外国人採用ガイド

解体工事業で特定技能外国人を受け入れるための在留資格の仕組みと許可要件について解説

建設業界では人手不足が深刻化しており、特に解体工事業では熟練労働者の高齢化が進む一方で、若手の人材確保が難しい状況が続いています。

このような中で注目されているのが、特定技能制度を活用した外国人労働者の受け入れです。

しかし、「解体工事業で特定技能外国人を雇えるのか」「どんな手続きや許可が必要なのか」といった疑問を持つ経営者も多いのではないでしょうか。

この記事では、解体工事業が特定技能制度の「建設分野」に含まれる仕組みを解説し、受け入れに必要な在留資格の種類や試験内容、企業側に求められる許可要件について詳しく紹介します。

特定技能1号・2号それぞれの条件や、建設キャリアアップシステム・協議会加入などの実務上の注意点もあわせて整理します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

解体工事業とは

解体工事業は家屋やビルなどの構造物を安全かつ計画的に取り外し・撤去する専門業で、木造から鉄骨・鉄筋コンクリートまで幅広い対象物の解体を行います。

現場では解体工や重機オペレーター、足場を担う鳶、工程を統括する現場監督、見積や顧客への説明を行う営業担当などが連携し、複雑な工程管理を通じて作業の品質と効率を確保します。

また、建設リサイクル法に基づく分別解体や廃棄物処理法の遵守、騒音・振動対策など、環境保全と地域社会への配慮を徹底することが求められます。

特定技能「建設分野」で受入れが可能

特定技能は、人手不足が深刻化する日本の産業分野で即戦力として外国人労働者を受け入れる制度です。一定の技能水準・日本語能力水準を持つ外国人を対象に受け入れが進められています。

建設分野は特定技能の受け入れ対象に含まれており、解体工事業の現場においても、この制度を活用した外国人労働者の雇用が可能です。

ただし、受け入れにあたっては在留資格の申請や安全教育・言語体制など運用面の整備が不可欠で、事前に多くの情報収集や準備が必要となります。

特定技能「建設」の3つの業務区分

特定技能の建設分野は、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つの業務区分に分かれています。これらはいずれも社会インフラの維持や発展に欠かせない分野であり、それぞれの区分に応じて従事できる作業内容が定められています。

このうち、解体工事業は主として建築物の除却や構造物の撤去を行う業務であるため、「建築」区分に該当するケースが一般的です。現場では重機を用いた外壁や躯体の解体、廃材の分別処理など、安全管理を徹底したうえで作業が進められます。

なお、区分ごとに必要となる技能水準や評価試験の内容が異なるため、受入れ企業は自社の業務がどの区分にあたるかを正確に把握しておくことが重要です。これにより、誤った職種での雇用を防ぎ、適正な人材配置と法令遵守を両立できます。

在留資格「特定技能」の概要

特定技能による外国人材の受け入れは、2019年の制度開始以来、建設、介護、製造業をはじめとする幅広い分野で活用が進められています。

特定技能には1号と2号があり、1号は相当程度の技能水準、2号は熟練した技能水準を有する外国人材を対象としています。

2025年11月現在、特定技能1号は16分野、特定技能2号は11分野が対象となっています。

今後も人手不足の状況を踏まえ、対象分野の拡大や制度運用の改善が進められる見通しです。

特定技能の受入れ対象分野一覧(2025年11月時点)

特定技能1号 特定技能2号
・介護分野
・ビルクリーニング分野
・工業製品製造業分野
・建設分野
・造船・舶用工業分野
・自動車整備分野
・航空分野
・宿泊分野
・自動車運送業分野
・鉄道分野
・農業分野
・漁業分野
・飲食料品製造業分野
・外食業分野
・林業分野
・木材産業分野
・ビルクリーニング分野
・工業製品製造業分野
・建設分野
・造船・舶用工業分野
・自動車整備分野
・航空分野
・宿泊分野
・農業分野
・漁業分野
・飲食料品製造業分野
・外食業分野

特定技能1号

特定技能1号の在留資格には、在留期間の上限や企業側に支援義務が課せられることなど、特有の条件が多く存在しています。

特定技能1号の在留の条件は以下の通りです。

特定技能1号の在留条件

技能試験 特定技能1号評価試験
日本語試験 JLPT N4以上またはJFT-Basic
実務経験 不要
一度に付与される在留期間 3年を超えない範囲で法務大臣が指定する期間
在留期間の上限 原則通算5年が上限
家族の帯同 原則不可
支援義務 受入れ企業による支援義務あり

