建設業界で外国人労働者を雇用した経験のある事業所は約3割と、外国人材の活用に慎重な姿勢。大半は人手不足の解消や若手人材の確保を目的としているが、現場では日本語能力不足や文化の違いによるコミュニケーションの困難さ、早期離職や受入体制の未整備などの課題も。言語教育の充実や安全衛生教育の多言語化、受入環境の整備を進めることが、外国人労働者の活用拡大および建設業界全体の活性化に重要と考えられる。
技能実習生・特定技能外国人など始めとする「外国人雇用を検討する会社」と、監理団体・登録支援機関・外国人材紹介会社など「外国人材を紹介する会社・団体」をつなげるBtoBマッチングサービス「外国人採用の窓口」を展開する株式会社アルフォース・ワン(本社:東京都葛飾区 代表者:山根 謙生、以下当社)では、建設業界を対象に「外国人雇用」に関する調査を実施しました。(調査期間:2025年3月26日)
〈調査概要〉
項目 | 詳細 |
調査名 | 建設業界の外国人雇用の実態調査 |
対象者 | 建設業界に勤務する方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年3月26日 |
回答数 | 152名 |
〈回答者年代内訳〉
年代 | 人数 |
20~29歳 | 3名 |
30~39歳 | 20名 |
40~49歳 | 41名 |
50~59歳 | 55名 |
60歳~ | 33名 |
INDEX
建設業界の外国人労働者の雇用実態
Q1:あなたの職場での外国人労働者の雇用状況を教えてください【n=152/単一回答】
「雇用経験あり(現在も雇用中)」が28.3%、「雇用経験あり(現在は雇用なし)」が1.3%となり、全体の29.6%の建設事業所が外国人労働者を雇用した経験を持つことがわかりました。一方で、「雇用検討中」は4.6%にとどまり、「雇用する予定なし」が65.8%と約3分の2を占めています。
この結果から、建設業界では一部で外国人雇用が進んでいるものの、多くの事業所では依然として外国人雇用に対して慎重な姿勢を取っていることが明らかになりました。
外国人労働者が増加傾向にあるとはいえ、国土交通省の『建設分野における外国人材の受入れ状況等について』調査によると建設業界における外国人労働者は約14万人、総務省の『労働力調査』による建設業の就業者数477万人から換算すると約3%とまだ低水準であり、現場での言語や文化の違い、制度手続きの煩雑さなどが障壁となっている可能性があります。
年度 | 建設業 外国人労働者数(人) |
うち 技能実習生(人) |
うち 特定技能外国人(人) |
2012 | 13,102 | 7,054 | |
2013 | 15,647 | 8,577 | |
2014 | 20,560 | 12,049 | |
2015 | 29,157 | 18,883 | |
2016 | 41,104 | 27,541 | |
2017 | 55,168 | 36,589 | |
2018 | 68,604 | 45,990 | |
2019 | 93,214 | 64,924 | 267 |
2020 | 110,898 | 76,567 | 2,116 |
2021 | 110,018 | 70,488 | 6,360 |
2022 | 116,789 | 70,489 | 12,776 |
2023 | 144,981 | 88,830 | 24,463 |
出典:国土交通省『建設分野における外国人材の受入れ状況等について』
一方、「雇用検討中」の事業所が一定割合存在することからも、外国人材を人手不足解消の選択肢として前向きに検討し始めている企業もあることが伺えます。
今後、制度改善や受入環境の整備が進むことで、外国人労働者の雇用が徐々に拡大すると考えられます。
Q2:雇用していない理由(課題・懸念点)を教えてください(Q1で「現在は雇用なし」「雇用する予定なし」と選択した方)【n=102/3つまで】
外国人を雇用しない理由として、「外国人を受け入れる体制の未整備」(50.0%)や「日本語能力の不足による言葉の壁」(39.2%)が特に多く挙げられました。これは、多くの企業が受け入れ環境の整備や言語的な課題に強い懸念を抱いていることを示しています。
また、「文化・習慣・価値観の違いによるコミュニケーションの難しさ」(19.6%)や「短期離職・失踪への懸念」(16.7%)が続き、言語や文化の違いが雇用を妨げる主な要因であることがうかがえます。
厚生労働省の『令和5年 外国人労働者の労働災害発生状況』報告書でも、建設業は外国人労働者の労災発生数が製造業に次いで多く、特に技能実習生の災害発生率が高いとされています。
この背景には、言葉の壁による安全指導や教育の難しさがあると指摘されており、こうした安全面での懸念も受け入れをためらう要因となっている可能性があります。
