外国人留学生のアルバイト雇用に関して、就労時間制限違反の問題が深刻化しています。
就業時間の規定に違反した場合、企業には不法就労助長罪による罰則が、留学生には強制退去や入国禁止などの厳しい措置が課される可能性があるのです。
この記事では、外国人留学生のアルバイト雇用に関する法規制や注意点、適切な雇用管理の方法について詳しく解説します。
在留資格の確認、就労条件の遵守、就労時間の管理など、外国人留学生の雇用に必要な知識を身につけることで、違反のリスクを減らし、適切な雇用管理を行うことができるでしょう。
人手不足に悩む企業にとって、外国人留学生の雇用は大きな助けとなる一方で、多文化共生社会の実現に向けて、企業が果たすべき役割も重要です。
外国人留学生の力を活かしながら、多様性を尊重する企業文化を育んでいきましょう。
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(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
外国人留学生のアルバイト雇用について
外国人留学生のアルバイト雇用の現状と課題
近年、日本の企業における人手不足が深刻化しており、外国人留学生のアルバイト雇用に注目が集まっています。
特に飲食業や宿泊業では、非正社員の人手不足を感じている企業の割合が高く、現状でも多くの外国人留学生が活躍しています。
しかし、外国人留学生のアルバイト雇用には在留資格の確認や就労条件の遵守など、注意すべき点が多くあります。
もし違反してしまった場合、企業には不法就労助長罪による罰則が、留学生には強制退去や入国禁止などの厳しい措置が課される可能性があるのです。
アルバイト可能な在留資格と条件
外国人留学生がアルバイトを行うためには、「留学」の在留資格を持ち、かつ一定の条件を満たす必要があります。
アルバイトが可能な留学生の就労条件は以下の通りです。
- 週28時間以内の就労
- 長期休暇中は1日8時間、週40時間以内までの就労
- 変形労働時間制の適用は困難
これらの時間数や制限を超えて、外国人留学生がアルバイトを行うことは認められていません。
企業側は、留学生の就労時間を厳格に管理し、違反のないよう細心の注意を払わなければなりません。
外国人留学生のアルバイト雇用のメリット
外国人留学生のアルバイト雇用には、いくつかのメリットがあります。
第一に、人手不足の解消が挙げられます。
特にアルバイトの人手不足が深刻化している飲食業や宿泊業、販売・小売りの現場などでは、外国人留学生の雇用によって、日本人従業員の不足を補っています。
第二に、多言語対応の向上が期待できます。
留学生は、英語をはじめとした多様な言語能力を持っているため、外国人客への対応力を高めることができます。訪日外国人の増加に伴い、ますます重要性が増していくと考えられます。
外国人留学生のアルバイトに関する法規制
外国人留学生のアルバイトを雇用する際には、様々な法規制に注意する必要があります。
ここでは、就労時間の制限、労働基準法の適用、就労時間制限違反の罰則について詳しく解説していきましょう。
就労時間の制限
外国人留学生のアルバイトには、就労時間の制限があります。
留学生は、週28時間以内のアルバイトが認められています。ただし、長期休暇中は1日8時間、週40時間以内までアルバイトが可能です。
また、変形労働時間制の適用は困難とされています。留学生のアルバイトは、学業との両立が前提であるため、不規則な労働時間の設定は避けるべきでしょう。
雇用主は、留学生の希望に沿ったシフト調整を行い、学業に支障がないよう配慮することが求められます。
労働基準法の適用
外国人留学生のアルバイトにも、労働基準法が適用されます。
雇用主は、労働基準法に定められた休憩時間や休日の確保を遵守する必要があります。
具体的には、日本人と同様に、6時間を超える勤務の場合は45分以上の休憩を、8時間以上の勤務の場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。
また、週1日または4週4日以上の休日を確保することも義務付けられています。
就労時間制限違反の罰則
就労時間制限に違反した場合、雇用主と留学生の双方に厳しい罰則が科せられます。
雇用主は、不法就労助長罪に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられる可能性があります。一方、留学生は、強制退去の対象となり、5年間の入国禁止処分を受ける可能性があります。
