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特定技能の「生活オリエンテーション」を解説!実施内容・時間・注意点など【事例付き】

特定技能1号の外国人を雇用する際、企業には「生活オリエンテーション」の実施が義務付けられていますが、実際に何を、どのように行えばよいのかわからないという声をよく耳にします。

この記事では、生活オリエンテーションの概要から実施内容、時間、注意点まで、事例を交えながら詳しく解説します。

オリエンテーションを適切に実施することで、外国人労働者の円滑な生活と就労をサポートし、企業としてのリスク管理にもつなげることができるでしょう。

この記事の監修
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。

特定技能「生活オリエンテーション」とは

生活オリエンテーションとは、特定技能1号の外国人材に対して、日本での生活に必要な情報を受入企業が提供することを指します。

入国後または在留資格変更後に実施されるオリエンテーションで、外国人材が日本のルールやマナーを理解し、トラブルを防止することを目的としています。

また、長期的な就労を促進するためにも、生活面での不安を取り除くことが重要となります。

外国人材の円滑な生活と就労を支援すると同時に、受入企業のリスク管理にもつながる重要な取り組みと言えるでしょう。

対象となる外国人材

生活オリエンテーションの対象は、特定技能1号の在留資格を持つ外国人材で、特定技能2号の外国人材は対象ではありません。

特定技能1号の外国人材は、日本での生活経験が浅く、言語や文化の違いに戸惑うことが多いため、手厚いサポートが必要となります。

実施時期と実施主体

生活オリエンテーションは、外国人材の入国後または在留資格変更後に実施されます

受入企業で実施することが可能ですが、特定技能1号の外国人が「十分に理解することができる言語(つまり母国語)により実施すること」が求められるため、委託された登録支援機関で実施することが一般的です。

推奨される実施時間は8時間以上ですが、日本生活に慣れている場合は最低4時間での実施でも問題ありません。

個々の外国人材の背景や経験に応じたカスタマイズが可能となっています。

生活オリエンテーション実施後は、外国人材から確認書に署名を得る必要があります。この確認書は受入企業または登録支援機関が保管する義務があり、出入国在留管理庁指定の様式を使用します。

生活オリエンテーションの内容

生活オリエンテーションで行うべき具体的な内容は、主に以下の6項目です。

① 法令遵守および違反時の対応
② 日本での生活全般に関する情報
③ 役所・行政手続きに関する情報
④ 相談・苦情申出先の情報
⑤ 医療・防災・防犯に関する情報
⑥ 法的保護に関する情報

法令遵守および違反時の対応

外国人が法令に違反した場合、退去強制処分となり、強制送還される可能性があり、その場合、当然ながら就労継続も不可能になります。

そのため、以下の点を中心に、日本の法律を遵守することの重要性を伝えましょう。

違法薬物の所持・売買の禁止
大麻や覚せい剤などの違法薬物は、日本では所持・売買が厳しく禁止されています。出身国によっては合法な場合もあるため、誤解がないよう明確に伝えましょう。

銃砲・刀剣類の所持・携帯の禁止
原則として、銃砲や刀剣類の所持・携帯は日本では違法です。許可なく所持・携帯しないよう注意喚起を行いましょう。

日本での生活全般に関する情報

生活オリエンテーションでは、日本での生活に必要な基本的な情報を幅広く提供します。

口座開設、銀行・ATMの利用方法、医療機関へのアクセス、交通ルール、電車やバスの乗り方、ゴミ出しなどの生活ルール、タバコや騒音などのマナーについて、生活必需品の購入方法など、具体例を交えながらわかりやすく説明することが重要です。

特に、日本独特の習慣やマナーについては丁寧に解説し、トラブル防止につなげることが求められます。

例えば、電車内での通話は控えめにする、近隣住民への挨拶を心がける、といった日本社会のルールを理解してもらうことで、外国人労働者はスムーズに日本での生活を送ることができるでしょう。

役所・行政手続きに関する情報

来日後に必要となる各種行政手続きについて、具体的な方法や注意点を説明します。

在留カード等の届出、健康保険や年金等の社会保険の加入手続き、納税手続き、マイナンバーや自転車の防犯登録など、外国人労働者が自身で行う必要のある手続きをサポートすることが重要です。

必要書類の準備や記入方法、提出先、期限などを明確に伝え、問題なく手続きが完了するよう、丁寧に情報を伝えてください。

母国との制度の違いに戸惑うケースも多いため、なぜその手続きが必要なのか、背景となる日本の制度についても補足説明があると良いでしょう。

相談・苦情申出先の情報

生活や就労に関して問題が生じた際の相談先や苦情の申出先について情報提供します。

社内の担当者の連絡先に加え、労働基準監督署や入国管理局、大使館・領事館、警察署、法務局、各種外国人支援機関など、社外のリソースについても幅広く案内することが重要です。

