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【完全版】技能実習生の失踪対策|原因、対応、相談先を徹底解説

技能実習生の失踪問題が深刻化しており、企業にとって大きなリスクとなっています。

この記事では、技能実習生の失踪の現状と原因を詳しく解説するとともに、失踪防止のための具体的な対策や発生時の対応方法、政府の取り組みについて詳しく紹介します。

記事を読むことで、技能実習生の受け入れを検討中の企業や、すでに受け入れているものの課題を抱えている企業様が、技能実習生の失踪リスクを理解し、実習計画や生活支援の充実など、具体的な失踪防止策を講じることができるようになるでしょう。

万が一失踪が発生した場合の対応方法や、企業の管理体制強化のポイントについても解説します。

INDEX

この記事の監修
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。

技能実習生の失踪の現状と統計

技能実習制度における失踪者の問題は深刻化しており、関係者の間で大きな懸念材料となっています。

ここでは、技能実習生の失踪に関する最新の統計データを基に、その実態について詳しく見ていきましょう。

技能実習生の失踪者数の推移

まず総数の推移を見ると、令和元年に8,796人だった失踪者数は、令和2年に5,885人へと大幅に減少しました。

これは新型コロナウイルスの影響による入国制限などが関係していると考えられます。

その後、令和3年には7,167人と増加に転じ、令和4年には9,006人、令和5年には9,753人と増加傾向が続いています

技能実習生全体の人数に対する失踪率を見ると、令和元年から令和5年までほぼ1.7%~1.9%の範囲で推移しており、大きな変動はありません。

技能実習生総数は令和元年の約51.7万人から変動があり、令和5年には約50.9万人となっています。

国籍別に見ると、ベトナムからの失踪者が一貫して最多を占めており、令和5年は5,481人(ベトナム人技能実習生全体の2.1%)に達しています。

特筆すべきはミャンマー国籍の失踪者の急増で、令和元年の347人から令和5年には1,765人(ミャンマー人技能実習生全体の5.4%)と約5倍に増加しています。これはミャンマー国内の政情不安と関連していると推測されます。

また、「令和元年から令和5年までの失踪者のうち、令和6年7月22日時点で所在が不明の者」が9,976人となっています。

失踪者の捕捉率は75.4%で、過去5年間の失踪者総数40,607人のうち30,631人の所在が判明したことになります。

3ヶ月以内に所在把握できた者の数も示されており、令和5年では7,093人となっています。これは同年の失踪者総数9,753人の約72.7%に相当し、比較的高い割合で所在確認がなされていることを示しています。

技能実習生の失踪者の状況(推移)

法務省:技能実習生の失踪者の状況(推移)

技能実習生における失踪者の国籍別内訳

技能実習生の失踪者総数の国籍別内訳に顕著な偏りが見られます。

最も多いのはベトナム国籍の技能実習生で、5,481人と全体の56.2%を占めています。つまり、失踪者の半数以上がベトナム人ということになります。

これに次ぐのはミャンマー国籍の1,765人(18.1%)で、3番目は中国国籍の816人(8.4%)となっています。

さらに、カンボジア国籍が694人(7.1%)、インドネシア国籍が662人(6.8%)と続き、上位5カ国で全体の96.6%を占めています。その他の国籍ではフィリピン国籍84人(0.9%)、モンゴル国籍49人(0.5%)、タイ国籍38人(0.4%)、バングラデシュ国籍20人(0.2%)、ラオス国籍7人(0.1%)となっており、「その他」に分類される国籍は137人(1.4%)です。

下部の表は、令和元年から令和5年までの失踪技能実習生の推移を示しています。総数を見ると、令和元年の8,796人から令和2年には5,885人へと大幅に減少しましたが、令和3年以降は増加傾向にあり、令和5年には9,753人と過去5年で最多となっています。

特筆すべきは、ミャンマー国籍の失踪者数の急増です。令和元年の347人から令和5年には1,765人へと約5倍に増加しており、これはミャンマー国内の政情不安との関連も考えられます。

一方、中国国籍の失踪者は令和元年の1,330人から令和5年には816人へと減少傾向にあります。

これらのデータは、失踪問題に対応するためには国籍による傾向の違いを考慮した対策が必要であることを示唆しています。

特にベトナムとミャンマーからの技能実習生に対する支援体制の強化や、失踪の原因となる問題への対応が急務であると言えるでしょう。

失踪技能実習生の国籍別内訳

法務省:技能実習生の失踪者の状況(推移)