また、納税手続きによって就労時間の把握が行われているため違反が発覚するリスクは高いと言えます。
違反を防止するためには、留学生のダブルワークの定期報告や、行政機関間での情報共有に注意を払う必要があります。また、在留資格の厳格化傾向を踏まえ、適切な就労時間管理を行うことが求められるでしょう。
外国人留学生の採用方法
外国人留学生を採用するには、いくつかの点に注意する必要があります。
ここでは、採用時の注意点、効果的な採用チャネル、面接と選考のポイントについて解説します。
採用時の注意点
外国人留学生を採用する際は、まず在留資格を確認することが重要です。
アルバイトが可能な在留資格(留学生の場合は「留学」)を持っているか、就労条件が法律に遵守されているかを確認しましょう。
在留資格の厳格化傾向や、行政機関間での情報共有、納税手続きによる就労時間の把握にも注意が必要でしょう。
効果的な採用チャネル
外国人留学生の採用には、いくつかの効果的なチャネルがあります。
具体的には、大学のキャリアセンターや留学生団体との連携、留学生向け求人サイトの活用などが挙げられます。
大学のキャリアセンターでは、留学生の就職支援を行っているため、企業説明会への参加や、求人情報の提供などを通じて、優秀な留学生との接点を持てることが期待できます。
留学生団体との連携も有効で、各国の留学生コミュニティと関係を築くことで、コミュニティからの応募者が発生したり、コミュニティに所属しているメンバーからの人材紹介や人材情報の共有も可能になります。
また、留学生向け求人サイトでは、多言語での求人掲載や、在留資格に関する情報提供を行っています。
求人サイトの他にも、SNSを活用した求人情報の発信も効果的です。留学生が利用しているSNSで求人情報を発信することで、幅広い層にアプローチできます。企業の魅力や雰囲気を伝えるため、写真や動画を多く活用することが大切です。
面接と選考のポイント
外国人留学生の面接と選考では、言語能力や文化的背景への配慮が必要です。
日本語能力が十分でない場合は、英語などの母国語で面接を行うことも検討しましょう。また、留学生の母国の文化や習慣を理解し、尊重することが大切で、宗教上の制約やコミュニケーション方法の違いなどにも配慮し、柔軟に対応していくことが求められます。
面接での質問事項としては、留学生の日本での生活経験やアルバイト経験について聞くことで、日本の職場環境への適応力や業務遂行能力を見極めることができるでしょう。
加えて、将来のキャリアプランや、企業への貢献意欲についても確認しておくことも重要です。選考の際は、在留資格や就労時間制限への理解度を確認することも忘れずに。
書類選考では、在留カードの確認はマストとして、日本語能力の確認を行いましょう。最終選考では、業務内容や就労条件について、留学生が十分に理解しているかを確認する必要があります。
帝国データバンクの調査(2024年4月公開)によると、飲食店の74.8%、旅館・ホテルの63.8%が非正社員の人手不足を感じているという結果が出ています。
留学生の採用は、こうした課題解決の有効な手段となるでしょう。
外国人留学生の雇用管理
外国人留学生を雇用する際には、適切な雇用管理が求められます。
ここでは、就労時間管理、コミュニケーション、モチベーション維持の3つの観点から解説していきましょう。
就労時間管理の重要性
外国人留学生を雇用する上で、就労時間管理は非常に重要です。
前述の通り、留学生のアルバイトは週28時間以内に制限されており、長期休暇中でも1日8時間、週40時間以内までしか働くことができません。
また、労働基準法に則った休憩時間や休日の確保も重要です。6時間を超える勤務では45分以上、8時間以上の勤務では1時間以上の休憩が必要であり、週1日または4週4日以上の休日を与える必要があります。
コミュニケーションの工夫
外国人留学生を雇用する際には、言語や文化の違いからコミュニケーションに困難を感じることがあります。
そのため、お互いの理解を深めるためにも、コミュニケーションの工夫が欠かせません。例えば、業務指示や注意点は明確かつ簡潔に伝え、必要に応じて母国語での説明を用意するなどの工夫が考えられます。
また、日常的なコミュニケーションを大切にすることも重要です。仕事以外の話題で会話をしたり、文化交流イベントを企画したりすることで、お互いの理解が深まり、良好な関係を築くことができるでしょう。
留学生の意見や提案にも耳を傾け、多様な視点を取り入れることは、結果的に職場の活性化にもつながります。