今後、外国人労働者の雇用を促進するためには、受け入れ体制の整備や日本語教育の充実、安全指導の多言語化といった課題への具体的な対応が不可欠です。
Q3:現在勤めている外国人労働者はどのような在留資格を保有していますか?(Q1で「雇用経験あり(現在も雇用中)」と選択した方)【n=43/複数回答】
最も多かったのは「技能実習」(48.8%)でした。これは建設業界全体で外国人労働者の多くを技能実習生が占めているという国土交通省の調査『建設分野における外国人材の受入れ状況等について』とも一致しています。
一方、「特定技能」は16.3%にとどまり、技能実習と比較するとまだ普及途上であることがわかります。
年度 | 建設業 外国人労働者数(人) |
うち 技能実習生(人) |
うち 特定技能外国人(人) |
2012 | 13,102 | 7,054 | |
2013 | 15,647 | 8,577 | |
2014 | 20,560 | 12,049 | |
2015 | 29,157 | 18,883 | |
2016 | 41,104 | 27,541 | |
2017 | 55,168 | 36,589 | |
2018 | 68,604 | 45,990 | |
2019 | 93,214 | 64,924 | 267 |
2020 | 110,898 | 76,567 | 2,116 |
2021 | 110,018 | 70,488 | 6,360 |
2022 | 116,789 | 70,489 | 12,776 |
2023 | 144,981 | 88,830 | 24,463 |
出典:国土交通省『建設分野における外国人材の受入れ状況等について』
また、「技術・人文知識・国際業務」(20.9%)や「技能」(11.6%)など、専門性や高度な知識・技能を有する外国人も一定数存在しており、建設業界において、施工管理職や外国特有の建築土木の技術を有した人材の活用も進んでいることが伺えます。
一方で、「身分系(永住者・定住者・配偶者)」は4.7%と低く、安定した長期滞在資格を持つ外国人が建設業界に少ないことが明らかになりました。この背景には、建設業界が技能実習制度に依存し、短期的な雇用形態が多いという課題があります。
今後、人手不足の緩和や労働環境の安定化のためには、特定技能の活用促進や定住促進に向けた制度整備、外国人材が長期的に働ける環境作りが重要になると考えられます。
建設業界の外国人労働者の採用実態
Q4:どのような方法で外国人労働者を採用しましたか?(Q1で「雇用経験あり(現在も雇用中)」「雇用検討中」と選択した方)【n=50/複数回答】
「人材紹介会社(監理団体・登録支援機関・送り出し機関を含む)」が50.0%と最も多く、主な採用手段として利用されていることが分かります。これは建設業界が技能実習生や特定技能外国人を受け入れる際、監理団体や登録支援機関を経由している実態を反映していると考えられます。
次に、「公的機関(ハローワーク・外国人雇用センターなど)」が26.0%、「求人広告」が24.0%となっており、比較的一般的な募集方法を通じた採用も一定数行われています。
特に公的機関の利用は、費用負担が少なく信頼性が高いため、中小規模の事業所にとって魅力的な採用手段となっている可能性があります。
一方、「リファラル(縁故)」は12.0%とやや低い結果ですが、これは外国人労働者がまだ十分に定着しておらず、縁故ネットワークが限定的であることを示唆しています。今後、外国人労働者が業界内で定着・増加すれば、リファラルによる採用の割合が高まる可能性があります。
業界全体として、効率的かつ安定した人材確保のためには、各採用方法の特性を理解し、バランス良く活用することが求められるでしょう。
Q5:外国人労働者を採用した理由として最も当てはまるものを教えてください。(Q1で「雇用経験あり(現在も雇用中)」「雇用検討中」と選択した方)【n=50/単一回答】
「人材不足の解消」が56.0%と最も多く、次いで「若手労働力の確保」が18.0%、「社内の活性化・多様性の促進」が14.0%となっています。
この結果は、建設業界が深刻な人手不足に直面している現状を反映しています。総務省の労働力調査によると、1997年に685万人いた建設就業者数は、2024年には477万人まで減少しています。
このような状況下で、外国人労働者の採用は、建設業界において人手不足を補う有効な手段とされています。厚生労働省の調査『建設分野における外国人材の受入れ状況等について』によると、実際に建設業界で働く外国人労働者数は増加傾向にあり、2023年10月時点で14万4,981人となり、10年前の2013年と比較して約9倍に増加しています。
