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【特定技能】介護職の受け入れ方法|メリット・デメリット、技能実習との違いも解説

この記事をご覧のあなたは、介護現場の人手不足に頭を悩ませていませんか?

本記事では、特定技能「介護」制度の概要や受け入れ方法、メリットとデメリット、技能実習との違いについて詳しく解説します。

特定技能「介護」は、一定の専門性と技能を有する外国人材を最長5年間にわたって受け入れることができる一方で、在留期間や業務範囲の制限、支援体制の整備負担などの課題も存在します。

しかし、適切な対策を講じることで、これらの課題を解消し、特定技能「介護」の制度を有効に活用することができるでしょう。

外国人材の力を借りて、介護サービスの維持・向上を目指しましょう。

この記事の監修
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。

特定技能「介護」制度の概要

2019年に開始された特定技能「介護」制度は、深刻化する介護人材不足への対策として、すでに多くの介護事業者に活用されています。

ここでは、制度の目的や施行時期、在留資格の概要、介護分野における特定技能外国人の位置づけについて解説します。

特定技能「介護」の目的と施行時期

特定技能「介護」制度は、日本の介護現場で深刻化している人材不足を解消することを目的として、2019年4月より施行された、まだ比較的新しい制度です。

この制度により、介護において一定の専門性と技能を有する外国人材が就労できるようになりました。

介護現場で即戦力となる外国人材を受け入れることにより、人手不足の緩和が期待されています。

在留資格「特定技能1号」の概要

特定技能「介護」の在留資格は「特定技能1号」に分類されます。

外国人がこの在留資格を取得するためには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 介護分野の特定技能1号評価試験の合格
  2. 技能実習2号の良好な修了
  3. 介護福祉士養成施設の修了
  4. EPAに基づく介護福祉士候補者として4年間の在留期間を満了した者

特定技能1号の外国人材は、身体介護全般や支援業務に従事でき、単独での夜勤も可能です。

また、配置基準にも即時算入されるため、即戦力としての活躍が期待されています。

介護分野における特定技能外国人の位置づけ

前述の通り、特定技能外国人は、介護現場での基礎的な知識と技能を有しており、即戦力として活用できる存在です。

幅広い業務に対応できるため、日本人職員の負担軽減にもつながります。

将来的には、実務経験を積んだ特定技能外国人が介護福祉士資格を取得して、在留資格「介護」へ移行することで、更新を行う限り半永続的に日本で就労することも可能です。

そのため、特定技能「介護」の制度は、外国人材の段階的なキャリア形成を支援する仕組みともいえるでしょう。

特定技能「介護」の資格を取得するには、いくつかの要件を満たす必要があります。

次に、その具体的な取得ルートについて見ていきましょう。

特定技能「介護」の資格取得要件

試験合格ルートによる資格取得

特定技能「介護」の資格を取得する主要なルートの一つが試験合格による方法です。

このルートでは、以下の3つの試験に合格することが求められます。

  1. 介護技能評価試験
  2. 日本語能力試験(N4以上)または国際交流基金日本語基礎テスト
  3. 介護日本語評価試験

上記3つの試験はすべて筆記形式で実施され、実技試験はありません。

「介護日本語評価試験」はPC上で行うCBT方式で実施されます。指示文は現地語で表示されますが、問題文は日本語となっており、介護現場での声掛けや文書など、実務で必要な日本語能力が問われます。

技能実習2号修了からの移行

介護分野の特定技能1号資格を取得するルートとして、介護分野の技能実習2号からの移行があります。

移行するためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 技能実習2号を良好に修了していること
  2. 技能実習の職種・作業と、特定技能1号の業務とに関連性が認められること

介護分野が技能実習に追加されたのが2017年であるため、最近になって、ようやく2号からの移行者が出始めています。また、新型コロナウイルスの影響による特例として、技能実習の異業種(別分野)から介護分野の特定技能1号への移行も認められていました。

なお、技能実習2号を良好に修了していても、介護分野における特定技能1号を取得するには「介護日本語評価試験」の合格が必要です。この点は他の試験が免除となる技能実習ルートにおいても例外ではありません。

その他の資格取得ルート

試験合格と技能実習修了以外にも、特定技能「介護」の資格取得ルートがいくつか存在します。

  • 介護福祉士養成施設の修了
  • EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士候補者としての4年間の在留期間満了