モチベーション維持の方法
外国人留学生のモチベーションを維持することは、安定した雇用(定着率の向上)と生産性向上のために重要です。
留学生一人ひとりのキャリアプランや目標を把握し、それに沿った成長の機会を提供し、モチベーション維持に努めていきましょう。
例えば、語学スキルを活かせる業務を任せたり、リーダーシップを発揮できる場を与えたりすることで、やりがいを感じてもらえるかもしれません。
また、日本人と同様に、公正な評価を受けられる制度を設けることも大切です。成果や貢献度に応じた賃金やボーナスの支給、表彰制度の導入などにより、留学生のモチベーションを高めることができます。
加えて、職場の人間関係づくりにも配慮しましょう。
店舗内外の社員との交流の場を設けたり、メンター制度を導入することで、留学生が孤立せず、安心して働ける環境を整えることができるでしょう。
外国人留学生の就労時間制限の違反防止策
外国人留学生の雇用で、最も気を付けるべきポイントは就労時間制限の遵守についてです。
ここでは、就労時間制限違反を防止するための具体的な対策について解説します。
ダブルワークの定期報告
外国人留学生が複数の事業所でアルバイトをしている状態、いわゆるダブルワークである場合、就労時間制限を超過するリスクが上がります。
そのため、定期的にダブルワークの状況を報告してもらうことが大切です。
報告の際は、他の事業所での就労時間を正確に把握し、合計が制限時間内に収まっているかを確認しましょう。もし制限を超えている場合は、シフトの調整や他の事業所との調整が必要になります。
この報告を怠ると、知らない間に違反が発生してしまう可能性があるので注意が必要です。
適切なシフト管理
就労時間制限を遵守するためには、適切なシフト管理が不可欠です。
外国人留学生の希望に沿ったシフトを組むことで、モチベーションの維持と就労時間の管理を両立することができるでしょう。
また、当然ではありますが、労働基準法で定められている休憩時間や休日の確保にも気を配る必要があります。6時間を超える勤務の場合は45分以上、8時間以上の勤務の場合は1時間以上の休憩を取り、週1日または4週4日以上の休日を与えなければなりません。
繁忙期や従業員の少ない店舗では、慣例的に休憩を取っていなかったり、シフトの穴を埋めるために週7日の勤務になってしまうということも予想されますが、日本人・外国人に関わらず、違反することのないようにしてください。
行政機関の監督への対応
外国人留学生の雇用においては、行政機関による監督が行われる可能性があります。
監督の際は、就労時間の記録や賃金の支払い状況など、適切な雇用管理が行われているかがチェックされます。そのため、日頃から就労時間の記録を適切に管理し、必要な書類を整備しておくことが重要です。
また、行政機関間での情報共有が進んでいるため、納税手続きによって就労時間が把握されるケースもあります。
監督に備えて、普段から規定を遵守した雇用管理を心がけましょう。
外国人留学生のキャリア支援
外国人留学生の方々が日本での学業だけでなく、将来のキャリアについても充実した経験を積めるよう、様々な支援を行うことが大切です。
ここでは、外国人留学生のキャリア支援について、重要なポイントを3つご紹介します。
キャリア相談の実施
外国人留学生の方々が、日本での就職や帰国後のキャリアについて不安や悩みを抱えていることがあります。そのため、定期的にキャリア相談を実施し、一人ひとりの状況に合わせたアドバイスを提供することが重要です。
キャリア相談では、留学生の関心事や目標を丁寧に聞き取り、それに合わせた情報提供や助言を行います。また、日本の就職活動の仕組みや、求められるスキル・経験についても説明し、留学生が適切な準備を行えるようサポートします。
さらに、留学生の母国の就職事情についても理解を深め、帰国後のキャリア選択肢についてもアドバイスできるよう努めましょう。
こうした個別化されたキャリア相談を通じて、外国人留学生の方々の不安を解消し、自信を持ってキャリアを歩んでいけるよう支援することが大切です。
日本での就職支援
外国人留学生の中には、日本での就職を希望する方も多くいます。そのため、留学生が希望する場合は、日本企業への就職に向けた支援を行うことも大切です。
具体的には、留学生向けの合同企業説明会の案内や、企業とのマッチング機会の提供などが効果的でしょう。履歴書対策・面接対策や、ビジネスマナー指導など、就職活動に必要なスキルを身につけるための支援も大切です。
