外国人を採用する時は、日本人を採用する時との大きな違いとして「在留資格」に注意しなければいけません。
在留資格で定められた以外の活動(仕事)を行わせてしまうと、外国人本人はもちろんのこと、不法就労を助長したとして雇用する会社側も法律で罰せられてしまいます。
しかし、今まで外国人を雇用したことがない会社であれば在留資格について詳しく知らなくても当然です。そこで本記事では、「採用してもいい(採用できる可能性のある)在留資格」について解説していきます。
外国人採用の実務を担当される方はぜひ最後までご覧ください!
INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
「在留資格」ってなに?
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な資格で、必ずどれか1つの在留資格を持っています(複数の在留資格を持つことはできません)。
日本に在留する外国人は出入国管理局により発行された在留カードを所持しており、在留カードには、在留資格の種類や日本における就労条件や滞在可能期間などが明記されています。これは外国人を採用するにあたって必ず確認しなければならない点であり、採用担当者としても在留カードの情報を正しく理解する必要があります。
在留資格は全29種類あり、主に以下の4種類に分けることができます。
- 就労制限のない在留資格
- 一定の範囲内で就労可能な在留資格(就労ビザ)
- 就労が認められない在留資格
- その他
就労制限のない在留資格
下記の在留資格を持つ外国人の場合、職種や業種に左右されることなく、制限のない就労が可能です。日本人もしくは永住者の配偶者や子どもなど、身分に関係する在留資格であるため、「身分系の在留資格」と呼ばれています。
在留資格 | 該当例 |
永住者 | 日本への永住許可を受けた外国人 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者や実子、特別養子 |
永住者の配偶者等 | 永住者や特別永住者の配偶者、日本で生まれそのまま在留している実子 |
定住者 | 日系3世や外国人配偶者の連れ子、第三国定住難民、中国残留邦人等 |
一定の範囲内で就労可能な在留資格
外国人が下記の在留資格を持っている場合は、在留資格で許可された範囲内での就労が可能です。一般的に「就労ビザ」と呼ばれるのはこれらの在留資格です。
在留資格 | 該当する職業例 |
外交 | 外国政府からの大使や公使等(及びその家族) |
公用 | 外国政府等の公務に従事する者(及びその家族) |
教授 | 大学教授等 |
芸術 | 作曲家や画家、芸術作家等 |
宗教 | 外国から派遣された宣教師等 |
報道 | 外国の報道機関に属する記者やカメラマン等 |
高度専門職 | ポイント制による高度人材 |
経営・管理 | 企業等の経営者等 |
法律・会計業務 | 弁護士や公認会計士等 |
医療 | 医師や看護師等 |
研究 | 公的機関や企業における研究者等 |
教育 | 中学校や高等学校等における語学教師等 |
技術・人文知識・国際業務 | 技術者や通訳翻訳、システムエンジニア等 |
企業内転勤 | 日本企業の海外支店からの転勤者 |
介護 | 介護福祉士 |
興行 | 俳優や歌手、プロスポーツ選手等 |
技能 | 外国料理の調理師等 |
特定技能 | 特定産業分野において相当程度の知識・技能を持つ従事者 |
技能実習 | 技能実習生 |
就労が認められない在留資格
以下に挙げる在留資格を持つ外国人は、原則として日本で収入を伴う就労をすることができません。
在留資格 | 該当例 |
文化活動 | 文化研究者等(収入を伴わないもの) |
留学 | 大学、専門学校、日本語学校等の学生 |
研修 | 日本で技能の習得を行う外国人(技能実習と留学を除く) |
家族滞在 | 「教授」「芸術」「宗教」「報道」「高度専門職」「経営・管理」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術・人文知識・国際業務」「企業内転勤」「介護」「興行」「技能」「特定技能2号」「文化活動」「留学」の在留資格を持ち日本に在留する外国人の配偶者と子 |
短期滞在 | 日本に短期間滞在して行う観光、保養、スポ―ツ、親族の訪問、見学、講習への参加、業務、連絡など |
上記の在留許可を持つ外国人でも資格外活動許可をとることによって、収入を伴う就労が可能になります(短期滞在の場合は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて帰国困難となった外国人のみ)。
資格外活動許可について
資格外活動許可とは、留学や家族滞在など就労が認められない在留資格を持つ外国人も、例外的に「収入を伴う活動」を行うことができる許可のことです。資格外活動許可をとるためには、以下に挙げる要件のいずれにも該当していなければなりません。
①就労活動に従事することにより、現在持っている在留資格の活動が妨げられないこと
②現在持っている在留資格に関する活動を行っていること
③就労しようとする活動内容が、入管法の「別表第一の一の表、または二の表」の在留資格の下欄に掲げる活動(特定技能と技能実習を除く)に該当すること
④申請する活動内容が以下いずれにも該当しないこと
1.法令に反する活動
2.風俗営業もしくは性風俗特殊営業に従事する活動
⑤収容令書の発付または意見聴取通知書の送達もしくは通知を受けていないこと
⑥素行不良ではないこと
