外国人が日本で働くためには、就労可能な在留資格を取得する必要があります。
世間一般では「就労ビザ」という言葉がよく使われますが、実際には「就労ビザ」という名称の在留資格は存在しません。
外国人は、仕事内容や雇用形態に応じて、「技術・人文知識・国際業務」「技能実習」「特定技能」「留学(資格外活動)」「特定活動」など、様々な在留資格を取得して日本で働いています。
その中でも、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格者は2023年末時点で約36万人と多く、日本企業が外国人を雇用する上で、非常に一般的な在留資格であると言えます。
本記事では、そんな多くの日本企業で雇用される「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で外国人を受け入れる際にかかる費用についてご説明します。
INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
技術・人文知識・国際業務とは
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、日本で働く外国人のための主要な在留資格の一つで、通称「技人国(ぎじんこく)」と略されて呼称されることが多いです。
これは、海外のワーキングビザに相当し、外国人が日本で専門知識や技術を活かして働くことを目的としています。
2018年末には約19万人だった在留外国人数は、2023年末には約36万人と、5年間で約1.8倍に増加しており、日本で技人国の在留資格を持って働く外国人の数は年々増加傾向にあります。
技人国の在留資格で従事できる仕事
技人国の在留資格では、外国人のこれまでの学歴、職歴、母国の文化や言語に関する知識と関連性のある業務に従事できます。単純労働や専門知識を必要としない業務は、この在留資格には該当しません。
出入国在留管理庁は、「技術・人文知識・国際業務」を以下のように定義しています。
【具体的な職種例】
機械工学技術者、システムエンジニア、プログラマー、情報セキュリティ技術者など
・・・厚生労働省HPで挙げられている具体例:電機製品メーカーで技術開発業務(工学部卒)、ゲーム開発会社でゲーム開発業務(専門学校卒・マンガ・アニメーション科)
企画、営業、経理、人事、法務、総務、コンサルティング、広報、マーケティング、商品開発など
・・・厚生労働省HPで挙げられている具体例:法律事務所で弁護士補助業務(法学部卒)、建築設計会社で建築積算業務(専門学校卒・建築室内設計科)
通訳、翻訳、デザイナー、貿易業務、語学講師、ホテルマン(通訳が主業務の場合)など
・・・厚生労働省HPで挙げられている具体例:語学指導会社で英会話講師(教育学部卒)、コンピューター関連会社で翻訳・通訳業務(経営学部卒)
※上記の職種に就けるというだけで、在留資格が取得できるわけではありません。外国人本人の経歴と従事する業務との関連性が重要であり、関連性が低いと申請が不許可になる可能性があります。
技人国の外国人の採用方法
技人国の在留資格に該当する外国人を採用するルートは、大きく分けて国内からの採用と海外からの採用の2つに分類できます。さらに、それぞれに新卒採用と中途採用があり、合計4つのルートがあります。
- 海外新卒採用
海外の現地の大学から新卒者を採用するルートです。 - 海外中途採用
海外の現地から経験者を採用するルートです。 - 国内新卒採用
日本で就学している留学生を対象とした採用ルートです。 - 国内中途採用
すでに日本国内で就業中の在留資格を持った外国人を採用するルートです。
技人国の外国人を募集する方法
上記の採用ルートに合わせて効果的な採用活動を行うには、適切な募集方法を選択する必要があります。主な募集方法は以下の通りです。
知人からの紹介(リファラル)
費用をまったくかけずに自社に合った外国人材を採用できる可能性のある方法です。
身の周りに日本で働く外国人が多かったり、既に外国籍社員が在籍している場合には特に有効な手段です。
会社の文化や風土を知っている外国人からの紹介であれば、自社にフィットしやすい人材である可能性も高いでしょう。
