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【実体験】とある田舎の中小企業が「技能実習生」を初めて受け入れたお話。

【実体験】とある田舎の中小企業が「技能実習生」を初めて受け入れたお話。

私が以前に所属していた製造業の会社で最初に受け入れた技能実習生は、3人のベトナムからの実習生でした。それから毎年受入れを続け、私が退職する頃には、その数は19人までになっていました。しかもその間、幸いなことに失踪や途中帰国といった大きなトラブルに見舞われることなく、順調に実習期間を終えることができました。

今回は、技能実習生の受け入れにいたる経緯から、受け入れに際して工夫したことやその苦労、実習生の受入れが会社に与えた影響、受入れ経験者である筆者の考えなどをお伝えしようと思います。

 

この記事を書いた人
ライターネーム
s.yugun
前職の製造会社在職時に、3年9ヵ月にわたって約20名の技能実習生に関する実務を担当(うち1年間は技能実習責任者)。2021年に退職後、現在は個人事業主として経理や事務の代行やライティング業務を行っている。

技能実習生の受け入れにいたるまで

まずは、そもそもどうして技能実習生を受け入れるにいたったのか、その経緯からご説明します。

きっかけは地方の人材難

会社で実習生を受け入れる背景としてあったのは、地方における人材難です。ご多分に漏れず、私が所属していた会社においても地元の優秀な人材は、より労働条件の良い大手企業などに流れてしまい、ハローワークに求人を常に出していても全く応募がないという状況が続いていました。

そうした状況を受けて、上層部が検討した結果、技能実習生の受け入れという案が浮かんできたようです。ただ、当時は身近に実習生を受け入れている企業はまだ無く、情報も乏しかったため、まだ「そういう案もある」という程度でした。

取引先で実習生の受け入れが始まった

受け入れに向けて具体的に動き出したのは、自社の取引先が技能実習生の受け入れを始めたことが大きなきっかけです。その取引先も人材の採用に悩まれていた中、私の前職の会社の役員から技能実習生制度の話を聞き、いち早くベトナムからの実習生3名の受け入れに踏み切られたのです。

取引先での実習生受け入れによって、実習生の勤務や生活態度、必要なもの、受け入れまでのタイムスケジュールといった詳細な情報が分かるようになってきました。そして、その情報などを踏まえた上で検討を重ね、自社でも実習生の受け入れをすることが正式に決まったのです。

2017年に3名の実習生が来日

受け入れの方針が決まって以降、役員が監理団体の担当者などと共に度々ベトナムを訪れ、現地の送り出し機関の方との調整や、実習生の面接を行いました。そして2017年6月、会社にとって技能実習生1期生となるベトナムからの実習生3名が入社しました。

技能実習生の受け入れで工夫したこと

さて、そのように始まった技能実習生の受入れですが、もちろん何事もなく順調だったわけではありません。田舎の中小企業に外国人が働きにやってくる、しかも、当時は近隣で外国人を受入れている会社もありませんでしたから、わからない事だらけでした。ここからは、実習生の受入れに際してどのようなことを行ったのか、またどういった点を工夫したのかについてご紹介していきます。

プライベートでも面倒を見る

実習生の受け入れの際に行ったこととしてまず最初に思い出すことが、会社のことだけではなく、時には休みの日にも時間を割いて彼らのサポートをしたことです。

ゴミの出し方に始まり、給料の引き出し方からATMでの送金の仕方、病院の診察、電車やバスの乗り方まで…実習生からすれば初めてのことばかりでした。そういった時には、担当者である私が彼らを引率し、やり方について一つ一つ学ばせていきました。

自分たちで分からないことは監理団体に頼る

初めての実習生受け入れなので、時には私たち受入れ企業側では判断の付かないこともありましたし、社内で連絡する重要な文章を実習生の母国語に訳したいという時もありました。

そんな時は、遠慮せずにどんどん監理団体へ相談していました。監理団体には他の受入れ企業からも様々な相談が寄せられているため、自社が抱えている問題もスムーズに解決してくれますし、実習生の母国語の読み書きができるスタッフもいます。参考となる事業所も近くにない中で、監理団体の方には随分とお世話になりました。

▼監理団体について詳しく解説した記事はコチラ▼

【5分でわかる】「監理団体」って何をやってくれるの?技能実習生を受入れるのに絶対に必要?