これらのルートでは、日本国内で介護福祉士の養成課程を修了したり、EPA枠組みで一定期間働いたりすることで、特定技能「介護」の資格が取得できます。

以上のように、特定技能「介護」の資格取得には複数の道筋が用意されています。

特定技能「介護」外国人の業務範囲と特徴

特定技能「介護」の在留資格の外国人介護人材の業務範囲と特徴について解説します。

特定技能外国人に認められる業務、課せられる制限、介護福祉士との違いなどを見ていきましょう。

特定技能外国人に認められる介護業務

特定技能「介護」の外国人は、幅広い介護業務に従事することができます。

身体介護全般として、食事介助、入浴介助、排せつ介助などを行うことが可能です。また、レクリエーションの実施や機能訓練の補助といった支援業務にも携われます。

特定技能外国人に課せられる業務上の制限

一方で、特定技能「介護」の外国人には、いくつかの業務上の制限が課せられています。

現時点では、訪問介護サービスへの従事は認められていません(2025年度に解禁される見込みとなっています)。

また、特定技能外国人を派遣労働者として雇用することは認められていません。受け入れ施設との直接雇用のみが可能であり、日本人労働者と同等以上の労働条件を提供することが求められます。

各在留資格との比較

特定技能「介護」と技能実習、在留資格「介護」を比較してみましょう。

特定技能「介護」 技能実習 在留資格「介護」
業務制限 制限あり
(訪問介護サービス不可)
制限あり
(訪問介護サービス不可)
制限なし
(訪問介護サービスもOK)
在留期間 上限5年間 受入れ開始時は技能実習2号までの3年間、優良実習実施者認定後は技能実習3号までの最長5年間 制限なし
日本語能力 入国前の試験で日本語能力を確認 入国時N4、2号に移行時にN3 介護福祉士養成校の入学者選抜の時点でN2を要件としているところが多い
能力・学歴 要件はなし
(上記試験に合格するか、技能実習からの移行の場合は2年以上の実務経験がある)
各監理団体の選考基準による 要件なし
メリット ・基礎的な介護の知識を持っている
・講習期間が数時間程度と短い
・定期報告は3ヶ月に1回と報告の負担が少ない
・国内の監理団体が採用から各種手続き、研修などを行ってくれる ・外日本語能力が高い場合が多い
・介護の専門知識を持っている
・訪問系サービスを行うことができる
デメリット ・訪問系サービスを行うことができない
・登録支援機関に支払う月額料金が発生
・訪問系サービスを行うことができない
・配属後6か月間は人員配置に含められない
・現場に出るまでに3カ月程度の講習が必要
・技能実習日誌に毎日記録、監査報告書は3ヶ月に1回、事業報告書、実施報告書など書類関係が煩雑
・介護施設が自主的に採用活動をしなければならない

在留資格「介護」がもっとも高広範な業務に従事でき、メリットが大きいことがわかりますが、特定技能外国人は一定の専門性・技能を有しているため、介護福祉士の指示のもと、幅広い業務をこなすことができるでしょう。

将来的には、実務経験を積んで介護福祉士資格を取得し、より高度な業務に携わることも期待できます。

特定技能「介護」外国人の受け入れ要件

特定技能「介護」制度で外国人を受け入れるには、施設側も要件を満たす必要があります。

ここでは、受け入れ施設の基本要件、運営要件、受け入れ人数の上限と算定方法について見ていきましょう。

受け入れ施設の基本要件

特定技能「介護」の外国人材を受け入れるためには、施設や事業所は以下に挙げる要件を満たさなければなりません。

  1. 介護分野の特定技能協議会への加入
    在留資格申請前に、事前加入しなければなりません。すでに加入済みの場合は、再度の加入は不要です。
  2. 従事する業務内容
    外国人材は、利用者の身体介護(入浴、食事、排せつ等の介助)および、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)に従事します。訪問介護は対象外となります。
  3. 受け入れ事業所の適格性
    介護等の業務(訪問介護を除く)を行う事業所であることが必要です。
  4. 受け入れ人数の上限
    事業所単位で、日本人等(※後述)の常勤職員の総数を超えない範囲で受け入れることが可能です。

特定技能外国人材を雇用する際には、上記要件を満たしていることを確認した上で、受入れ機関の情報など必要書類と併せて、出入国在留管理庁へ在留資格申請を行います。これらの要件を満たしていない場合、申請が不許可となるため注意が必要です。