相談相手の連絡先だけでなく、どのような問題についてどこに相談できるのか、具体例を示しながら説明すると良いでしょう。

問題を一人で抱え込まずに、適切な窓口に相談することを促す姿勢が重要です。

企業側も外国人労働者の声に耳を傾け、適切に対応することが求められます。

医療・防災・防犯に関する情報

医療機関の利用方法、緊急時の対応、犯罪やトラブルへの備えなど、外国人労働者の安全・安心に直結する情報を提供します。

言葉の壁により適切な医療が受けられない、災害時の避難場所がわからない、といったリスクを未然に防ぐための説明が不可欠です。

例えば、外国語対応可能な医療機関のリストを提供したり、災害時の避難場所・避難経路を実地で確認したりと、実践的な情報提供が効果的でしょう。

また、防犯のポイントやトラブル時の警察への通報方法といざという時の対処法はもとより、ハザードマップや行政情報へのアクセス方法など、防災・災害情報の入手方法についても伝えておくことが重要です。

法的保護に関する情報

外国人労働者に適用される各種法令について、基本的な内容や注意点を説明します。

入管法令や労働関係法令を中心に、在留資格の範囲内での活動の必要性、不当な扱いを受けた際の申告先など、トラブル防止と適切な保護につながる情報提供が求められます。

難解な法律用語は避け、具体的な事例を交えて説明するなど、外国人労働者にとってわかりやすい説明を心がけることが重要でしょう。

契約違反やハラスメントなどの問題が生じた場合の相談先、対処法についても触れ、一人で抱え込まずに助けを求める重要性を伝えましょう。

生活オリエンテーションの実施方法

対面・オンライン・録画動画視聴等の方法

特定技能1号外国人に対する生活オリエンテーションは、対面やオンライン、動画視聴など、様々な選択肢があります。

対面では、受入企業の担当者や登録支援機関のスタッフが直接外国人労働者に説明を行います。

オンライン会議システムを用いれば、遠隔地からでもリアルタイムにオリエンテーションの実施が可能です。

また、あらかじめ録画した説明動画を視聴してもらう方法もあり、時間や場所の制約を受けずに実施できるメリットがあります。

実施方法の選択にあたっては、外国人労働者の日本語能力や IT リテラシー、勤務形態などを考慮し、最も効果的で参加しやすい方式を採用するとよいでしょう。

必要に応じて複数の方法を組み合わせるのも一つの案です。

言語対応と理解しやすい説明

生活オリエンテーションを行う際は、外国人労働者が母国語または十分に理解できる言語で実施することが求められます。

日本語能力が高くない場合は、通訳を手配するなどして言語面でのサポートを行いましょう。

また、難解な専門用語を避け、具体例を交えながらわかりやすく説明することが重要です。

視覚的な資料やイラストを活用するのも理解度を高めるための有効な手段といえます。

外国人労働者の立場に立ち、どのような情報が必要で、どのように伝えれば正しく理解してもらえるかを常に意識しながら、オリエンテーションに臨んでください。

質問対応と疑問解消の体制

生活オリエンテーションでは、一方的な情報提供で終わらず、外国人労働者からの質問に丁寧に回答し、疑問点を解消することが理解の促進につながります。

オリエンテーション中はもちろん、実施後も継続的に質問を受け付ける体制を整えておくことをおすすめします。

担当者の連絡先を共有し、いつでも気軽に相談できる環境を整備しましょう。場合によっては定期的に面談の機会を設け、困りごとがないかを確認するのも効果的です。

外国人労働者の立場に寄り添い、オープンなコミュニケーションを心がければ、日本でのトラブルの少ない円滑な生活と就労をサポートすることができるはずです。

必要に応じた個別サポート

日本での生活能力や日本語能力は個人差が大きいため、それぞれの状況に合わせたきめ細かな対応をすることで、外国人労働者のモチベーションアップや定着率の向上が期待できます。

例えば、行政手続きが不慣れな外国人労働者には、必要書類の準備から窓口での手続きまで同行するなどの手厚いサポートが効果的でしょう。

また、金融機関の利用方法や医療機関の受診方法など、日常生活に直結する情報は、実例を交えながら繰り返し説明することが大切です。

外国人労働者の立場に立ち、何が不安で、どのような支援を必要としているのかを丁寧に汲み取ることがオリエンテーションの質を高めるカギとなります。

生活オリエンテーションの実施時間

ここでは、生活オリエンテーションの推奨実施時間、最低限必要な時間、そして柔軟な対応の重要性について詳しく解説します。

推奨される実施時間

出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」によると、生活オリエンテーションの推奨時間は8時間以上とされています。

この時間設定は、日本での生活に必要な情報を十分に提供し、外国人材の疑問や不安を解消するために必要とされている時間数です。

8時間以上の実施時間があれば、日本での生活全般、行政手続き、相談・苦情申出、医療・防災・防犯、法的保護など、幅広いトピックをカバーできるでしょう。

外国人材が日本のルールやマナーを理解し、トラブルを防ぎ、長期的な就労を継続できるようサポートするためには、十分な時間をかけた丁寧な説明が求められます。

最低限必要な実施時間

一方で、日本生活に既に慣れている外国人材の場合(技能実習2号良好修了者が特定技能1号へ在留資格を移行し、同じ企業などで働き続ける場合など)は、最低4時間の実施時間でもOKとされています。

