自動車整備業界では、若手整備士の不足により、現場の人材確保が大きな悩みとなっています。そのような人手不足を背景として、近年は特定技能の在留資格を活用して外国人材を採用する企業が増えていますが、受け入れの条件や体制の整備など、採用にあたって何をすべきかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、特定技能「自動車整備」分野で外国人を雇用するための基礎知識から、制度の概要、各種試験、受け入れ企業が満たすべき基準や運用の注意点までわかりやすく解説します。

きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)
特定技能「自動車整備」とは
特定技能「自動車整備」とは、自動車の日常点検や定期点検、分解整備など、車両の安全性と性能を維持するために行う整備業務に従事する外国人のために設けられている在留資格です。
現在、日本の自動車整備業界では、少子高齢化や若手人材の減少により深刻な人手不足が続いており、令和5年の自動車整備士の求人倍率は約5.28倍に達しています。
このような背景から、2019年に特定技能の在留資格が設けられ、令和6年12月末時点で自動車整備分野においては3,076人の特定技能1号外国人が就労しており、今後も増加が見込まれています。
参照:厚生労働省|自動車整備士
1号と2号の在留資格の違い
特定技能「自動車整備」分野における1号と2号の在留資格にはいくつか明確な違いがあります。
1号は「相当程度の知識または経験を必要とする技能」を持つ人材を対象としており、在留期間は通算5年まで認められていますが、家族の帯同はできません。
一方、2号は「熟練した技能」を有する者に限定され、通算の在留期間の上限がなく、条件を満たせば家族帯同も可能です。
特定技能1号と2号の違い | ||
在留資格 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
技能水準 | 相当程度の知識または経験を必要とする技能 | 熟練した技能 |
日本語能力水準 | N4相当以上 | 基準なし |
実務経験 | 不要 | 原則必要 |
在留期間 | 通算5年 | 上限なし(更新は必要) |
家族帯同 | 原則不可 | 可(配偶者および子) |
永住申請の年数要件 | 就労年数にカウントされない | 5年の就労年数にカウントされる |
支援義務 | 10項目の支援義務あり | 支援義務なし |
従事できる業務範囲
特定技能の自動車整備分野では、基本的には主たる業務として定められている業務に従事しなければなりませんが、日本人従業員が通常行う関連業務にも付随的に従事することが認められています。ただし、関連業務のみを専ら担当することは許されていないため、あくまでも主たる業務を中心に従事する必要があります。
以下に主たる業務と関連業務について詳しく解説します。
主たる業務
自動車整備分野における特定技能1号の主たる業務は、自動車の日常点検整備や定期点検整備、特定整備、そして特定整備に付随する基礎的な作業です。
これに対し、2号の主たる業務は、他の作業員を指導しながら日常点検整備や定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する一般的な業務を行うことです。
1号では業務の基礎的な部分が重視される一方、2号では現場をリードする役割やより高い専門性も必要となります。
関連業務
自動車整備分野の特定技能1号・2号に共通して認められる関連業務は以下の通りです。
整備内容の説明や関連部品の販売
部品番号の検索や発注業務
ナビやETCといった電装品の取付け
洗車
下回り塗装
車内清掃
構内清掃
部品等の運搬作業
設備や機器の清掃
なお、これらの関連業務への従事は、同じ仕事をしている日本人従業員が通常の業務の一部として付随的に行っている場合に限られます。
特定技能外国人だけが関連業務に従事する場合や主たる業務を行わずに関連業務のみに従事することは認められないため注意が必要です。
特定技能1号「自動車整備」の在留許可要件
特定技能1号「自動車整備」で外国人を受け入れるには、一定の技能水準や日本語能力の要件を満たし、適切な雇用契約を結ぶことが求められます。ここでは具体的な在留許可要件について解説します。
外国人の技能水準(試験区分)
特定技能1号「自動車整備」の在留資格を取得するには、「自動車整備分野特定技能1号評価試験」または「自動車整備士技能検定試験3級」のいずれかに合格することが必要です。
このどちらかの試験に合格することで、整備現場で必要とされる基本的な技術や知識を有していると認められます。
