建設業の中でも、電気工事業は高い専門性と安全管理が求められる分野です。慢性的な人手不足を背景に、特定技能制度を活用して外国人を採用する企業が増えています。
しかし、「電気工事の仕事は特定技能で従事できるのか」「受け入れに必要な資格や手続きは何か」といった疑問を持つ経営者も多いのではないでしょうか。
この記事では、電気工事業で特定技能外国人を採用する際に必要となる手続きや許可要件を中心に、関連する在留資格の種類や電気工事士資格の有無による業務範囲の違い、雇用後に必要な届出までをわかりやすく解説します。
適法かつ安全に外国人材を受け入れるための基礎知識として、ぜひ参考にしてください。
INDEX
この記事の監修きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)
電気工事の仕事ができる主な在留資格
電気工事の仕事に従事できる主な在留資格としては、「特定技能(建設分野)」「技術・人文知識・国際業務」「身分系在留資格」の3種類が挙げられます。
これらの在留資格はそれぞれ在留の条件や従事できる業務範囲に違いがあるため、採用を検討する際は、制度の仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
特定技能「建設分野」
特定技能の建設分野には、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つの業務区分があります。
電気工事はこのうち「ライフライン・設備」に含まれ、建物や施設内での配線、電気設備の設置・変更・修理などを行います。
また、特定技能には1号と2号があり、1号では指導者の指示を受けながら現場で作業を行い、実務経験を積みます。
これに対して2号は、より高度な技能を持ち、複数の作業員を監督・指導しながら現場の品質と安全を管理する役割を担います。
技術・人文知識・国際業務
技術・人文知識・国際業務の在留資格では、電気工事業において現場の単純作業に従事することはできません。
この在留資格の活動範囲は、専門的な知識や技術を活かした業務に限定されており、現場作業員ではなく、施工管理や設計、品質・工程管理などの管理業務を担当します。
この在留資格を取得するためには、大学などで学んだ専攻と従事する業務内容に一定の関連性があることが求められます。学歴との関連性が確認できない場合には、同種の実務経験を10年以上有していることが条件となります。
そのため、電気設備の設計・管理を担う外国人技術者を採用する際には、専門性と業務の適合性を事前に確認必要があります。
身分系在留資格
身分系在留資格には、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類があります。
これらの資格を持つ外国人は、職種や業務内容に制限がないため、電気工事を含むあらゆる分野で日本人と同様に働くことが可能です。
この在留資格は就労活動の自由度が高く、長期的な雇用やキャリア形成を視野に入れた採用にも適しています。
ただし、採用の基本は日本人と同じく、国内で転職を希望する人材を受け入れる形で行われるため、企業側の計画的な採用や期間を限定した人員確保には向いていません。
各在留資格の特徴
「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」「身分系在留資格」はそれぞれ就労制限の有無やその他の在留の条件が異なります。
それぞれの違いは以下の比較表をご確認ください。
|
3つの在留資格の特徴比較表 |
|||
| 分類 | 特定技能 | 技術・人文知識・国際業務 | 身分系在留資格 |
| 在留年数 | 1号:通算5年 2号:更新回数の上限なし |
更新回数の上限なし | 永住者:無期限 その他:更新回数の上限なし |
| 就労範囲 | 分野ごとに定められた業務区分内のみ | 学術的素養を要する業務または外国の思考や感受性を要する業務 | 入管法上の制限なし |
| 支援義務 | 1号:企業側に支援義務あり 2号:なし |
なし | なし |
| 家族帯同 | 1号:不可 2号:配偶者と子(家族滞在) |
配偶者と子(家族滞在) | 配偶者と子(身分系在留資格) |
| 主な許可基準 | 1号:技能試験と日本語試験 2号:技能試験と実務経験 |
学歴と業務の関連性または10年以上の実務経験など | 日本人または永住者との婚姻関係、難民該当性、日本人との血縁関係など |
| 永住許可の年数要件(引き続き10年在留かつ就労5年) | 1号:10年にはカウントされるが就労の5年にカウントされない 2号:10年と5年の両方にカウントされる |
10年と5年の両方にカウントされる | 配偶者:婚姻3年かつ在留1年に緩和 定住者:5年に緩和 |
電気工事士の資格なしでできるのは「軽微な工事」
電気工事士とは、電気設備の設置や配線、保守点検などを行うための国家資格を持つ技術者のことです。
電気工事士法により、資格を持たない者が行える作業範囲は厳格に制限されており、安全を確保するために専門知識と技能が求められます。
