鉄道業界では人手不足が続き、車両の保守や運行を担う人材の確保が大きな課題となっています。
こうした中で注目されているのが、特定技能「鉄道」を活用した外国人材の受け入れです。
本記事では、鉄道分野における特定技能の業務内容や在留資格の特徴、必要とされる技能・日本語水準、企業側に求められる要件について、基本からわかりやすく整理します。
これから受け入れを検討する際に、事前に把握しておきたいポイントを押さえられる内容となっています。
INDEX
この記事の監修きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)
特定技能「鉄道」の業務内容
特定技能制度は人手不足が深刻化する日本の産業において、即戦力となる外国人労働者の受け入れをするための制度です。
鉄道分野においては、「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造」「運輸係員」の5つの業務区分で受け入れが認められています。
各業務区分で作業範囲や求められる役割が異なるため、それぞれの業務について詳しく解説します。
軌道整備
軌道整備は線路や関連設備を安全に保つための業務で、日常の点検から大規模な改良までを担います。
具体的には、軌道検測による状態確認、レール交換、まくらぎの取替え、バラストの補充や整正作業などが含まれます。
また、レール締結装置や転てつ機構などの保安設備を取り扱い、新設や修繕時の検査業務にも従事します。
電気設備整備
電気設備整備は列車の運行を支える電力と信号を維持管理する業務区分です。
対象となるのは電路設備や変電所等の施設、各種電気機器、信号保安設備、保安通信設備、踏切に関わる安全装置など多岐にわたります。
また、これらの設備について新設や改良、修繕に伴う作業だけでなく、点検や状態確認といった検査業務も含まれます。
車両整備
車両整備は鉄道車両の安全運行を支える業務で、走行に支障がないかを確認する検査や必要な調整を担います。
対象となるのは列車検査や定期検査、臨時対応の点検に加え、構内での入換作業や駅での派出対応など、運行現場に直結する業務です。
また、改造工事や部品の在庫・予備品の管理、工場内設備の取り扱い、定期および臨時の清掃など、周辺業務も含めた幅広い役割が求められます。
車両製造
車両製造は鉄道車両の製造工程全体を対象とし、素材加工や部品組立て、構体の組立てなどの製造作業が含まれ、塗装や溶接、ぎ装、台車枠の製造や台車組立てといった専門性の高い工程にも携わります。
また、電子機器や電気機器の組立て、完成後の試験・検査、部品の検収や配膳業務など製造ラインを支える周辺作業も重要な役割です。
運輸係員
運輸係員は列車の安全運行と円滑な輸送を担う現場業務を中心とし、ポイント操作や入換え合図などの作業も含まれます。駅設備の管理や取扱い、旅客案内、貨物の取扱業務など、駅業務全般に関わる役割も対象です。
また、運行管理や車掌業務、運転士業務といった列車運行の中枢に関わる仕事も含まれ、現場での判断力が求められます。
業務遂行上の注意点
鉄道分野の特定技能においては、すべての業務区分に共通して、鉄道営業法などの関係法令や各鉄道会社が定める安全管理規程、業務規程、社内ルールを守ったうえで作業を行うことが求められます。
また、特定技能「鉄道」の業務内容として、同じ業務に就く日本人が通常行う事務作業や作業場所の整理、清掃などの関連業務に付随的に従事することが認められています。
ただし、専ら関連業務だけを行うことは認められておらず、業務区分ごとの主な業務への従事が前提である点に注意が必要です。
特定技能「鉄道」の在留資格の特徴
特定技能には、一定水準以上の技能を持つ特定技能1号と熟練した技能を持つ特定技能2号の2種類がありますが、2025年11月現在、鉄道分野で認められているのは1号のみです。
特定技能「鉄道(1号)」の在留資格の特徴は以下の通りです。
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特定技能「鉄道(1号)」の在留資格の特徴 |
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| 在留期間 | 通算5年が上限 |
| 業務区分 | ・軌道整備 ・電気設備整備 ・車両整備 ・車両製造 ・運輸係員 |
| 技能試験 | 鉄道分野特定技能1号評価試験 |
| 日本語試験 | JLPT N4以上またはJFT-Basic合格(軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造) JLPT N3以上合格(運輸係員) |
| 家族の帯同 | 原則不可 |
| 支援義務 | 企業による支援義務あり |
特定技能「鉄道」の技能・日本語水準
特定技能は、即戦力となる外国人労働者を受け入れる制度です。
そのため、特定技能での就労を希望する外国人は、技能試験や日本語試験に合格するなど、必要な技能があることを証明しなければなりません。
ここからは、技能水準と日本語能力水準の詳細について解説します。
技能水準
特定技能「鉄道」には、5つの業務区分があり、それぞれ必要な技能・知識が異なります。そのため、就労を希望する外国人は、業務内容に応じた試験に合格しなければなりません。
鉄道分野の各業務区分において、必要な技能試験は以下の通りです。