技能実習生における失踪者の職種別傾向

技能実習生の失踪は職種によって大きな偏りがあることが分かります。

最も顕著なのは建設関係での失踪者数で、全体の47.1%と約半数を占めています(4,593人)。これは他の職種と比較して圧倒的に高い割合です。

特に内訳を見ると、とび(1,614人・16.5%)、建設機械施工(768人・7.9%)、型枠施工(516人・5.3%)が上位を占めています。

次いで多いのが農業関係の8.6%(834人)で、内訳としては耕種農業(685人・7.0%)と畜産農業(149人・1.5%)に分かれています。

食品製造関係も8.5%(831人)と同程度の割合を示しています。

機械・金属関係は7.9%(767人)、繊維・衣服関係と非移行対象職種はともに4.7%(それぞれ462人、454人)となっており、漁業関係は1.0%(97人)と比較的少なく、社内検定型の職種は0.0%(2人)とほぼ皆無です。

「その他」に分類される職種も17.6%(1,713人)と一定数存在しています。

技能実習生の受け入れ体制や労働環境の改善において、特に建設業界に重点的な対策が必要であることを示唆しています。

失踪技能実習生の職種別内訳

法務省:技能実習生の失踪者の状況(推移)

技能実習生における失踪者の都道府県別傾向

失踪者数が最も多いのは愛知県の783人で、全国1位となっています

これに続いて東京都(598人・3位)、大阪府(730人・2位)、千葉県(516人・4位)、埼玉県(482人・5位)と、大都市圏を抱える都道府県で失踪者が多い傾向があります。

失踪率(失踪者数÷在留者数)で見ると、最も高いのは東京都の4.1%(1位)です。

次いで大阪府の3.6%(2位)、長崎県の3.3%(3位)、鳥取県の3.2%(4位)、青森県の3.0%(5位)となっています。福岡県も3.0%と比較的高い失踪率を示しています。

一方、失踪率が低い地域としては三重県の1.3%、島根県の1.4%、栃木県と岡山県の1.9%などが挙げられます。

全国の技能実習生の総数は403,678人(令和5年12月末時点)で、そのうち失踪者は9,753人、全体の失踪率は2.4%となっています。

このデータからは、大都市圏や工業地帯を抱える地域で失踪者数が多い傾向がありますが、失踪率で見ると必ずしも在留者数と比例せず、地域特有の労働環境や受け入れ体制の差異が影響している可能性が考えられます。

特に東京都や大阪府などの大都市圏では、他の就労機会の多さが失踪の誘因となっている可能性も示唆されます。

地方自治体や関連機関は、特に失踪率の高い地域における実習生の労働環境や生活支援の改善に注力する必要があるでしょう。

失踪技能実習生の都道府県別内訳

法務省:技能実習生の失踪者の状況(推移)

技能実習生が失踪する主な原因

技能実習生が失踪する理由はさまざまですが、その主な原因について以下に詳しく見ていきましょう。

労働環境の問題(長時間労働、低賃金など)

技能実習生が失踪する大きな原因の一つに、過酷な労働環境が挙げられます。

法務省の調査によれば、失踪者が出た実習機関では残業時間の不適正や割増賃金の不払い、契約賃金違反、最低賃金違反など、労働賃金に関係する違反が多くを占めています。

実習生の多くは母国での収入よりも高い賃金を期待して日本に来ており、中には借金をして来日している人も少なくありません。しかし、実際には最低賃金ギリギリの報酬しか得られないことも珍しくありません。

また、残業代の不払いや違法な長時間労働を強いられるなど、労働法規違反の実態も数多く報告されています。こうした過酷な労働環境に耐えかねて、失踪に至るケースが後を絶ちません。

生活面でのストレス(言語障壁、文化の違いなど)

労働面だけでなく、生活面でのストレスも技能実習生の失踪を招く要因となっています。

来日した実習生の多くは日本語能力が十分でないため、日常生活でのコミュニケーションに苦労します。また、母国とは大きく異なる日本の文化や習慣に適応できず、ホームシックに陥ることもあります。

