外国人を雇用する企業にとって「外国人雇用状況届出書」は必ず押さえておくべき手続きのひとつです。
しかし、提出ルールや確認すべき在留資格のポイントが多く「何をどこまで対応すればよいのか分からない」と感じる担当者も少なくありません。
本記事では、届出書の目的から対象者、注意点、記載方法、電子申請の流れまでを整理し、企業の担当者が実務で迷わないよう重要なポイントをわかりやすく解説します。
この記事の監修(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人・外国人含め全国で「300社・5,000件」以上の採用支援実績を持つ人材採用コンサルタント。監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用にも取り組んでいる。外国人雇用労務士、外国人雇用管理主任者資格、採用定着士認定保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
外国人雇用状況届出書の目的とは

外国人を雇用する企業は、「外国人雇用状況届出書」を提出する義務があります。
この制度は、外国人労働者の雇用状況を適切に把握し、不法就労の防止や労働市場の健全化につなげるために設けられています。
以下では、4つの目的について解説します。
外国人の在留資格と就労範囲を正確に把握し、不法就労を防止するため
外国人雇用状況届出制度の最も重要な目的のひとつが、不法就労の防止です。
外国人が働けるかどうかは「在留資格」によって厳格に決められており、資格外の業務に従事させると不法就労助長罪に問われる可能性があります。
届出書を通じて、企業は在留資格の種類や就労の可否、就労可能な業務内容、在留期限を正確に把握する必要があります。
資格外活動許可の有無や、在留カード記載内容の確認は必須です。
適切な確認を行うことで企業は不法就労のリスクを避け、適法な雇用管理を実現できます。
企業の雇用実態を把握し、必要に応じて労働環境への指導・助言を行うため
外国人雇用状況届出制度は、企業が外国人をどのような形態で雇用しているかを把握するためにも活用されています。
提出された情報は、ハローワークなどの行政機関が確認し、必要に応じて労働環境の改善指導や助言を行う際の基礎資料となります。
不適切な労働条件や雇用管理の問題が疑われる場合、行政による早期の指導につながり、企業側もリスクを未然に防ぐことができます。
また、企業自身が雇用状況を把握することで、人材管理の精度向上にも貢献します。
離職した外国人労働者の状況を把握し、再就職につながる支援を行うため
外国人雇用状況届出書は、外国人労働者が離職した際の状況把握にも利用されます。
企業は離職時にも届出が義務付けられており、ハローワークはその情報をもとに必要な場合には外国人本人の求職支援や在留資格の相談につなげることができます。
外国人労働者は日本での就労を継続しやすくなり、労働市場全体の安定にも寄与します。
企業にとっては、適正な離職手続きを行うことで法令違反を防ぎ、行政との連携をスムーズに保つメリットがあります。
外国人労働者の雇用動向を統計的に把握し、政策立案に活用するため
外国人雇用状況届出制度を通じて集められた情報は、国が外国人雇用の実態を統計的に把握するための基礎データとして使用されます。
これらのデータは、外国人材の受け入れ政策、特定技能制度、労働市場施策など、各種政策の立案に活用されます。
業種別の雇用状況や都道府県別の状況等が可視化されるため、国として適切な施策を講じるための重要な材料となります。
企業は正確な届出を行うことで、労働市場全体の政策形成にも貢献することになります。
外国人雇用状況届出書の対象者とは

外国人雇用状況届出書は、外国人労働者を雇用したすべての事業主に提出義務がある届出であり、雇用保険加入の有無や雇用形態を問わず必要になります。
ここでは、制度上の対象者と、企業が特に注意すべきケースを整理して解説します。
雇用保険に加入する場合は、雇用保険被保険者資格取得届を提出する
外国人を雇用し、雇用保険の加入条件である「31日以上の雇用見込み」「週20時間以上の労働」を満たす場合、企業は「雇用保険被保険者資格取得届」を提出する必要があります。
