間、日本へ入国できない
- 雇用主へ罰則が及ぶ
なお、自主的に出頭すれば「出国命令制度」を利用できる場合があります。
要件を満たすと身柄を収容されずに出国でき、日本への上陸拒否期間は1年間に短縮されます。
参考:出入国管理及び難民認定法|e-gov 法令検索
技能実習生が失踪した企業への悪影響やペナルティ

技能実習生が失踪した場合、企業への悪影響やペナルティは以下のものがあります。
- 優良認定に影響が出る
- 技能実習生の受け入れが停止する
- 特定技能外国人の受け入れに影響が出る
技能実習生が失踪する可能性はゼロではないため、どのような影響があるのか理解しておきましょう。
優良認定に影響が出る
失踪者の発生は、実習実施者の「優良認定」に響きます。
この認定は150点満点中90点以上で取得できますが、直近3年以内の失踪実績に応じた評価点は以下の通りです。
失踪実績による評価
- ゼロ:5点
- 10%未満(または1人以下):0点
- 20%未満(または2人以下):-5点
- 20%以上(または3人以上):-10点
もし認定が取り消されたり取得できなかったりすると、以下のようなデメリットが生じます。
認定取り消しのデメリット
- 実習期間が最長3年(2号まで)に制限される
- 受け入れ人数枠が基本枠のみに減少する
特に企業の法令違反が原因の失踪は、大幅な減点で不合格となる恐れがあります。
評価は過去3年間の実績に基づくため、日頃の体制づくりが欠かせません。
【関連記事】
技能実習生の受け入れ人数に上限はある?企業の規模別の制限や算定方法を解説
技能実習生の受け入れが停止する
失踪の原因が企業側にあると判断された場合、実習生の受け入れ自体が停止する恐れがあります。
今後の受け入れに制限がかかる期間は、処分の重さによって以下の通り異なります。
受け入れ制限期間
- 技能実習計画の取り消し処分:5年間
- 賃金不払いや人権侵害など重大な違反:5年間
- 二重契約や名義貸しなどの違反:3年間
- 書類不備のような軽度な違反:1年間
参考:技能実習制度運用要領|法務省
この期間中は、新たな技能実習計画の認定が一切受けられません。
一度でも処分を受けると、長期間にわたり採用活動がストップしてしまいます。
労働力不足に陥らないためにも、法令遵守と適正な管理体制の維持を心がけましょう。
特定技能外国人の受け入れに影響が出る
技能実習生の失踪問題は、特定技能外国人の受け入れ計画に影響を及ぼします。
特定技能の受け入れ機関への認定基準に、行方不明者に関する項目が含まれているからです。
行方不明者に関する項目
過去1年以内に自社の責任による行方不明者を出していない
万が一、賃金未払いやハラスメントなど企業側に非がある原因で失踪者が出てしまうと、この基準を満たせずに申請は却下されます。
「失踪で実習生が減った穴埋めに特定技能を採用する」といった対応はできません。
将来の採用手段を確保するため、健全な労働環境の維持に努めましょう。
法務省が技能実習生の失踪を減少させるための施策を実施

法務省では、技能実習生の失踪問題を解決するため、失踪防止対策を強化しています。
主な取り組みは以下の4つです。
法務省の取り組み
- 技能実習生に関する取り組み:母国語相談窓口の周知や、アプリを通じた情報発信
- 監理団体・実習実施者に関する取り組み:失踪者が出た機関への調査や、受け入れ停止処分の厳格化
- 送出機関に関する取り組み:二国間取決めに基づき、不適正な送出機関や悪質ブローカーを排除
- 失踪ブローカー等に関する取り組み:在留カード番号等の情報を活用し、不法就労助長罪での摘発
参考:失踪技能実習生を減少させるための施策|法務省
また、法務省のWebページでは「失踪防止」や「危険な誘い」に関するリーフレットも公開され、制度の適正化に向けた注意喚起がおこなわれています。
技能実習生の失踪防止のための対策

