外国人採用ガイド

特定技能「宿泊」とは?ホテルや旅館などで従事可能な業務内容、許可要件について解説

観光需要が高まる一方で、人手不足はますます深刻化しており、ホテルや旅館の採用担当者からは「どの在留資格で、どこまで業務を任せられるのか」という疑問が多く寄せられています。

フロント対応からレストランサービスまで幅広い業務がある宿泊業界では、特定技能「宿泊」が現場の課題解決にどれほど有効なのかを知りたいと考える方も少なくありません。

そこで本記事では、特定技能「宿泊」の基本概要、従事可能な業務や対象となる施設、1号・2号の技能水準や試験・日本語要件、受け入れ企業に課される条件、他の在留資格との相違点、さらに登録支援機関の活用方法までを、実務に即した内容で分かりやすく整理します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

特定技能「宿泊」とは?

特定技能「宿泊」は、深刻化する人手不足に対応するために設けられた特定技能制度の一分野です。

この在留資格を取得した外国人材は、ホテルや旅館においてフロント業務や接客、レストランサービスなど幅広い業務に従事することが可能です。

さらに、他の就労資格では認められにくい清掃やベッドメイキングといった関連業務にも、付随的に携われる点が大きな特徴となっています。

特定技能「宿泊」の在留資格の概要

特定技能「宿泊」には、技能水準や在留条件が異なる1号と2号の2種類が設けられています。

特定技能1号は、宿泊業務に必要な基礎的な知識や技能を備えた人材を対象とし、在留は最長5年間まで認められます。

一方、特定技能2号は、現場で複数の従業員を指導できる水準の熟練者を対象としており、在留期間の更新に制限がなく、家族の帯同も認められています。

特定技能1号と2号の在留資格の主な違いは以下の通りです。

特定技能1号と2号の違い

在留資格 特定技能1号 特定技能2号
在留期間 通算5年が上限 上限なし(更新は必要)
技能水準 一定水準以上の技能 熟練した技能
日本語能力水準 JLPT(N4)相当以上 定めなし
実務経験 不要 2年以上
支援義務 10項目の義務的支援あり 支援義務なし
家族帯同 不可 配偶者と子の帯同可

特定技能「宿泊」の業務内容

特定技能「宿泊」で従事できる業務は幅広く、宿泊施設におけるフロント対応、企画や広報、宿泊客への接客、レストランでのサービス提供など多岐にわたります。

基本的には幅広い業務に従事することが求められますが、在留期間の一部をフロント専任など特定の業務に割り当てることも可能とされています。

また、館内売店での商品販売や備品の点検・交換といった関連作業を付随的に行うことも可能です。ただし、それら関連業務のみに従事することは認められていないため注意が必要です。

加えて、特定技能2号では、これらの業務のほか、複数の従業員を指導し、現場を取りまとめる役割が求められます。

特定技能「宿泊」の受け入れ対象施設

特定技能「宿泊」の受け入れ先となるのは、旅館業法に基づいて営業許可を得た旅館やホテルです。

一方で、同じ旅館業法の制度内でも、簡易宿所営業や下宿営業は対象外とされています。

そのため、特定技能人材を採用する際には、許可区分が要件に合致しているかを事前に確認することが重要です。

特定技能「宿泊」に求められる技能水準

宿泊分野で働く外国人材には、サービス提供に必要な専門知識や現場での対応力が求められます。

そのため、外国人の技能レベルを確認するための技能評価試験や日本語力の確認が制度に組み込まれています。

どのような基準が設けられているのかを順に見ていきましょう。

宿泊分野特定技能評価試験

特定技能「宿泊」の技能水準は、1号・2号ともに宿泊分野特定技能評価試験に合格することで確認されます。

特定技能1号は、フロントや企画広報、接客、レストランサービスなどに関する基礎知識や、安全衛生・接遇を問う学科試験と、宿泊客への適切な対応力を測る実技試験で構成されます。

一方、特定技能2号は現場のリーダーを想定し、専門知識や管理・指導能力を含む学科と実技で評価され、いずれも合格基準は正答率65%以上と定められています。

ただし、技能実習2号の「宿泊職種(接客・衛生管理)」を良好に修了した場合は、特定技能1号の技能試験が免除されます。

特定技能1号は日本語試験の合格が必要

特定技能1号を取得するには、日本語能力を証明するための試験に合格する必要があります。

対象となるのは「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」であり、いずれかに合格すれば要件を満たすことができます。

