特定技能制度は、人材不足が深刻となっている「介護/ビルクリーニング/工業製品製造業(素形材、産業機械製造、電気・電子情報関連)/建設/造船・舶用工業/自動車整備/航空/宿泊/自動車運送業/鉄道/農業/漁業/飲食料品製造業/外食業/林業/木材産業」の16分野において、一定の技能と日本語能力を有する外国人材を受け入れることが可能な制度です。
※2024年3月に新たに追加された「自動車運送業/鉄道/林業/木材産業」の受け入れ開始時期は未定。
特定技能外国人は、技能評価試験と日本語能力試験に合格しているため、一定以上の技能と日本語能力を備えています。また、日本人と同様にフルタイムで就労できるため、即戦力として期待でき、人材不足解消を目指す企業から注目を集めています。
しかし、特定技能外国人材の受け入れに必要な費用が分からず二の足を踏む企業も少なくありません。受け入れ方法によって費用項目や相場が異なるため、事前に情報収集することが重要です。
本記事では、特定技能の外国人を受け入れる際にかかる費用についてご説明します。
INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
特定技能外国人の受入れの流れをおさらい
特定技能とは、2019年4月より新設された在留資格で、特に人手不足が顕著な産業分野における外国人受入れを促進するものです。
特定技能ビザの取得は、日本で働く技能実習生を切り替える場合と、海外の現地採用をした外国人に特定技能ビザを取得させる2パターンの方法があります。国内採用と現地採用の場合で、受け入れ費用は上下します。それぞれ何にいくらかかるのか確認していきましょう。
国内採用・現地採用ともにかかる費用
まずは、国内採用、海外の現地採用ともにかかる費用について解説します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
人材紹介費 (広告費や事前ガイダンス等費用の場合もあり) | 15万~90万円 | 1回/1名 | 1名15万円~30万円程度の固定額、または年収の30%程度の人材紹介料です。 登録支援機関によっては人材紹介費ではなく、求人広告費や、事前ガイダンス・生活オリエンテーション費用という明細になっていることもあります。 |
在留資格申請費 | 10~15万円 | 1回/1名 | 外部委託した場合にかかる費用。社内で対応できる人材がいれば自社申請も可能です。 |
社宅準備費 | 10~50万円 | 1回/1名 | アパートや家具・家電・備品などの準備費用です。すでに社宅等をお持ちの場合はかからない項目です。 |
健康診断費 | 1万円 | 1回/1名 | 就業開始までに行う健康診断費用です。 |
合計 | 36~156万円 | ー | 1人あたりの初期費用目安 |
人材紹介費用
特定技能外国人を人材紹介会社などに紹介してもらった場合は、1人あたり15万円~30万円程度の固定額、または1人あたり年収の30%程度の人材紹介費用を支払います。
利用する人材紹介会社によって人材紹介費用は上下するので、複数社を比較するとよいでしょう。
在留資格を特定技能に切り替える手数料
特定技能のビザ切り替えの手続きは煩雑なので、行政書士などの専門家に外部委託するケースが多いです。手続きを委託する場合は、1人あたり10万~15万円ほどの費用がかかります。
金額の大きさも気になるとは思いますが、申請の不備などで切り替えができなかった、または切り替えまでに想定以上に時間がかかってしまったなどのトラブルが起きてしまわないよう、特定技能や外国人材採用の実績のある信頼して任せられる専門家にお願いしましょう。
住まいに関わる費用
特定技能外国人の住まいは受入れ企業が用意・サポートする必要があります。
選択肢としては以下の3つがあります。
① 自社ですでに持っている社宅を提供する | 家賃の一部を本人に負担してもらうことが可能です。 |
② 受入れ企業の名義で物件を借りて提供する | 敷金・礼金・保証料などの初期費用を本人に負担してもらうことはできません。家賃の中から、給料や近隣の家賃相場と照らし合わせた常識的な金額を本人に負担してもらうことが可能です。 |
③ 外国人本人が不動産契約を行う補助をする | 不動産会社や物件情報の提供、内見や契約時の同行、連帯保証人になる、または保証会社を確保し緊急連絡先になる(保証料は受入れ企業負担)などの補助を行えば、初期費用・毎月の家賃ともに支援は不要です。 |
なお、住まいの広さや特定技能外国人本人から徴収できる家賃については一定の基準が設けられているので必ず確認してください。
現地採用にかかってくる費用
上記にプラスして、海外からの現地採用時にかかる費用の内訳を解説します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
現地訪問費 | 20万~30万円 | 1回/2名 | 2名の社員で、2日間の訪問の場合の目安です(往復の航空券代、宿泊費、食事代など)。オンラインで面接を完結する場合など、現地に行かない場合はかからない項目です。 |
特定技能外国人の渡航費/来日サポート費 | 15~25万円 | 1回/1名 | 特定技能外国人の渡航費は受入れ企業負担となり、国や時期により費用は変動します。 |
送り出し機関費用 | 3~20万円 | 1回/1名 | 特定技能外国人に対する教育費と仲介手数料で、国により上限額が異なります。 |
合計 | 38~75万円 | ー | 1人あたりの初期費用目安(海外採用の場合のみ) |
現地訪問・面談費
海外現地に足を運び、候補者と直接面談する際にかかる費用(渡航費、宿泊費、飲食費など)です。
SkypeやZoomなどを活用してオンライン面談を行う場合はかからない費用ですが、人材選びで失敗しないために現地での面接をおすすめします。
渡航費・来日サポート費
現地採用を行う場合、採用した特定技能外国人の日本への渡航費が別途必要になります。渡航費は企業が負担するケースがほとんどです。