この届出は、外国人労働者が雇用保険加入者として適切に保護されるための重要な手続きで、雇用した日が属する月の翌月10日までの提出が義務付けられています。電子申請も可能です。
また、外国人に対して雇用保険手続きを行う際は、在留資格や在留期間、就労可能性(資格外活動許可の有無)を確認したうえで、記載内容に誤りがないよう注意する必要があります。
雇用保険の手続きと外国人雇用状況届出書は同時提出が可能であり、適切に処理することで企業の法令遵守と労働者の保護につながります。
派遣アルバイト・派遣社員の場合は雇用主である派遣元が届け出る
派遣労働者の場合、雇用契約を結ぶのは派遣先ではなく派遣元(派遣会社)であるため、外国人雇用状況届出書を提出する義務を負うのは派遣元となります。
派遣先企業が業務を指示する場合でも、雇用主が派遣元である以上、在留資格・在留期限の確認や雇用開始・離職の届出、雇用実態の把握といった手続きは、派遣元が責任をもって行う必要があります。
また、派遣元は派遣先で行う業務が在留資格に適合しているかを確認し、不法就労とならないよう注意しなければいけません。
届出時に注意すべきポイント

外国人雇用状況届出書を提出する際には、企業として必ず押さえておきたい重要項目があります。
届出漏れや確認不足は、不法就労の発生や企業側の法的リスクにつながるため、確実に理解しておきましょう。
在留資格と就労可能範囲を正確に確認する
外国人の雇用では、まず在留資格とその就労可能範囲を正確に把握することが不可欠です。
在留資格は「日本でどのような活動が許されているか」を示すもので、資格ごとに従事できる業務内容が厳密に定められています。
在留資格に合わない仕事をさせた場合、企業は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。
在留カードの在留資格の欄や就労制限の有無を必ず確認し、必要に応じて裏面にある資格外活動許可の有無もチェックしましょう。
提出期限を守り遅延リスクを防止する
外国人雇用状況届出書は、以下のタイミングで提出が義務付けられています。
- 雇い入れの場合:雇入れの翌月10日まで
- 離職した場合:離職日の翌日から起算して10日以内
提出を怠った場合、企業には30万円以下の罰金が科される可能性があります。
これは「遅延」だけでなく「未提出」「虚偽の届出」も対象です。
業務の繁忙で忘れてしまうケースも多いため、雇用開始や離職が発生した日を即時共有するフローを整えたり、人事システムと連動したアラートを設定したりするなど、社内管理体制の整備が不可欠です。
在留期限と資格外活動許可の有効期限を管理する
在留期限が切れた外国人を雇用し続けると、企業は不法就労助長罪に問われるおそれがあります。
そのため、在留期限や資格外活動許可の期限を企業が主体的に管理する必要があります。
更新手続き中の場合でも、「在留期間更新許可申請中」の控えを確認し、必ずコピーを保管しましょう。
期限管理は人事担当者だけに任せず、全社的な管理と記録が重要です。
違法雇用のリスクに注意する
在留資格に合わない職務内容、過度な残業、資格外活動許可の範囲外での就労などは、すべて「違法雇用」と判断される可能性があります。
企業側が知らなかったとしても確認義務違反とされ、行政指導や罰金の対象になります。
職務内容と在留資格の適合性は、採用時だけでなく配属変更時や業務内容の変更の際も必ず再度確認し、法令に反しない運用が必要です。
在留カードの偽造有無を適切にチェックする
在留カードの偽造は依然として発生しており、企業側のチェック義務が求められています。
確認すべきポイントは主に下記の点です。
- ホログラム(桜模様の動き)
- 文字のフォント・位置
- 在留資格・期間
- 裏面の変更履歴
より確実に確認するには、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等番号失効情報照会」を必ず活用しましょう。
留学生の資格外活動許可を必ず確認する
留学生のアルバイト雇用では、資格外活動許可(週28時間以内)や長期休業期間中の特例(1日8時間まで)を必ず確認する必要があります。
許可がなければ留学生は働けません。雇用主が確認せず雇った場合、企業にも法的責任が及びます。