国際交流基金日本語基礎テストは、生活や職場で必要となる基本的な日本語理解を確認するもので、「文字と語彙」「会話と表現」「読解」「聴解」の4つのセクションを通じて評価されます。

一方、日本語能力試験(JLPT)のN4は、日常的な会話の基礎を理解できる水準とされ、多くの方が受験しています。

また、技能実習2号を良好に修了している場合は、修了した職種や作業内容にかかわらず日本語試験が免除されます。なお、特定技能2号に移行する際には日本語能力の基準は設けられていない点も特徴です。

特定技能2号は実務経験が求められる

特定技能1号では、実務経験を持たなくても試験合格によって許可基準を満たします。

一方、特定技能2号は、現場で複数の従業員を指導できる立場が想定されており、管理的な役割を担うことが前提となっています。

そのため、宿泊施設において複数の従業員を指導しながら、フロント、企画・広報、接客、レストランサービスなどの業務に2年以上従事した経験が必須とされています。

受入れ企業が満たすべき基準

特定技能の在留資格を活用するには、受入れ企業と外国人との間で適正な雇用契約を締結することが前提となります。

ここからは、受入れ企業に求められる具体的な基準について順を追って確認していきましょう。

宿泊分野特定技能協議会への加入

特定技能外国人を宿泊業で受け入れるには、在留資格の申請前に宿泊分野特定技能協議会へ加入しておく必要があります。

この協議会は、宿泊施設や登録支援機関を構成員として組織され、制度の適正な運用や情報共有を目的としています。

加入手続きはe-Gov電子申請を通じて行われ、申請から入会通知書が発行されるまでにはおおむね1か月程度を要する点に注意が必要です。

また、入会金や年会費はかかりませんが、登録内容に変更があった場合は速やかに届出を行う必要があります。

適正な雇用契約の締結

特定技能「宿泊」で外国人材を受け入れるには、法務省令で定められた適正な雇用契約に関する基準を満たすことが求められます。

適正な契約の内容として代表的な条件は以下の通りです。

  • 業務内容が特定技能「宿泊」で認められる業務であること
  • 所定労働時間が他の職員と同等であること
  • 報酬額が日本人と同等以上であること
  • 教育訓練や福利厚生について差別的な取扱いをしないこと
  • 一時帰国を希望する際には必要な有給休暇を取得できること

これらを満たすことで、外国人材が安心して働ける環境を整備することが可能となります。

支援計画の策定と実施

特定技能1号の外国人を雇用する場合、受入れ企業は日常生活や職場環境への適応を支援するための計画を策定し、実施する義務があります。

義務が課せられている支援内容は以下の10項目です。

  1. 事前ガイダンスの実施
  2. 出入国送迎の支援
  3. 住宅確保や生活に必要な契約のサポート
  4. 生活オリエンテーションの実施
  5. 公的手続きなどへの同行
  6. 日本語学習機会の提供支援
  7. 相談・苦情への対応
  8. 日本人との交流促進
  9. 転職支援(企業都合による契約解除の場合)
  10. 定期面談・行政機関への通報

これらの支援は、外国人材が安心して就労できる環境づくりに直結し、雇用の安定や職場での定着にも効果があります。なお、特定技能2号については支援義務が課されていません。

労働法令などの遵守

特定技能の受入れ企業は、雇用にあたり労働関係法令や社会保険制度、租税に関する規定を遵守することが求められます。

例えば、労働条件の設定や社会保険の加入、税金の適正な納付に不備がある場合には、特定技能の外国人を雇用する際の在留資格申請で不許可になる可能性があります。

この要件は、過去の罰則歴に関するものではなく、特定技能外国人を雇用する全期間を通じて継続的に守り続けることが必要です。

同じ業務で離職者を発生させていないこと

特定技能の外国人を受け入れるには、直近1年以内に同一業務で離職者を出していないことが前提となります。

ただし、定年退職や重大な過失による解雇、雇用期間の満了、自発的な退職といったケースは対象外です。

この規定が設けられている理由は、企業側に起因する離職者が同一業務で発生している場合、人手不足の解消を目的とした特定技能制度の趣旨に合わないためです。

外国人の行方不明者を発生させていないこと

特定技能制度を利用する企業は、直近1年以内に外国人従業員の行方不明者を発生させていないことが条件とされています。

もっとも、企業に過失がなく不可抗力によって行方不明が発生した場合は対象外として扱われます。

欠格事由に該当しないこと

特定技能の外国人を雇用するには、受け入れ企業が欠格事由に該当していないことが求められます。

欠格事由の主な内容は以下の通りです。

  • 過去5年以内に拘禁刑以上の刑を受けていないこと
  • 過去5年以内に労働関係法令違反で罰金刑以上を受けていないこと
  • 過去5年以内に社会保険法令違反で罰金刑以上を受けていないこと
  • 過去5年以内に入管法や労働法令に関連して不正または著しく不当な行為を行っていないこと