技能実習生の受け入れで苦労したこと

次は実習生の受け入れの際に苦労したことをお話しします。今後、実習生の受入れを検討されているのであれば、ぜひ参考にしてみてください。

「送り出し機関」選び

技能実習生は、来日の前に海外現地の「送り出し機関」で日本語教育などの研修を受けます。そこから、受け入れを希望する企業の担当者が面接を行って採用したい人材を決定し、来日後には、監理団体でもう一度研修を行った後に入社すると言うのが基本的な流れです。

最初の実習生を受け入れる際は独自のツテなど無かったため、一足先に実習生を受け入れていた取引先と同じ送り出し機関、ならびに監理団体にサポートをお願いすることになりました。その取引先の話では、「日本語に関しては、送り出し機関が日本語教育をしてくれるから心配いらない」と聞いていました。ところが実際に接してみると、あいさつ程度の日本語ですらままならない状況だったのです。

後から分かったことですが、1期生のいた現地の送り出し機関というのは、実習生の送り出し実績が乏しく、カリキュラムも充実したものとは言えないものだったのです。おまけに1期生達は面接に合格した後、日本語の勉強をする事もほとんどないという有様でした。

ひとくちに「送り出し機関」といっても、日本の学校と同様でどこでも同じという事はありません。実績な評判などを加味して、よく検討をするようにしてください

「日本語能力」の見極め

業務を通じて実習を行っていくうえで重要になるのは、やはり日本語能力です。

私の在籍中に受け入れた実習生の中には、前述のようなに実績のない送り出し機関で学んできたために日本語がままならないまま来日した実習生もいました。その一方で、送り出し機関側のカリキュラムによって、来日時から日常会話ができるレベルの日本語を身につけてきた実習生もいて大いに助かりました。

最近では各種翻訳ツールもありますが、それを介してだとどうしても時間がかかりますし、認識のズレを生みかねません。前職の会社でも、日本語での意思疎通がスムーズな実習生ほど様々な機械の操作を任せられるようになっていました。

受け入れ企業側で日本語教育ができる体制があれば別ですが、そうでない限り、実習生本人の学習意欲も含め、日本語能力に関しては重要項目として面接の際に見極めてください。

実は日本の方が田舎だった・・・

皆さんの中には何となく、「日本の方が、東南アジア諸国よりも発展しているよね」という考えがないでしょうか。しかし、実習生たちが来るベトナムやインドネシアなどは近年爆発的に経済発展しており、ベトナムであれば、ハノイやホーチミンといった主要都市は日本の地方都市以上の大都会となっています。そういった都市近郊に住んでいた実習生は、「ベトナムの都会から、日本の田舎にやってきた」と感じるケースも出てくるわけです。

実際、そんな実習生たちから「夜道が暗いですねえ」「道路の車が少ないですねぇ」と言われた時もあり、最初はバカにされた気分でムッともしました。しかし、実際にベトナムを訪れてその発展ぶりを目の当たりにし、「そりゃ馬鹿にもするわ」と思った次第です。

特に地方の会社の方は、変な固定観念は無くし、むしろ「はるばるこんな田舎までありがとう」という思いで接してあげてください。

思ったよりもお金がかかる

技能実習生の給与は「日本人従業員を雇うよりも安上がりだ」とお考えの企業もあるかもしれません。しかし、実際はそうとも言えないのが現状です。

以前、一部の技能実習生が劣悪な労働条件で働かされていることに対して、多くの非難の声が寄せられたことがありました。それを受け、今では実習生の賃金については「似たような勤続年数やスキルの日本人従業員と同等以上であること」と定められており、在留資格の更新申請をする際にもその証拠となる書類の添付が求められています。