求人サイト・SNSなど
外国人採用に特化した求人サイトなどの求人媒体も採用に活用できます。媒体によってターゲット層や料金、サポート体制が異なるため、自社の募集内容に適した媒体を選択することが重要です。
また、FacebookやX(旧Twitter)SNSなども効果的な採用手段となります。特に、自分で積極的に仕事を探している意欲の高い人材や、SNSを使いこなせる若い世代へのアプローチが期待できます。
採用希望国籍の言語で情報発信することが理想的ですが、日本語での発信も一定の効果が見込めます。他の採用方法と比べて費用は抑えられますが、情報拡散力が必要となるため、採用までに時間を要する可能性があることは留意しておきましょう。
外国人紹介会社への依頼
外国人材紹介会社は、企業のニーズに合った人材を迅速に紹介してくれるだけでなく、採用手続きや労務管理の代行も行ってくれる会社もあるため、効率的な採用活動が期待できます。
紹介会社を選ぶ際には、サポート体制や実績、特に採用希望職種や国籍における人材の紹介・派遣実績などを確認することが重要です。契約後のサポート内容が不明確な会社との契約は、トラブル発生のリスクがあるため注意が必要です。
外国人インターンシップの活用
外国人学生のインターンシップの活用も優秀な外国人材を採用する方法の1つです。
大学との契約に基づくインターンシップは、学生の単位に影響するため真剣に取り組むことが期待できます。
また、多くのインターンシップ生は日本語専攻であるため、高い日本語能力を持っています。実務面だけでなく、性格や社員との相性、コミュニケーション能力なども深く知れることで、ミスマッチの少ない採用につながるでしょう。
日本語学校への訪問
日本への関心が高い外国人材と出会える場として、日本語学校は有力な選択肢です。
日本で就労を希望する外国人の中には、日本語学校に通いながら就職活動を行っている人もいるため、効率的にアプローチすることができます。
日本語学校には、日本国内に設立された学校と、海外現地にある2通りの学校が存在し、国内の日本語学校の中には就職支援サービスを提供している学校もあり、求人情報の掲載ができるケースもあります。
一方、海外の日本語学校の場合は、現地の言語を話せるスタッフを派遣するか、現地の事情に精通した人材に依頼するなど、綿密な計画と準備が必要です。当然、渡航費用などのコストも発生するため、費用対効果も考慮しなければなりません。
技人国の外国人の採用にかかる費用
まずは、国内からの採用、海外からの現地採用ともにかかる費用について解説します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
人材紹介費 | 50万~200万円 | 1回/1名 | 外国人紹介会社に依頼した場合、1名あたり50万円~80万円程度の固定額、または理論年収の30%~35%程度の人材紹介料が発生します。 |
求人サイト掲載費 | 30万~80万円 | 1~6ヵ月/1回 | 外国人紹介会社を頼らず、自社で求人広告を掲載をする場合、求人広告会社に対する30万円~60万円程度の掲載費用が発生します。掲載期間やプランなどによって費用は上下します。 |
在留資格申請費 | 10万~15万円 | 1回/1名 | 行政書士事務所などの専門家に依頼した場合にかかる費用。社内で対応できる人材が自社申請を行えばこの費用は発生しません。 |
社宅準備費 | 10万~50万円 | 1回/1名 | アパートや家具・家電・備品などの準備費用です。会社側で社宅を用意するのは必須ではないため、外国人本人に住居の契約を任せる場合や、すでに社宅等をお持ちの場合はかからない項目です。 |
健康診断費 | 1万円 | 1回/1名 | 就業開始までに行う健康診断費用です。実施不要の場合は発生しない項目です。 |
平均金額 | 70万円~250万円 | ー | 1人あたりの初期費用目安 |
人材紹介費用
技人国に該当する外国人を人材紹介会社などに紹介してもらった場合は、1人あたり50万円~80万円程度の固定額、または理論年収の30~35%程度の人材紹介費用を支払います。
利用する人材紹介会社や、人材の経験・資格・能力などによって人材紹介費用は上下するので複数社を比較するとよいでしょう。