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特定技能「鉄道(1号)」の技能試験一覧表 |
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| 軌道整備 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(軌道整備) |
| 電気設備整備 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(電気設備整備) |
| 車両整備 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(車両整備) |
| 車両製造 | 以下のうち、いずれかに合格が必要
・鉄道分野特定技能1号評価試験(車両製造) |
| 運輸係員 | 鉄道分野特定技能1号評価試験(運輸係員) |
日本語能力水準
鉄道分野には、製造や保守点検作業、旅客対応など多様な業務があるため、業務区分によって求められる日本語能力水準が異なります。
鉄道分野の各業務区分において、必要な日本語試験は以下の通りです。
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特定技能「鉄道(1号)」の日本語試験一覧表 |
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| 軌道整備、電気設備整備、車両整備、車両製造 | 日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)合格 |
| 運輸係員 | 日本語能力試験(N3以上) |
技能実習2号良好修了者の試験免除
技能実習2号を良好に修了した外国人が特定技能1号に移行する際は、原則として、修了した職種や作業の内容を問わず、日本語能力水準に関する試験が免除されます。
ただし、旅客対応を行う運輸係員については、N3以上の日本語能力が必要なため、試験免除の対象には含まれません。
また、技能評価試験の免除可否は、修了した技能実習2号の職種・作業と特定技能1号の業務区分の対応関係によって異なるため、詳細は以下の試験免除対象一覧表をご確認ください。
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技能実習2号良好修了者の技能試験免除対象一覧表(鉄道分野) |
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| 特定技能1号の業務区分 | 試験免除等となる技能実習2号 | |
| 職種 | 作業 | |
| 軌道整備 | 鉄道施設保守整備 | 軌道保守整備 |
| 電気設備整備 | なし | なし |
| 車両整備 | 鉄道車両整備 | 走行装置検修・解ぎ装 |
| 空気装置検修・解ぎ装 | ||
| 車両製造 | 機械加工 | 普通旋盤 |
| フライス盤 | ||
| 数値制御旋盤 | ||
| マシニングセンタ | ||
| 金属プレス加工 | 金属プレス | |
| 鉄工 | 構造物鉄工 | |
| 仕上げ | 治工具仕上げ | |
| 金型仕上げ | ||
| 機械組立仕上げ | ||
| 電子機器組立て | 電子機器組立て | |
| 電気機器組立て | 回転電機組立て | |
| 変圧器組立て | ||
| 配電盤・制御盤組立て | ||
| 開閉制御器具組立て | ||
| 回転電機巻線製作 | ||
| 塗装 | 金属塗装 | |
| 噴霧塗装 | ||
| 溶接 | 手溶接 | |
| 半自動溶接 | ||
| 運輸係員 | なし | なし |
特定技能「鉄道」の許可要件
特定技能「鉄道」の在留資格は、外国人本人が試験に合格していることに加えて、その外国人を受け入れる企業側も、入管法が定める複数の基準を満たすことが求められています。
ここからは、企業側に課せられる主な許可要件について解説します。
鉄軌道事業等を営んでいること
鉄道分野で特定技能外国人を受け入れられるのは、国土交通省鉄道局がホームページで鉄軌道事業者一覧に示している鉄軌道事業者、または特定技能「鉄道」の各業務区分の主な業務に該当する事業を行う企業に限られます。
たとえば、鉄道関連の事業を行っている場合であっても、「軌道整備」「電気設備整備」「車両整備」「車両製造」「運輸係員」以外の内容で事業運営をしている事業者は、特定技能外国人の受け入れをすることはできません。
そのため、受け入れ前に自社の事業内容が要件に適合しているかを整理しておくことが重要です。
鉄道分野特定技能協議会に加入すること
鉄道分野で特定技能外国人を受け入れるには、入管への在留資格申請の前に、国土交通省が設置する「鉄道分野特定技能協議会」へ加入する必要があります。
鉄道分野においては、特定技能所属機関に加え、支援業務を委託する登録支援機関も原則として同協議会への加入が求められます。
この協議会は、特定技能制度の適正な運用や外国人材の保護、分野全体の課題共有を目的として設置されています。
協議会の規約や運営方針に沿った受け入れ体制を整えることが受け入れの第一歩となります。
国土交通省|鉄道分野における外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」)
協議会に対し必要な協力を行うこと