ただし、技能実習制度における自動車整備職種・作業で技能実習2号を良好に修了した外国人については、これらの技能試験が免除される仕組みとなっています。
外国人の日本語能力水準
特定技能1号の在留資格を取得するためには、一定の日本語能力を有していることの証明が必要です。
日本語能力の証明には、「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」のいずれかに合格していることが求められます。
このほか、技能実習2号を良好に修了している場合には、職種や作業内容を問わず日本語能力を証明する試験は免除となります。
地方運輸局長の認証を受けていること
特定技能1号「自動車整備」の受け入れを行うためには、事業場が道路運送車両法第78条第1項に基づき、地方運輸局長からの認証を受けていることが必要です。
これは自動車の「分解整備」を実施する事業所に対して義務付けられている制度であり、認証を受けることで、一定の設備や人員体制、業務管理の基準が満たされていることを対外的に証明することができます。
特定技能の外国人材を受け入れる場合も、認証のない事業所では在留資格の申請が認められません。
自動車整備分野特定技能協議会の構成員であること
特定技能外国人を自動車整備分野で受け入れる企業は、必ず自動車整備分野特定技能協議会の構成員となることが求められます。
この協議会は、制度の円滑な運用と現場の課題把握を目的として、国土交通省が設置している組織です。協議会は受け入れ事業者から情報提供や協力を受け、人手不足の状況や業界の実態を継続的に把握し、制度改善に役立てています。
協議会への未加入や協力の拒否があった場合は、特定技能外国人の受け入れ資格を失うため、構成員であることが必須となります。
協議会の活動に協力すること
特定技能外国人を受け入れる企業は、自動車整備分野特定技能協議会の活動に必要な協力を行う義務があります。
具体的には、協議会からの情報提供や調査依頼に対し、適切な対応を取ることが求められます。この協力がなされない場合、許可基準を満たさないと判断され、特定技能外国人の受け入れが認められなくなります。
国土交通省の調査・指導に協力すること
特定技能制度を活用して外国人材を受け入れる際は、国土交通省による調査や指導に対して必要な協力を行うことが義務付けられています。
仮にこの協力を怠った場合、在留資格の許可が下りないだけでなく、将来的な受け入れ資格を喪失する可能性もあります。
適正な支援計画を作成し実施すること
特定技能1号で外国人を雇用する場合、受け入れ機関は必ず適切な支援計画を作成し、実施することが求められます。
義務的支援10項目は以下の通りです。
事前ガイダンスの実施
出入国時の送迎
住宅確保や生活に必要な契約手続きの補助
生活オリエンテーションの実施
各種行政手続きの同行
日本語学習機会の提供
相談や苦情への対応
日本人との交流促進
転職時の支援(非自発的離職時)
定期的な面談・行政機関への通報
これらの支援は、受け入れ機関が自ら行うだけでなく、出入国在留管理庁に登録された登録支援機関に委託することも可能です。
登録支援機関を利用する場合の追加要件
特定技能自動車整備で登録支援機関に支援を委託する場合、登録支援機関にもいくつかの追加要件が設けられています。
具体的には、委託先となる登録支援機関も自動車整備分野特定技能協議会に加入する義務が発生し、登録支援機関は国土交通省や協議会が行う調査・指導等に対しても、必要な協力を行わなければなりません。
また、登録支援機関には、自動車整備士1級または2級の資格を持つ者、もしくは自動車整備士養成施設で5年以上の指導実務経験がある者を配置していることが条件となっています。
特定技能2号「自動車整備」の在留許可要件
特定技能2号「自動車整備」の在留資格を取得するためには、より高度な技能や実務経験など、一定の条件を満たす必要があります。ここでは、2号に求められる主な在留許可の要件について解説します。
外国人の技能水準(試験区分)
特定技能2号「自動車整備」を取得するためには、技能水準として「自動車整備分野特定技能2号評価試験」または「自動車整備士技能検定試験2級」のいずれかに合格することが必要です。
これらの試験合格により、特定技能2号に求められる高度な専門性や熟練度を証明することができます。
外国人の実務経験
外国人が特定技能2号「自動車整備」の在留資格を取得するためには、地方運輸局長の認証を受けた自動車整備事業場において、3年以上の実務経験を積んでいることが要件となっています。
この実務経験は、実際に自動車の分解整備や点検などに携わった期間を指し、現場での技能が十分に身についていることを示すものです。ただし、自動車整備士技能検定2級に合格している場合には、この3年以上という実務経験要件は免除されます。
受入れ企業が満たさなければならない要件