また、外国人労働者の採用は、若手労働力の確保や社内の多様性促進にも寄与しています。しかし、言語や文化の違いによるコミュニケーションの課題も指摘されており、受け入れ体制の整備や教育支援が重要となります。
今後、建設業界が持続的な発展を遂げるためには、外国人労働者の積極的な活用とともに、彼らが安心して働ける環境の整備が不可欠です。これにより、人手不足の解消と業界全体の活性化が期待されます。
Q6:外国人労働者の採用は、あなたの職場にとって成功だったと思いますか?(Q1で「雇用経験あり(現在も雇用中)」「雇用検討中」と選択した方)【n=50/単一回答】
外国人採用が「成功だった」と評価した企業は30.0%にとどまり、最も多かったのは「どちらとも言えない」の66.0%でした。
この結果から、多くの企業が外国人労働者の雇用に一定のメリットを感じつつも、言語や文化の壁、受入体制の未整備といった課題も抱えていることがうかがえます。
建設業界の外国人労働者を採用・雇用する際の課題
Q7:外国人労働者を採用・雇用するにあたっての課題を教えてください。(Q1で「雇用経験あり(現在も雇用中)」「雇用検討中」と選択した方)【n=50/3つまで】
建設業界が外国人労働者を採用・雇用する際の主な課題として、「日本語能力の不足による言葉の壁」(70.0%)が最も多く挙げられました。
次いで、「文化・習慣・価値観などの違いによるコミュニケーションの難しさ」(32.0%)、「外国人を受け入れる体制の未整備」(26.0%)なども課題となっています。
厚生労働省の『外国人労働者安全衛生管理の手引き(2023年)』でも、こうした言語や文化の相違によるコミュニケーション不足が安全管理上の課題として挙げられており、対策として、母国語の通訳を活用した教育や、危険箇所や作業手順を視覚的に示すマニュアルや動画などを用いた安全教育の重要性が強調されています。また、「やさしい日本語」の使用やジェスチャー、実物による説明といった工夫を取り入れることが推奨されています。
これらの具体的対策を取り入れることで、建設業界が抱える言語やコミュニケーションの課題を軽減し、外国人労働者が安全で安心して働ける環境が整備されることが期待されます。
こうした取り組みは、早期離職の防止や受け入れ体制の整備にもつながり、結果的に業界の人材不足解消にも寄与するでしょう。
建設業界における外国人労働者の雇用の今後
Q8:外国人労働者の雇用は建設業界の発展・活性化に繋がると考えますか?(Q1で「雇用経験あり(現在も雇用中)」「雇用検討中」と選択した方)【n=50/単一回答】
建設業界において外国人労働者の雇用が業界の発展・活性化につながると考える人は48.0%と約半数を占めました。
一方で、「どちらとも言えない」も44.0%と高く、言語や文化の違い、受入体制の未整備といった課題が、外国人材の活用に対する前向きな評価をためらわせている可能性があります。「そう思わない」は8.0%と少数派であることから、多くの関係者は外国人労働者が人手不足解消や現場活性化に一定の役割を果たすことを期待していると考えられます。
今後、言語教育や安全衛生教育、異文化理解の促進などを通じてこうした課題が解消されれば、外国人雇用が建設業界の持続的な発展に大きく寄与することが期待できます。
【調査結果の引用・転載についてのお願い】
本リリースの調査結果・画像をご利用いただく際は、必ず「外国人採用の窓口」の調査である旨の記載および、「外国人採用の窓口」のURL(https://gaikokusaiyo.com/)へのリンク設置をお願いいたします。
出典:建設業界における外国人雇用の実態調査(https://gaikokusaiyo.com/2025/03/31/27227/)/外国人採用の窓口調べ(https://gaikokusaiyo.com/)
外国人採用の窓口のサービス概要について
「外国人採用の窓口」は、技能実習生や特定技能外国人などの「外国人労働者を雇用したい企業」と、監理団体・登録支援機関・外国人材紹介会社などの「外国人労働者を紹介したい団体・企業」とをお繋ぎするマッチングプラットフォームサービスです。
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株式会社アルフォース・ワンの会社概要
社名:株式会社アルフォース・ワン
住所:〒125-0061 東京都葛飾区亀有3-21-11 藍ビル202
TEL:03-6662-5150
設立:2016年10月3日
代表者:代表取締役 山根 謙生
事業内容:人材採用支援事業、メディア運営事業
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