さらに、劣悪な住環境や十分なサポート体制の欠如なども、実習生の精神的負担を増大させる要因といえるでしょう。特に都市部では住居費が高額なため、住環境が犠牲になることも少なくありません。

言語や文化の壁に加え、孤独感や疎外感を抱えた実習生の中には、失踪という選択肢に走る人もいるのです。

実習内容と期待のギャップ

来日前に抱いていた実習内容へのイメージと、実際の実習内容との間に大きなギャップがあることも、失踪の原因の一つです。

技能実習制度の本来の目的は、開発途上国の人材に日本で技能を学んでもらい、母国の経済発展に寄与してもらうことにあります。しかし実態としては、人手不足の企業が安価な労働力を確保するための手段として利用されているケースも少なくありません。

実習生の中には、高度な技術を学べると期待して来日したにもかかわらず、単純作業ばかりを任される人もいます。こうした期待とのギャップに失望し、失踪を選ぶ実習生も存在するのです。

転職の自由がないこと

日本人労働者であれば、労働環境や待遇に不満がある場合、転職という選択肢を取ることができます。しかし、技能実習生には基本的に転職の自由がありません。そのため、パワーハラスメントなどの問題から逃れる手段として、失踪を選ぶケースがあります。

厚生労働省の定義によれば、パワーハラスメントには「身体的若しくは精神的な苦痛を与えること」が含まれます。2020年6月から施行されたパワハラ防止法は外国人労働者にも適用されますが、告発の難しさから被害が表面化しにくい現状があります。

ブローカーや送り出し機関の関与

最後に、悪質なブローカーや送り出し機関の関与も見逃せません。

技能実習生を送り出す現地ブローカーの中には、日本での就労条件について虚偽の情報を与えたり、多額の保証金や手数料を徴収したりする悪質な業者も存在します。実習生は高額な借金を抱えて来日することになり、その返済のためにより高い収入を求めて失踪するケースもあります。

また、日本国内の一部監理団体や受入企業が、不当な違約金を設定していたケースも明らかになっています。このように、ブローカーや送り出し機関の不正な関与が、実習生を経済的に追い詰め、失踪を誘発している側面も否定できません。

送り出し国と受入れ国の両方で、不透明な仲介構造が失踪問題に関与しているといえるでしょう。

失踪防止のための対策

技能実習生の失踪が発生した場合、企業としては迅速かつ適切な対応が求められます。ここでは、失踪発生時の具体的な対応方法について解説します。

適切な労働条件の確保と労務管理

失踪防止対策の第一歩は、技能実習生に対する適切な労働条件の確保と、きめ細やかな労務管理にあります。

まず、技能実習生との雇用契約においては、労働条件を明確に文書化し、賃金計算方法や労働時間、休日・休暇などを詳細に定めておくことが重要です。

また、実習生の母国語による契約書や説明資料を用意し、内容を十分に理解してもらうことが望ましいでしょう。

労働条件に変更が生じる場合には、実習生との合意形成を図り、変更内容を書面で交付するなどの手続きが必要となります。

次に、賃金管理の面では、地域別・産業別の最低賃金を確実に上回る水準を維持するとともに、残業代や深夜勤務手当などの各種手当を適切に計算し、遅滞なく支払うことが求められます。

給与明細は母国語での説明を付けるなど、実習生が内容を理解できるよう配慮しましょう。

給与計算ソフトの活用や、専門家による定期的なチェックにより、コンプライアンス違反を未然に防ぐ体制を整えることも大切です。

加えて、労働時間管理の徹底も欠かせません。技能実習生の勤怠状況を正確に把握し、過重労働や違法な長時間労働が発生しないよう、適切にコントロールしていく必要があります。

36協定の締結や、勤怠管理システムの導入などを通じて、適正な労働時間の実現を目指していきましょう。

特に繁忙期には業務量の調整や人員配置の見直しを行い、特定の実習生に負担が集中しないよう配慮することが重要です。

生活面でのサポート体制の充実

技能実習生が安心して実習に専念するためには、生活面でのきめ細やかなサポートが欠かせません。

住居の確保は、実習生の生活基盤を支える重要な要素です。企業は、実習生向けの社宅や寮などを整備し、居住環境を整えることが求められます。住居の選定に際しては、通勤の利便性や安全性、設備の充実度などを十分に吟味することが大切です。また、プライバシーの確保や、宗教・文化に配慮した生活空間の提供も重要な要素です。緊急時の対応体制を整え、実習生のトラブルにも迅速に対処できるよう備えましょう。