特定技能協議会の構成員は、指導や報告の求めに応じ、資料提出や意見聴取への対応などに協力する義務があります。
協議会からの要請に対しては、現地調査を含め誠実に対応する体制を整えることが求められます。
これらの対応を怠ると基準不適合と判断され、受け入れが認められない場合があるため注意が必要です。
外国人に対する支援義務を履行すること
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、日本での就労や日常生活が円滑に進むよう、生活面および就労面の両面から必要な支援を行う義務が課されています。
入管法令により定められている支援義務10項目は以下の通りです。
- 事前ガイダンス
- 出入国時の送迎
- 住居確保、生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーション
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進
- 転職支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談・行政機関への通報
支援業務は登録支援機関に委託できる
社内で十分な支援体制を整えられない場合、支援業務を外部の登録支援機関に委託することが可能です。
登録支援機関とは、出入国在留管理庁の名簿に掲載されている外国人支援の専門機関のことで、これらの機関へ特定技能1号に関する支援を委託すれば、企業は法令上の支援義務を適切に果たしたとみなされます。
費用は機関ごとに異なりますが、一般的には1人あたり月額2~3万円程度が目安とされています。
適正な雇用契約を結んでいること
特定技能制度は、常勤雇用を前提としています。また、特定技能外国人に支払う賃金は、同一の業務に従事する日本人と比較して同等以上でなければなりません。
労働時間や休暇、社会保険などの待遇面でも、国籍を理由とした不合理な差を設けることは許されていません。
加えて、特定技能外国人が一時帰国を希望する場合には、企業は年次有給休暇の取得や勤務日の調整などに配慮する必要があります。
各種法令を遵守していること
特定技能外国人を受け入れる企業は、労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令をはじめ、社会保険や税に関する法令を遵守していなければなりません。
そのため、賃金の未払いや長時間労働の放置、保険未加入といった状態が生じないよう、日常的な管理体制の整備が不可欠となります。
この法令遵守規定については、在留資格申請時点だけでなく、特定技能外国人の雇用を継続する限り、常に違反がない状態を保たなければなりません。
万が一違反が発覚した場合は、在留資格申請の際に不許可となる可能性があるほか、雇用中の外国人の受け入れについても停止されるリスクが生じるため注意しましょう。
非自発的離職者を発生させていないこと
特定技能外国人を雇用しようとする企業は、募集職種において過去1年以内に非自発的離職者を出していないことが求められます。
ここでいう非自発的離職者とは、定年退職や契約期間満了などを除き、解雇や雇止めといった会社都合により離職した労働者を指します。
また、この非自発的離職者については外国人だけでなく日本人労働者も含まれます。
このような制約は、労働市場の混乱を防ぎ、安定した雇用環境を維持するために設けられています。
外国人の行方不明者を発生させていないこと
特定技能外国人を受け入れる企業は、過去1年以内に企業側に責任のある事由による外国人の行方不明者を生じさせていないことが求められます。
たとえば、ハラスメントが原因で外国人が失踪した場合や行方不明となった事実を放置し入管庁に届出をしなかった場合などは、企業側に責任があるとみなされる可能性があります。
そのため、受け入れ企業には、日常的な状況確認や連絡体制の整備に加えて、法令上必要な届出手続きなどについて適切に対応できる体制づくりが求められます。
出入国・労働に関する不正や不当行為を行っていないこと
特定技能外国人を受け入れる企業は、過去5年以内に出入国または労働に関して不正、または著しく不当な行為を行っていないことが求められます。
たとえば、旅券や在留カードの取り上げ、不当な外出制限、賃金の未払いのほか、暴力や脅迫、職場におけるハラスメントなどが不正・不当行為に該当します。
また、刑事処分や行政処分を受けたかどうかにかかわらず、不正・不当行為の事実が認められれば受け入れ停止の理由となる可能性があります。
まとめ
本記事では、特定技能「鉄道」の在留資格の位置づけや対象となる業務区分、求められる技能試験・日本語試験の水準、企業側に課される各種要件について整理しました。
あわせて、協議会への加入や支援義務の内容、雇用契約の考え方、法令遵守の重要性など、受け入れに当たって押さえておきたい実務上のポイントも解説しました。
鉄道分野で外国人材の受け入れを検討中の企業は、自社が要件を満たしているかを確認しつつ、協議会加入や支援体制の整備などの準備を早めに整えることが重要です。
制度理解が不十分なまま進めると、審査の長期化や不許可の原因になるおそれがありますので、
必要に応じて専門家へ相談し、正確な情報をもとに準備を進めることをおすすめします。
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