外国人材の受け入れが進む中で、「特定技能」制度を活用する企業が増えていますが、具体的にどの職種が対象となるのか、また分野ごとにどのような業務に従事できるのか把握するのが難しいという声も少なくありません。
この記事では、特定技能制度における職種一覧をはじめ、各産業分野・業務区分の概要や仕事内容をわかりやすく整理し、企業の受け入れ判断に役立つ情報を解説します。
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きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)
特定技能制度の基本概要
特定技能制度は、日本の深刻な人手不足を背景に、一定の技能を有する外国人を即戦力として受け入れる目的で2019年に創設されました。
この制度には、相当程度の知識や経験を必要とする「特定技能1号」と、より高度な熟練技能を要する「特定技能2号」があり、それぞれ在留資格の要件や在留可能期間に違いがあります。
特定技能では、単純労働のみを行うことは認められておらず、技能試験や日本語試験により一定の基準を満たした外国人のみが対象となります。
2025年4月時点で、特定技能の受け入れ対象は16分野が定められており、各分野は「業務区分」によってさらに細かく分類されています。
特定技能の対象分野一覧
2025年4月現在、特定技能1号は16分野、特定技能2号は11分野で受け入れが認められています。
以下の表は、それぞれの受け入れ対象分野の一覧です。
在留資格 | 受け入れ対象分野 |
特定技能1号 | 介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業(16分野) |
特定技能2号 | ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業(11分野) |
各産業分野別の職種・業務内容
特定技能制度で外国人の受け入れが認められている16分野では、それぞれ業務内容や求められる技能水準、許可要件などに違いがあります。
また、各分野には業務の内容をさらに細かく分類した「業務区分」が設けられており、試験の内容や求められる日本語能力も区分によって異なる場合があります。
ここからは、各産業分野の業務の特徴や受け入れ時の注意点などを分かりやすく解説していきます。
介護分野
介護分野では、特定技能1号外国人が従事できる業務として、入浴・食事・排せつなどの身体介護に加え、レクリエーションや機能訓練の補助といった支援業務も認められています。
また、これらの業務に従事する日本人が通常行う関連業務(掲示物の管理や物品補充など)についても、付随的に従事することが可能とされています。
訪問介護など利用者の居宅において実施する介護サービスについて、従来は対象外とされてきましたが、2025年4月より受け入れが認められることとなりました。
ただし、特定技能1号外国人を訪問介護の業務に従事させるためには、「外国人の日本語能力がN2相当以上または介護保険サービス適用事業者における実務経験1年以上」「キャリアアップ計画の策定」「同行訪問によるOJTの実施」など多くの上乗せ要件が設定されています。
ビルクリーニング分野
ビルクリーニング分野において特定技能1号外国人が従事するのは、オフィスビルや商業施設など住宅を除く建築物内部の清掃業務であり、衛生環境や美観、安全性の維持を目的とした作業が求められます。
この清掃業務には、場所や汚れの状態に応じて適切な用具や洗剤を選び、建物に存在する汚染物質を排除する業務や日常的に清潔さを維持する業務が含まれます。
なお、日本人が通常行う関連業務については、主業務に付随する範囲であれば従事が認められています。
工業製品製造業分野
工業製品製造業分野は、従来別々に扱われていた素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3分野を統合し、さらにコンクリート製造、印刷・製本、陶磁器製品製造などの複数の業務区分を加えて創設されました。
この分野では、金属部品の鋳造や加工、機械組立、電子部品の製造・組立てといった幅広い工程が対象となり、それぞれに応じた一定程度の専門的な技能が求められます。
また、業務の中には、加工品の検査やばり取り、部品の搬送、設備の保守管理など、日本人が通常従事する関連作業に付随して行うことも認められています。
なお、対象業務はすべて日本標準産業分類に基づき指定されており、実際の事業所において直近1年間で製造品出荷額等が発生していることが求められます。
建設分野
建設分野では、従来の19業務区分(18試験区分)が見直され、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つの業務区分に再編されました。