その他、出入国の際の渡航費、監理団体への月々の支払い、実習生の衣食住に関する費用の一部負担などもあります。

「こんなはずでは…」とならないように、受け入れによる費用対効果に関しては、事前に十分検討するようにしてください。

技能実習生の受け入れが会社に与えた影響

技能実習生の受け入れは会社にとって様々な良い影響をもたらしてくれました。続いては、実習生を受け入れて感じた変化についてお伝えします。

熱心な仕事ぶりに職場全体の士気がUP

幸いなことに、受け入れた技能実習生は皆まじめで熱心に仕事に取り組んでくれました。また、お金を稼ぐことに対してのモチベーションも高いので、既存の従業員は嫌がる残業や交代勤務にも積極的な実習生がほとんどでした。

そういった実習生の姿勢を目の当たりにするうちに、当初は外国人の受け入れに戸惑っていた現場の従業員たちも「彼らはよくやっている」と認めるようになり、実習生たちとのコミュニケーションを通じて職場の雰囲気や士気も向上していったように感じます。

日本人従業員以上に身についた技術

また、技能実習生制度の本来の目的である「技能の習得」についても、日本人従業員以上の技能を身につけてくれる結果になりました。

というのも、今や製造業も自動化が進み、加工する材料をセットし寸法を入力すれば、あとは機械任せという業務が多くなっているのです。しかし、実習生たちが入国して1年後と3年後にそれぞれ受験する試験は、自分の頭と腕だけが頼りの試験内容となっているのです。特に3年後に受ける実技試験に関しては、国家検定である「技能検定3級」と同様の試験内容となっていました。試験対策の指導を担当した大ベテランの従業員さんですら、「きちんと教えられるかな・・・」と漏らしていた程です。

そんな中、実習生1期生の3名は3年後の実技試験も全員合格を果たしました。「彼らが今持っている技術は、全従業員の中でもトップクラスだろう」と前述の試験指導担当者が言っていましたが、私もその通りだと思います。

実習生は必ず会社を離れる存在

彼らはあくまでも「技能実習生」なので、基本的には「いつかは母国に帰る日が来る存在」です。

近年の制度変更により、3年目の実技試験を合格した上でさらに延長して在留する際は、実習生側の意思で実習先を変更することができるようになりました。実際、私の退職後には、母国へ帰った実習生や、実習先を変更し会社を離れた実習生もいました。

いつまでもいる訳ではない彼らにどこまでの技術を教え、どこまでのことをしてあげるべきなのか。実習生が入国してからの年単位での受入れ計画と併せて、受け入れ先企業として方針を決めておいた方がいいでしょう。

実習生の増員にともなって「管理する」スタイルに

最初は1期生の3名から始まった実習生の受け入れも、私が担当した一番多い時で19人にまでなりました。全従業員数が120名程度の会社でしたので、約10人に1人が実習生という計算です。

ここまでくると、社内でもある程度の存在感が出てきます。また、頭痛の種も次から次へと続くようになり、私の実習生に対する感覚も少人数のころの「面倒を見る」という感じから、「管理していく」という感覚に変わっていったように思います。

実習生の受入れに周辺企業や行政も注目

実習生の受け入れが与えた影響は、実は社内だけにとどまりませんでした。私の所属する会社が実習生の受け入れを始めたきっかけがそうであったように、近隣の企業や取引先でも実習生の受け入れを始める会社が出てきたのです。

さらには、それを知った地元の自治体からも支援できることはないかと気にかけていただき、自治体協力のもと実習生との様々な交流イベントなども開催されました。

実習生という存在が地域でも積極的に受け入れられていったこと自体は受入れ企業の担当者としてとても嬉しかったです。ただ、なにぶん衆人環視もある地方の田舎町だっただけに、特に週末前には「裏切るような変な事をしてくれるなよ~」と祈るような思いになったものでした。

技能実習生の受け入れにあたって学んだこと

最後に、私が技能実習生の受入れ担当者として業務にあたった中で感じたこと、学んだことについてお話したいと思います。

実習生のバイタリティーとハングリー精神

まず何と言っても感じたことは、実習生たちのバイタリティーとハングリーさです。

彼らは技能実習生として日本に渡るために、時には借金までして現地の送り出し機関に入り、日本語などの研修を受けます。中には既に結婚し、子どもがいる実習生もいます。

それでも、受け入れ先の日本人担当者との面接に合格しなければ日本に行くことはできません。私も一度、海外現地の面接に同席したことがありますが、結果発表で合格を伝えられたメンバーの喜び様と、その傍らで不合格を伝えられたメンバーが残念さを押し殺している表情は今でも忘れられません。私が逆の立場で同じようなことができるかといえば、おそらく無理でしょう。