医療面のサポートも、実習生の健康と安全を守る上で重要な役割を果たします。実習生が病気やケガをした際には、適切な医療機関を紹介し、必要に応じて通院に同行するなどのサポートを行いましょう。また、健康保険の加入手続きを適切に行い、実習生が安心して医療を受けられる環境を整備することも大切です。多言語対応の医療機関リストを作成したり、母国語対応の医療通訳サービスを利用できる体制を整えたりするのも効果的です。

コミュニケーション面では、実習生の悩みに寄り添い、適切なアドバイスを提供できる相談体制の構築が求められます。定期的な面談の実施や、多言語に対応可能な通訳の配置などを通じて、実習生とのコミュニケーションを円滑化し、信頼関係を築いていくことが重要です。また、日本語学習支援や日本文化理解のためのプログラムを提供することで、実習生の適応を促進することも効果的でしょう。

加えて、日本での生活に早期に適応できるよう、生活習慣や文化についての丁寧な説明を行うことも忘れてはいけません。買い物の仕方や公共交通機関の利用方法、日本の生活マナーなど、基本的な情報を母国語でまとめたガイドブックを作成するなどの工夫も役立ちます。

実習内容の明確化と事前説明の徹底

技能実習生が安心して実習に臨むためには、実習内容を明確に提示し、事前の説明を徹底することが重要です。

実習プログラムの策定に際しては、実習生の技能レベルや日本語能力を考慮し、無理のない計画を立てることが大切です。

到達目標や評価基準を明確に定め、実習生に対して丁寧に説明を行いましょう。また、必要に応じて母国語での資料を準備するなど、理解度を高める工夫も求められます。

特に重要なのは、実習内容と実際の業務内容に乖離がないようにすることです。

技能実習計画に記載されている内容と実際の作業内容が大きく異なると、実習生の失望や不信感につながります。実習計画は誠実に履行し、技能習得のプロセスを明確に示すことが重要です。

加えて、実習中のフォローアップ体制を整備し、定期的な面談を通じて実習生の習熟度や悩みを把握することも大切です。

実習内容に関する質問や相談に真摯に対応し、きめ細やかなサポートを心がけましょう。進捗状況に応じて個別指導を行ったり、追加の研修機会を設けたりするなど、柔軟な対応が求められます。

実習計画の見直しが必要な場合には、実習生との合意形成を図りつつ、柔軟に対応していくことも大切です。

実習生のキャリア目標や将来設計も踏まえ、双方にとって有意義な実習となるよう努めましょう。

送り出し国との連携強化

技能実習生の失踪防止には、送り出し国との緊密な連携が欠かせません。

送り出し機関との情報共有を密にし、実習生の適性や技能レベル、家庭環境などの情報を事前に入手することが重要です。これにより、適切な実習生の選抜や、実習プログラムの策定が可能となります。

また、受入れ企業の実情や求める人材像を送り出し機関に正確に伝え、ミスマッチを防ぐことも大切です。

実習生が来日する前に、オンライン面接や事前研修を実施し、日本での生活や仕事に関する正確な情報を提供することも効果的です。

実習生が抱く不安や疑問に丁寧に答え、来日後のギャップを最小限に抑える工夫が求められます。

また、問題が発生した際には、送り出し機関と連携して速やかに対応することが重要です。実習生の家族との連絡窓口を確保し、緊急時に迅速な情報共有ができる体制を整えておくことも有効でしょう。

加えて、送り出し国の文化や習慣への理解を深めることも大切です。宗教上の制約や生活習慣の違いなどを踏まえ、実習生が安心して生活できる環境を整備しましょう。

現地での研修や、現地スタッフとの定期的な交流などを通じて、異文化理解を深めていくことが重要です。

さらに、送り出し国の関係機関とのネットワーク構築も重要な要素です。

在外公館や現地の日本人会などと連携し、実習生のトラブルに迅速に対応できる体制を整えておくことが求められます。万が一の際には、これらのネットワークを活用し、実習生の安全確保に努めましょう。