一方で、資格を持たない人でも行える「軽微な工事」と呼ばれる作業が定められています。これは電気工事士法施行令第1条で規定されており、感電や火災の危険が少ない作業が対象です。
具体的には、照明の電球交換やコンセントプラグの差し替え、600V以下のスイッチやソケットへのコード接続、豆電球やインターホンなど低電圧機器の配線などが該当します。
これらは安全上のリスクが小さいため、資格がなくても実施可能とされています。
在留資格の種類を問わず、電気工事士の資格がない場合は「軽微な工事」以外の電気工事を行うことはできません。
電気工事業で特定技能1号外国人を採用するための要件
特定技能「建設分野」で電気工事の仕事に従事するには、「ライフライン・設備」の業務区分で許可を受ける必要があります。
ここからは、電気工事業者が特定技能1号の外国人を採用するために満たすべき主な要件について解説します。
外国人が特定技能1号評価試験に合格する
特定技能1号で電気工事に従事するには建設分野特定技能1号評価試験の合格が必要です。
試験は業務区分ごとに分かれており、電気工事で働くためには、「Infrastructure & equipment/ライフライン・設備」の試験に合格する必要があります。
試験は国交省の実施要領に基づき学科30問60分と実技20問40分のCBT方式で実施され、出題は○×や2~4択式でいずれも合計点65%以上が合格基準です。
外国人が日本語試験に合格する
特定技能1号で建設分野(ライフライン・設備)に従事するには、日本語能力試験(JLPT)のN4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のいずれかに合格していることが要件です。
日本語能力試験N4は、「基本的な日本語を理解できる」レベルを測る試験で、年に2回、会場形式で実施されています。
一方、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、「日常生活に支障がない程度の日本語力」を判定するもので、年6回の実施期間内で希望日を選び、CBT方式(パソコン受験)で受験できます。
どちらの試験に合格しても、特定技能1号の在留資格取得に必要な日本語能力を証明することが可能です。
受け入れ企業は建設業許可の取得が必要
電気工事業においては、工事の規模や請負金額にかかわらず「電気工事業」の登録を行う必要がありますが、特定技能外国人を雇用するためにはそれだけでは足りません。
特定技能外国人を雇用する事業者は、建設業法に基づく建設業許可を取得していることが必須の条件となります。
無許可のまま特定技能外国人を採用することは制度上認められておらず、許可を受けていない場合はまず建設業許可の取得を検討する必要があります。
受け入れ企業がJACに加入する
特定技能の建設分野で外国人を受け入れるためには、受け入れ企業が建設技能人材機構(JAC)の会員であることが条件です。
JACは特定技能外国人受入事業実施法人として、制度運用や受け入れ支援を担う中核機関に位置づけられています。
加入の方法は二通りあり、建設業団体などJACの正会員団体に加入するか、JACの賛助会員として直接加入する形です。
正会員団体に所属する場合は、所属団体ごとに定められた会費や受入負担金を負担し、団体の会員証を認定申請時に提出する必要があります。
賛助会員としてJACに加入する場合は年会費24万円で、入会金は不要です。申請すると入会審査を経て承認後に会員証が発行されます。
建設キャリアアップシステムへの登録
建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、「建設キャリアアップシステム(CCUS)」に登録する必要があります。
CCUSは、技能者一人ひとりの就業履歴や資格情報を電子的に蓄積し、技能の公正な評価や処遇改善、工事品質の向上を目的とする国の制度です。
事業者が登録すると、技能者の就業状況や現場入退場をICカードで管理できるようになり、労務管理の効率化が進みます。
技能者側も、自身の経験や資格を証明できるため、異なる現場でも正当な評価と処遇を受けやすくなります。
登録には、資本金規模に応じた事業者登録料が必要で、有効期間は5年間です。
制度を通じて、企業と技能者の双方にとって透明性と信頼性の高い雇用環境を構築することが期待されています。
建設特定技能受入計画の認定申請
建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は「建設特定技能受入計画」を作成し、国土交通大臣から認定を受ける必要があります。
認定基準には建設業法第3条の許可、受入企業と1号特定技能外国人のCCUS登録、JAC加入と行動規範遵守、同等以上の報酬と月給制・重要事項の母語説明・指定講習受講・国又は適正就労監理機関の巡回指導受入れが含まれます。
申請は外国人就労管理システムで行い、審査は地方整備局等が担当し、認定までおおむね2~3か月を要するとされています。
また、受入計画の記載事項に変更が生じた場合は国交大臣への変更申請又は届出が必要で、受入人数の増減などは認定書記載事項の変更として取り扱われます。
