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技能実習生の受け入れ人数に上限はある?企業の規模別の制限や算定方法を解説

技能実習制度では、企業が一度に受け入れできる実習生の人数に上限が設けられており、その枠は企業の規模や業種、過去の受け入れ実績が優遇措置を受ける条件に適合しているかなど複雑な算定方法により決定されます。

この記事では、技能実習制度の基本構造、人数枠の算定方法、実習の段階や業種ごとのルールの違い、優良認定による受け入れ枠の拡大措置について詳しく解説します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

技能実習制度とは

技能実習制度は、日本の技能、技術、知識などを開発途上国等の外国人に移転することにより、各国の人材育成および経済発展に貢献することを目的として、1993年に創設された制度です。

この制度を通じて、技能実習生は日本の企業や団体において一定期間、実践的な技能を習得することが可能となっており、受け入れ企業にとっては国際協力の一環として人材育成に寄与することができます。

受け入れ人数に上限が設けられている理由

技能実習制度は、技術移転を通して、相手国の経済発展を担う人材を育成することを目的としています。

そのため、日本国内の人手不足を補うための労働力確保を主目的とするものではなく、制度本来の趣旨を逸脱しないよう、受け入れ人数には上限が設けられています。

技能や知識の移転を効果的に行うには、技能実習生一人ひとりに対する適切な指導と監理が必要であり、過剰な受け入れは実習の質を損なう要因となってしまいます。

受け入れ人数の制限は、制度の趣旨に則った実習計画の実行を確保し、技能実習生の保護と制度全体の信頼性を維持するうえでも不可欠な仕組みといえるでしょう。

「団体監理型」と「企業単独型」の違い

技能実習制度における受け入れ形態は、「団体監理型」と「企業単独型」に大別されます。

団体監理型は、監理団体が技能実習計画の作成支援や生活指導、実習先への訪問監査などを行い、実習実施者の受け入れを支援する仕組みであり、企業単独型は、日本企業が自社の海外現地法人や合弁企業などから職員を直接受け入れる形態です。

実際には、多くの中小企業が団体監理型を採用しており、監理団体を通して制度運用の適正化が図られています。

受け入れ人数の計算方法

技能実習制度の基本的な受け入れ枠は、実習実施者の常勤職員数を基準に定められていますが、技能実習の段階や業種の違い、優良認定などにより算定方法は異なります。

次項からは受け入れの基本人数枠や各要素の具体的な算定基準について詳しく解説します。

技能実習1号の人数枠は常勤職員数で決まる

技能実習制度における受け入れの基本人数枠は、実習実施者の常勤職員数に基づいて設定されています。

基本人数枠とは、団体監理型における技能実習1号の受け入れ可能枠のことであり、2号や3号に移行した技能実習生の人数はこの枠にはカウントされません。

以下の表は団体監理型で技能実習生を受け入れる際に適用される実習実施者(受入れ企業)の常勤職員総数別の基本人数枠の一覧です。

団体監理型における基本人数枠

技能実習1号の基本人数枠
実習実施者の常勤職員総数 技能実習生の人数
301人以上 常勤職員総数の20分の1
201人〜300人 15人
101人〜200人 10人
51人〜100人 6人
41人〜50人 5人
31人〜40人 4人
30人以下 3人

※特有の事情のある職種(介護職種等)の受け入れ人数は、事業所管大臣が個別に定めます。

※本表は優良認定を受けていない場合の受け入れ人数です。

企業単独型の技能実習の受け入れ人数枠は以下の通りです。

企業単独型における受け入れ人数枠

技能実習1号の受け入れ人数枠
常勤職員総数の20分の1

技能実習2号の受け入れ人数枠

技能実習2号の受け入れ人数枠は、技能実習1号の基本人数枠を基に算定されます。

団体監理型の2号受け入れ人数枠は、「1号の基本人数枠の2倍」となり、企業単独型の2号受け入れ人数枠は、「常勤職員総数の10分の1」です。

なお、技能実習3号は、優良認定を受けた場合のみ移行可能な段階であるため、優良認定を受けていない場合の人数枠は存在しません。優良認定の制度概要は後述する「優良認定制度と人数枠の拡大」の項で解説します。

常勤職員の定義

技能実習制度における受け入れ人数の上限は、実習実施者の「常勤職員数」を基準として算定されます。

対象となるのは、①所定労働日数が週5日以上かつ年間217日以上であり、かつ週所定労働時間が30時間以上である者、または②雇用保険の被保険者であり、かつ週所定労働時間が30時間以上である者のいずれかに該当する者とされています。