在留カード裏面には「資格外活動許可欄」の記載があるため、必ず現物で確認しコピーを保存しましょう。
契約内容と在留資格の整合性を確保する
雇用契約の業務内容が在留資格と一致していない場合、不法就労の扱いになる可能性があります。
例えば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で採用したのに単純労働に従事させたり、「家族滞在」の在留資格で、本来就労できないにもかかわらず許可範囲を超える業務を任せたりするのは非常に危険です。
企業は職務内容を明確に記載した契約書を作成し、配属変更をする際は在留資格の範囲を再確認するなど、整合性を常に確保することが重要です。
外国人雇用状況届出書の記載方法

外国人雇用状況届出書の記載方法は、外国人労働者が雇用保険の被保険者になるかどうかによって提出先や扱いが異なります。
ここでは、雇用保険加入の有無ごとに手続きの流れと記載ポイントを整理します。
雇用保険の被保険者の場合(雇用保険に加入する)
外国人労働者が雇用保険に加入する場合、企業は「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークで、書類は紙での提出のほか電子申請(e-Gov)も可能です。
届出書に記載すべき主な項目は以下のとおりです。
- 氏名・生年月日・国籍
- 在留資格および在留期間
- 在留カード番号
- 資格外活動許可の有無
- 雇入れに係る事業所の名称および所在地など、取得届に記載が必要な事項
提出期限は、雇入れ日の属する月の翌月10日までとなっています。
参考:厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」、ハローワークインターネットサービス「雇用保険被保険者資格取得届」、デジタル庁「e-Gov電子申請」
雇用保険の被保険者ではない場合(雇用保険に加入しない)
短時間勤務のアルバイトや31日未満の雇用契約など、雇用保険に加入しない場合でも、企業には「外国人雇用状況届出書」の提出義務があります。
届出書には主に以下の内容を記載します。
- 氏名・国籍・生年月日
- 在留資格・在留期間
- 在留カード番号
- 雇用形態(アルバイト/パートなど)
- 資格外活動許可の有無
- 雇入れ又は離職に係る事業所の名称、所在地等
提出期限は雇入れ・離職ともに翌月の末日までと定められています。
また、提出先は当該外国人が勤務する事業所施設(店舗、工場など)の住所を管轄するハローワーク窓口・電子申請(外国人雇用状況届出システム)のいずれかで提出できます。
参考:厚生労働省「外国人雇用はルールを守って適正に」「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」「外国人雇用状況届出システム」
まとめ
外国人雇用状況届出書は、外国人を雇用する企業に義務付けられた重要な手続きです。
在留資格や就労範囲を正確に把握することで、不法就労を防ぎ、適切な雇用管理を行えます。
また、離職者の状況把握や雇用統計の蓄積は、労働環境の改善や政策立案にも役立ちます。
届出制度を正しく理解し期限を守って手続きを行うことで、外国人労働者が安心して働ける環境づくりにつながるでしょう。
あなたの採用活動をサポート!
外国人採用の窓口は
外国人採用に特化したBtoBマッチングサービスです。
日本全国 10,000社 を超える
監理団体・登録支援機関・外国人紹介会社を一括で検索し
簡単に比較・相談・検討することができます。
「外国人の採用方法が分からない」
「技能実習生や特定技能外国人の依頼先が分からない」
「監理団体や会社がたくさんあって探すのが大変」
「手続きや申請が複雑で自社では行えない」
といったお悩みのある方は
今すぐ無料相談ダイヤルまでお電話ください!
外国人採用の専門家が丁寧に対応させていただきます(全国対応)。
・外国人採用のご相談
・監理団体のご紹介
・登録支援機関のご紹介
・外国人紹介会社のご紹介
・行政書士事務所のご紹介
ご利用料金は完全無料です。
サイトのご利用から監理団体・登録支援機関等のご紹介まで
一切料金はかかりません。
安心してご利用くださいませ。
