技能実習生・特定技能外国人を初めて受け入れる企業では
『住居は会社側が用意するの?』
『家賃や光熱費は誰が払うの?』
『ルームシェアでも大丈夫?』
『物件に基準やルールはあるの?』
など、様々な疑問や不明点があると思います。
結論から申し上げると、技能実習生に対しては会社側が住居を提供する必要があり、特定技能外国人に対しては住居確保のサポートを行うことが制度上必須となっています。
本記事では、技能実習生・特定技能外国人それぞれの住居に関する必要条件やルール、家賃や光熱費負担の割合などについて、分かりやすく解説していきます。
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INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
なぜ住居確保やサポートが必須なの?
技能実習生・特定技能外国人だけに住居支援が必須となっているのは、来日前や直後で外国人個人名義での賃貸借契約を結ぶことが非常に難しいという現状があるためです。
難しい日本語の契約書が読めない・書けない、契約に必要な書類を用意できないなど日本語能力的な問題もありますが、大家さんが外国人に部屋を貸さない、日本での保証人がいない、まだ収入がない・少ないので保証会社の審査に通らない、など技能実習生や特定技能外国人ならではのハードルがあり、自力での住居確保が困難なのです。
上記のような事情があることはもちろんですが、日本人でも同様に、生活の基盤である「家」が安心して住める環境でないことには仕事でのパフォーマンスも下がってしまうと思いますので、各種ルールを守った上で、適切な住環境を整えていきましょう。
技能実習と特定技能で異なる住居基準
技能実習生と特定技能外国人では住居基準に大きな違いがあります。
それぞれ個別に確認していきます。
技能実習生の住居基準
技能実習生の住居基準は、「適切な宿泊施設」を確保することが前提となります。適切な宿泊施設とは、以下のように定義されています。
難しいので要約すると
・火災の危険がある
・有害な作業場の近く
・騒音や振動が多い
・土砂崩壊などに巻き込まれるおそれがある
・過度な湿気や浸水のおそれがある
・汚染のおそれがある
などを避けた安全な場所に住居を確保する必要がある、ということです。
住居選びのポイント
・人数と部屋の広さが適切かどうか
・コンビニやスーパーに徒歩、自転車で行ける距離か
・会社まで徒歩、自転車で行ける距離か
部屋の広さ・割り振りの基準
技能実習生の部屋の広さは、日本人の住居水準を考慮して以下のように定められています。
・活動時間が異なる人の寝室は別
部屋の広さは寝室として使えるスペースのみを指し、床の間や押し入れは含みません。
また、部屋を複数の実習生でシェアする場合には、就業時間・睡眠時間が違う実習生を同じ寝室に割り当てることはできません。
日勤のみ、夜勤のみといった組み合わせで割り振り、ローテーションを組んでいる場合には同じ寝室の技能実習生は同じ勤務時間にすることが求められます。
部屋の設備基準
技能実習生が居住する部屋は、以下の設備基準を満たす必要があります。
・部屋の面積7分の1以上の採光できる窓
・暖房設備
技能実習生が部屋をシェアするときには、身の回り品を収納できるだけの容量がる鍵付きのロッカーなどを用意する必要があります。持ち出せない対策として、チェーンロックや南京錠、防犯ワイヤーなどで収納ボックスを建物に取り付ける方法でも問題はありません。
暖房設備は設備に備え付けでなくても、ストーブなどを用意すれば条件を満たします(暖房設備しか明記はありませんが、昨今の猛暑を考えると、もちろん冷房設備もあった方が良いでしょう)。
また、細かく規定されてはいませんが、新生活に必要となる家具・家電や調理器具、初期の消耗品、Wi-Fi等の通信機器なども会社側での用意となるのでご注意ください(レンタルやリユース品でもOK)。
住居の設備基準
住居全体の設備基準としては、快適な生活に必要な設備が整っていることが求められます。
例えば、以下のような設備が完備されていなければなりません。
・洗面所
・浴場(脱衣所含む)
・洗濯場
・衛生的で照明や換気の設備が整った食堂や炊事場(ある場合)
・適切な消化設備
また、2階以上に寝室がある建物の場合には、安全な場所に避難できる階段の設置が必要です。
原則は1ヵ所ですが、収容人数が15人以上の場合は2ヵ所以上の異なる場所に階段を設けることが必須となります(すべり台、避難はしご、避難用タラップなどの設置により技能実習生の安全を確保できる措置をとっている場合には、2ヵ所以上の階段は必要ありません)。