建設分野特定技能1号評価試験

建設分野で特定技能の在留許可を得るためには、外国人が建設分野特定技能1号評価試験に合格していることが条件となっています。

建設分野の特定技能1号評価試験は、国土交通省の監督のもと、建設技能人材機構(JAC)が主体となって実施しています。

試験は学科30問(60分)と実技20問(40分)で構成され、いずれもCBT方式により実施され、合格基準は総得点の65%以上です。

試験範囲は「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つに分類されており、就労予定の業務区分に合わせた試験に合格する必要があります。

JLPT(N4以上)またはJFT-Basic

特定技能で就労する外国人は日本語能力の証明として、JLPT(日本語能力試験)N4以上またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)のいずれかの合格が求められます。

JLPTのN4は全5段階のうち下から2番目の水準で、日常生活に関する基本的な会話や短い文章の理解、基礎語彙・文法の把握ができる程度とされています。

JFT-Basicは特定技能制度での受入れを念頭に設計された試験で、生活場面で日本語を使って意思疎通できるかを評価することを目的とします。

試験はJLPTが年2回の会場試験、JFT-Basicは年6回のCBT試験で実施されます。

技能実習2号を良好に修了した場合は試験免除

技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能1号に移行するにあたって日本語試験の受験が免除されます。

さらに、修了した技能実習の職種・作業が技能試験免除対象職種・作業に該当している場合には、技能評価試験と日本語試験の両方が免除されます。

建設分野における特定技能の各業務区分への試験免除対象は以下の通りです。

技能実習から特定技能1号移行時の試験免除対象一覧

特定技能1号の業務区分 試験免除等となる技能実習2号
技能実習の職種 技能実習の作業
土木区分 さく井 パーカッション式さく
井工事作業
ロータリー式さく井
工事作業
型枠施工 型枠工事作業
鉄筋施工 鉄筋組立て作業
とび とび作業
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事作業
ウェルポイント施工 ウェルポイント工事作業
建設機械施工 押土・整地作業
積込み作業
掘削作業
締固め作業
鉄工 構造物鉄工作業
塗装 建築塗装作業
鋼橋塗装作業
溶接 手溶接
半自動溶接
建築区分 建築板金 内外装板金作業
ダクト板金作業
建具製作 木製建具手加工作業
建築大工 大工工事作業
型枠施工 型枠工事作業
鉄筋施工 鉄筋組立て作業
とび とび作業
石材施工 石材加工作業
石張り作業
タイル張り タイル張り作業
かわらぶき かわらぶき作業
左官 左官作業
内装仕上げ施工 プラスチック系床仕上げ工事作業
カーペット系床仕上げ工事作業
鋼製下地工事作業
ボード仕上げ工事作業
カーテン工事作業
表装 壁装作業
サッシ施工 ビル用サッシ施工作業
防水施工 シーリング防水工事作業
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事作業
築炉 築炉作業
鉄工 構造物鉄工作業
塗装 建築塗装作業
鋼橋塗装作業
溶接 手溶接
半自動溶接
ライフライン・設備区分 建築板金 内外装板金作業
ダクト板金作業
冷凍空気調和機器施工 冷凍空気調和機器施工作業
配管 建築配管作業
プラント配管作業
熱絶縁施工 保温保冷工事作業
溶接 手溶接
半自動溶接

特定技能2号

特定技能2号は、特定技能1号よりも高度な技能や実務経験を有する外国人を対象とした在留資格です。

建設分野の特定技能2号の在留の条件は以下の通りです。

特定技能2号の在留条件

技能試験 建設分野特定技能2号評価試験
日本語試験 なし
実務経験 必要
一度に付与される在留期間 3年、2年、1年、6カ月
在留期間の上限 上限なし(更新は必要)
家族の帯同 配偶者と子の帯同可
支援義務 なし

建設分野特定技能2号評価試験

建設分野特定技能2号評価試験は、主に特定技能1号外国人が、上位資格である特定技能2号に移行するために受験する試験です。

この試験は、国土交通省の監督のもと、建設技能人材機構(JAC)が実施しており、職長や班長などのリーダー的な立場で現場を管理できるかを判断する内容となっています。

試験に合格すると、特定技能2号へ移行するために必要な「熟練した技能」を持つ者として認められます。

班長としての実務経験

特定技能2号の在留資格を取得するためには、試験の合格に加えて、建設現場で班長として業務に従事した実務経験を有していることが条件となります。

この実務経験とは、複数の技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する職長・班長としての経験を指します。

業務区分に対応する建設キャリアアップシステムの能力評価基準がある場合はレベル3相当の就業日数が必要で、基準がない場合は3年以上(勤務日数645日以上)の経験が求められます。