特定技能「介護」の受け入れ人数の上限

介護分野で特定技能1号の外国人を受け入れる際、事業所ごとの受け入れ人数に上限が設けられています

この上限は、日本人を含む常勤介護職員の総数です。ここでいう「日本人等」には、以下の在留資格を持つ外国人も含まれます。

  • 日本人介護職員
  • EPA介護福祉士: 経済連携協定(EPA)に基づき来日し、介護福祉士資格を取得した者
  • 在留資格「介護」保有者
  • 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等

一方、以下の在留資格者は「日本人等」としてカウントされません。

  • 技能実習生
  • 留学生
  • EPA介護福祉士候補者

重要なのは、EPA介護福祉士候補者は対象外ですが、EPAに基づき来日し、介護福祉士試験に合格した外国人材は、日本人でなくても「日本人等」としてカウントされるということです。

特定技能外国人の受入れ人数は、日本人等の常勤介護職員の総数を超えないように設定する必要があります。

特定技能「介護」を受入れ可能な施設

特定技能「介護」の外国人材を受け入れ可能な施設・事業は、主に以下の6種類に分類されます。

  1. 児童福祉法に基づく施設・事業
  2. 障害者総合支援法に基づく施設・事業
  3. 老人福祉法・介護保険法に基づく施設・事業
  4. 生活保護法に基づく施設
  5. その他社会福祉施設等
  6. 病院または診療所

これらは、技能実習制度と同様に、「介護」業務が行われている施設(介護福祉士国家試験の実務経験対象施設)を基本としています。

しかし、注意すべき点は、特定技能「介護」では受け入れ対象外となる施設・事業も多いということです。

介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について

出典:厚生労働省 介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について

受け入れ対象外の施設・事業

現状、特定技能「介護」の受け入れ対象外となる施設・事業は数多く存在します。

特に重要な分野として、以下のものが挙げられます。

訪問系介護サービス

訪問系介護サービスを提供する施設・事業所は、現時点では特定技能「介護」の受け入れ対象外です。

ただし、厚生労働省は訪問介護への受け入れを視野に入れた方針を打ち出しており、今後の動向が注目されています。

特定施設入居者生活介護(一部)

有料老人ホームであっても、すべての施設が受け入れ対象となるわけではありません。

厚生労働省は、以下のサービスを提供する施設を対象としています。

  • 特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)
  • 介護予防特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(外部サービス利用型を除く)

つまり、介護付き有料老人ホームは基本的に対象となりますが、介護サービスを外部委託している場合や、住宅型有料老人ホームは対象外となります。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、高齢者に住居を提供し、付随的に介護サービスを提供する施設です。

しかし、提供される介護サービスは各家庭への訪問介護とみなされるため、特定技能「介護」の対象外となります。ただし、例外的にサ高住内に設置されたデイサービス事業所は対象となります。

訪問介護サービスは人手不足が深刻であり、有効求人倍率が約15倍と非常に高くなっています。人手不足による事業継続の危機への対応、外国人雇用推進を視野に入れていることから、今後の特定技能制度の改正が注目されています。

特定技能「介護」のメリット

特定技能「介護」には、介護人材不足の解消に向けて大きなメリットがあります。

ここでは、その主なメリットについて見ていきましょう。

即戦力としての活躍できる

特定技能「介護」の外国人材は、一定の専門性と技能を持っているため即戦力としての活用が期待できます

介護技能評価試験や日本語能力試験などの要件をクリアしている人材は、基礎的な介護知識を有しており、すぐに介護の現場で力を発揮できるでしょう。

また、単独での夜勤が可能であり、技能実習では、2年目以降、他の介護職員との複数人体制などの一定の条件下でのみ認められていた夜勤業務ですが、特定技能「介護」では、日本人職員と同等の勤務形態で働くことができます。

これは、特に夜勤の人手不足に悩む施設にとっては特に大きなメリットと言えます。

人材確保の選択肢拡大

特定技能「介護」の導入により、従来の日本人職員の採用や技能実習生、EPA(経済連携協定)の外国人材に加えて、新たな採用チャネルが加わることになり、介護施設における人材確保の選択肢が広がりました。

技能実習では制限される業務がある一方、特定技能「介護」では訪問系サービスを除き、幅広い業務への従事が認められています。この柔軟性は、多様なニーズに対応できる人材の確保に繋がっています。