求人サイトへの掲載費用
人材紹介会社に頼らず、外国人に特化した求人サイトで直接募集をかける方法もあります。その場合、1か月~6か月程度の掲載期間で、30万円~80万円程度の掲載費用が発生します。
人材紹介とは異なり、採用人数ごとの課金が発生しないため、複数人の外国人材を採用したい場合や、多くの候補者の中から人材を選びたい場合などはコストパフォーマンスの高い方法となります。
在留資格の申請費用
在留資格申請は専門的な知識が必要となるため、行政書士などの専門家に外部委託するケースが多いです。
手続きを委託する場合は、1人あたり10万~15万円ほどの費用がかかります。金額の大きさも気になるとは思いますが、申請の不備などで切り替えができなかった、または切り替えまでに想定以上に時間がかかってしまったなどのトラブルが起きてしまわないよう、在留資格申請の実績のある信頼して任せられる専門家にお願いしましょう。
住まいに関わる費用
技人国の外国人の場合、社宅や家具家電などの住まい関係の準備を受入れ企業が行うことは必須ではありません。
しかし、海外からの現地採用で日本語能力が低かったり日本のルールや慣習を理解していない場合や、地方企業での採用で首都圏と比較して給与などを含むメリットが少ない場合などは、受入れ企業側で住居周りの手配をすることで、優秀な人材に自社を選んでもらえる可能性を引き上げることができます。
健康診断にかかる費用
常時雇用する労働者の雇入れ時(雇入れ直前または直後)には、労働安全衛生法に基づき、所定の項目に関する健康診断の実施が義務付けられています。これは外国人労働者も例外ではありません。
ただし、雇入れ3か月前までに受診した健康診断の結果を証明する書類を提出することで、該当項目の健康診断を省略することが可能です。
技人国の外国人の現地採用にかかる費用
上記にプラスして、海外からの現地採用時にかかる費用の内訳を解説します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
現地訪問費 | 20万~30万円 | 1回/2名 | 2名の社員で、2日間の訪問の場合の目安です(往復の航空券代、宿泊費、食事代など)。オンラインで面接を完結する場合など、現地に行かない場合はかからない項目です。 |
外国人の渡航費 |
10万~20万円 | 1回/1名 | 外国人が日本に来日するための渡航費です(受入国や時期により費用は変動)。技人国の場合、受入れ企業側の負担は必須ではありません。 |
各種必要書類準備の委託費 | 3万~5万円 | 1回/1名 | 在留資格申請に必要な書類(卒業証明書、在職証明書、健康診断書など)の取得を海外現地のエージェントに委託する費用です。 |
平均金額 | 33万円~55万円 | ー | 1人あたりの初期費用目安(海外採用の場合のみ) |
現地訪問・面談費
海外現地に足を運び、候補者と直接面談する際にかかる費用(渡航費、宿泊費、飲食費など)です。SkypeやZoomなどを活用してオンライン面談を行う場合はかからない費用ですが、人材選びで失敗しないために、特に初回は現地での面接をおすすめします。
渡航費・来日サポート費
外国人が来日する際の渡航費を受入れ企業側が負担することは必須ではありません。
しかし、住居周りと同様に、技人国の在留資格に該当するハイレベルな外国人を採用するためには、渡航費を受入れ企業側で負担する姿勢が必要である場合もあります。
在留資格申請に必要な書類準備の委託費
技人国の在留資格を取得するためには、様々な書類を海外から取り寄せる必要があります。
学歴を証明するための卒業証書や職業能力を証明する書類などはもちろんのこと、学歴がない外国人を実務経験のみで採用する場合には在職証明書が必須となります。
これらの書類は、外国人本人が直接取得することも可能ですが、必要書類の種類や部数、記入方法などが複雑なため、現地のエージェントに委託するのが一般的です。エージェントへの委託費用は、数万円程度が相場となっています。
なお、卒業証明書の発行や翻訳にも費用がかかります。卒業証明書は、本人が発行する場合でも300円~500円程度の費用がかかり、さらに英語圏外の場合は、翻訳費用として4,000円~6,000円程度が必要となる場合もあります。
