外国人採用ガイド

就労制限のない身分系在留資格とは?全4種類の概要や雇用のメリット、注意点を解説

外国人材の採用を検討する経営者にとって、就労制限のない身分系在留資格を持つ外国人材は、幅広い業務を柔軟に任せられる点で大きな魅力があります。とはいえ、身分系の在留資格にも人材管理や手続きの面で注意を要するポイントが複数存在します。

本記事では、身分系在留資格4種類の概要を整理し、企業が採用する際のメリットや注意点をわかりやすく解説します。

雇用を検討する方が正確な判断材料を得られるよう、制度の特徴を詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

身分系在留資格とは

身分系在留資格とは、「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4種類をまとめた呼び方です。

いずれも身分や地位に基づいて付与される在留資格であり、活動内容に制限がなく、幅広い職種での就労が認められています。

身分系在留資格という名称は入管法において「一定の身分もしくは地位を有する者に与えられる在留資格」と分類されていることに由来しています。

「特定技能」など就労系在留資格や「留学」などの非就労系在留資格と異なり、在留資格取得の根拠が活動内容ではなく、身分・地位関係にある点が特徴です。

なお、出入国在留管理庁はこれら4つの在留資格を総称して「居住資格」と呼んでいます。

以下、それぞれの在留資格の概要について解説していきます。

永住者

「永住者」は、日本に無期限で滞在することを認められた在留資格であり、就労や居住に関する制限がほとんどない点が特徴です。

法務大臣から永住許可を受けた外国人は、在留期間更新の必要がなく、幅広い職種での就労が可能になります。

ただし、日本国籍を取得するわけではないため、出入国時には再入国許可が必要であり、一定の条件を満たさなければ在留資格を失う可能性もあります。

この在留資格を得るためには、複数の要件を満たすことが求められます。
代表的な要件は以下の通りです。

  • 素行が善良であること
  • 独立して生計を営むに足りる資産や技能を持つこと
  • 日本国の利益に合致すると認められること

永住許可の審査においては、納税や社会保険料の適切な納付など、公的義務の履行が厳格に審査されます。

また、永住許可申請の前提条件として、原則として日本に10年以上継続して在留していることが求められ、そのうち5年以上は技能実習と特定技能1号を除く就労資格または居住資格で日本に滞在している必要があります。

ただし、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」、「定住者」「高度専門職」などの場合には、短縮された特例の条件が適用されることがあります。

このように永住者は安定した生活基盤を持つことが前提となる資格であり、企業にとっても安心して雇用できる人材である一方、取得には長期間の在留実績や社会的信用の積み重ねが不可欠となっています。

日本人の配偶者等

「日本人の配偶者等」の在留資格は、日本人の配偶者、日本人の特別養子、または日本人の子として出生した外国人に与えられる在留資格です。永住者と同様に就労制限はありません。

この在留資格は、国際結婚や親子関係に基づいて日本に滞在するための資格であり、結婚や出生の事実だけではなく、入管庁による在留資格の審査を経て在留許可が与えられます。

「日本人の配偶者等」の主な許可要件は以下の通りです。

  • 婚姻関係・家族関係が真実であること
  • 安定した生活のための経済的基盤があること
  • 素行が不良でないこと

この在留資格を申請する際には、在留資格取得目的の偽装結婚による申請を防ぐために厳しい審査が行われます。

交際の経緯や生活実態などを具体的に説明する資料が必要となり、二人の婚姻関係が虚偽ではないことを立証する責任が生じます。

また、生活基盤の安定も重要な審査項目となります。申請者本人や日本人配偶者が安定した収入を有し、公共の負担とならない生活が見込まれることが求められます。

収入や職業の状況によっては、真実の婚姻関係が成立していても不許可となるケースがあるため、経済的基盤の確立が欠かせません。

永住者の配偶者等

「永住者の配偶者等」は、永住者または特別永住者の配偶者、そして永住者等の子として日本で出生し、その後も継続して日本に在留している人に与えられる在留資格です。

この在留資格も就労の制限はなく、雇用形態や職種を問わず働くことが可能です。

審査の基準は「日本人の配偶者等」と同様に婚姻の真実性や収入の安定性などが確認されます。

「永住者の配偶者等」の主な許可要件は以下の通りです。

  • 婚姻関係・家族関係が真実であること
  • 安定した生活のための経済的基盤があること
  • 素行が不良でないこと

注意点として、永住者等の子が申請を行う場合の要件は「日本で出生し、そのまま在留を継続している子」に限られます。

海外で出生した子や出生後に出国し日本で在留を継続していない子の場合は、在留資格の該当性を失う点に注意が必要です。ただし、その場合も「定住者」の在留資格を取得できる可能性はあります。

