特定技能外国人の転職に際し、企業はさまざまな対応を迫られています。
円滑な転職を実現するためには、転職ルールの理解と適切な手続きの実施が不可欠です。
この記事では、特定技能外国人の転職に関するルールや手続き、企業の対応について解説します。
転職者受入れのポイントを押さえることで、外国人材を有効活用し、企業の活性化につなげることができるでしょう。
INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
特定技能外国人の転職ルール
特定技能外国人の転職には一定のルールがあります。
ここでは、特定技能外国人の転職可能性、転職要件、転職手続きの流れについて説明していきます。
特定技能外国人の転職可能性
特定技能外国人は自由に転職することが可能です。
ただし、転職にはいくつかのハードルがあります。
特定技能外国人が転職するためには、新しい受入れ企業で働くための特定技能の要件を満たす必要があります。
同じ分野での転職であれば比較的容易ですが、異なる分野への転職の場合は新たに分野別技能試験に合格しなければなりません。
特定技能外国人の転職要件
特定技能外国人の転職には、外国人側と受入れ企業側の両方に要件があります。
外国人側の要件としては、分野別技能試験の合格が必要です。
ただし、同分野での転職の場合は不要となります。
受入れ企業側の要件としては、特定技能外国人受入れ資格の保持と適切な業務内容の提供が求められます。
受入れ企業は、特定技能外国人を適切に雇用し、支援していく体制を整えておく必要があるでしょう。
特定技能外国人の転職に必要な手続き
特定技能外国人が転職する際には、いくつかの手続きが必要となります。
ここでは、旧受入れ企業、特定技能外国人本人、新受入れ企業それぞれが行う手続きについて詳しく見ていきましょう。
旧受入れ企業が行う手続き
特定技能外国人の転職が決まった場合、旧受入れ企業は以下の手続きを行う必要があります。
- 特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出
- 特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
- 外国人雇用状況の届出(ハローワーク)
これらの届出を適切に行うことで、特定技能外国人の転職がスムーズに進められます。
届出の遅延や漏れがあると、外国人の在留資格に影響を与える可能性があるため注意が必要です。
特定技能外国人本人が行う手続き
特定技能外国人本人も、転職に際していくつかの手続きを行う必要があります。
最も重要なのが在留資格変更許可申請です。
在留資格変更許可申請は、新しい受入れ企業での就労を開始するために必須の手続きです。
この申請が認められて初めて、新しい企業で働くことができるようになります。
申請に必要な書類を揃え、適切な時期に申請を行うことが重要です。
また、転職先が同じ分野である場合は新たな技能試験の合格は不要ですが、異なる分野への転職の場合は、新たに分野別技能試験に合格する必要があります。
新受入れ企業が行う手続き
新たに特定技能外国人を受け入れる企業も、いくつかの手続きが必要となります。
- 特定技能外国人受入れ資格の取得
- 在留資格変更許可申請に必要な書類の準備
- 外国人雇用状況の届出(ハローワーク)
- 適切な業務内容の提供
特に、在留資格変更許可申請に必要な書類の準備は、外国人本人と連携しながら進めていく必要があります。
また、特定技能外国人を受け入れるためには、事前ガイダンスや生活オリエンテーションを丁寧に実施することが求められます。
必要に応じて登録支援機関を活用することも検討しましょう。
特定技能外国人の転職には、旧受入れ企業、外国人本人、新受入れ企業の3者が連携して手続きを進めていくことが重要です。
各手続きを適切に行うことで、外国人の円滑な転職が実現できるでしょう。
特定技能外国人の転職における注意点
特定技能外国人の転職には、いくつかの注意点があります。
ここでは、指定された活動以外は不可、申請中のアルバイト禁止、技能実習からの移行時の転職の3点について解説します。
指定された活動以外は不可