特定技能1号では、指導者の監督下で、土木構造物の施工や建築工事、電気・給排水設備といったライフライン関連の作業に従事することが認められており、いずれも相当程度の知識または経験を要する技能が求められます。
特定技能2号では、一定の実務経験を通じて高度な専門性を有し、現場の統括や技能者の指導を行う水準の熟練技能が求められます。
また、建設キャリアアップシステムを通じて、就業日数や能力評価に基づき技能水準を可視化する仕組みが整備されており、特定技能2号への移行要件の確認手段としても活用されています。
造船・舶用工業分野
造船・舶用工業分野では、特定技能外国人は船舶や舶用機器の製造工程に必要な各種作業に従事することが認められており、特に溶接、塗装、配管、鉄工などの技能が中心となっています。
試験区分ごとに業務範囲は異なり、造船では船体の構造や部品に関する作業、舶用機械では仕上げや鋳造、機械保全などの工程、電気電子機器では組立てやプリント配線板の製造作業が該当します。
特定技能2号では、これらの業務について一定の試験合格に加え、作業員を指導・管理する監督者として2年以上の実務経験が必要とされています。
関連業務としては、資材運搬や清掃のほか、検査や保守、進捗管理なども含まれますが、関連業務を主たる業務とすることはできません。
自動車整備分野
自動車整備分野において特定技能外国人が従事できる業務は、自動車の日常点検整備、定期点検整備、電子制御装置を含む特定整備、およびそれらに付随する整備作業です。
特定技能1号では、点検・整備の基本作業を中心とした実務に従事することが求められ、特定技能2号では、一定の実務経験を踏まえて他の作業員を指導しながら、より高度な整備業務に従事します。
特定技能1号の試験は、自動車整備分野特定技能1号評価試験や自動車整備士技能検定試験3級が用いられ、2号では2級試験または同等の評価試験の合格に加えて、認証工場での3年以上の実務経験が要件とされています。
関連業務としては部品の販売、電装品の取付け、清掃などがありますが、主たる整備業務と合わせて従事することが前提とされています。
航空分野
航空分野では、特定技能外国人が従事できる業務として「空港グランドハンドリング」と「航空機整備」の2つの区分があり、それぞれ異なる作業内容が定められています。
空港グランドハンドリングでは、航空機の地上走行支援や手荷物・貨物の搭降載、機内外の清掃業務などが対象となり、これらの業務を通じて安全で効率的な空港運用を支える役割を担います。
一方、航空機整備では、機体や装備品、部品の点検・修理など、専門的な知識と技能を要する整備作業全般に従事することが求められます。
いずれの業務でも、航空法や各種規程の遵守が前提となり、関連業務として事務作業や作業場所の清掃、除雪などにも付随的に従事することが認められています。
宿泊分野
宿泊分野では、特定技能外国人がフロントや接客、レストランサービス、企画・広報などの宿泊サービス全般に従事することが認められており、これらの業務には相当程度の知識や経験が必要とされます。
次に、1号特定技能外国人はこれらの業務を基礎的な水準で担当し、2号特定技能外国人は複数の従業員を指導しながら、非定型的な業務を含むより熟練した内容に対応できることが求められます。
一方、館内売店での販売や備品の点検といった関連業務には付随的に従事することができますが、それ自体を主たる業務として従事させることは認められていません。特に、ベッドメイキングは宿泊分野の主たる業務に該当せず、特定技能外国人が専属的に従事することは原則認められていない点に注意が必要です。
農業分野
農業分野において特定技能外国人が従事する業務は、耕種農業と畜産農業の二つに大別され、前者では栽培管理や農産物の出荷作業、後者では飼養管理や畜産物の選別作業などが含まれます。
さらに、2号特定技能外国人は、これらの業務に加えて工程管理や他の従業員の指導といった管理業務も担うことが求められています。
また、豪雪地帯など農業生産が限定される地域では、農畜産物の加工・運搬・販売、冬場の除雪作業など、農業に関連する付随業務にも柔軟に従事することが認められています。
ただし、これらの関連業務のみを主たる業務とすることは認められておらず、必ず耕種または畜産における主業務が中心となる必要があります。
漁業分野
漁業分野における特定技能外国人の対象業務は、漁業と養殖業に分かれ、前者では漁具の操作や漁獲物の処理、後者では養殖資材の管理や水産動植物の育成・収穫などが含まれます。
加えて、2号特定技能外国人は、船長や養殖管理者の補佐を行いつつ、他の作業員を指導しながら作業工程を管理する役割も担うことが求められています。