定住者

「定住者」は法務大臣が特別な事情を考慮して居住を認める者に与えられる在留資格です。この在留資格も就労の制限はありません。

定住者の在留資格には、あらかじめ告示で具体的な類型を定めた「告示定住」と、個々の事情を都度個別に判断する「告示外定住」があります。

告示定住の一覧は以下の通りです。

告示定住者の一覧

1号:第三国定住難民
2号:削除
3号:日本人の子として出生した者の実子(日系2世・3世)
4号:日本国籍離脱者が国籍を離脱した後に生まれた実子の実子(日系3世)
5号:日本人の子として「日本人の配偶者等」で在留する外国人の配偶者、定住者の配偶者
6号:帰化日本人、永住者、特別永住者、定住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等の扶養を受けて生活する未成年で未婚の実子
7号:日本人、永住者、特別永住者、定住者の扶養を受けて生活する6歳未満の容姿
8号:中国残留邦人とその親族

一方、告示外定住は具体的な類型が定められていないため、どのような場合に許可が取得可能であるか明確に事前把握することはできません。ただし、以下のような場合には告示外定住が取得可能と言われています。

告示外定住の代表例

難民認定:告示定住1号以外で法務大臣が難民と認定した者
離婚定住:日本人、永住者、特別永住者と離婚した者
死別定住:日本人、永住者、特別永住者の配偶者と死別した者
日本人実子扶養定住:日本人の実子を監護・養育する者
特別養子離縁定住:特別養子の離縁により「日本人の配偶者等」でなくなった者

なお、告示外定住は入国前に申請することはできないため、申請するにあたっては他の在留資格で日本に在留している状態で在留資格変更許可申請等を行って許可を受ける必要があります。

身分系在留資格者を雇用するメリット

身分系在留資格を持つ外国人を雇用すると、制度面と実務面の双方で多くの利点があります。
ここからは、企業目線で知っておきたい身分系在留資格のメリットを順に解説します。

就労制限がない

身分系在留資格の最も大きな特徴は、従事できる業務に制限が設けられていない点にあります。

そのため、労働基準法や最低賃金法などの労働関連法規を守っている限り、飲食業や製造業、事務職、研究職など幅広い分野で日本人と同じように勤務することが可能です。

例えば午前中に現場作業をして、午後から事務作業をするなど複数の業務に跨るような就労形態も可能です。

在留資格が有効である限りは不法就労に該当するリスクがなく、外国人雇用に不慣れな企業にとっても安心して採用できるという利点があります。

在留期間の通算上限がない

身分系在留資格には在留期間の通算の上限がないため、安定した長期雇用につながりやすいという特徴があります。

永住者に付与される在留資格には期間の制限がなく、一度許可を得れば更新手続きを行う必要がありません。

また、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者については5年、3年、1年または6カ月といった期間が与えられ、その都度更新手続きを行う必要があります。

そのため、雇用主にとっては永住者を採用する場合は在留期間を気にすることなく継続的な雇用が見込め、その他の身分系資格保持者についても更新を前提としながら長期的な就労が期待できる点が大きなメリットとなります。

企業側に在留資格申請の負担がない

身分系在留資格は個人の身分関係に基づいて与えられるため、許可の条件が雇用契約そのものとは切り離されています。

そのため、在留期間の更新や変更といった入管手続きにおいて、企業が申請代理を行ったり書類作成の補助をしたりする義務は発生しません。

外国人を採用する際に入管法の専門知識を持たなくても、雇用をスムーズに開始できるという利点があります。

日本の生活に慣れている人が多い

身分系在留資格を持つ外国人の多くは、日本で長期間生活しており、日本語での意思疎通や職場環境への適応に優れています。

特に日本で生まれ育った人や幼少期から日本で暮らしている人は、日本の教育を受けている場合が多く、読み書きや会話を含む日本語能力が高い傾向にあります。

このような人材を採用することで、業務上の指示理解や顧客対応を日本人同様に行える場合が多く、企業にとっては教育や研修の負担を軽減できる利点があります。

さらに、日本の生活習慣や価値観に慣れているため、文化的な違いによる摩擦や早期離職のリスクを抑えられる点も、雇用の大きな魅力といえるでしょう。

知人を紹介してくれる可能性がある

日本に暮らす外国人の多くは、同じ国や地域の出身者どうしで作られたコミュニティに所属しており、職場環境や待遇が良ければ知人を紹介してもらえる可能性があります。

特に身分系在留資格を持つ人材は、同じ境遇の外国人とのつながりを持っているケースが多く、企業が信頼関係を築ければ、自然な流れで採用ルートが広がることが期待できます。

