外国人採用ガイド

土木工事業で特定技能外国人を雇用するための許可要件と手続きの流れを解説

建設現場の人手不足が続くなか、土木工事の現場でも「特定技能外国人を雇いたいが、何から手を付ければよいのか分からない」と感じている経営者の方は多いのではないでしょうか。

本記事では、特定技能「建設」の3つの業務区分のうち「土木区分」に焦点を当てて情報を整理します。

外国人側の許可要件や企業側に求められる団体加入・各種登録・支援実施のポイントについてもわかりやすく解説します。

安藤 祐樹この記事の監修
きさらぎ行政書士事務所
行政書士 安藤 祐樹
きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

特定技能とは

特定技能とは、日本で深刻化する人手不足の産業分野において、一定の専門知識や技能を有する外国人の受け入れを認める在留資格制度です。

制度の目的は、即戦力となる外国人材を受け入れ、国内の労働力確保と産業の持続的な発展を支えることにあります。

2025年11月現在、受け入れ対象分野は、「特定産業分野」と呼ばれる16分野で、建設、農業、介護、製造、外食業など幅広い業種が含まれています。

また、特定技能には、1号と2号の2つの区分が設けられており、1号は相当程度の技能水準、2号は熟練した技能水準を持つ外国人が対象となっています。

特定技能1号

特定技能1号は、各産業分野において相当程度の知識・技能を持つ外国人が取得する在留資格です。

2025年11月現在、受入対象となるのは、人手不足が深刻な16の特定産業分野で、土木工事も建設分野の中に含まれています。

特定技能1号の在留資格の特徴は以下の通りです。

特定技能1号の在留資格の特徴

技能試験 特定技能1号評価試験
日本語試験 JLPT N4以上またはJFT-Basic
実務経験 不要
在留期間 原則通算5年が上限
家族の帯同 原則不可
支援義務 受入れ企業に支援義務あり

特定技能2号

特定技能2号は、特定技能1号よりも高度な熟練技能を持つ外国人を対象とした在留資格です。

2025年11月現在、受け入れ対象分野は、11分野が設定されており、土木工事も建設分野の業務区分に含まれています。

特定技能2号の在留資格の特徴は以下の通りです。

特定技能2号の在留資格の特徴

技能試験 特定技能2号評価試験
日本語試験 なし
実務経験 必要
在留期間 上限なし(更新審査は必要)
家族の帯同 配偶者と子の帯同可
支援義務 なし

特定技能「建設」には3つの業務区分がある

建設分野の特定技能には、業務内容に応じて「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つの区分が設けられています。

ここからは、各業務区分の概要と特徴を具体的に見ていきましょう。

土木区分

土木区分は、特定技能「建設」の中でも社会基盤を支える基礎的なインフラ整備に関わる業務を対象としています。

主な作業は、道路・橋梁・トンネル・ダムなどの建設や改修であり、地形を整備し安全で安定した構造物をつくることが中心です。

土木工事には重機操作や型枠、鉄筋、舗装といった多様な業務内容が含まれています。

特定技能外国人は、土木工事の専門知識・技術を活かしながら土木施設の新設、改築、維持、修繕に係る作業などを行うこととされています。

建築区分

建築区分は、建設分野の中でも住宅やビルなどの建築物に関わる作業を対象としています。

建物を新築・改修・解体する際に行う型枠、鉄筋、左官、屋根、内装などの各工程が含まれ、幅広い専門技能を必要とします。

この区分で従事する特定技能外国人は、建築物の新築、増築、改築、移転、修繕、模様替えなどを行います。

設備・ライフライン区分

設備・ライフライン区分は、建物や社会インフラに必要な設備工事を担う分野であり、人々の生活を支える基盤を整える役割を持ちます。

主な業務は、給排水管やガス管などの配管工事、電気設備の配線や接続、空調・衛生設備の設置といった作業です。

この区分に従事する特定技能外国人は、電気通信、ガス、水道、電気その他のライフライン・設備の整備・設置、変更、修理などの作業を行います。

技能実習の土木系職種・作業との比較

建設分野における技能実習制度は、職種と作業が細かく分類されており、全体で22職種・33作業が定められています。

その中には、土木工事に関わる複数の作業が含まれています。

これらの技能実習のうち、特定技能「建設(土木区分)」に対応する職種・作業は、実務内容や技能レベルの面で密接に関連しています。

そのため、特定の職種・作業で技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能評価試験や日本語試験を受けずに特定技能1号(建設分野・土木区分)へ移行することが可能です。