また、来日後に住居やライフライン一式の各種手続きをサポートする際の時間や費用も企業負担となります。
送り出し機関費用
海外現地で日本語研修やマナー教育をしたり、特定技能外国人の仲介をしたりしている機関に支払う費用です。
送り出し機関に支払う費用の上限は、ベトナムの場合は給与3か月分が相場となっています。
利用する送り出し機関によって費用は異なるため、3万円~20万円と金額に大きな差が出る項目となっています。
特定技能外国人を受け入れた後にかかる費用
特定技能外国人を採用した後にかかる継続費用を解説します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
登録支援機関への支援委託費 | 3~4万円 | 毎月/1名 | 入管法に定められた義務的支援を登録支援機関に委託した場合の費用です。 |
在留資格(ビザ)の更新費 | 4~5万円 | 1~2回/1名 | 在留資格(ビザ)の更新を行政書士事務所などの専門家に依頼した場合の費用です。 |
登録支援機関への支援委託費用
採用した後にかかる費用として、登録支援機関に支払う支援委託費用があります。登録支援機関にサポートを委託することで、特定技能外国人の日本語教育や居住まわりの手続き支援、トラブル対応など、自社では対応が難しかったり、煩雑な業務を任せることができます。
在留資格の更新費
特定技能外国人の在留資格は最長5年が期限です。在留資格の期限にあわせて必ず更新費用がかかります。
更新手続きは自社の社員でサポートすることも可能ですが、手続き周りを行政書士事務所などに外部委託する場合はコンサル費や代行費がかかってきます。
その他・費用がかかるポイント
その他の費用として、変動的に発生する可能性のある費用についてご紹介します。
教育・研修費
技能実習2号を修了していない外国人を特定技能に切り替えたい場合は、JLPTのN4相当の日本語試験と業界ごとの特定技能試験への合格が必要です。特定技能になるための勉強費用や試験費用を企業が負担する場合は、別途教育費がかかってきます。
また、本人の業務習熟度に合わせて適宜、社内外の研修を組むケースも想定して資金を見積もっておくとよいでしょう。
健康診断や福利厚生費
特定技能外国人も日本人同様に、雇い入れ時の一般健康診断の実施や、他の社員同様の福利厚生・各種手当の付与が必要になります。
外国人ならではの困りごとやトラブルも発生するため、社内に専用窓口となる人材を置いたり外部サービスを利用するケースもあるため、サポート費として別途見積もっておくと良いでしょう。
建設業の場合は「JAC」と「キャリアアップシステム」も
建設業で特定技能外国人を受け入れる場合、建設業の労働環境などの改善を目的とした団体「JAC」(またはJACに加入している39団体のいずれか)への入会が必須となります。また、建設キャリアアップシステムへの事業者・管理者・技術者、それぞれの登録も必要となるため、他の業種と比べさらに多くの費用が必要となります。
JACの入会金 (39団体または賛助会員) |
5~24万円 | 毎年 | 建設業の労働環境などの改善を目的とした団体「JAC(または39団体のいずれか)」の入会にかかる費用です。 |
JAC人材管理費用 | 1.25~2万円 | 毎月/1名 | 1号特定技能外国人を受け入れた場合、JACに対して支払う受入負担金です。 |
キャリアアップシステム事業者登録料 | 0.6~6万円 | 毎年 | 建設キャリアアップシステムへの事業者登録料です。個人事業主含む、資本金500万円未満の企業から資本金5,000万円以上1億円未満の場合の一例です。 |
キャリアアップシステム管理者ID利用料 | 1.14万円 | 毎年/1名 | 建設キャリアアップシステムへの管理者1名あたりの登録料です。 |
キャリアアップシステム技術者登録料 | 0.25万円 | 毎年/1名 | 建設キャリアアップシステムへの技術者1名あたりの登録料です。 |
受入れ後にかかる費用の概算シミュレーション
最後に、特定技能外国人の受入れ後、毎月かかる概算費用をシミュレーションしてご紹介します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
給与 | 17.46万円 | 毎月/1名 | 全国の特定技能外国人の平均給与で計算しています。 最低賃金や割増賃金の支払いルールは日本人同様に適用されます。 |
社会保険料 | 2.6万円 | 毎月/1名 | 厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険など日本人同様に加入します。介護保険を除いた会社負担分を「15%」で概算しています。 |
支援委託費 | 3~4万円 | 毎月/1名 | 入管法に定められた義務的支援を登録支援機関に委託した場合の費用です。 |
作業服や工具など、業務に必要な備品や研修費用 | 2~3万円 | 毎月/1名 | 業種・職種により費用は変動します。 |
月々の合計 | 25.06~27.06万円 | 毎月の会社負担額 |
上記は毎月かかってくる費用です。
上記以外に、対象月のみ在留資格の更新料や技能検定料の支払いが発生します。
まとめ
特定技能外国人の受入れにかかる初期費用は、国内採用の場合1人あたり36~156万円です。現地採用の場合は、さらに38~75万円の渡航費やサポート費用が追加となります。
また、雇用後にかかる費用は、月々の登録支援機関への支払い3~4万円前後と、数年に1度の在留資格更新費用などが挙げられます。
- 人材紹介会社や送り出し機関、行政書士など外部サービスをどこまで利用するか
- 現地訪問、現地採用を行うか
上記のポイントによって、特定技能外国人の費用は大きく変わってきます。
なお、特定技能外国人は日本人と同様に社会保険や最低賃金のルール、労働基準法が適用されるので、賃金支払いの負担も忘れずに計算しましょう。
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