1号特定技能外国人支援計画の作成
受け入れ企業は1号特定技能外国人の就労・生活を安定させるため、支援の内容・体制・方法を明記した「1号特定技能外国人支援計画」を作成し、計画に基づく支援を実施する義務があります。
受け入れ企業が行わなければならない義務的支援10項目は以下の通りです。
- 事前ガイダンス
- 出入国する際の送迎
- 住居確保・生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
受け入れ企業は支援計画書に記した支援内容を確実に実施し、外国人が理解できる言語で情報提供を行わなければなりません。
在留資格申請を実施する
ここまで解説した各種の準備が完了したら、受け入れ企業または外国人本人は、入管庁に在留資格申請を行います。
海外から受け入れる場合は在留資格認定証明書交付申請を行い、証明書交付後に外国人本人が査証取得・上陸手続を行い、日本に入国し就労を開始します。
留学生など国内在留外国人の新卒採用や転職採用で在留資格を切り替えるときは在留資格変更許可申請を行い、審査完了後に就労を開始します。
雇用開始後にやるべきこと
特定技能外国人を雇用した後も、企業には継続的な手続きや支援の実施が求められます。
ここからは建設分野で特定技能外国人を雇用する企業が行わなければならない管理業務について解説します。
1号特定技能外国人受入報告書の提出
受け入れ企業は、1号特定技能外国人を雇用した日から原則1か月以内に「1号特定技能外国人受入報告書」を提出しなければなりません。
報告はオンラインで行い、提出先は国土交通大臣宛てとなります。
提出は「外国人就労管理システム」を通じて実施され、受け入れた外国人の氏名や在留資格、雇用開始日などの基本情報を報告します。
期限を過ぎると受入計画の認定要件不適合と判断されるおそれがあるため、雇用開始直後から準備を進め、期日内の提出を徹底することが重要です。
受入れ後講習の受講
受け入れ企業は、1号特定技能外国人の雇用開始後おおむね6か月以内に、国土交通大臣が指定する受入れ後講習を受講させる必要があります。
この講習は、適正就労監理機関である国際建設技能振興機構(FITS)が実施しており、企業は指定された日時や会場の中から受講可能なものを選択して参加させます。
講習を受けさせない場合、建設特定技能受入計画の認定要件を満たさないものとして扱われるため、必ず期限内に受講を完了させることが重要です。
在留期間更新許可申請
特定技能外国人の在留期限の3カ月前から在留期間満了日までの間に、在留期間更新許可申請を行う必要があります。
この手続きは原則として本人が行いますが、雇用条件書や賃金の支払いに関する書類など、企業側が作成または作成を補助すべき書類も多数あります。
万が一更新を忘れたまま在留期限を過ぎてしまった場合、外国人本人は不法就労となり企業側は不法就労助長罪に問われる可能性があるため注意が必要です。
そのため、企業が更新許可申請を主体的にサポートし、必要書類の準備や申請時期の管理を適切に行うことが推奨されます。
定期・随時届出
特定技能外国人を雇用している企業は、定期届出と随時届出を通じて、雇用状況を報告する義務があります。
定期届出は毎年1回、4月から翌年3月までの就労実績をまとめ、5月末までに提出します。
また、外国人の退職や転職、勤務条件の変更などが生じた場合には、速やかに随時届出を行う必要があります。
これらの届出は、入管庁が企業の雇用管理の状況や外国人の在留状況を把握するために重要な手続きであり、受け入れ資格の停止や行政処分の対象となる可能性があります。
まとめ
特定技能「建設分野」で外国人を受け入れるには、建設業許可の取得や受入計画の認定申請、在留資格申請など、多くの手続きが求められます。
雇用開始後も講習受講や定期届出など、継続的な管理が必要であり、制度全体を通して企業がやるべきことが多数存在します。
特定技能制度を活用して人材を確保するには、制度理解と正確な手続きが欠かせません。
これから受け入れを検討している企業は、早めに必要書類の準備を進め、専門家へ相談しながら確実な運用体制を整えることが重要です。
あなたの採用活動をサポート!
外国人採用の窓口は
外国人採用に特化したBtoBマッチングサービスです。
日本全国 10,000社 を超える
監理団体・登録支援機関・外国人紹介会社を一括で検索し
簡単に比較・相談・検討することができます。
「外国人の採用方法が分からない」
「技能実習生や特定技能外国人の依頼先が分からない」
「監理団体や会社がたくさんあって探すのが大変」
「手続きや申請が複雑で自社では行えない」
といったお悩みのある方は
今すぐ無料相談ダイヤルまでお電話ください!
外国人採用の専門家が丁寧に対応させていただきます(全国対応)。
・外国人採用のご相談
・監理団体のご紹介
・登録支援機関のご紹介
・外国人紹介会社のご紹介
・行政書士事務所のご紹介
ご利用料金は完全無料です。
サイトのご利用から監理団体・登録支援機関等のご紹介まで
一切料金はかかりません。
安心してご利用くださいませ。
