製造業で特定技能外国人を受入れするためにはどのような要件があるのでしょうか?また、製造業だけに設けられたルールなどはあるのでしょうか?
本記事では、製造業で特定技能外国人を受入れする際に必要な要件や手続きについて丁寧に解説します。
製造業で特定技能外国人の受入れを検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
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(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
在留資格「特定技能」とは?
まずは「特定技能」について簡単にご紹介します。特定技能とは、日本の人手不足が深刻な特定分野において、一定のスキルをもつ外国人労働者の受け入れを可能にした在留資格です。
製造業を含めた、14分野の業種にて特定技能外国人の受入れが認められています。
これまで外国人労働者の単純労働が認められていなかった日本で、初めて外国人労働者を単純作業での就業を可能とした新しい在留資格として注目されています。
受入れ企業の主な要件
特定技能外国人を受入れするためには、受入れ企業と雇用される外国人のそれぞれが満たすべき要件があります。
まずは受入れ企業が満たすべき主な6項目の要件を紹介します。
- 経営状況に問題がないこと
- 5年以内に各種法令違反がないこと
- 特定技能外国人に対する適正な支援が実施できること
- 1年以内に解雇や行方不明がないこと
- 特定技能外国人へ適正な賃金を支払うこと
- 暴力団との関係がないこと
経営状況に問題がないこと
受入れ企業は、特定技能外国人の受け入れに問題の無い経営状況を証明する必要があります。
そのため、特定技能の在留資格を申請する際に、直近3年度分の決算状況などを報告する必要があり、特定技能外国人の受け入れが可能な経営基盤があるかどうかを厳しく審査されます。
特定技能外国人の受入れ継続が困難となった場合は次の受入れ先を探す必要がありますが、受入れ企業にも一定の要件あるため受入れ企業を探すのは簡単ではありません。
また、特定技能外国人側にも要件があるため、制度上は転職が自由にも関わらず、実際には日本人のように職業選択が完全に自由という訳ではありません。そのことが転職先を見つけるのが難しい一つの要因となっています。
そのため、簡単に特定技能外国人の退職や解雇が発生しないよう、受入れ企業の経営状況については厳しく審査されています。
5年以内に各種法令違反がないこと
特定技能外国人の受入れ企業には、5年以内に入管法や労働法の違反がないことが求められます。
特定技能外国人だけでなく、過去5年の間に雇用していた外国人に対しての違法行為があった場合は、特定技能外国人の受け入れができなくなります。
また、日本人を含めた従業員全てに対する労働法違反(不当な賃金支払いなど)があった場合も同様に特定技能外国人の受け入れができません。
特定技能外国人に対する適正な支援が実施できること
特定技能外国人を受け入れする企業は、外国人に対する「義務的支援」を実施できる体制が必要です。
支援業務には、出入国時の空港送迎や特定技能外国人が入居する寮の手配だけでなく、母国語での相談対応や事前ガイダンスの実施なども含まれています。
そのため、特定技能外国人の母国語を話すことのできる通訳者を準備しておく必要がありますが、常駐の社員である必要はなく、登録支援機関などに委託した外部の通訳者でも可能です。
また、通訳に限らず、上記の支援業務はすべて「登録支援機関」に委託することができるため、特定技能外国人を受け入れる会社の多くは登録支援機関と委託契約を結んでいます。
1年以内に解雇や失踪がないこと
特定技能外国人を受け入れをする1年以内に、企業に帰責性のある従業員の解雇や外国人従業員の失踪がないことが求められます。
解雇に関しては、外国人従業員だけでなく日本人従業員も対象となるだけでなく、受け入れた後も、企業側に原因のある解雇や失踪などが発生した場合には、特定技能外国人の受け入れが継続ができなくなる可能性があるため注意してください。
特定技能外国人へ適正な賃金を支払うこと
特定技能外国人に支払う賃金は、最低賃金などの法律を遵守した金額であるのはもちろんのこと、同じ業務で就労している同レベルの日本人従業員と同じ基準で給与設定をする必要があります。
外国人というだけで日本人従業員より低い賃金設定をすることは認められていません。
5年以内に暴力団との関係がないこと
受入れ企業と暴力団のかかわりだけでなく、役員などに暴力団関係者がいる場合も特定技能外国人の受け入れはできません。
過去に暴力団との関係があった場合は、関係が無くなった日から5年間は特定技能外国人の受入れができないことになります。
特定技能外国人の要件
特定技能の在留資格の取得を目指す外国人は、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 技能実習2号を良好に修了
- 日本語試験と技能試験に合格
技能実習2号を良好に修了
特定技能の在留資格を希望する職種にて、技能実習2号を良好に修了した外国人は特定技能の技能試験や日本語試験などを免除されます。
ここで言う「技能実習2号を良好に修了」とは、最低でも技能実習を2年10ヶ月以上修了した外国人を指します。
日本語試験と技能試験に合格
特定技能の在留資格を希望する職種で実施されている「特定技能の技能試験」と「日本語試験」に合格することでも特定技能の取得要件を満たすことができます。
製造業の技能試験は、国内外で実施されていますが難易度が高く試験の実施頻度も多くありません。また、受験地や日程もそれぞれの職種で違うため、受験を希望をする際には余裕をもった事前準備が必要です。