定期的なコミュニケーションと面談の実施

技能実習生との定期的なコミュニケーションと面談は、失踪防止の重要な鍵を握っています。

日々の業務の中で、実習生とのコミュニケーションを積極的に図ることが大切です。

業務に関する指示や説明はもちろん、生活面での悩みや不安についても気軽に相談できる雰囲気を作ることが重要でしょう。

言語の壁を乗り越えるために、多言語対応のコミュニケーションツールやAI通訳サービスなどを活用し、実習生の母語での対話を推進するのも効果的な方法といえます。

イラストや動画を用いた説明資料の作成など、非言語コミュニケーションの工夫も役立ちます。

また、定期的な個人面談を実施し、実習生一人ひとりの状況を丁寧に把握することも欠かせません。

仕事の悩みや、生活面での課題などを聞き出し、適切なアドバイスを提供しましょう。

面談の記録を残し、実習生の変化を継続的にモニタリングすることも大切です。心の変化や行動の変化に早期に気づけるよう、担当者は観察力を養うことが求められます。

加えて、実習生同士の交流機会を設けることも、孤立感の解消に役立ちます。

親睦会やレクリエーションイベントなどを企画し、仲間意識を醸成することで、互いに助け合える関係性を築いていきましょう。

母国の文化を共有できるイベントを開催するのも実習生の心のケアに効果的でしょう。

地域社会との交流の機会を設け、日本人との友好関係を育むサポートも重要です。

キャリア支援とスキルアップ機会の提供

技能実習生の将来設計をサポートし、キャリア形成を支援することも、失踪防止に効果的です。

実習が終了する前から、その後のキャリアプランについて話し合う機会を持ち、本人の意向を確認することが重要です。

特定技能への移行を目指す実習生に対しては、必要な試験対策や情報提供を行い、スムーズな移行をサポートすることが求められます。

2019年4月から導入された「特定技能」制度により、技能実習2号を修了した実習生は条件を満たせば特定技能1号への移行が可能となり、在留期間をさらに5年延長することができます。

この制度を活用するための段階ごとの技能検定合格をサポートすることで、実習生に長期的な展望を持ってもらうことができます。

また、実習生のスキルアップを支援する研修プログラムの充実も重要です。

実習期間中に資格取得を支援したり、より高度な技能習得の機会を提供したりすることで、実習生のモチベーションを高め、失踪リスクを低減することができます。

帰国後のキャリアサポートも有効な対策です。母国での就職支援や、日系企業とのマッチング、起業支援などを通じて、実習生が帰国後も習得した技能を活かせる道筋を示すことが大切です。