土木区分の試験免除対象職種・作業は以下の通りです。

技能実習2号良好修了者の試験免除対象職種・作業

特定技能外国人が従事する業務区分 試験免除となる技能実習2号
職種 作業
土木区分(特定技能1号) さく井 パーカッション式さく井工事作業
ロータリー式さく井工事作業
型枠施工 型枠工事作業
鉄筋施工 鉄筋組立て作業
とび とび作業
コンクリート圧送施工 コンクリート圧送工事作業
ウェルポイント施工 ウェルポイント工事作業
建設機械施工 押土・整地作業
積込み作業
掘削作業
締固め作業
鉄工 構造物鉄工作業
塗装 建築塗装作業
鋼橋塗装作業
溶接 手溶接
半自動溶接

なお、これら免除対象以外の技能実習2号を良好に修了した外国人が、土木区分の特定技能に移行する場合は、日本語試験は免除されますが、特定技能評価試験は免除されません。

特定技能「建設(土木)」で働く外国人の許可要件

特定技能「建設分野・土木区分」で働くためには、外国人本人が一定の知識と技能を有していることが求められます。

ここからは、特定技能1号・2号で就労するために、外国人本人が満たさなければならない許可要件について詳しく解説します。

特定技能1号の許可要件

特定技能1号の在留資格で建設分野(土木区分)の仕事をするためには、一定の専門知識と技能を証明する必要があります。

外国人は技能水準と日本語能力を証明するために2つの試験に合格しなければなりません。

建設分野特定技能1号評価試験(土木)に合格する

建設分野特定技能1号評価試験(土木)は、土木現場で働くうえで必要な知識と技能を確認するための試験として位置づけられ、学科と実技の2つで評価されます。

この試験では、学科30問・60分、実技20問・40分をCBT方式(コンピュータ試験)で解答し、それぞれ合計点の65%以上を取ることが合格基準とされています。

試験の主催団体である一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の公式サイトでは、学科・実技テキストやサンプル問題が公開されていますので受験前に確認しておくことをおすすめします。

一般社団法人建設技能人材機構|建設分野特定技能の評価試験情報と申込み

JLPT(N4以上)またはJFT-Basicに合格する

建設分野の土木区分で特定技能1号の在留資格を得て働く外国人には、一定水準以上の日本語能力が求められます。

具体的には、JLPT(日本語能力試験)N4以上またはJFT-Basicのいずれかに合格していることが条件となります。

この日本能力基準は、現場での安全に関する指示や上司からの指導、周囲の作業員とのやりとり、役所や病院などでの基本的な手続きについて、日本語で理解し伝えられるレベルに到達しているかを確認する目的で設けられています。

JLPTは年に2回(7月と12月)会場試験で実施され、JFT-Basicは年6回の試験期間中に任意の日程で開催されCBT方式で受験できます。

特定技能2号の許可要件

特定技能2号は、より高度な技能や現場指導の能力を有する人材を対象とした在留資格です。

在留期間の通算上限期間がなくなるなど、長期的に日本で働ける仕組みが整備されており、専門的な実務経験と責任ある立場での就労が求められます。

建設分野特定技能2号評価試験(土木)に合格する

建設分野特定技能2号評価試験(土木)は、特定技能1号よりも高い熟練した技能があることを確認するために実施される試験です。

試験は学科と実技の2科目で行われ、いずれもCBT方式(コンピュータ試験)により、学科40問・実技25問を各60分・40分で解答します。

合格基準は総得点の75%以上とされており、職長や班長として現場を指導できる知識と実務能力が求められます。

一般社団法人建設技能人材機構|建設分野特定技能の評価試験情報と申込み

職長・班長としての実務経験があること

特定技能2号では試験に合格するだけでなく、建設現場で班長や職長として実際にチームを率いた経験があることが条件となります。

この実務経験は単に現場に在籍していた期間ではなく、複数の技能者に指示を出しながら作業を進め、工程管理まで担った期間であることが求められます。

業務区分に対応する建設キャリアアップシステムの能力評価基準がある場合はレベル3に相当する就業日数、基準がない場合は3年以上(勤務日数645日以上)の経験が必要です。