技能実習生が失踪をしないための対策として以下の6つが考えられます。
- 労働環境を整備する
- 生活面のサポートを充実させる
- 実習内容を明確にする
- 送り出し国との連携を強化する
- 定期的なコミュニケーションと面談を実施する
- キャリア支援とスキルアップ機会を提供する
失踪者を出さないためにも、1つずつ取り入れていきましょう。
労働環境を整備する
失踪の主な原因は、低賃金や過酷な労働といった処遇への不満です。
まずは労働基準法などの法令を遵守し、実習生が納得して働ける環境を整える必要があります。
特に賃金や労働時間などの条件面は、入国前に母国語で説明するなど、双方の認識にズレが生じないよう配慮が求められます。
具体的な整備ポイントは以下の通りです。
労働環境の整備ポイント
- 母国語を併記した雇用契約書の作成と説明
- 地域別最低賃金の遵守と残業代の適正な支払い
- 36協定の範囲内での労働時間管理
適正な労務管理を徹底することで、実習生との信頼関係が深まり、失踪リスクの低減につながります。
生活面のサポートを充実させる
技能実習生が安心して実習をおこなうには、業務外での生活支援が欠かせません。
日本での生活に不慣れな実習生は多くの不安を抱えているため、まずは住環境や生活ルールの整備から始める必要があります。
生活支援の整備ポイント
- 快適な住環境:個室の確保、ネット環境など
- 医療支援:通院の付き添い、保険の手続きなど
- 日本語学習の機会:教室の案内、教材提供など
日々の生活における精神的な負担を取り除くことで、実習生との信頼関係が深まり、失踪の予防につながります。
実習内容を明確にする
技能実習計画と実際の業務内容に乖離があると、実習生は失望し、失踪のリスクが高まります。
事前の説明では、母国語の資料を活用して丁寧に説明し、本人が十分に理解できているか確認しましょう。
運用時におさえるべき具体的なポイントは以下の通りです。
運用のポイント
- 達成目標や評価基準を明確にする
- 定期的な面談で習熟度や悩みを把握する
- 今後の仕事の目標を共有する
実習生が納得して実習に取り組めるように支援をおこなうことで、信頼関係の構築につながります。
送り出し国との連携を強化する
技能実習生の失踪を防ぐには、送り出し機関と密に情報を共有し、採用時のミスマッチをなくす取り組みが効果的です。
実習生の適性や家庭環境を把握するだけでなく、自社の実情や求める人物像を正確に伝える姿勢が求められます。
具体的な連携のポイントは以下の通りです。
連携のポイント
- オンライン面接や研修を通じた日本での生活情報の提供
- 期待と現実のギャップを埋めるための丁寧な説明
- 送り出し機関や監理団体などとの連絡体制の整備
生活上の不安を減らすため、宗教や生活習慣の違いを理解する支援も有効です。
実習生が安心して働ける環境を整えることで、長期的な定着の可能性が高まります。
定期的なコミュニケーションと面談を実施する
実習生の失踪を防ぐには、日頃から声をかけ合い、悩みや不安をすぐに相談できる関係を築く必要があります。
言葉の壁がある場合は、翻訳ツールやイラストを活用して母国語での対話を促すとよいでしょう。
また、定期的な面談をおこない、心身の状態や変化を記録として残す運用が求められます。
具体的な取り組みは以下の通りです。
取り組みの例
- 多言語対応ツールやAI通訳の導入
- 実習生同士や日本人社員との交流会
- 定期的な面談による状況把握
こうした機会を通じて孤独感を解消すれば、職場への定着率が高まります。
キャリア支援とスキルアップ機会を提供する
実習生の失踪を防ぐには、日本や母国での「今後の仕事」について明確な見通しを持てるように関わることが求められます。
実習中から本人の希望を聞き取り、目標達成に向けた後押しをおこなうとよいでしょう。
具体的な支援策は以下の通りです。
支援策の例
- 段階的な技能検定の合格に向けた指導
- 特定技能への移行に必要な試験対策
- 帰国後の就職や起業に関する相談
資格取得や技能習得の機会を十分に用意することで、実習生が高い意欲を持って働ける環境が整います。
こうした取り組みにより、長期的な定着の可能性が高まります。
技能実習生の失踪発生時の対応手順