こうした将来への展望が明確になることで、実習生は制度の枠内で計画的にキャリアを形成する動機付けとなります。

失踪発生時の対応方法

技能実習生の失踪が発生した場合、企業としては迅速かつ適切な対応が求められます。

ここでは、失踪発生時の具体的な対応方法について解説します。

失踪の事実確認と情報収集

まずは失踪の事実を正確に把握し、関連情報を収集することが重要です。

最終出社日や同僚からの聞き取り内容、居住地の確認結果などを時系列で整理し、文書として記録に残しましょう。

防犯カメラの映像や目撃情報、関連画像があれば保存し、今後の対応に必要な書類も準備しておくことが重要です。

事実確認と並行して、失踪に至った背景や原因についても可能な限り調査を行います。

実習生の言動の変化や人間関係のトラブル、労働条件への不満など、失踪の兆候があったかどうかを客観的に振り返ることで、再発防止につなげることができるでしょう。

監理団体や行政機関への報告

失踪の事実が確認できたら、法定期限内に監理団体と行政機関に報告を行う必要があります。

監理団体には第一報として事実経過を説明し、必要書類を添えて正式に届け出ます。

出入国在留管理庁(入管)に対しては、失踪を確認してから14日以内に「所属機関等に関する届出(離脱)」を提出します。

警察署にも失踪届を提出し、捜索協力を依頼することが推奨されます。

報告の際は、調査で得られた情報を漏れなく伝えることが重要です。

特に失踪の経緯については、時系列に沿ってわかりやすく説明できるよう準備しましょう。

報告が遅れたり、内容に不備があったりすると、企業の監理責任が問われるリスクがあるだけでなく、罰則の対象となる可能性もあります。

失踪技能実習生の捜索と帰国支援

失踪者の捜索は、基本的に監理団体や関係当局と連携して行います。

企業単独で捜索することは、トラブルに巻き込まれるリスクもあるため避けましょう。

一方で、失踪者の所持品の確認や関係者への聞き取りなど、企業にしかできない情報収集は積極的に実施することが求められます。

失踪者が発見された場合や自主的に戻ってきた場合は、監理団体と相談の上、状況に応じた対応を検討します。

帰国が確定した場合は、監理団体の指示に従って必要な手続きを行います。

パスポートや在留カードの返納、未払い賃金の精算、社会保険の資格喪失手続き、住民税の清算など、法令に則った適切な事務処理が必要不可欠です。

再発防止策の検討と実施

失踪への対応と並行して、再発防止に向けた取り組みを進めることが重要です。

失踪の原因を多角的に分析し、実習生の労働環境や生活面の課題を洗い出します。

技能実習計画通りの実施ができていたか、賃金支払いや労働時間は適正だったか、生活環境に問題はなかったかなど、総合的な検証が必要です。

課題に対しては、具体的な改善策を立案し、着実に実行に移すことが求められます。

単に待遇面の改善だけでなく、以下のような取り組みも重要です。

  • 日常的なコミュニケーションの充実(定期面談の実施、通訳の活用)
  • 相談体制の強化(匿名で相談できる窓口の設置)
  • 母国語による情報提供の充実
  • 日本語教育の強化
  • 文化交流イベントの開催
  • キャリアパスの明確化

再発防止策の進捗状況は定期的に振り返り、必要に応じて軌道修正を行いましょう。また、他の実習生への心理的影響にも配慮し、適切なフォローアップを行うことも重要です。

優良認定制度と失踪防止の関係

優良認定制度の概要と評価基準

外国人技能実習制度における優良認定制度について見ていきましょう。

この制度は、技能実習生の適正な受け入れと保護に取り組む優良な実習実施者や監理団体を認定するものです。

優良認定の評価は、ポイント制で行われます。

満点は120点で、合格基準は60点以上(50%)となり、失踪に関連する評価項目では、過去3年間の失踪率が以下のように評価されます。

    • 失踪者がゼロの場合は+10点
    • 5%未満の場合は+5点
    • 5%以上10%未満の場合は0点
    • 10%以上20%未満の場合は-5点
    • 20%以上の場合は-10点

なお、企業側の法令違反や不適切な対応が原因となる失踪の場合は特に重く評価され、場合によっては一発失格となることもあります。

これには以下のようなケースが含まれます。

  • 労働基準法違反(残業代未払い、過重労働など)
  • 人権侵害行為(暴力、ハラスメントなど)
  • 旅券や在留カードの取り上げ
  • 強制貯金や違約金の徴収

失踪率が与える優良認定への影響

失踪率の高さは、優良認定の取得・維持に大きな影響を与えます。

特に、複数回の違反があった場合や、改善までに時間がかかる場合は、認定の回復が困難になることもあります。

優良認定の基準には必須項目と加点項目があり、それぞれに配点が設定されています。必須項目(法令遵守状況など)の得点が低いと、加点項目の点数を獲得しても認定は難しくなります。