そうまでしてやってきた日本ですから、仕事や日本語の習得には個人差こそあれ、皆まじめかつ熱心に仕事に取り組んでいました。ある者は残してきた家族に少しでもお金を送ろうと自分のために使うお金を節約し、ある者は仕事に励みながら難関の日本語検定に合格して帰国後のキャリアアップを目指したりと、それぞれに日本にやってきたチャンスを活かそうという気持ちが、彼らの行動からひしひしと伝わってきました。

私は受け入れ先の担当者であり責任者という、いわば実習生の上に立つ立場であった訳ですが、彼らの想いと姿勢については心から尊敬しています。

急に身近になった「グローバル化」

様々なメディアにおいて、「グローバル化」という言葉をよく見かけるようになって久しくなりました。

実習生を受け入れる以前からも、コンビニや飲食店で外国人店員が働いている姿を目にしてはいましたが、それは「海外と取引きをしていない地方の中小企業とは別世界の話」という感じがしていました。

ところが、海外からの技能実習生受入れによって、否応なく会社はグローバル化され、急に海外からの労働力受入れについての当事者となったのです。

実習生を受け入れて以降、技能実習生に関する情報はもちろん、海外における外国人労働者に関するニュースもより身近な話題として感じるようになりました。いまだに技能実習生の扱いについて、悲しいニュースを目にすることはあります。しかし今や、日本の各分野の現場において、外国人労働者の力はなくてはならない存在となっているのは事実で、イギリスの事例では、EU離脱を機に外国人労働者が国外に去ってしまい、様々な会社で業務に支障をきたしているようです。

私としては、現状起きている問題を認識した上で、見直すべき部分を見直しながら、外国人実習生側と受入れ企業側がWin-Winとなる制度に改善していき、さらに素晴らしい制度として発展していくことを願っています。

日本人も外国人も結局は「信頼関係」がすべて

日本語がままならないまま入社した1期生は、入社後もこちらが期待するほど日本語が上達せず、「これでは1年後の試験に落ちて強制帰国か・・・」と上司からもさじを投げられかけたことがありました。その思いは本人たちにも伝わったようで、「この先どうなるのか」と非常に不安そうにしているようでした。

しかしそこで、「このままでは会社と実習生、双方のためにもならない」と徹底的に試験勉強を実施し、厳しい指導にも実習生たちがついてきてくれたお蔭で、何とか1年後の試験に全員合格することができました。そしてそれにより、1期生と社員との間に強い信頼関係が生まれ、2期生以降が入社した時には彼らが先輩として指導やサポートにあたってくれたことが実習生全体との信頼関係の構築にも大きく役立ったように思います。

ここまで偉そうなことを書いてきた私ですが、恥ずかしながら、実は覚えたベトナム語と言えば「シン チャオ(こんにちは)」と「カム オン(ありがとう)」の2つだけです(笑)

つまり言葉での意思疎通については、翻訳ツールは使ったものの、ほとんど実習生が日本語を覚えてくれたことによって成り立っていた訳です。

そんな状況でも、失踪や途中帰国といった大きなトラブルに見舞われることなく実習を終えることができたというのは、日本人も外国人も関係なく、結局のところ人間同士の信頼関係によるものだろうと思っています。

まとめ

ここまで、技能実習生の受入れ成功事例として私が受入れ業務を担当してきた実体験をお伝えしてきました。

実習生の受け入れには、確かに大変な部分もありますが、それを差し引いても会社にとってメリットの方が大きかったと感じでいます。これからさらに深刻になっている日本の人材不足への対策や、海外市場への進出などによって会社を成長させていくためにも、まずはポピュラーになってきた技能実習生の受け入れから始めてみるのはどうでしょうか?

しかし、私が言うまでもなく、技能実習生の受け入れは会社にとって大きな転機になると思いますので、この記事を含め、色々な情報を集めた上で十分に検討して決断してください。

この記事を読んでくださった皆さまの実習生受入れが、企業側と実習生側の両方にメリットのある素敵な実習になることを心から願っております。

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