土木工事業で特定技能外国人を雇用する企業側の許可要件

土木工事業で特定技能外国人を受け入れる場合、外国人側の許可要件とは別に、企業側が満たさなければならない各種の要件があります。

ここからは、特定技能外国人を雇用するために事前に準備しておくべき企業側の要件について解説します。

特定技能協議会に加入していること

特定技能「建設」分野で外国人を雇用する企業は、国土交通省が管轄する「建設特定技能協議会」に必ず加入しなければなりません。

協議会の運営主体は、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)が担っています。

企業はJACの賛助会員になるか、あるいはJACの正会員である各建設団体に加入することで協議会に加入したものとみなされます。

一般社団法人建設技能人材機構|建設技能人材機構(JAC)入会のご案内

建設業許可を受けていること

建設分野で特定技能外国人を受け入れるには、国土交通大臣または都道府県知事から「建設業許可」を受けていることが前提となります。

この許可は、本来は請け負う工事の種類や規模に応じて必要となるものですが、特定技能制度においても受け入れの要件のひとつとして活用されています。

許可を取得していない事業者は、適法に事業運営している場合であっても特定技能外国人を雇用することはできません。

CCUSに登録していること

特定技能「建設」分野の受け入れ企業は、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が義務づけられています。

CCUSは、技能者の就業履歴や保有資格を一元的に管理する仕組みで、技能の見える化を通じて適正な評価と処遇を促進する目的があります。

登録していない事業者は、技能実績の確認が行えないため、特定技能外国人の受け入れを行うことができません。

特定技能1号外国人を雇用する場合の追加要件

特定技能1号の外国人を雇用する際には、ここまで解説した許可要件に加えて、1号のみに適用される追加要件が定められています。

報酬額が日本人と同等以上であること

特定技能1号の在留資格で外国人を雇用する際には、同等の作業に従事する日本人と同じかそれ以上の報酬水準であることが求められます。

これは、国籍を理由とした不当な待遇差を防ぎ、雇用の公正性を確保するための基準です。

賃金や手当、労働条件を適正に設定しなければ、特定技能1号の受け入れは認められません。

常勤職員数を超えない範囲の受入れであること

建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能1号外国人の人数が自社の常勤職員数を上回らないよう管理する必要があります。

これは、外国人労働者への過度な依存を防ぎ、社内の指導体制や安全管理を適正に維持するための基準です。

なお、この常勤職員数には、原則として常勤の外国人従業員も含まれますが、特定技能1号及び技能実習の外国人は含まれません。

建設特定技能受入計画の認定を受けていること

企業が建設分野で特定技能外国人を雇用する際は、事前に「建設特定技能受入計画」を策定し、国土交通大臣の認定を受ける必要があります。

この計画では、受入れ人数や職務内容、教育体制などを明確にし、外国人が適正に働ける環境を整えることが求められます。

1号特定技能外国人支援計画を策定し実施すること

受入れ企業は、特定技能1号外国人が日本で円滑に生活・就労できるよう支援計画を作成し、実施することが義務付けられています。

入管法令により定められた義務的支援の内容は以下の通りです。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国する際の送迎
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続等への同行
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(人員整理等の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

支援計画の実施は登録支援機関に委託できる

特定技能1号の外国人支援計画は、受入れ企業が自社で実施するほか、入管庁に登録された登録支援機関へ委託することも可能です。

登録支援機関に義務的支援のすべてを委託した場合、企業は支援義務を果たしたものとみなされます。

在留資格取得の流れ

ここまで解説した許可要件を満たせば、建設分野(土木区分)で特定技能の在留資格を取得することができます。

ここからは在留資格取得手続きの種類と、就労開始までの流れについて見ていきましょう。

海外から外国人を受け入れる場合

海外にいる外国人を特定技能で受け入れる場合、まず受入れ企業が代理人となり地方出入国在留管理局へ「在留資格認定証明書交付申請」を行います。

在留資格認定証明書が交付された後、外国人本人は居住国の日本大使館または総領事館などの在外公館で査証(ビザ)発給の申請を行います。

査証が発給されたら、空港でパスポートと査証、そして在留資格認定証明書を提示・提出し、入国審査を経て、正式に在留資格が付与され就労を開始できます。

日本国内在留中の外国人を採用する場合

日本国内に在留している外国人を特定技能の業務で採用する場合は、在留資格変更許可申請が必要です。

たとえば、日本の学校を卒業予定の留学生を新卒採用する場合は、「在留資格変更許可申請」を行い、在留資格を「留学」から「特定技能」に変更してから就労を開始します。

また、すでに特定技能の在留資格を持つ外国人の転職希望者を採用する際も、同様に在留資格変更許可申請が必要です。

まとめ

特定技能制度を活用すれば、土木工事業においても一定の技能水準と日本語能力を持つ即戦力の外国人材を雇用することができます。

外国人本人と受入れ企業の双方が定められた要件を満たし、在留資格取得や各種手続きを適切に行うことで、安定的な人材確保が実現します。

一方で、制度の理解不足や手続きの不備があると、許可が下りない場合やトラブルにつながるおそれもあります。

不安がある場合は、早い段階で専門家に相談し、自社の状況に合った採用計画と在留資格の取得手続きを進めることが重要です。

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