日本で働く外国人労働者が増えていることをご存知でしょうか?
2020年10月末には過去最高となる172万人の外国人が日本で就労しています。
東日本大震災以降は右肩上がりで外国人就労者が増えており、少子化による労働力減少が避けられない日本においては企業の労働力として欠かせない存在となっています。
(参考:外国人雇用の状況について)
本記事では外国人採用におけるメリットとデメリットについて解説していきます。
これから外国人労働者の採用を検討している事業主や採用担当者の参考になれば幸いです。
INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
外国人採用をする6つのメリット
始めに外国人採用の6つのメリットについて紹介します。外国人採用のメリットを正しく理解して、自社にとって外国人採用が必要かどうか判断する材料としてください。
労働力不足の解消
外国人採用を行うメリットの1つ目は労働力不足の解消につながることです。
日本では少子化の影響を受け、若手層の人材採用が難しくなっています。若手層は売り手市場で、知名度のある大手企業や人気の高い企業に応募が偏る課題があるでしょう。
外国人採用を検討することで採用が難しい若手層の母数が広がり、希望する人材の採用可能性が高まります。日本にいる若手の外国人は全体的に学習意欲が高く、優秀な人材を確保できる可能性があります。
外国人採用に向いている職種・業種は以下のとおりです。採用活動の参考にしてみてください。
・電子・電気や機械系、IT系のエンジニア(専門スキルが求められる)
・農業業界(地方での採用)
・宿泊・飲食・サービス業界(慢性的な人材不足)
訪日外国人への対応が可能
外国人採用を行うことで訪日外国人の対応ができる点もメリットの1つです。さまざまな母国語の外国人を雇えば、英語や中国語、ベトナム語など多くの言語に対応することができ、多様な訪日外国人に対応しやすくなります。
昨今は新型コロナウイルスの影響により訪日外国人は減少傾向にあります。しかし、政府は観光に力を入れており、「明日の日本を支える観光ビジョン」にて2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円とする目標を掲げています。多言語に対応することで多くのビジネスチャンスを取り込むことができるでしょう。
(参照:「明日の日本を支える観光ビジョン」)
また外国人の力を活かせば、出身国の文化や価値観を取り入れたサービス提供といった前向きな効果が期待できます。訪日外国人を対象のビジネスを展開している企業は、外国人採用が大きな助けになるといえるでしょう。
海外進出の足掛かり
外国人採用は海外進出への足がかりともなります。
海外へ進出するときの障壁の1つに、現地の法律や習慣、言語が挙げられます。進出を考えている国の出身者を採用すれば、その国への理解も深まりやすいでしょう。
希望する国の言語や習慣に精通している人材の採用には時間を要するケースがあります。すぐに採用できるわけではないため計画的に採用を進めていきましょう。
今までにないアイデアや技術が生まれる
外国人採用を行うメリットの1つに、新たなアイデアや技術が生まれる可能性が挙げられます。さまざまなバックグラウンドを持つ外国人を採用することで日本の凝り固まった概念を崩すきかっけとなり、技術やアイデアが発展する可能性があります。
今まで日本人だけでは得られなかった新しい着眼点が見つかったり、技術を積極的に取り入れることは外国人採用の大きなメリットです。外国人ならではの切り口から既存事業にメスを入れ、ビジネスを根本から刷新するのも良いでしょう。組織へ停滞感を感じ打開策を考えている場合は、外国人採用を検討してみてはいかがでしょうか。
社内コミュニケーションの活性化
社内のコミュニケーションが活性化するのも外国人採用を行うメリットの1つといえます。
採用した外国人が必ずしも日本語が堪能でないこともあります。そのため、仕事の指示をしたときに日本語の微妙なニュアンスを汲み取れず、意図した内容と異なる結果になってしまうこともあります。今までは阿吽の呼吸で行ってきたことも、しっかり言語化して詳細に説明することが求められるケースが多いです。一見デメリットにも見えますが、外国人を迎え入れることが社内交流のきっかけになる場合もあるのです。