なお、外国に所在する事業所に所属する職員などは、国内の実習実施者に属しているとはみなされず、制度上の常勤職員には該当しないものとされます。

その他、技能実習生本人のほか、短時間労働者や派遣労働者についても常勤職員からは除かれます。

技能実習の各段階による人数枠の違い

技能実習制度は、技能実習1号・2号・3号の三段階に分かれており、それぞれの段階で受け入れ人数の算定方法が異なります。

技能実習1号は入国初年度に実施されるものであり、受け入れ人数は常勤職員数を基に算定される基本人数枠によって決定されます。

技能実習2号・3号は、前段階の実習を適正に修了した者のみが移行できる仕組みであり、それぞれに1号の基本人数枠と異なる受け入れ人数枠が設けられています。

技能実習1号・2号・3号の活動内容<

技能実習の各段階への移行時には、在留資格の変更許可が必要になり、それぞれの活動内容や在留期間、許可要件が異なります。

技能実習1号は、入国後最初の1年間に実施される基礎段階であり、外国人技能実習機構から認定を受けた技能実習計画に基づいて基本的な技能や知識の習得を目指します。

技能実習2号は、1号を適正に修了し、必要な技能評価試験に合格した者が移行できる段階で、2年間の在留が認められ、より実践的で熟練度の高い技能の習得を目的としています。

技能実習3号は、2号を良好に修了した者のうち、一定の要件を満たす者が進むことのできる最終段階であり、最大2年間の在留が可能です。技能実習3号に移行するためには、技能実習を行う実習実施者(受け入れ企業)や監理団体が優良認定を受けている必要があります。

優良認定制度の概要<

技能実習制度では、制度の適正な運用と実習生の保護を促進するため、「優良な監理団体」および「優良な実習実施者」に対する認定制度が設けられています。

優良認定を受けることで、受け入れ人数枠の拡大や技能実習3号への移行許可などの優遇措置が適用され、制度を継続的に活用する上で大きな利点となります。

優良認定を取得するためには、過去の技能実習計画の適正な実施、実習生への生活支援、法令遵守状況など、複数の項目について基準を満たす必要があり、また認定の維持には継続的な取り組みと適正な監理体制の確保が求められます。

優良認定を受けた場合の人数枠

優良認定を受けることで、受け入れ人数枠の拡大や技能実習3号への移行が可能となります。

以下の表は優良基準適合時の受け入れ人数枠の一覧です。

団体監理型における優良基準適合者の人数枠

優良基準適合時の人数枠(団体監理型)
技能実習1号 基本人数枠の2倍
技能実習2号 基本人数枠の4倍
技能実習3号 基本人数枠の6倍

企業単独型における優良基準適合者の人数枠

優良基準適合時の人数枠(企業単独型)
技能実習1号 常勤職員総数の10分の1
技能実習2号 常勤職員総数の5分の1
技能実習3号 常勤職員総数の10分の3

職種ごとの受け入れ人数枠の違い

技能実習制度における受け入れ人数枠は、基本的に常勤職員数を基準として算定されますが、職種によっては、事業所管大臣が定める告示基準が適用される場合があります。

また、受け入れ人数以外の点においても一部業種では、他の職種とは異なる制度上の要件が設定されるなど、受け入れにあたっては追加的な体制整備が求められます。

次項では、さまざまな固有要件が設定されている介護分野および建設分野における受け入れ基準の詳細について、詳しく解説します。

介護職種特有の受け入れ要件と人数枠

介護分野における技能実習は、利用者の安全と福祉の質を確保する観点から、他の職種よりも厳格な制度運用が求められており、受け入れ人数にも特有の制限が存在しています。

特に受け入れ人数の上限については、他の職種と比較して、厳しい制限があり、たとえば、常勤の介護職員が10名の施設では、技能実習1号の実習生は最大で1名までしか受け入れることができず、他の職種の基本人数枠である3名よりも大幅に少ない枠が設定されています。

また、介護職種特有の要件として、日本語能力要件が存在しており、技能実習1号の場合は「N4相当」、2号の場合は「N3」相当の日本語能力が求められます。

団体監理型における介護職種の受け入れ人数枠

事業所の常勤介護職員の総数 一般の実習実施者 優良な実習実施者
1号 全体(1号・2号) 1号 全体(1~3号)
1 1 1 1 1
2 1 2 2 2
3~10 1 3 2 3~10
11~20 2 6 4 11~20
21~30 3 9 6 21~30
31~40 4 12 8 31~40
41~50 5 15 10 41~50
51~71 6 18 12 51~71
72~100 6 18 12 72
101~119 10 30 20 101~119
120~200 10 30 20 120
201~300 15 45 30 180
301~ 常勤介護職員の
20分の1
常勤介護職員の
20分の3
常勤介護職員の
10分の1
常勤介護職員の
5分の3

企業単独型における介護職種の受け入れ人数枠

一般の実習実施者 優良な実習実施者
1号 全体(1号・2号) 1号 全体(1~3号)
常勤介護職員の
20分の1
常勤介護職員の
20分の3
常勤介護職員の
10分の1
常勤介護職員の
5分の3