評価は過去3年間の実績に基づいて行われるため継続的な取り組みが求められます。

失踪率を低く抑えることは、優良認定の取得や維持に直結します。

技能実習生の受け入れを検討している企業や、すでに受け入れている企業は、この点に十分留意する必要があるでしょう。

優良認定取得のための失踪防止対策

優良認定を取得・維持するためには、失踪防止のための具体的な対策を講じることが重要です。

以下、労働環境の整備と生活支援の2つの観点から、効果的な対策を紹介します。

労働環境の整備

  • 雇用契約の適切な管理

・母国語による契約書の作成(労働条件、賃金計算方法、労働時間、休日・休暇など)
・契約変更時の合意形成と文書化
・技能実習計画との整合性確保

  • 適正な賃金管理

・地域別最低賃金の遵守
・残業代の正確な計算と支払い
・賃金明細の多言語化
・銀行口座開設のサポート

  • 適切な労働時間・休暇の管理

・法定労働時間の遵守
・適切な休憩時間の確保
・有給休暇の取得促進
・母国の祝日や文化的行事への配慮

生活支援の充実

  • 住居環境の整備

・適切な居住スペースの確保
・プライバシーへの配慮
・生活必需品の提供
・周辺環境の案内

  • コミュニケーション支援

・通訳の配置または翻訳アプリの活用
・定期的な面談の実施(最低月1回)
・匿名での相談窓口の設置
・日本語学習機会の提供

  • 生活サポート

・医療機関受診のサポート
・買い物や公共サービス利用の案内
・地域コミュニティとの交流機会の創出
・緊急時の対応体制整備

これらの対策を総合的に実施することで、技能実習生が安心して働ける環境を整備し、失踪リスクを大幅に減らすことができます。

優良認定の取り消しと受入れ停止のリスク

優良認定を取得できなかったり、取り消されたりした場合、以下のようなリスクがあります。

  • 受入人数の制限
    一般の監理団体・実習実施者は、優良認定を受けた場合と比較して受入可能人数が少なくなります。
  • 実習期間の制限
    優良認定がない場合、技能実習3号への移行ができず、最長実習期間が3年に制限されます。

さらに、失踪率が著しく高い場合、技能実習生の受入れ停止処分を受ける可能性があります。

  • 企業規模に応じた失踪者数の基準が設けられています

・常勤職員50人以上の企業:実習生総数の20%を超える失踪者が出た場合
・常勤職員20〜49人の企業:失踪者が10人を超えた場合
・常勤職員19人以下の企業:失踪者が6人を超えた場合

停止期間は原則3年間で、再開には改善計画の策定・実施など厳格な要件をクリアする必要があります。

また、受入れ停止となった場合、新規受入れができないだけでなく企業イメージの低下や監理団体との関係悪化など間接的な影響も大きくなります。

技能実習生受入れ機関の体制整備

技能実習生の失踪を防ぐためには、受入れ機関の体制整備が重要なポイントとなります。

ここでは、その具体的な方策について解説していきます。

失踪リスクの事前評価と対策立案

  • 過去の失踪事例や自社の状況を分析し、失踪の潜在的リスク要因を特定する
  • 送出し機関との連携を強化し、実習生の期待と現実のギャップを埋める
  • 月次・四半期ごとのリスク評価シートを作成し、定期的なモニタリングを実施
  • 実習生からの匿名フィードバックを収集し、改善点を抽出する仕組みの整備

適切な実習計画の策定と実施

  • 実習生のスキルレベルを考慮した段階的な実習計画の策定
  • 母国語での技能実習計画の説明と理解確認
  • 定期的な進捗確認と評価のフィードバック
  • 技能検定合格に向けた計画的な指導と必要なサポート
  • キャリアパスの提示による将来展望の共有

担当者の配置と教育・研修の実施

  • 技能実習生担当者の明確な指定と責任範囲の設定
  • 担当者向けの異文化理解研修の実施
  • コミュニケーションスキル向上のためのトレーニング
  • 労働関連法規や技能実習制度に関する最新情報の定期的な学習機会の提供
  • 監理団体と連携した定期的な研修プログラムの実施

外国人材の受入れ・管理体制の強化

  • 入国前のオンライン説明会や事前研修の充実
  • 来日直後の生活オリエンテーションの実施(公共交通機関の利用方法、生活ルールなど)
  • 日本語・日本文化教育プログラムの提供
  • 定期的な健康診断とメンタルヘルスケアの実施
  • 実習生と日本人社員との交流機会の創出(食事会、レクリエーションなど)
  • 母国の家族とのコミュニケーション支援(Wi-Fi環境の整備など)
  • 緊急時対応マニュアルの多言語化と周知

これらの体制整備を通じて、実習生が安心して技能を習得できる環境を構築することが失踪防止と優良認定取得の両面において重要です。

各企業の状況に応じて、優先順位をつけながら段階的に実施していくことをお勧めします。

まとめ

最新の統計から、技能実習生の失踪が増加し、特定の国籍や職種に偏りがあることが見えてきました。

失踪の背景には、過酷な労働環境、生活面のストレス、実習内容と実際の業務とのギャップが大きく影響しています。

これらの問題に対しては、受入れ企業として

・労働条件の整備と管理の強化
・生活支援体制の充実
・実習内容の明確化と事前説明の徹底
・リスク評価と組織体制の強化

などの対策を取っていく必要があります。

企業にとって、失踪対策は技能実習生の定着と安全な労働環境の実現に直結します。

失踪対策をしっかり行い、実習生が長く安心して働ける環境づくりに努めましょう。

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