特定技能外国人は、指定書に記載された活動のみ従事することができます。
つまり、転職先で行う業務内容が、特定技能外国人の在留資格で認められた活動範囲内であることが重要です。
例えば、介護分野の特定技能外国人が、飲食業に転職することは原則的に認められていません。
転職先の企業は、特定技能外国人の在留資格で認められた活動内容を十分に理解し、適切な業務を提供する必要があるでしょう。
申請中のアルバイト禁止
特定技能外国人が転職のために在留資格変更許可申請中の場合、他社でのアルバイトは認められません。
この期間は、新しい受入れ企業での就労開始までは就労できない点に注意が必要です。
転職先の企業は、在留資格変更許可申請中の特定技能外国人に対して、生活面でのサポートを提供することが望ましいでしょう。
事前ガイダンスや生活オリエンテーションを丁寧に実施し、外国人が安心して新しい環境に適応できるようにすることが大切です。
技能実習からの移行時の転職
技能実習生が技能実習を修了し、特定技能への移行を希望する場合、転職が可能です。
ただし、特定技能の要件を満たす必要があります。
同分野での転職の場合、新たな分野別技能試験の合格は不要ですが、異分野への転職の場合は、新たな分野の技能試験に合格する必要があります。
受入れ企業は、外国人の技能レベルや適性を見極め、適切な分野での雇用を検討することが重要でしょう。
また、必要に応じて登録支援機関を活用し、外国人の転職がスムーズに進むようサポートすることも効果的です。
専門家の知見を取り入れることで、転職に伴うリスクを最小限に抑えることができるでしょう。
特定技能外国人の転職の事例
ここでは特定技能外国人の転職の際のトラブルについて、事例を紹介していきます。
無収入期間による生活困難
ある特定技能労働者が転職を希望して在留資格変更の手続きを開始しましたが、その申請が完了するまでの間、前職をすでに退職してしまったため、収入が途絶えてしまうケースがあります。
在留資格変更の審査期間中は他の仕事に従事することができず、結果的に転職先で働き始める前に生活費の確保が難しくなり、経済的に困窮する事態となってしまいます。
そのため、在留資格変更許可が下りるまでの期間、働けない状態が続くため、退職時期の調整や生活費の準備が重要です。
転職先企業の協力不足
別の企業に転職しようとした特定技能労働者のケースで、転職先企業が必要な書類の準備や手続きの協力を遅らせたため、在留資格変更が遅延した事例があります。
このため、転職希望者は予定通りに新しい職場で働くことができなくなり、転職プロセスが長期化してしまいました。
転職先企業が手続きに必要な書類や情報を迅速に提供しない場合、転職そのものが大幅に遅れる可能性があるため、企業側の協力が不可欠でしょう。
不適切な待遇による労働トラブル
特定技能労働者が転職後、新しい職場で提示された条件が実際の雇用条件と異なり、約束された給与が支払われないケースが発生しました。
この状況は、日本人と同等の待遇を保証する法律に違反しているとみなされ、労働基準監督署に報告される事態となりました。
特定技能外国人には、日本人と同等以上の待遇を提供することが法律で定められているため、転職先企業がその条件を遵守しているかの確認が必要です。
これらの事例から、特定技能外国人の転職には、企業側の協力や手続きの適切な進行、転職後のサポート体制、法的な待遇遵守が重要です。
特定技能外国人が転職可能な業種
特定技能外国人の転職には、いくつかの条件や手続きが必要になります。
ここでは、特定技能外国人が転職可能な業種について見ていきましょう。
同分野での転職
特定技能外国人が現在働いている分野と同じ分野での転職を希望する場合、比較的スムーズに転職が可能です。
この場合、新たに分野別技能試験に合格する必要はありません。
ただし、転職先の企業が特定技能外国人の受入れ資格を持っていることや、適切な業務内容を提供できることなどの要件を満たしている必要があります。
また、外国人本人も特定技能の在留資格変更許可申請を行う必要があります。
同分野での転職の例としては、飲食料品製造業で働いていた特定技能外国人が、別の飲食料品製造業の企業に転職するケースなどが挙げられます。