受入れ企業側に課される許可要件(1号・2号共通)

特定技能外国人を受け入れるためには、企業側にも一定の基準が設けられています。

ここからは、建設業分野で特定技能外国人を受け入れるための企業側の許可要件について解説します。

建設業法第3条第1項の許可を受けていること

建設業法第3条第1項では、建設工事を請け負って営業するには、公共・民間を問わず国または都道府県から建設業の許可を受けることが義務づけられています。

ただし、請負金額が一定の範囲内に収まる軽微な工事のみを行う場合は、この限りではありません。

特定技能外国人を受け入れる場合は、軽微な工事であるか否かを問わず必ず建設業許可を取得していることが求められます。

建設キャリアアップシステムに登録していること

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、建設業に従事する技能者の就業履歴や資格情報を業界横断的に蓄積し、技能の適正な評価や処遇改善を図るための仕組みです。

受入れ企業は、特定技能外国人を雇用する前提として、このシステムに事業者登録を行い、技能者の就業実績を正確に記録できる体制を整える必要があります。

登録を通じて、現場での入退場管理や施工能力の「見える化」が可能となり、工事品質や安全管理の向上にもつながります。

建設分野の特定技能協議会に加入していること

建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、在留資格申請前に「建設特定技能協議会(JAC)」へ加入することが義務づけられています。

加入方法には、JACの正会員団体を通じて所属するか、またはJACの賛助会員として直接入会する2通りがあり、会費の額や支払い方法が異なります。

2025年11月現在、直接JACの賛助会員となる場合の年会費は24万円です。

特定技能1号を受け入れる場合の追加要件

特定技能1号の受入れでは、1号・2号共通の許可要件に加えて、雇用体制や支援体制に関する追加の基準が設けられています。

ここからは、特定技能1号を受け入れる際に求められる主な追加要件について詳しく解説します。

日本人と同等以上の報酬を支払うこと

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人に対して、同等の技能を持つ日本人労働者と比較して同等以上の水準の報酬を支払うことが義務づけられています。

この基準は、外国人労働者の処遇を適正に保ち、不当な低賃金労働を防止する目的で設けられています。

雇用契約の重要事項を適切に説明すること

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人と雇用契約を締結する前に、契約内容の重要事項を十分に理解できる言語で説明しなければなりません。

適切な言語での説明を行うことにより、誤解やトラブルの防止につながり、公正な労働環境の確保が図られます。

特定技能外国人が常勤職員数を超えないこと

特定技能1号の在留資格で外国人を受け入れる場合、所属機関における常勤職員の数を超えて受け入れることは認められていません。

ここでいう常勤職員には、外国人技能実習生および特定技能1号の外国人は含まれず、日本人またはその他の在留資格で就労する常勤従業員の人数が基準となります。

この要件は、外国人労働者の急増による雇用環境の不均衡を防ぎ、適正な受入体制を維持することを目的としています。

支援義務を適切に履行すること

特定技能1号外国人を雇用する企業は、受け入れた外国人が日本で安定して就労・生活できるよう、法令で定められた支援を適切に実施する義務があります。

法令上定められた義務的支援は以下の10項目です。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国する際の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

なお、支援義務の履行は受入れ企業が自ら実施する方法以外に、出入国在留管理庁の名簿に登録された登録支援機関に委託をすることも可能です。

建設特定技能受入計画の認定を受けていること

建設分野で1号特定技能外国人を受け入れる場合、事前に「建設特定技能受入計画」を作成し、その内容について国土交通大臣の認定を受ける必要があります。

この計画の内容としては、適正な雇用条件や就労環境、指導体制などが確保されていることが求められます。

あわせて、適正就労監理機関から計画の実施状況について確認を受けることも義務づけられています。

また、国土交通省が実施する調査や指導には、誠実に協力することが条件とされています。

まとめ

解体工事業で特定技能外国人を受け入れるためには、在留資格の基準に加えて、企業側にも複数の要件が課されています。

建設キャリアアップシステムへの登録や特定技能協議会への加入、報酬や雇用契約の適正化、支援体制の整備など、法令に基づいた準備を行うことが求められます。

これらを満たすことで、安定した受け入れと現場の生産性向上につながります。

特定技能の受け入れを検討している経営者は、まず自社が制度上の条件を満たしているかを確認することが重要です。

制度理解が不十分なまま申請を行うと、審査で時間を要したり、不許可となるおそれもあります。初めての受け入れで不安がある場合は、入管手続きや外国人労務管理に詳しい専門家へ早めに相談し、確実な準備を進めましょう。

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