また、新設から3年未満の事業所でも採用が可能となるため、事業展開の選択肢も広がるでしょう。

介護人材の確保に悩む施設にとって、特定技能「介護」は大きな追い風となっています。

柔軟な人員配置

特定技能「介護」の外国人材は、配属後すぐに人員配置基準に算定でき、初年度から日本人常勤職員と同人数まで採用できることも重要なポイントです。

技能実習では、配属後6ヶ月間は人員配置基準に含めることができませんでしたが、特定技能「介護」では、即戦力としての活躍が期待できるため、慢性的な人材不足に悩む介護現場にとって大きな助けとなります。

特定技能「介護」のデメリットと注意点

特定技能「介護」は、介護分野の人材不足対策として注目されている制度ですが、いくつかの制限事項やデメリットも存在します。

ここでは、特定技能「介護」を活用する上での主な注意点について解説していきます。

転職リスクへの対策の必要性

特定技能「介護」の外国人材は、技能実習とは異なり、一定の条件を満たせば他の介護施設へ転職することができます

そのため、せっかく育成した人材が他施設に流出してしまうリスクへの対策が必要となります。

具体的には、外国人材の定着率向上に向けた取り組みが重要となるでしょう。

適切な待遇の提供や、キャリア形成支援など、外国人材が長く働き続けたいと思える職場環境の整備が求められます。

介護福祉士資格取得支援など、段階的なキャリアパスの提示も効果的です。

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以上のように、特定技能「介護」の活用にはいくつかの注意点やデメリットが存在しますが、適切な対策を講じることで、これらの課題をクリアし、制度を有効に活用することが可能となるでしょう。

外国人材の力を借りて、介護サービスの維持・向上を図るために、特定技能「介護」の活用を前向きに検討していく価値は十分にあるといえます。

在留資格「介護」へのキャリアアップを目指すには

特定技能「介護」は最長5年間の在留資格ですが、その後も日本で介護職として働き続けたい場合、在留資格「介護」への移行が有効な選択肢となります。

在留資格「介護」は在留資格の更新回数に制限がなく、長期就労が可能です。

在留資格「介護」への移行要件

在留資格「介護」への移行には、介護福祉士資格の取得が必須です。

介護福祉士国家試験を受験するためには、実務経験3年以上かつ実務者研修の修了が求められます。

特定技能から直接移行

特定技能として働きながら、最短3年間の実務経験を積み、介護福祉士国家試験を受験。

試験合格後、さらに登録にかかる期間で約1年、合計4~5年程度で在留資格「介護」へ移行できます。

技能実習から特定技能を経由して移行

技能実習2号を良好に修了(3年間)後、特定技能に移行。その後、介護福祉士資格を取得することで、在留資格「介護」へ移行できます。

この場合、特定技能移行後の資格取得までの期間が重要となります。

技能実習生は来日当初、介護に関する知識がない場合がほとんどであるため、実務経験3年を満たしてもすぐに介護福祉士試験に合格できるとは限りません。そのため、計画的な学習と、実務を通したスキルアップが重要となります。

このように、特定技能から在留資格「介護」への移行には複数のルートがあります。個々の状況に合わせて最適な方法を選び、長期就労を目指しましょう。

まとめ

介護業界では深刻な人材不足が続いており、その解決策として特定技能「介護」への注目が高まっています。

特定技能「介護」は、即戦力となる外国人材を柔軟に受け入れるための新しい道筋で、企業と外国人材双方にとって多くのメリットがあります。

特定技能「介護」の大きな特徴は、他の在留資格と比較して制限が少なく、幅広い業務に従事できる点です。例えば、技能実習制度と比べ、事業所ごとに、初年度から日本人常勤職員と同数までの受け入れが可能であったり、すぐに人員配置基準に算定できたりと、企業にとって大きな魅力となっています。

特定技能「介護」は最長5年間の在留資格ですが、この期間中に外国人材が介護福祉士の国家試験に合格すれば、更新制限のない在留資格「介護」への移行が可能となり、永続的な就労への道も開かれます。この点において、学歴や資格取得に一定の時間を要する在留資格「介護」やEPAとは異なり、より迅速かつ柔軟に人材を確保・育成する手段となっています。

制度としてはまだ比較的新しく、2025年には訪問系サービスの解禁も予定されているなど、今後の普及と発展が期待されており、特定技能「介護」の積極的な活用は、人材不足に悩む介護現場の状況を改善する有効な一手となるでしょう。

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