このような場合、外国人の持つ技能を活かしつつ、新しい環境で働くことができるでしょう。
異分野への転職
一方、特定技能外国人が現在働いている分野とは異なる分野への転職を希望する場合、いくつかのハードルが存在します。
最も大きな要件は、新たな分野別技能試験に合格することです。
例えば、建設業で働いていた特定技能外国人が、介護分野への転職を希望する場合、介護分野の技能試験に合格する必要があります。
これは、各分野で求められる技能や知識が異なるためです。
また、転職先の企業側にも、新たな分野での特定技能外国人受入れ資格の取得や、適切な業務内容の提供などの要件が求められます。
異分野への転職は、外国人、企業双方にとってハードルが高いと言えるでしょう。
ただし、異分野への転職が全く不可能というわけではありません。
外国人の意欲と企業のサポート体制次第では、新たな分野でのキャリアを築くことも可能です。
企業は、特定技能外国人の適性や希望を踏まえつつ、必要に応じて異分野への転職をサポートしていくことが求められます。
特定技能外国人の転職者受入れ企業の対応
特定技能外国人を受け入れる企業は、転職者に対して適切な対応を取ることが求められます。
ここでは、特定技能外国人の転職者を受け入れる際に企業が行うべき主な対応について説明します。
事前ガイダンスと生活オリエンテーションの実施
特定技能外国人の転職者を受け入れる際、企業は事前ガイダンスと生活オリエンテーションを丁寧に実施する必要があります。
事前ガイダンスでは、受入れ企業の業務内容や労働条件、社内ルールなどを詳しく説明します。
転職者が新しい職場環境に早く適応できるよう、十分な情報提供を行うことが重要です。
また、日本での生活に関する基本的な情報も併せて提供しましょう。
生活オリエンテーションでは、日本での生活に必要な知識や手続きについて詳しく説明します。
住居の確保、公共サービスの利用方法、医療機関の利用方法など、外国人が日本で生活するうえで必要な情報を網羅的に提供することが求められます。
これらのガイダンスやオリエンテーションを通じて、特定技能外国人の転職者が新しい環境に円滑に適応できるよう支援することが、受入れ企業の重要な役割といえるでしょう。
登録支援機関の活用
特定技能外国人の転職者を受け入れる際、企業は必要に応じて登録支援機関を活用することも検討すべきです。
登録支援機関とは、特定技能外国人の日本での生活や就労を支援する専門機関です。
日本語学習の機会提供、住宅の確保、各種行政手続きの支援など、外国人の生活全般に関する支援を行っています。
特に、特定技能外国人の転職者を初めて受け入れる企業にとって、登録支援機関の活用は大きなメリットになるでしょう。
外国人の生活支援に関するノウハウを持つ専門機関に一部業務を委託することで、企業の負担を軽減できます。
ただし、登録支援機関の活用は必須ではありません。
企業の体制や受入れ人数などを考慮し、必要に応じて検討するとよいでしょう。
登録支援機関を活用する場合は、提供されるサービスの内容や料金体系をよく確認し、適切な機関を選ぶことが重要です。
特定技能外国人の転職のメリット
特定技能外国人の転職には、企業にとって多くのメリットがあります。
ここでは、その主なメリットについて説明します。
外国人材の効果的な活用
特定技能外国人の転職を受け入れることで、企業は必要とする人材を柔軟に確保することができます。
自社の業務に適した外国人材を採用できるため、即戦力としての活用が期待できます。
また、既に日本で就労経験のある特定技能外国人は、日本語能力や業務知識を備えていることが多く、スムーズな業務への適応が可能です。
加えて、特定技能外国人の受入れにより、多様な文化背景を持つ人材が増えることで、職場の国際化や異文化理解の促進にもつながります。
グローバル化が進む現代において、外国人材の活用は企業の競争力強化に不可欠な要素となっています。
人材の流動性向上による企業の活性化
特定技能外国人の転職を認めることで、人材の流動性が高まり、企業の活性化につながります。