技能実習生が失踪した場合の対応手順は以下の流れです。
- 失踪の事実確認と情報収集
- 各種機関への報告
- 技能実習生の帰国手配と退職手続き
- 再発防止策の検討と実施
実際に失踪してしまった際に焦らず対処できるように理解しておきましょう。
失踪の事実確認と情報収集
まずは失踪の事実を正確に把握し、関連情報を集めます。
具体的な確認事項は以下の通りです。
確認事項
- 最終出社日
- 同僚からの聞き取り内容
- 居住地の確認結果
これらの情報を時系列で整理し、文書として記録に残します。
あわせて防犯カメラの映像や目撃情報を保存し、関係機関への報告に必要な書類を準備しましょう。
事実確認と並行して、失踪に至った背景や原因についても可能な限り調査をおこないます。
言動の変化や人間関係のトラブルなどの兆候を振り返れば、再発防止策を検討する上で役立ちます。
各種機関への報告
失踪が発覚した際は、直ちに関係各所への連絡をおこないます。
団体監理型で受け入れている場合、まずは監理団体へ報告しましょう。
その後、外国人技能実習機構(OTIT)へ「技能実習実施困難時届出書」の手続きを進めます。
届出に関する提出区分や提出者は以下の通りです。
| 区分 | 提出者 |
| 企業単独型 | 実習実施者(企業) |
| 団体監理型 | 報告を受けた監理団体 |
必要書類はOTITのWebページからダウンロード可能です。
合わせて、所轄の警察署へ行方不明届を提出します。
事件や事故に巻き込まれている懸念があるため、早急な対応が求められます。
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技能実習生の帰国手配と退職手続き
失踪した技能実習生が無事に発見された場合は、本人の意思を確認し、実習を続けるための復職支援や帰国支援をおこないます。
一方で、所在がわからないまま経過し、在留期間を過ぎてしまうと不法滞在(オーバーステイ)となってしまいます。
発見に至らず退職となる場合に必要な事務手続きは以下の通りです。
必要な事務手続き
- 就業規則に基づいた退職処理
- 未払いとなっている賃金の精算
- 社会保険や雇用保険の資格喪失手続き
企業側のリスクを減らすため、法令に基づいた適切な処理を進めましょう。
再発防止策の検討と実施
失踪への対応と並行して、原因を分析し再発防止に向けた取り組みを進めます。
技能実習計画通りの実施や適正な賃金支払い、生活環境の課題などを総合的に検証が必要です。
課題に対して具体的な改善策を立案し、実行に移しましょう。
再発防止策の例
- 待遇面の改善
- 定期面談や通訳を活用したコミュニケーションの充実
- 匿名で相談できる窓口の設置など相談体制の強化
- 母国語による情報提供や日本語教育の強化
- 今後の仕事の見通しの明確化
進捗状況は定期的に振り返り、必要に応じて軌道修正をおこないます。
他の実習生へ心理的な影響が及ばないよう、適切なフォローアップも欠かせません。
技能実習生の失踪理由を理解して予防しよう

技能実習生の失踪者数は令和6年では減少傾向ですが、約6,500人の失踪者が出ています。
失踪する主な理由は過酷な労働環境や生活面でのストレスなどが考えられます。
技能実習生の失踪者を出してしまうと、企業の優良認定や技能実習生、特定技能外国人の受け入れに影響がでるため、労働環境の整備や生活面の支援などの対策は必須です。
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