また、漁業分野では操業の季節性や地域事情を考慮し、関連業務(例:水揚げや設備清掃、資材搬入、加工・出荷など)への付随的な従事が認められており、業務範囲が比較的柔軟に設定されています。
飲食料品製造業分野
飲食料品製造業分野では、酒類を除く食品の製造・加工および安全衛生の確保に関する業務が対象であり、原料の処理や加熱、殺菌、乾燥といった一連の生産工程のほか、機械の安全確認や作業者の衛生管理といった業務も含まれます。
1号特定技能外国人はこれらの製造・加工業務に従事し、2号特定技能外国人はそのうえで、品質管理や従業員の指導、コストや納期管理など、現場の管理的業務も担うことが求められています。
このほか、原料の調達や製品の納品、清掃、事業所の管理作業といった、日本人が通常従事している関連業務については、主たる業務に付随する範囲で従事することが認められています。
2024年の制度改正により、食料品製造を行っているスーパーマーケットについては、特定技能外国人が就労できる対象事業所として位置づけられるようになりました。
外食業分野
外食業分野では、飲食物の調理、接客、店舗管理といった業務に幅広く従事できる点が特徴であり、特定技能1号の外国人はこれらの業務を通じて現場の即戦力として求められています。
また、店舗の衛生管理やレジ管理、従業員のシフト管理、メニューの企画開発など、飲食店の運営に必要な管理業務も従事範囲に含まれています。
さらに、特定技能2号の外国人は、上記の業務に加え、店舗経営に関する業務、すなわち経営分析や契約管理といった高度な管理業務にも携わることができます。
なお、対象となる事業所は、飲食サービスを提供する飲食店や喫茶店、持ち帰り専門店、配達飲食サービス業者、ケータリング・給食事業所などであり、関連業務として物品販売や店舗内における農林水産物の生産に付随的に関わることも可能とされています。
自動車運送業分野
自動車運送業分野では、特定技能1号の外国人はトラック、タクシー、バスのいずれかの運転業務に従事でき、それぞれ貨物や旅客の安全な輸送を行うことが求められます。
トラック運転者には荷崩れを防ぐための積付け作業など荷役業務も含まれ、タクシーやバスの運転者には乗客対応などの接遇業務も業務範囲とされています。
また、運転以外にも、運行前後の準備や車両の清掃など、日本人が通常行う関連業務に付随的に従事することが認められています。
従事にあたっては、トラック運転者は第一種運転免許、タクシーおよびバス運転者は第二種運転免許の保有に加え、新任運転者研修の修了が必要です。
日本語能力要件については、トラック運転者は他分野同様にN4相当以上で足りるとされていますが、タクシーおよびバス運転者はN3以上が求められます。
鉄道分野
鉄道分野では、特定技能1号の外国人が従事できる業務として、軌道整備や電気設備整備、車両整備、車両製造、運輸係員業務などが定められています。
たとえば、軌道整備ではレールやまくらぎの交換、車両整備では定期検査や清掃、運輸係員業務では旅客案内や車掌業務など、多様な現場作業が対象となります。
従事には、相当程度の技能を有することが求められ、原則として鉄道分野特定技能1号評価試験および日本語試験の合格が必要です。
なお、運輸係員業務に関しては、他の業務区分よりも高い日本語能力が求められ、日本語能力試験N3以上の合格が要件とされています。
林業分野
林業分野では、特定技能1号の外国人が従事できる業務として、育林や素材生産などの作業が対象とされており、具体的には植栽や下刈、間伐、伐採、集材といった一連の工程が含まれます。
これらの業務には、一定の知識と経験を必要とするため、林業技能測定試験および日本語能力試験(N4以上)に合格していることが要件となります。
木材産業分野
木材産業分野では、製材や合板製造などに従事する業務が対象とされ、具体的には原木の加工、板材や合板の製造、木材の選別・整形・乾燥といった一連の作業が含まれます。
これらの業務に従事するには、木材産業特定技能1号測定試験および日本語能力試験(N4以上)に合格することが求められます。
業務に関連する清掃や資材運搬などの補助作業については、日本人が通常従事しているものであれば、特定技能外国人も付随的に行うことが認められています。
まとめ
特定技能制度は、16の産業分野(2号は11分野)で外国人の就労を可能とする在留資格であり、分野ごとに定められた業務の範囲を超えて就労することができず、受け入れのためには、法令の正確な理解に加え、支援体制や雇用環境の整備が求められます。
特定技能外国人の採用を検討する際は、業務範囲や受け入れ条件を正確に理解した上で、自社に必要な職種に適合するかを見極めることが重要です。
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