新しい人材の受入れにより、組織に新風を吹き込むことができ、既存の従業員のモチベーション向上にも寄与します。
また、転職を通じて外国人材が新たなスキルや知識を習得することで、企業全体の業務効率や生産性の向上が期待できます。
さらに、特定技能外国人の転職を受け入れる姿勢は、企業の柔軟性や多様性を尊重する姿勢の表れとして、対外的なイメージ向上にもつながります。
優秀な外国人材を惹きつける魅力的な職場環境の構築は、長期的な企業の発展に欠かせない要素と言えるでしょう。
特定技能外国人の転職のデメリット・リスク
特定技能外国人の転職には、企業にとってデメリットやリスクが存在します。
ここでは、特定技能外国人の転職に伴う主なデメリットとリスクについて解説します。
人材の定着率低下
特定技能外国人の転職が容易になることで、企業にとっては人材の定着率が低下するリスクがあります。
せっかく採用し、教育してきた人材が他社へ転職してしまうと、人材育成の観点から大きな損失となるでしょう。
また、特定技能外国人の転職が頻繁に行われると、企業内の業務の継続性や生産性にも影響を与える可能性があります。
特に、専門性の高い業務に従事している特定技能外国人の転職は、企業にとって大きな痛手となるでしょう。
そのため、企業は特定技能外国人の定着率を高めるための取り組みが必要となります。
例えば、適切な待遇の提供や働きやすい環境の整備、キャリアアップの機会の提供などが考えられます。
これらの取り組みを通じて、特定技能外国人のモチベーションを高め、長期的な雇用関係を構築することが重要です。
教育コストの増加
特定技能外国人の転職が増加すると、企業にとっては教育コストの増加というデメリットが生じます。
新たに採用した特定技能外国人に対して、業務に必要な知識やスキルを習得させるためには、一定の教育期間と費用が必要となるでしょう。
特に、特定技能外国人の場合は、日本語能力や日本の企業文化への適応など、日本人従業員とは異なる教育内容が求められることがあります。
また、転職が頻繁に行われると、教育の効果が十分に発揮される前に退職してしまう可能性もあるでしょう。
このような状況を避けるためには、特定技能外国人の採用時に、適性や将来性を見極めることが重要です。
また、教育プログラムを効率化し、短期間で必要なスキルを習得できるような工夫も必要でしょう。
さらに、特定技能外国人のキャリアプランを明確にし、長期的な視点で人材育成を行うことも有効な対策となります。
情報管理の難しさ
特定技能外国人の転職に伴い、企業の情報管理の難しさが増すというデメリットもあります。
特定技能外国人が転職する際には、これまで業務で扱ってきた機密情報や顧客情報などの漏洩リスクが高まるでしょう。
特に、競合他社への転職の場合は、企業の重要な情報が流出する危険性があるため、十分な注意が必要です。
また、特定技能外国人の出身国によっては、情報管理に対する意識が日本と異なる場合もあり、情報漏洩のリスクがさらに高まることも考えられます。
こうしたリスクに対応するためには、特定技能外国人との雇用契約において、機密保持義務や競業避止義務などを明確に規定することが重要です。
また、日常的な情報管理教育を徹底し、特定技能外国人の情報管理に対する意識を高めることも必要でしょう。
さらに、情報へのアクセス制限など、技術的な対策を講じることも有効な手段となります。
まとめ
特定技能外国人の転職には一定のルールがありますが、適切な手続きを踏めば可能です。
同分野での転職は比較的容易ですが、異分野への転職には新たな技能試験合格が必要となるでしょう。
転職手続きでは、旧受入れ企業、外国人、新受入れ企業それぞれに手続きが求められます。
指定された活動以外は認められず、申請中は他社でのアルバイトも禁止されるなど、注意点にも留意が必要ですね。
転職者を受け入れる企業は、事前ガイダンスや生活オリエンテーションを丁寧に実施し、外国人材の円滑な適応をサポートしましょう。
登録支援機関の活用も検討の価値があるでしょう。
転職により外国人材を効果的に活用し、企業の活性化につなげることが期待できます。
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