また外国人採用を行うことで、日本にはない文化や習慣、価値観が社内に入ってきます。今まで触れたことのない文化や習慣、価値観に触れることは日本人社員にとってよい刺激となるでしょう。よい刺激の連鎖によって社員全体のモチベーションが向上し、業績向上や生産性向上、従業員のレベルアップにつながることもあります。
助成金の活用も可能
外国人採用を行うことで助成金を活用できる点もメリットと言えます。直接的なメリットでは無いものの、国からの助成金だけでなく自治体が独自に給付している助成金制度を活用できる場合もあるでしょう。
外国人の採用活動には、求人広告の出稿費用や人材紹介費用だけでなく、外国人ならではの受入れコストもかかります。これらのコストを少しでも抑えるためにも助成金活用を検討してみましょう。
具体的な助成金の種類や申請手続きについては、以下の関連記事から確認してみてください。
外国人採用をする3つのデメリット
続いて、外国人採用のデメリットについても確認してみましょう。
外国人雇用ならではの手続きが必要
外国人採用には、いくつかの手続きが発生することがデメリットと言えます。在留資格の確認や申請手続など手間が増えるのは事実です。
■外国人採用に必要な手続や知識
- 外国人採用の労務知識
- 在留資格の確認、就労できる在留資格の取得サポート
- 外国人の受入れ体制の整備
- 一定の人数を採用する場合は管理責任者を選定 など
就労できる在留資格は一般的に申請から交付まで1〜3か月ほど時間がかかります。在留資格の申請には在留資格認定証明書があると審査の時間が短縮されますが、発行には入国管理局における事前の審査が必要です。これらの手続きを企業からサポートしていくことが求められます。
文化や習慣の違いによるトラブルが発生しやすい
文化や習慣の違いによってトラブルに発展する可能性もあります。文化や習慣の違いは社内のコミュニケーションを活性化させることにつながる反面、トラブルへ発展する恐れがあることに注意が必要です。
トラブルが起きないようにするには会社全体で多様性を受け入れるようにトレーニングをしましょう。外国人労働者を受け入れるときは、文化や習慣の違いがあり、各々を尊重するように伝えるように心がけてください。
宗教上の理由から食べられない食材があったり、特定の行事に参加する人もいたりします。社員一人ひとりが多文化を理解し受け入れるとともに、必要に応じて就業規則の変更や社内習慣の見直しも検討しましょう。
また日本人は勤勉で残業をいとわない人が多いですが外国人労働者の中には仕事とプライベートを明確に分ける価値観を持っている人もいます。働き方の価値観は人それぞれですので違いを受け入れる職場の環境作りや社員の意識作りが重要といえます。
コミュニケーションの齟齬が起きやすい
外国人採用を行うときには、コミュニケーションの齟齬が起きやすい点にも注意が必要です。
採用する外国人の日本語レベルによっては意思疎通がうまくいかないこともあるでしょう。意思疎通がうまくいかないからと言って感情を表に出したり、コミュニケーションを避けたりせず、しっかりと向き合って対話をしていく必要があります。
管理職の立場であればマネジメントの仕方にも注意を払いましょう。日本人の部下の場合、多くを伝えなくても部下が汲み取って業務を進めてくれることがあります。しかし、外国人の場合、具体的な指示まで伝えなければ業務を行わない場合もあります。決して悪気があるわけではなく、コミュニケーションの方法・考え方が異なることが原因です。
外国人を採用するときは、コミュニケーションの方法や考え方に違いがあることを理解し、具体的な指示を出すように社員全体へ周知してください。また採用後も日本語力の向上をサポートするとスムーズに職場に溶け込むことができるでしょう。
メリット・デメリットを把握して自社採用に活かそう!
労働力が減少する日本では外国人は貴重な働き手として活躍してくれる可能性があります。外国人を採用するメリットは数多くありますが、事前に注意点を理解していないとトラブルのもととなりやすいのも事実です。
外国人採用を行う前にメリットとデメリットを正しく把握し、自社に必要かどうか十分に検討しましょう。採用する場合は従業員全員の理解を深め、採用後も活躍してくれるように職場環境の整備を行うと採用した外国人は長く活躍してくれるはずです。
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