また、在留資格の変更手続きや、就労ビザの取得についての情報提供も欠かせません。
日本特有の就職活動の仕組みや、必要な手続きについて丁寧に説明し、外国人留学生の方々が安心して就職活動に臨めるようサポートしましょう。
帰国後のネットワーク構築
外国人留学生の方々が日本での学業を終え、母国に帰国した後も、日本とのつながりを維持できるようサポートすることも大切です。
帰国後のネットワーク構築を通じて、留学生活で得た知識や経験を活かし、グローバルに活躍していける環境を整えましょう。具体的には、帰国した留学生のための同窓会やイベントの開催、オンラインコミュニティの運営などが考えられます。
こうした取り組みを通じて、帰国した留学生同士の交流を促進し、情報交換や相互支援の機会を提供することができます。
また、日本企業とのつながりを維持できるよう、帰国した留学生と企業とのマッチングイベントを開催するのも効果的でしょう。帰国した留学生が、母国と日本をつなぐ架け橋となり、ビジネスや文化交流を促進していけるような関係性を目指しましょう。
外国人留学生アルバイト雇用の課題と展望
外国人留学生のアルバイト雇用には、様々な課題や、将来的な展望・変化があります。
ここでは、在留資格の厳格化傾向への対応、政府の外国人材受入れ拡大方針の影響、多文化共生社会の実現に向けた企業の役割について見ていきましょう。
在留資格の厳格化傾向への対応
近年、外国人留学生の在留資格に関する規制が厳格化される傾向にあります。
この変化に対応するためには、企業は留学生の在留資格とアルバイトに関する規定を正確に理解し、適切に対処することが求められます。
具体的には、アルバイト可能な在留資格の確認と就労条件の遵守です。
留学生の在留資格によっては、就労が認められない場合もあるため雇用前に必ず確認のは当然として、就労時間制限や労働基準法の規定に沿った雇用条件を整えることも求められます。また、行政機関同士での情報共有や納税手続きによる就労時間の把握など、監視体制も強化されつつあります。
企業は、これらの動向を把握・理解しながら、適切な雇用管理を行う必要があるでしょう。
政府の外国人材受入れ拡大方針の影響
日本政府は、深刻化する人手不足への対策として、外国人材の受入れ拡大を推進しています。この方針は、外国人留学生のアルバイト雇用にも影響を与えると考えられます。
帝国データバンクの調査によると、飲食店の74.8%、旅館・ホテルの63.8%が非正社員の人手不足を感じており、外国人留学生のアルバイト雇用は、こうした人手不足の解消に一定の効果が期待できます。留学生の雇用することで、多言語対応の向上やインバウンド対応など、企業にとってのメリットも少なくありません。
一方で、政府の方針変更に伴う規制の変更や、社会情勢の変化にも注意が必要です。
企業は、外国人材の受入れに関する最新の情報を収集し、適切に対応していくことが求められるでしょう。
多文化共生社会の実現に向けた企業の役割
外国人留学生のアルバイト雇用は、多文化共生社会の実現に向けた重要な一歩となります。
企業は、単なる労働力としてだけでなく、多様な文化的背景を持つ人材として留学生を捉え、その能力を最大限に活かす環境づくりが求められます。
そのためには、留学生の希望に沿ったシフト調整や、働きやすい職場環境の整備が不可欠です。また、日本人従業員との交流の機会を設けるなど、相互理解を深める取り組みも重要でしょう。
まとめ
外国人留学生のアルバイト雇用には、在留資格の確認や就労時間の制限など、様々な法規制に注意が必要です。
これらの規制遵守を怠ると、企業には不法就労助長罪が、留学生には強制退去や入国禁止などの重大な罰則が科される可能性があります。
厳格なルールがある一方で、留学生の雇用は人手不足の解消や多言語対応の向上など、企業にとってのメリットも少なくありません。
企業が留学生の雇用を適切に行うためには、ダブルワークの定期報告や、希望に沿ったシフト調整、労働基準法の遵守など、綿密な雇用管理が求められ、在留資格の厳格化傾向や、行政機関の監督強化などの変化も続いているため、より深く広い注意が必要です。
また、外国人留学生の雇用を通して多文化共生を推進することは、グローバル化が進む現代社会における企業の社会的責任とも言えます。
留学生の能力を最大限に活かせる職場環境の整備を進める中で、多様性を尊重する企業文化の醸成しながら、より多様性に富んだ活気ある組織作りを目指していきましょう。
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