日本語試験については、「日本語能力検定N4以上の合格」または「国際交流基金日本語基礎テストA2レベル程度」が必要になります。
もし、技能実習2号を修了した外国人が、技能実習を修了した職種とは別職種で特定技能の在留資格取得を希望する場合は、日本語試験だけ免除されます。
また、就業する事業所内に複数の職種がある場合は、要件さえ満たせば1人の特定技能外国人が複数職種に従事することも認められます。
製造業の特定技能外国人受入れ協議・連絡会
続いて、製造業の特定技能外国人受入れ協議・連絡会(以下、特定技能協議会)について紹介します。
特定技能協議会とは
特定技能協議会とは、特定技能制度の適正な運用などを主な目的とした協議会で、特定技能外国人を受入れする企業は、業種ごとに設置された協議会へ加入することが義務付けられています。
製造業の特定技能協議会は経済産業省が主体となり運営されています。
加入手続きの流れ
製造業の特定技能協議会への加入手続きは、特定技能の在留資格を申請する前に済ませる必要があります。
また、特定技能協議会への加入手続きをする時期によっては、半年程度の加入審査期間がかかることもあります。
そのため、加入申請は余裕をもって早めに済ませるように動いた方が良いでしょう。
加入手続きの流れについては次の通りです。
- 加入申請書類の準備
- 加入申請・追加書類対応
- 審査結果の受け取り
➀加入申請書類の準備
製造業の特定技能協議会へ加入する際には、最低でも次の申請書類が必要です。
- 事業所で製造している製品画像・製品の説明
- 製品が組み込まれる完成品の写
- 製品を製造するために使った設備などの写真
- 事業実態を証明する資料
これらの申請書類で、業種への該当性を証明します。
なお、製造業の協議会へ加入できる業種一覧については以下のぺージから確認することができます。
②加入申請・追加書類対応
申請書類の準備ができたら、製造業の協議会ホームページより、加入申請手続きを行います。
加入申請手続きは全てオンラインで完結することができます。
画面の指示に従って、受入れ企業の情報を入力し、準備した申請書類をPDFでアップロードすることで加入申請が完了します。加入申請後に提出書類に不備などがあった場合は、修正や追加書類の依頼についてメールで連絡がくるので、修正した資料の再送を行いましょう。
➂審査結果受け取り
無事に審査が完了すると、製造業の特定技能協議会員名簿に受入れ企業の情報が掲載されます。
特定技能の在留資格を申請する際には、製造業特定技能協議会員名簿の受入れ企業名が記載されているページの写しを協議会加入完了の証明書類として提出します。
日本にいる外国人を採用する方法
ここからは、実際に特定技能外国人を採用する際の方法について紹介します。
日本にいる外国人を採用する方法は次の通りです。
- 外国人の募集・採用
- 雇用契約の締結
- 特定技能の在留資格申請
- 就労開始
➀外国人の募集・採用
求人広告や人材紹介会社経由で日本国内にいる外国人を募集し、その中から特定技能の要件を満たした外国人を採用します。
すでに受け入れしている技能実習生がいれば、そのまま継続して雇用することもできます。
②雇用契約の締結
採用する人材の決定後、雇用契約の締結を行います。
この際に、特定技能制度で実施義務のある「事前ガイダンス」も同時に実施します。
➂特定技能の在留資格申請
雇用契約書の写しや他の申請書類が準備できたら入管へ特定技能の在留資格を申請します。
通常であれば1~2ヶ月程度で審査結果が通知されます。
④就労開始
無事に特定技能の在留資格を取得した当日から特定技能外国人としての就労を開始することができます。
海外にいる外国人を採用する方法
海外にいる外国人を採用する方法は次の通りです。
- 外国人の募集・採用
- 雇用契約の締結
- 特定技能の在留資格申請
- 現地の日本大使館での手続き
- 日本へ入国・就労開始
➀外国人の募集・採用
人材紹介会社や海外の現地エージェントなど通じて募集を行い、その名中から、特定技能の要件を満たしている外国人を採用します。
特定技能の技能試験は海外でも実施されているため、国内で人材が見つからない場合は、海外にもアプローチすることで優秀な人材を確保できる確率が高まります。
②雇用契約の締結
採用する人材が決定したら雇用契約を締結します。
海外にいる人材を採用する場合は、ZOOMなどを使ってオンラインで雇用契約や事前ガイダンスなどの説明を行うことが認められています。
➂特定技能の在留資格申請
全ての申請必要書類の準備が整った段階で、入管へ特定技能の在留資格を申請します。
審査に問題が無ければ、在留資格認定証明書が発行されます。
④現地の日本大使館での手続き
取得した在留資格認定証明書を現地に郵送し、外国人本人が日本大使館に提出することで日本へ入国するためのビザが発行されます。
⑤日本へ入国・就労開始
日本へ入国した日から特定技能外国人として就労開始することができます。
まとめ
本記事では、製造業で特定技能外国人を受け入れする際の要件や方法についてご紹介しました。
製造業で特定技能外国人を受け入れする際のルールとして、在留資格の申請前に特定技能協議会へ入会しておく必要があることには特に注意しておく必要があります。
また、製造業の特定技能協議会への加入には費用が発生しないため、将来的に受け入れの予定がある場合でも事前に入会手続きを済ませておくことをおすすめします。
参考:日本の製造業の課題は?現状と今後生き残るための解決策を解説
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