⑦日本における公私の機関との契約に基づく在留資格で滞在している場合、当該機関が資格外活動に同意していること
資格外活動許可の種類
資格外活動許可には「包括許可」と「個別許可」の二種類がありますが、留学生が取得していたりと幅広いケースで適用されているのが包括許可です。
包括許可
包括許可とは、勤務先や業務内容を個別に指定しない資格外活動許可です。1週間につき「28時間以内」の就労が認められていますが、これを超えてしまうと不法就労となってしまうため注意が必要です。また、夏休みなどの長期休暇中は留学生に限り「1日あたり8時間(週40時間以内)」の就労時間に延長されます。
包括許可が認められる在留資格は主に、「留学」「家族滞在」、日本の学校を卒業した留学生が就活を行うために取得する「特定活動」の3つとなります。
個別許可
個別許可とは、具体的な勤務先や仕事内容などを指定する資格外活動許可です。包括許可の制限の範囲外の活動となる場合や、すでに持っている就労資格とは別の就労資格に該当する活動を行う場合などが想定されます。
例えば、留学生が週28時間を超えるインターンシップに従事する場合や、大学で「教授」の在留資格を持って勤務している外国人が民間企業で語学教師として働く場合(技・人・国の在留資格にあたる活動をする場合)などには個別許可が必要となります。
会社側が注意すべきポイント
外国人を採用する際に、会社側では次の2つのポイントに注意しましょう。1つは「自社の業務に必要な在留資格を把握すること」、2つ目は「外国人が持つ在留資格の確認」です。
業務に必要な在留資格の把握
在留資格の種類によって従事できる仕事内容が変わってくるため、外国人がどのような在留資格を持っていれば自社の業務に従事してもらうことができるのか、あらかじめ確認・理解しておくことが大切です。
採用したい外国人が永住者や定住者などの「身分系の在留資格」を持っていれば就労活動に制限がないので安心ですが、その他の在留資格については、それぞれに許可された活動範囲があるので、自社の業務が在留資格に合致しているのか、資格外活動許可の取得は必要ないのかなど、しっかりと確認した上で採用に臨みましょう。
在留資格について理解が浅いまま採用を進めてしまうと、適切な在留資格を持たない外国人を雇用してしまい、会社側も「不法就労助長罪」として罪に問われてしまうこともありますので、特に外国人採用に携わる方は知識を身に付けておきましょう。
外国人が持つ在留資格の確認
外国人を採用する場合、書類選考や面接の段階で「在留カード」と「就労資格証明書」の提出を依頼し、どの在留資格でどのような内容の就労を許可されているのかをしっかりと確認した上で採用を進めていきましょう。
上記のような不法就労によるリスクを防げるだけでなく、せっかく良い外国人材と巡り合えたにも関わらず、任せる予定の業務と在留資格や就労内容がマッチしておらず内定が取消しになってしまったり、在留資格の変更・更新が発生する時間や手間が発生し、業務開始のスケジュールがズレてしまったりするような事態を避けることができます。
就労ビザで多い「技・人・国」とは
採用の現場で一番目にすることが多い在留資格(就労ビザ)は「技術・人文知識・国際業務」かと思います。名称が長いので、それぞれの頭文字をとって「技・人・国(ぎじんこく)」と呼ばれています。
一般的な分類としては
技術 | 理系業務 |
人文知識 | 文系業務 |
国際業務 | 外国人としての能力を活かした業務 |
として捉えられています。
「技術・人文知識・国際業務」の職業例
技術
- プログラマー
- システムエンジニア
- 建築設計者
- ゲーム類の開発者
- 機械系の技術者 など
人文知識
- 海外取引企業における専門業務
- 経理
- 人事
- マーケティング
- コンサルティング など
国際業務
- 通訳翻訳
- 語学学校等の講師
- 外国語を主に使用するホテル業務 など
▼「技術・人文知識・国際業務」についてさらに詳しく知りたい方は▼
「単純労働」は基本的にNG
日本ではすで数多くの外国人が働いていますが、治安悪化や日本人の雇用減少などの懸念から、いわゆる「単純労働」での雇用は一部を除いて禁止されています。単純労働とは、学歴や技術、経験がなくても比較的簡単に誰でもすぐに取り掛かることのできる作業のことで、以下のような仕事が該当します。
- レジ打ち
- 商品陳列
- 工場でのライン作業
- 清掃
- 建設現場作業員
- ウェイトレス
- 調理補助 など
ただし、就労制限のない身分系の在留資格や資格外活動許可を受けた留学生、新設された特定技能の在留資格に限り、単純労働が認められています。
まとめ
「在留資格」の理解は、外国人採用のはじめの一歩といえる大切なステップです。
日本企業ではまだまだ外国人雇用や在留資格についての理解が進んでおらず、近年でも、ウーバーイーツの日本法人である「UberJapan」や、肉まんなどで有名な「中村屋」などの有名企業でも不法就労助長による書類送検が発生しています。
しかし、中小企業では人事と他業務が兼務されていることも多く、ましてや外国人採用専門の人材を雇用することはコスト的にも難しいため、なかなか自社だけで正しい外国人雇用の仕組みを運用することは難しい現状があります。
不法就労などのリスクもある反面、ルールを守って運用することができれば、外国人雇用は会社の成長・発展に直接的に繋がる素晴らしい戦略の一つです。外国人雇用に強い行政書士などの専門家に相談しながら、正しい外国人雇用を行っていきましょう!
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