食品工場や惣菜工場、セントラルキッチンなどでも少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しており、特定技能制度を活用した外国人材の採用を検討する企業が増加しています。
一方で、「どこまでの業務を任せられるのか」「スーパーのバックヤードでも雇えるのか」といった疑問や不安を抱える経営者の方も少なくありません。
本記事では、特定技能「飲食料品製造業」の制度概要をはじめ、従事できる業務内容や就労可能な場所、在留許可に必要な要件を整理して解説します。
さらに、企業側に求められる準備事項や注意点も紹介し、採用時の判断に役立つ情報をわかりやすくお伝えします。
この記事の監修きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)
特定技能「飲食料品製造業」とは
「特定技能」は、人手不足が深刻化する日本の産業分野において、即戦力となる外国人材の就労を認める在留資格制度です。
一定の技能水準や日本語能力を有する人材の就業を可能とする仕組みであり、対象分野の一つとして、食品の製造や加工に携わる「飲食料品製造業」が含まれています。
以下では、特定技能「飲食料品製造業」の具体的な業務範囲や制度のポイントを確認していきます。
特定技能「飲食料品製造業」の業務内容
この分野で従事できる主な業務は、飲食料品製造業における飲食料品(酒類を除く)の製造や加工、ならびに現場の安全衛生を維持する業務とされています。
具体的には、原材料の下処理から加熱・殺菌、成形や乾燥までの一連の工程に関わる作業が該当し、単に選別したり包装したりする業務だけを行うことは対象外とされています。
加えて、原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理作業等に関する業務も関連業務として従事可能です。
ただし、関連業務のみに専属で従事することはできないため注意が必要です。
また、製造と加工、販売が不可分一体となっている事業所では、日本人が通常担当する販売業務についても、関連業務として付随的に関わることが認められています。
スーパーマーケットで就労する場合の注意事項
スーパーの店舗内で、青果や鮮魚、精肉の加工部門やベーカリー、総菜製造部門などを設けている場合には、制度上は飲食料品の製造業務として扱われます。
ただし、スーパーマーケットにおいては、製造・加工と販売業務は区分されており、売場での接客やレジ対応などの販売業務に従事することは、関連業務としても認められていません。
そのため、担当できる作業は調理・加工に直接関係する工程に限られ、業務内容の切り分けを明確にしておく必要があります。
なお、原材料の受け入れや製品の搬入、清掃、施設の管理といった作業については、関連業務として付随的に従事することが可能です。
特定技能「飲食料品製造業」で就労可能な業種
特定技能「飲食料品製造業」で対象となる業種は、日本標準産業分類に基づき、主として飲食料品の製造に関わる事業を行っているかどうかで判断されます。
具体的には、製造工程を持つ工場や事業所に加え、店舗内で製造を行う業態も含まれる一方、流通や単なる販売を主とする事業は原則として該当しません。
日本標準産業分類に基づき、受け入れ可能とされる具体的な業種は、次のとおりです。
- 中分類09 食料品製造業
- 小分類101 清涼飲料製造業
- 小分類103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
- 小分類104 製氷業
- 細分類5621 総合スーパーマーケット(食料品製造を行う場合に限る)
- 細分類5811 食料品スーパーマーケット(食料品製造を行う場合に限る)
- 細分類5861 菓子小売業(製造小売)
- 細分類5863 パン小売業(製造小売)
- 細分類5896 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業(製造を行う場合に限る)
なお、酒類や塩の製造、医薬品・香料の製造、飲食料品の卸売業、製造を伴わない各種小売業、ペットフードなどの飼料製造業は対象外とされています。
特定技能「飲食料品製造業」の在留資格の特徴
特定技能の在留資格には、技能水準の異なる「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類の分類があります。
このうち1号は、分野ごとに定められた一定水準の技能や知識を要する業務に従事するための資格です。
2号は、より高度で熟練した技能を必要とする業務を担う人材を対象としています。
特定技能1号と2号それぞれの在留期間や就労条件などの違いは以下の通りです。
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特定技能1号と2号の在留資格の特徴 |
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| 在留資格 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