技人国の外国人の雇用後にかかる費用
最後に、技人国の外国人を採用した後にかかる継続費用を解説します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
日本語教育や生活サポート費 | 3~4万円 | 毎月/1名 | オンライン日本語レッスンや24時間生活相談・医療通訳を含む各種通訳対応などの生活サポートサービスにかかる費用です。福利厚生として提供しない場合は発生しない項目です。 |
在留資格(ビザ)の更新費 | 4~5万円 | 1回/1名 | 在留資格(ビザ)の更新を行政書士事務所などの専門家に依頼した場合の費用です。 |
日本語教育・生活サポート費用
受入れ企業側からのサポートは必須ではありませんが、海外からの現地採用で日本語能力が低かったり、日本のルールや慣習を理解していない場合などは、定着率の向上や早期活躍を支援するために、継続した日本語学習の機会や日常生活をサポートできる外部サービスなどを提供することも検討しましょう。
オンラインでの日本語レッスンや、24時間の生活相談や医療機関を含む通訳対応などのサービスを契約すると、概ね月3~4万円程度の費用がかかります。
在留資格の更新費
技術・人文知識・国際業務の在留資格は最長5年の在留期限となっており、在留資格の期限にあわせて必ず更新費用がかかります。
在留資格の更新は行政書士事務所などの専門家に依頼すると4~5万円程度の委託費が発生します。
初回の申請時と同様に自社の社員で対応したり、外国人本人が行うことも可能ですが、かかる工数や不許可となる可能性なども考慮して、行政書士などの専門家に外部委託する方が無難でしょう。
受入れ後にかかる費用の概算シミュレーション
最後に、特定技能外国人の受入れ後、毎月かかる概算費用をシミュレーションしてご紹介します。
項目 | 費用 | 数量 | 詳細 |
給与 | 29.67万円 | 毎月/1名 | 厚生労働省が公開している「令和5年 賃金構造基本統計調査」の専門的・技術的分野(特定技能を除く)の平均給与額。 ※最低賃金や割増賃金の支払いルールは日本人同様に適用されます。 |
社会保険料 | 4.45万円 | 毎月/1名 | 厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険など日本人同様に加入します。介護保険を除いた会社負担分を「15%」で概算しています。 |
日本語教育・生活サポート費 | 3~4万円 | 毎月/1名 | オンライン日本語レッスンや24時間生活相談・医療通訳を含む各種通訳対応などの生活サポートサービスにかかる費用です。福利厚生として提供しない場合は発生しない項目です。 |
業務に必要な備品や研修費用 | 2~3万円 | 毎月/1名 | 業種・職種により費用は変動します。 |
月々の合計 | 39.12万~41.12万円 | 毎月の会社負担額 |
上記は毎月かかってくる費用です。上記以外に、対象月のみ在留資格の更新料や技能検定料の支払いが発生します。
まとめ
技術・人文知識・国際業務の在留資格に該当する外国人の採用にかかる初期費用は、国内採用の場合1人あたり約70万~250万円です。海外現地から採用の場合は、さらに約33~55万円の渡航費や書類関係の費用が追加となります。
また、雇用後にかかる費用は、給与や社会保険をはじめ、必要に応じた日本語教育・生活サポート費や、数年に1度の在留資格更新費用などが挙げられます。
- 人材紹介会社や求人サイト、行政書士など外部サービスをどのように利用するか
- 海外現地への訪問、現地採用を行うか
- 住居の準備や日本語教育、生活サポートを行うか
上記のポイントによって、技人国に該当する外国人の採用費用は大きく変わってきます。
なお、技人国に限らず、外国人は日本人と同様に社会保険や最低賃金のルール、労働基準法が適用されます。
外国人という理由で、日本人従業員よりも不当に賃金を低く設定したり、最低賃金を下回るような給与設定をすることは違法となるため注意しましょう。
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