※法務大臣及び厚生労働大臣が継続的で安定的な実習を行わせる体制を有すると認める企業単独型技能実習の場合は、団体監理型の人数枠と同じになります。

建設職種特有の受け入れ要件

建設分野における技能実習の受け入れに際しては、他業種とは異なる制度上の要件が複数設けられています。

具体的には、実習実施者が建設業許可を有していることが前提条件とされており、許可のない事業者による技能実習の実施は認められていません。

また、建設分野では「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の登録が義務づけられており、企業および技能実習生の双方がこのシステムに登録していることが受け入れの要件となります。

建設キャリアアップシステムの登録により、技能習得の履歴や就労状況を客観的に把握できる体制が整えられ、適正な実習の実施体制が確保される仕組みとなっています。

なお、建設職種の人数制限については、他職種と同様に常勤職員数に基づいた基本人数枠が適用されます。

技能実習の職種別在留者数

技能実習制度においては、受け入れ枠の上限や制度上の運用だけでなく、実際の受け入れ実績も職種によって大きく異なります。出入国在留管理庁が公表している令和5年6月末時点の技能実習の在留者数の統計資料によれば、受け入れが多いのは機械・金属関連や食品製造関連、建設関連といった業種に集中しています。

以下は、令和5年6月末時点での技能実習生の職種別在留者数一覧です。

技能実習生の職種別在留者数(令和5年6月末時点)

農業関係(2職種6作業)
職種名 在留者数
耕種農業 23,030人
畜産農業 5,280人

 

漁業関係(2職種10作業)
職種名 在留者数
漁船漁業 1,374人
養殖業 1,396人

 

建設関係(22職種33作業)
職種名 在留者数
さく井 382人
建築板金 1,919人
冷凍空気調和機器施工 736人
建具製作 261人
建築大工 3,837人
型枠施工 9,366人
鉄筋施工 8,825人
とび 22,254人
石材施工 424人
タイル張り 793人
かわらぶき 434人
左官 2,726人
配管 3,050人
熱絶縁施工 1,145人
内装仕上げ施工 4,213人
サッシ施工 452人
防水施工 3,065人
コンクリート圧送施工 759人
ウェルポイント施工 47人
表装 612人
建設機械施工 12,808人
築炉 235人

 

食品製造関係(11職種18作業)
職種名 在留者数
缶詰巻締 500人
食鳥処理加工業 3,921人
加熱性水産加工食品製造業 5,456人
非加熱性水産加工食品製造業 12,012人
水産練り製品製造 1,188人
牛豚食肉処理加工業 2,379人
ハム・ソーセージ・ベーコン製造 2,314人
パン製造 4,668人
そう菜製造業 33,585人
農産物漬物製造業 489人
医療・福祉施設給食製造 2,030人

 

繊維・衣服関係(13職種22作業)
職種名 在留者数
紡績運転 574人
織布運転 1,074人
染色 535人
ニット製品製造 333人
たて編ニット生地製造 169人
婦人子供服製造 15,243人
紳士服製造 1,013人
下着類製造 814人
寝具製作 413人
カーペット製造 152人
帆布製品製造 839人
布はく縫製 220人
座席シート縫製 1,316人

 

機械・金属関係(17職種34作業)
職種名 在留者数
鋳造 3,182人
鍛造 375人
ダイカスト 1,479人
機械加工 9,770人
金属プレス加工 7,973人
鉄工 4,439人
工場板金 3,364人
めっき 2,767人
アルミニウム陽極酸化処理 395人
仕上げ 2,028人
機械検査 5,343人
機械保全 1,834人
電子機器組立て 7,221人
電気機器組立て 1,838人
プリント配線板製造 1,028人
アルミニウム圧延・押出製品製造
金属熱処理業

 

その他(21職種38作業)
職種名 在留者数
家具製作 2,015人
印刷 1,414人
製本 1,790人
プラスチック成形 17,470人
強化プラスチック成形 768人
塗装 11,739人
溶接 18,994人
工業包装 12,394人
紙器・段ボール箱製造 1,936人
陶磁器工業製品製造 233人
自動車整備 3,721人
ビルクリーニング 5,226人
介護 14,751人
リネンサプライ 1,826人
コンクリート製品製造 1,348人
宿泊 794人
RPF製造 82人
鉄道施設保守整備 49人
ゴム製品製造 877人
鉄道車両整備 0人
木材加工

 

主務大臣が告示で定める職種(社内検定型の職種・作業(2職種4作業))
職種名 在留者数
空港グランドハンドリング 1,374人
ボイラーメンテナンス 1,396人

まとめ

技能実習制度における受け入れ人数は、企業規模や常勤職員数を基準としつつ、実習の段階や業種によって異なる枠が設けられています。特に介護や建設といった分野では、他職種に比べて厳格な要件や制限が定められており、制度の正確な理解が不可欠です。

外国人材の受け入れを検討する企業にとって、制度上の人数枠や受け入れの要件を正しく把握することは、安定した受け入れ体制の構築に直結します。受け入れに関して不明な点がある場合は、技能実習制度に詳しい専門機関に相談し、実情に即した計画を立てることが大切です。

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