※実施が4時間未満の場合は、適切に生活オリエンテーションが行われていないと判断される可能性があります。

日本での生活経験が浅い外国人材に対しては、やはり8時間以上の実施時間を確保し、きめ細かなサポートを提供することが望ましいでしょう。

生活オリエンテーションの実践事例

ここでは、効果的だったオリエンテーションの例を3つ紹介します。

技能実習からの移行者向け:効率的な4時間プログラム

製造業A社では、技能実習3号から特定技能1号へ移行する5名のベトナム人材に対し、技能実習での経験を活かした効率的な4時間プログラムを実施しました。

■実施時間
4時間(13:00~17:00)

■実施方法
対面形式

■使用言語
日本語(N3レベル)とベトナム語の通訳併用

■時間配分
・在留資格変更に伴う新たな手続き(1時間)
・居住地域での生活情報アップデート(1時間)
・相談窓口と支援体制の説明(1時間)
・質疑応答とフォローアップ計画(1時間)

初来日の外国人材向け:実地研修を含む8時間プログラム

食品加工業B社では、初めて来日する4名のインドネシア人材に対し、座学と実地研修を組み合わせた2日間8時間の実践的プログラムを実施しました。

■実施時間
2日間で計8時間(各日4時間)

■実施方法
座学と実地研修の組み合わせ

■使用言語
インドネシア語通訳を常時配置

■研修内容

・1日目(座学)
生活習慣・マナー、行政手続き、緊急時対応

・2日目(実地研修)
市役所手続き体験、通勤路確認、買い物実習、避難場所確認

複数拠点向け:オンラインと対面のハイブリッド型プログラム

IT企業C社では、複数の事業所で就労する10名のネパール人材に対し、オンラインと対面を組み合わせた8時間のハイブリッド型プログラムを展開しました。

■実施時間
計8時間(オンライン4時間、対面4時間)

■実施方法
オンライン講習と対面指導の併用

■使用言語
英語とネパール語の2か国語対応

■プログラム内容

・オンラインセッション
生活習慣、在留管理制度、社会保険、防災情報

・対面セッション
地域ルール、医療機関案内、通勤経路確認、個別相談

これらの事例を参考にして、企業規模や外国人材の特性に合わせたオリエンテーションを実施しましょう。

生活オリエンテーションの記録管理

生活オリエンテーションの実施記録は、適切に管理することが求められます。

確認書の作成と署名

生活オリエンテーションの実施後、受入企業または登録支援機関は、確認書を作成し、外国人労働者本人の署名を得る必要があります。

この確認書には、オリエンテーションの実施日時、場所、内容、実施者などの情報を記載します。

署名を得ることで、外国人労働者がオリエンテーションの内容を理解し、必要な情報を受け取ったことを確認でき、今後のトラブル防止や、適切な支援を行うことにもつながります。

確認書の保管義務

作成した確認書は、受入企業または登録支援機関が責任を持って保管しなければなりません。

保管期間は、外国人労働者の在留期間が終了するまでです。

確認書の保管は、企業のコンプライアンス遵守の証明にもなります。

万が一、行政機関から求められた場合には、速やかに提示できるよう適切な管理体制を整えておくことが重要です。

入管の指定様式を活用

確認書の作成には、出入国在留管理庁が指定する様式を使用します。

この様式は、必要事項が網羅されており、統一された形式で記録を残すことができます。

指定様式を使用することで、記載漏れを防ぎ、確実な記録管理が可能になり、行政機関の確認作業もスムーズに進むでしょう。

以上の3点を踏まえ、生活オリエンテーションの実施記録を適切に管理することが、外国人労働者の円滑な生活・就労支援と、受入企業のリスク管理において重要です。

まとめ

特定技能1号の外国人材を雇用する際、生活オリエンテーションの実施は非常に重要です。

日本での生活に必要な情報を丁寧に提供することで、外国人労働者の円滑な生活と就労をサポートできるでしょう。

オリエンテーションでは、日本の生活全般、行政手続き、相談窓口、医療・防災・防犯、法的保護など、多岐にわたるトピックをカバーします。

推奨される実施時間は8時間以上ですが、外国人労働者の背景や経験に応じて柔軟に対応することも大切です。

また、言語や文化の壁に配慮し、一人ひとりのニーズに寄り添った説明を心がけましょう。

実施後の継続的なフォローアップ体制を整えることで、外国人労働者のモチベーションアップと定着、そして企業の円滑な受入れにつながるはずです。

生活オリエンテーションを適切に実施し、外国人労働者の活躍を支援していきましょう。

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