特定技能外国人の住居基準
特定技能外国人の住居基準については、技能実習生のように細かく規定されていませんが、「部屋の広さ」については、一般的な日本人労働者と比べて遜色のない環境を整えることが求められます。
部屋の広さ・割り振りの基準
特定技能外国人の居室の広さは、1人あたり7.5㎡以上を確保することが義務となっています。複数人でルームシェアをする場合には人数×7.5㎡以上の部屋を用意する必要があります。
この時、トイレや浴室、ロフトは居室面積に含まれないので注意しましょう。
例外(7.5㎡以下でもOKな場合)
①日本に住んでいる技能実習生が帰国せず、引き続き特定技能に在留資格を変更して働く場合
②自社で働いていたが帰国した元技能実習生が、同じ会社で特定技能として働く場合(特定技能に変更する予定で帰国し、引き続き部屋を利用する場合)
※どちらの場合でも、技能実習生の住居基準として定められている「寝室は1人当たり4.5 ㎡以上」は満たす必要があります。
※外国人本人の希望であったとしても1人あたり7.5㎡以下の居室物件は認められません。
家賃や光熱費の負担について
家賃や水道光熱費、Wi-Fiなどの通信費については、技能実習生や特定技能外国人本人との合意の上で給与から控除・徴収することができますが、当然に実費までの金額となります(管理費・共益費を含むが、敷金・礼金・保証金・仲介手数料の請求はNG)。
会社側が利益を上げるような請求や、周辺の賃貸料相場や本人給与を鑑みて、不当に高額な家賃設定をすることもできません。
複数の外国人社員が1部屋をシェアすることが一般的ですが、その場合は、家賃や水道光熱費の実費を入居人数で割った金額以内を控除・徴収することができます。
9万円÷3名=上限3万円/1名あたり
技能実習生や特定技能外国人本人の家賃負担の相場は「1名あたり2~3万円程度」、水道光熱費の負担は「1名あたり5千円~1万円程度」となっているため、この金額を上限の基準として控除・徴収することが望ましいでしょう。
また、途中帰国などがあり入居後に人数が減ってしまった場合でも、最初に設定した1名あたりの控除・徴収金額を上げることはできないため注意してください。
自己所有物件の場合は?
上記は、会社側が新しく賃貸アパートなどを用意して外国人社員を住まわせる場合ですが、中には社宅・社員寮などを会社で保有しており、そこに住んでもらうというケースもあると思います。
自己所有物件の場合は、
・建設/改装にかかった費用
・物件の耐用年数
・入居人数
などを考慮して算出した合理的な金額を控除・徴収することが可能です。
物件総額÷耐用年数÷12ヶ月÷居住人数
=1名あたりの徴収上限金額(月額)
※物件総額には土地代を含まず、リフォーム代や家電購入費等は含む。
ただし、賃貸・借り上げ物件と同様に、会社側が利益を上げるような請求や、周辺の賃貸料相場や本人給与を鑑みて、不当に高額な家賃設定をすることはできないので注意してください。
本人契約の場合は?(特定技能のみ)
特定技能の場合は、外国人社員が自分自身で住居を契約することもできます。
この場合は、上記2パターンとは違い「敷金・礼金・仲介手数料・家賃」は外国人社員本人の負担となりますが、以下の3つのサポートを会社側が行うことが必要になります。
・住居探しや内見、契約への同行
・契約に必要な保証
「契約に必要な保証」とは、外国人社員の連帯保証人になったり、家賃保証会社の緊急連絡先になるといった対応です。
保証会社を利用する場合の保証料は受入れ企業が負担となる点に注意しましょう。
「住所登録」の届け出を忘れずに
住居が確保できた後には、居住を開始してから14日以内に各自治体に住所登録の届け出を行ってください。
正当な理由なく住居決定後90日以内に住居の届け出をしなかった場合、外国人社員が在留資格取り消し処分になってしまう可能性があります。
それだけでなく、受入れ企業側も不正行為を行ったと見なされ、その後の技能実習生や特定技能外国人の雇用が困難になってしまうため、会社・外国人社員双方のために、忘れずに届け出の手続きを行いましょう。
まとめ
技能実習生・特定技能外国人の住居は、会社側の住居確保やサポートが必須です。
それぞれの住居基準や家賃・水道光熱費負担のルールを守った上で、受入れ企業・外国人社員の双方が気持ちよく実習や仕事に取り組めるよう、適切な運営を心がけましょう。
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