| 在留期間の上限 | 原則通算5年が上限 | 上限なし(更新は必要) |
| 技能水準 | 相当程度の技能 | 熟練した技能 |
| 日本語能力水準 | JLPT N4以上またはJFT-Basic合格水準 | 法律上の要件なし |
| 実務経験 | 法律上の要件なし | 管理者としての実務経験が必要 |
| 家族の帯同 | 原則不可 | 配偶者と子の帯同可 |
| 支援義務 | 企業側に支援義務あり | 支援義務なし |
特定技能「飲食料品製造業」で外国人に求められる許可要件
外国人が特定技能の在留資格を取得して日本で働くためには、一定の条件を満たしていることが求められます。
ここからは、特定技能1号と2号それぞれに求められる許可の要件について解説します。
特定技能1号の要件
特定技能1号では、分野ごとに定められた一定水準以上の知識や技能を備えていることが求められます。
その水準を満たしているか否かの判定は、技能試験と日本語試験の2つの試験で確認されます。
また、特定技能1号では、実務経験は要件とされていません。
飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験
この試験は、飲食料品の製造や加工に関する基礎的な知識と、HACCPに沿った衛生管理へ対応できる技能水準を確認することを目的として実施されています。
試験内容は、食品の安全管理や品質管理、一般衛生管理、製造工程管理、労働安全衛生などについて理解しているかを問うものです。
学科試験に加え、図やイラストを用いた実技形式の設問により、現場で適切な行動判断や作業計画ができるかが確認されます。
一般社団法人外国人食品産業技能評価機構|特定技能1号・2号技能測定試験
日本語能力に関する試験
特定技能で就労するためには、業務を円滑に遂行するための日本語能力が求められ、日常会話に加えて、作業指示や安全に関する表現を理解できる力が確認されます。
日本語能力を判定する試験は2種類あり、日本語能力検定(JLPT)のN4以上に合格するか、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格することで必要な日本語能力があると認められます。
試験の実施頻度は、JLPTが7月と12月の年2回の頻度で会場試験により開催されます。
JFT-Basicは年6回の試験期間が設定されており、受験者はその期間内の任意の日程を選択し、CBT試験会場で受験します。
特定技能2号の要件
特定技能2号は、より高度な水準で現場を支える熟練労働者や管理職人材を想定した在留資格であり、単に作業をこなすだけでなく、工程全体の理解や判断力も重要となります。
ここからは、特定技能2号の具体的な条件を整理します。
飲食料品製造業特定技能2号技能測定試験
この試験は、飲食料品製造の現場で中核を担う人材として、自らの判断で工程を整え、品質や安全を管理できるかを確認するために実施されます。
試験内容は製造・加工や衛生管理にとどまらず、品質・納期・コスト・人員配置などの管理面にまで及び、現場全体を見渡す視点が問われます。
試験形式は、日本語による筆記形式で学科試験と実技的要素を取り入れた試験が行われ、70分50問 200点満点の三者択一問題で、65%以上の正答率を満たすことが合格の基準とされています。
農林水産省|飲食料品製造業分野特定技能2号技能測定試験について
2年以上の実務経験を要すること
特定技能2号の審査においては、現場を統括する立場で業務を行えるかを確認するために、複数の作業員をまとめながら工程を管理した2年以上の実務経験が求められます。
この場合における実務経験とは、担当部門長、ライン長、班長などとして、複数の作業員を指導しながら作業に従事し、工程を管理する者として行う実務であり、単なる作業従事者としての経験は含まれません。
「複数の従業員を指導しながら作業に従事し」とは2名以上のアルバイトや技能実習生、特定技能1号外国人を指導した経験が必要です。なお指導される立場の者の国籍は問われません。
なお、実務経験については客観的に証明可能な経験が求められますので、特定技能1号から2号への移行を目指す場合、受入れ企業は辞令や職務命令書など管理者としての立場を明確にする記録を残すようにしましょう。
特定技能「飲食料品製造業」で企業側に求められる許可要件
特定技能制度の活用にあたっては、外国人本人の条件を満たすだけでは手続きを進めることはできず、受け入れ企業も、雇用環境や業務体制の整備に関して一定の基準をクリアすることが求められます。
ここからは企業側が満たすべき要件を解説します。
飲食料品製造の事業所で就労すること
飲食料品製造業分野で特定技能外国人を受け入れるためには、企業が飲食料品製造業を営む事業所であり、単一の経営主体によって一区画を占め、人および設備を備えて継続的に事業が行われていることが条件となります。
事業所一区画の判断にあたっては、一定の場所を一構内として整理したうえで、その構内で経済活動を行う経営主体が一者であれば一区画、複数であれば主体ごとに区分されます。