ここでいう不正・不当な行為には、暴行や脅迫、監禁、在留カードや旅券の取り上げ、不当な外出制限などが含まれます。

他の在留資格との比較

宿泊業の現場には、接客や企画、清掃など幅広い業務があり、特定技能に加えて他の在留資格で就労する外国人も見られます。

そこで、ここからは特定技能と他の在留資格との違いを整理しながら解説していきます。

技術・人文知識・国際業務

技術・人文知識・国際業務は、理系・文系の専門分野や外国語・外国文化に関する知識を基盤とした活動を対象とする在留資格です。

ホテルや旅館においては、フロントでの顧客対応や予約管理、外国人宿泊客への通訳・翻訳業務などの業務に従事することが想定されます。

ただし、この在留資格では、ベッドメイキングやレストランでの配膳といった宿泊者向けサービスの多くは、原則として認められていません。

特定技能「外食」

特定技能「外食」は、飲食店における調理や接客に従事する外国人材を受け入れるために設けられた在留資格です。

この在留資格を持つ人材は、ホテル内のレストランであっても通常の飲食店と同様にホールスタッフやキッチン業務を担当することが認められています。

ただし、活動範囲はあくまでレストランサービスに限定されるため、宿泊部門のフロント業務や宿泊サービス全般に従事することはできない点に注意が必要です。

特定技能「ビルクリーニング」

特定技能「ビルクリーニング」は、ホテルや旅館の客室における清掃作業に従事できる在留資格であり、ベッドメイキングもその一部として行うことが認められています。

ただし、ベッドメイキングのみを専属的に担当し、他の清掃やアメニティ補充を行わない場合は、許可されない可能性があります。

特定技能「ビルクリーニング」は、清掃用洗剤の取り扱いや設備の点検など、一定の専門性を伴う業務を前提としているため、ベッドメイキングに限定されると制度の趣旨に合致しなくなるためです。

また、この資格ではフロント業務やレストランサービスといった清掃業務以外の業務に従事することは認められていません。

特定活動46号(本邦大学卒業者)

特定活動46号(本邦大学卒業者)は、日本の大学を卒業した外国人を対象とし、日本語での円滑な意思疎通が必要とされる業務に従事することができる在留資格です。

このため、ホテルや旅館においても接客や予約管理など幅広い業務を担当することが可能とされ、多様な場面で活躍の場が用意されています。

一方で、専らベッドメイキングといった単純作業のみを担うことは認められておらず、主にフロント業務を中心とした採用に適しています。

加えて、風俗営業に該当する業務に従事することはできないため、風営法の規制を受ける施設での勤務は避けなければなりません。

支援業務は登録支援機関に委託可能

特定技能1号の外国人を雇用する場合、受入れ企業には日常生活や職場への適応を支援する義務が課されています。

この支援は、地域社会の安定や外国人が安心して就労できる環境づくりに不可欠であり、不十分な支援の実施は在留期間の更新に不利な影響を与える可能性があります。

もっとも、企業によっては人員や体制の制約から十分な支援を行うことが難しいケースもあります。

その場合には、入管庁の名簿に登録された登録支援機関に業務を委託でき、委託によって企業は支援義務を適正に履行したものと扱われます。

まとめ

特定技能「宿泊」では、受け入れ対象となる施設の種類、求められる技能水準、日本語試験や実務経験の要件に加え、企業が遵守すべき基準や支援体制まで多岐にわたる条件が定められています。

あわせて、他の在留資格との相違点や登録支援機関の役割についても確認してきました。

宿泊業で外国人材の採用を検討する企業にとって、制度を正しく理解し法令を遵守することは不可欠です。

要件の複雑さに不安を感じる場合には、専門家へ相談しながら受け入れ体制を整えることが、安定した雇用の確保と将来的な事業の発展につながります。

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