このように、既存従業員からの紹介は、採用コストを抑えつつ適切な人材を確保できる点で、企業にとって大きな利点となります。

副業や派遣、業務委託など柔軟に活用できる

身分系在留資格を持つ外国人は、日本人と同様の条件で就労できるため、雇用形態を柔軟に設定することが可能です。

このため、労働基準法などの法令を守っている限り、副業やアルバイトとしての雇用、人材派遣を活用した採用も行えます。

加えて、業務委託契約を結んで特定の業務を依頼したり、フリーランスとして活動している身分系外国人に外注したりすることも問題ありません。

このように幅広い活用が可能である点は、企業にとって人材戦略の選択肢を広げる大きなメリットとなります。

身分系在留資格者を雇用する場合の注意点

身分系在留資格を持つ外国人は、就労制限がなく柔軟に働ける反面、採用や人材管理の面で注意が必要な点もあります。

ここからは、企業が把握しておくべき注意事項について解説します。

日本語がほとんど話せない人もいる

身分系在留資格を持つ外国人の中には、日本語での会話が十分に行えない人もいます。例えば「永住者の配偶者等」の資格を持つ場合、家庭内で母語を中心に使用しているケースが多く、日本語を学ぶ機会が限られていることがあります。

また、「定住者(日系)」などでは、日系人コミュニティの中で生活が完結してしまうこともあり、日本語の習得が進みにくい環境に身を置いている人もいます。

そのため、生活上は問題なく日本に適応しているように見えても、実際の日本語能力に差があることは珍しくありません。

短時間の面接だけで語学力を判断すると、業務で必要な日本語能力水準に達していない人材を採用してしまい、職場で意思疎通の齟齬が生じる可能性があります。

身分系の在留資格は日本語能力や仕事との適正に関係なく在留が認められるため、採用にあたってはコミュニケーション能力を含めた適性を慎重に確認することが求められます。

外国人雇用状況の届出

外国人を採用した事業主には、雇い入れ時や離職時に「外国人雇用状況の届出」をハローワークへ提出する義務があり、これは身分系の在留資格を持つ外国人を雇用する場合も同じです。

ただし、雇用保険に加入する対象となる外国人を採用する場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」の提出によって「外国人雇用状況の届出」を行ったものとみなされます。

労働時間が短い場合など、雇用保険の適用外となる外国人従業員を雇用する際には、事業者が自ら「外国人雇用状況の届出」を提出しなければならない点に注意が必要です。

在留カードの定期チェック

身分系の在留資格を持つ外国人のうち、「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」は、審査のたびに在留期間が付与され、満了前には必ず更新手続きが必要です。

しかし、更新を怠ったり婚姻関係が解消されたりすると、在留資格を維持できなくなる場合があります。その状態で雇用を続けると不法就労に該当し、雇用主も罰則の対象となるおそれがあります。

このため、企業が身分系在留資格者を雇用する際には、在留カードを定期的に確認し、更新が確実に行われているかをチェックすることが不可欠です。

適切な管理体制を整えておくことで、法令違反のリスクを防ぎ、安心して雇用を継続することができます。

永住者も在留カードの更新が必要

永住者は在留期間の更新を行う必要はありませんが、在留カードには有効期限が設けられており、通常7年ごとに更新手続きをしなければなりません。

ただし、永住者は在留期間が無期限であるため、在留カードの有効期限が切れても不法残留とは扱われず、退去強制の対象になることもありません。

しかし、外国籍の方には有効な在留カードを常時携帯する義務が課されており、期限切れのカードではその義務を果たすことができません。

在留カード不携帯は20万円以下の罰金が科される可能性があるため、永住者を雇用する企業においても在留カードの更新状況を把握しておくことが重要です。

まとめ

身分系在留資格を持つ外国人の雇用は、就労制限がなく手続きも比較的簡易である一方で、業務の適性確認や在留期間の更新状況を企業自らが継続的に把握する姿勢が欠かせません。

また、今後は永住許可制度の運用が一層厳格化される見通しもあり、企業側には制度全体を正しく理解し対応する力が求められる可能性があります。もし不安や疑問がある場合は、外国人材採用に特化した紹介事業者や法令の専門家に相談し、適切な措置を取ることが、採用計画の円滑な実現とトラブル防止につながります。

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