実際の区画を物理的に区切ることが難しい場合には、売上台帳や賃金台帳などの経営諸帳簿により、事業の実態を区別できる範囲が一区画として扱われます。道路などで分かれた複数の場所で事業を行っている場合は原則として別区画として判断されますが、帳簿上で明確に区分できないときは、記録に基づき一体として判断されることがあります。
ひとつの事業所内で複数の事業が営まれている場合
ひとつの事業所内で単一の分類に当たる経済活動のみが行われている場合は、その事業内容に基づいて業種が判断されます。
同一の事業所で複数の分類に該当する事業を行っているときは、原則として主要な経済活動に着目して事業内容が判断されます。
この主要な経済活動は、生産された製品の直近の売上高を基準として最も割合の大きい業務により特定されます。
ただし、賃加工と自社製品の製造を同時に行う場合など、売上高だけで実態を測りにくい場面では、産出額や販売額、従業員数といった指標を用いて総合的に判断されます。
食品産業特定技能協議会に加入すること
飲食料品製造業分野および外食業分野で特定技能外国人を受け入れる場合、受け入れ企業は、農林水産省が設置する食品産業特定技能協議会の構成員となることが求められています。
この協議会は、構成員間の連携を図りながら制度内容の周知や法令遵守の啓発を行うとともに、地域ごとの人手不足の実態を把握し、必要な対応を検討する場として運営されています。
協議会への加入手続きは、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請などの入管手続の前に完了させる必要があります。
なお、入会金や年会費は当面不要とされていますが、加入審査には約1~2カ月の期間を要するため、早めに申請することが重要です。
農林水産省|食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について
キャリアアッププランを設定し説明すること
特定技能外国人を雇用するにあたっては、受け入れ企業が将来の働き方の見通しを示したキャリアアッププランを事前に作成し、雇用契約を結ぶ前に本人へ説明することが求められています。
そして、その内容は書面で交付するか、電子ファイルなどの電磁的記録として提供する必要があり、口頭での説明のみでは要件を満たさない点に注意が必要です。
キャリアアッププランの内容の具体例としては、想定されるキャリアの道筋、各段階で担う業務の範囲や習熟までのおおよその期間、次の段階へ進むために必要な経験や資格等です。書面等の様式は任意のもので構いません。
特定技能1号外国人に対して支援計画を作成し実施すること
特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、その外国人の職業上または生活上の支援をするための支援計画を作成し、その計画に基づく支援を確実に実施することが制度上求められています。
入管法令上定められている支援計画の内容は以下の通りです。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保、生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
なお、特定技能2号の外国人材を雇用する場合は、支援計画の作成と実施のどちらも必要ありません。
支援義務の履行は登録支援機関に委託できる
特定技能1号の外国人に対する支援業務については、受け入れ企業が自ら実施する方法のほか、出入国在留管理庁の名簿に登録された登録支援機関へ委託することが認められています。
受け入れ企業は支援計画の実施の全部を委託することで支援義務を適正に履行したものとみなされます。
ただし、支援を外部に任せる場合であっても、支援計画の作成や届出等の管理責任は特定技能所属機関に残るため、すべてを委託先任せにはできない点に注意が必要です。
登録支援機関も協議会に加入する必要がある
支援計画の実施を登録支援機関へ委託する場合には、委託を受けた登録支援機関も在留諸申請の前に、食品産業特定技能協議会へ加入することが求められます。
そして、協議会の構成員となった後は、農林水産省および協議会に対して、制度運用に必要な協力を行う義務があります。
まとめ
本記事では、飲食料品製造業分野で特定技能外国人を受け入れる際に、企業側に求められる主な要件について整理しました。
事業所の区分の考え方や業種の判断基準に加え、協議会への加入義務、キャリアアッププランの作成、1号特定技能外国人材に対する支援体制の整備など、実務に直結するポイントを解説しました。
受け入れを検討しているものの、手続きが複雑に感じられる場合は、受け入れ体制を確実に整えるための事前の情報整理が重要です。
特に協議会加入や支援の準備には時間を要するため、早めに全体像を把握し、必要書類の確認や専門家への相談を進めていくことをおすすめします。
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