特定技能2号「自動車整備」の外国人を受け入れる企業が満たすべき条件は、基本的に1号の場合と同様です。
具体的には、「地方運輸局長から認証を受けた整備事業場を有していること」「自動車整備分野特定技能協議会の構成員であること」「協議会の活動に協力すること」「国土交通省が行う調査や指導に協力すること」などが求められます。
2号は支援義務がない
特定技能2号では1号と異なり受け入れ企業に支援義務は課されていません。したがって、住居探しや生活ガイダンスといった義務的支援の実施が不要となり、企業側のコストや手間を抑えて、一定の経験や熟練度を持つ人材を採用できるメリットがあります。
ただし、2号の基準を満たす外国人を海外から直接採用することは現実的には難しく、通常は1号として一定期間勤務した人材が2号へとステップアップしていく流れが一般的です。
自動車整備分野の各種試験概要
自動車整備分野において特定技能の在留資格を取得するには、所定の技能試験や日本語試験の合格が求められます。ここでは、1号・2号それぞれに必要となる試験の概要や特徴について詳しく解説します。
日本語能力試験(JLPT)N4
日本語能力試験(JLPT)N4は、日常生活で使われる基礎的な日本語の読解・聴解能力を測るための試験です。N4レベルでは、基本的な語彙や漢字を用いた身近な話題の文章を理解でき、ややゆっくりと話される会話についても内容を把握できることが求められます。
試験は原則として年2回、日本国内外の多数の都市で実施されていますが、海外会場の一部では年1回のみ実施される場合もあります。
この試験に合格することで、特定技能1号に必要な日本語能力を証明することが可能です。
国際交流基金日本語基礎テスト
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、日本で働くことを希望する外国人向けに、日常生活に必要な日本語能力を測るためのテストです。JFT-Basicはコンピューター上で実施され、文字や語彙、会話と表現、聴解、読解の4セクションで構成されており、受験時間は60分、全50問前後が出題されます。
難易度はCEFRのA2レベル相当で、合格の目安は「生活に支障のない程度の日本語」が理解できるかどうかです。
この試験に合格することで、特定技能1号に必要な日本語能力を証明することが可能です。
自動車整備分野特定技能1号評価試験
自動車整備分野特定技能1号評価試験は、学科と実技の2種類で構成されており、学科試験は主に構造・機能や点検修理、工具・材料の基礎知識などが問われ、実技試験では分解・組立てや調整などの基本作業が評価されます。
この評価試験は日本国内およびフィリピン、ベトナム、インドネシアなど海外でも定期的に開催されており、受験のタイミングや頻度は国ごとに異なります。
難易度としては、即戦力となる一定水準の知識と技能が求められる内容となっており、合格後は受入企業と雇用契約を結ぶことで合格証明書が発行されます。
自動車整備士技能検定3級
自動車整備士技能検定3級は、自動車整備士としての基礎的な知識と技術を確認するための国家試験であり、国土交通省が主催しています。
この検定は、エンジンやシャシなどの主要部分に関する基礎的な整備・点検技能を中心に出題され、学科試験と実技試験の両方に合格する必要があります。
この試験に合格した者は、特定技能1号に必要な技能水準を満たしているものとして評価されます。
自動車整備分野特定技能2号評価試験
自動車整備分野特定技能2号評価試験は、より高度な整備知識と技能を評価するための試験で、令和6年7月から日本国内で実施されています。
試験の内容は、学科試験と実技試験の両方で構成されており、エンジンやシャシの構造・整備に関する知識や、点検・調整・修理・完成検査の実務能力が問われます。
難易度は1号試験より高く、受験するためには3年以上の実務経験を証明しなければなりません。
自動車整備士技能検定2級
自動車整備士技能検定2級は、実務経験や専門教育を経た整備士を対象に、より高度な技術や知識を判定する国家資格試験です。
2級の学科と実技は、ガソリン自動車やジーゼル自動車、シャシ、二輪自動車など複数の分野で実施されており、年に2回程度、全国の指定試験会場で行われます。
まとめ
本記事では、特定技能2号「自動車整備」分野の在留資格取得に必要な許可要件や技能評価試験、受け入れ企業側の基準などを体系的に解説しました。
自動車整備分野で外国人採用を検討している方は、特定技能の活用がおすすめです。在留資格の取得要件や人材の採用方法でお悩みの方は信頼できる人材会社や登録支援機関などに相談してみてください。
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