この記事をご覧の皆様の中には、技能実習生の受入れを検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
技能実習生や技能実習制度について調べていると必ず出てくる「監理団体」という言葉。耳慣れない言葉ですが、技能実習生と監理団体はどのような関係があるのでしょうか?そもそも監理団体とは何をしている団体なのでしょうか?
本記事では、技能実習制度を利用するにあたって、ほとんどの場合に必要となる監理団体について詳しく解説していきます。
実際にどのようなことをサポートしてくれるのか、具体的な事例や技能実習生を受け入れる流れも含めて、監理団体についての疑問点を明確にしていける内容になっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
INDEX
(株)アルフォース・ワン 代表取締役
山根 謙生(やまね けんしょう)
日本人、外国人含め「300社・5,000件」以上の採用支援実績。自社でも監理団体(兼 登録支援機関)に所属し、技能実習生・特定技能外国人の採用に取り組んでいる。外国人雇用労務士・外国人雇用管理主任者資格保有。(一社)外国人雇用協議会所属。
監理団体とは?
監理団体とは、海外にある技能実習生の送り出し機関と契約を結んで、日本の受入れ企業の代わりに技能実習生の受入れや、その活動および受入れ企業へのサポートを行う非営利団体のことで “技能実習生と受入れ企業の橋渡し役”と言えます。一般的には、「協同組合」の法人格を持っていることが多いです。
監理団体には「①特定監理事業」と「②一般監理事業」の2種類があります。
①特定監理事業 | 技能実習1号、2号の受入れが可能(日本に滞在できる期間は最大で3年間) |
②一般監理事業 | 技能実習1号、2号に加えて3号までの受入れが可能(日本に滞在できる期間は最大で5年間) |
※一部、技能実習3号に移行できない職種もあり
また、滞在期間だけではなく採用できる人数も異なります。
例えば、「①特定監理事業」だと、受入れ企業の常勤職員数(雇用保険加入者数)が30人以下の場合は技能実習1号は3人までですが、「②一般監理事事業」では2倍の6人まで受入れが可能です。
JITCO:外国人技能実習制度とは
このように、特定監理事業の団体よりも一般監理事業の団体の方が受入れ企業にとってはメリットがあると言えます。
特定監理事業が一般監理事業になるには、優良認定を受けなければなりません。優良認定はポイント制になっており、合格点に達すると昇格できます。この2種類の監理団体が受入れ企業や実習生に対して行うサポートや業務自体は全く同じです。
監理団体は実習生の受け入れに絶対に必要?
結論からお伝えすると、ほとんどの企業の場合は監理団体を通しての受入れが必要です。
技能実習生の受入れには、「団体監理型」と「企業単独型」の2種類があります。
海外現地に支店や関連企業があり、自社ですべての手続きや監理を行える体制がある場合は監理団体を通さない「企業単独型」で受け入れを進めることもできますが、技能実習制度は非常に煩雑な手順や監理が必要になるため、ほとんど企業は、ルールを順守した上で煩雑な手順ををすべて監理団体が代行してくれる「団体監理型」で受入れを進めることになり、その場合は監理団体への加入は必須となっています。
■団体監理型
■企業単独型
JITCO:外国人技能実習制度とは
監理団体がやってくれること
技能実習生の受入れにあたり様々なサポートを行ってくれる監理団体ですが、具体的にはどんなことをしてくれるのでしょうか?フェーズに分けて説明していきます。
入国前
①技能実習生の受入れ申込み~求人募集
まず受入れ企業は安心して技能実習生の受入れを任せられる監理団体に加入し、技能実習生の受け入れ申し込みを行います。その後、監理団体がまず初めに行うのは海外現地での求人募集です。監理団体が自ら海外で募集を行う訳ではなく、監理団体が契約している各国・地域の公的機関から認定を受けている「送り出し機関」という機関に依頼することで、短期間に多くの技能実習生候補を集めます。
②現地 or オンライン面接
受入れ企業の採用予定人数に見合いそうな人数が集まったら、現地での面接へ進んでいくことになります。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからは現地に行って直接面接を行うことが難しくなったこともあり、現在はオンライン面接が主流となっています。
面接には監理団体も必ず同行するので、初めての技能実習生の受入れでもご安心ください。監理団体は実習生受入れに関する経験やノウハウがあるため、受入れ企業の要望(性別、家族構成、年齢、性格、日本語能力など)に合った実習生候補者をしっかりと見極められるようにサポートをしてくれます。また、監理団体によっては、受入れ企業と実習生の家族との面談や家庭訪問などの機会をセッティングしてくれることもあります。3年~5年間も母国を離れることになるので、実習生とその家族が安心できるように配慮することも監理団体の大きな役目です。
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③受入れ手続き・住居などの準備
合格者が決まったら、日本への入国に向けて手続きを進めていきます。ビザの申請や現地での入国前講習(日本語教育など)、技能実習に関する計画や書類作成など、日本に来るまでに必要な準備はすべて監理団体が行うので、受入れ企業は専門的な知識がなくても安心して実習生の入国を待つことができます。
とはいえ、受入れ企業は実習生の入国を待つ間に何もしなくていいということではなく、実習生が住むことになる住居や家具・家電、生活備品などを準備すると同時に、社会保険関係の確認や、社内で技能実習生の受入れに関する説明会を実施するなどしてスムーズな受入れに備えておきましょう。
また、実習生が住む住居に関しては、部屋の広さや家賃なども含めて細かいルールがあるので、監理団体のサポートを受けながら慎重に準備を進めていきます。
入国直後
④入国後講習
いよいよ日本に入国となっても、すぐにその日から受入れ企業に配属ということにはなりません。
入国後1ヵ月~2ヵ月ほどは入国後講習として、監理団体が手配する研修施設で日本語や生活全般の教育に加え、入管法や労働法、技能実習の制度関係、警察による犯罪や交通ルールなどの講習、その他オリエンテーションなどを実施します。この研修施設は、研修を専門に行う外部の会社のこともあれば、監理団体が直接運営する研修センターの場合もあります。入国時から入国後講習期間の各種送迎も監理団体が行います。この期間は受入れ企業で研修を含む就労をすることはできませんのでご注意ください。
また、日本で就労・生活をするにあたって、銀行口座の開設や役所での転入手続き、ライフラインの契約などの手続きについても監理団体が同行して行うため、受入れ企業も実習生たちも不安なく実習期間をスタートすることができます。
監理団体には通訳が在籍しているので、企業への配属日には、住居や職場の案内、仕事内容の説明などもスムーズに進めることができるようになっています。
就業開始後
⑤定期巡回・相談対応
無事に実習生が受入れ企業へ配属された後、実習1年目は毎月必ず監理団体が受入れ企業を訪問する「定期巡回」を行います(2年目以降は最低3ヵ月に1回の定期監査)。
実習生たちとの個人面談はもちろん、受入れ企業側との面談も行い、生活や仕事の不安、不満、改善点などを双方から話を聞いて、受入れれ企業と実習生がより充実した実習期間になるようサポートします。
実習生と監理団体は常に連絡が取れるよう、メールや電話以外にもSNSも活用しているので、定期巡回の時以外にも何か問題があればすぐ対応することができます。
⑥トラブル対応など
監理団体の職員は、実習生にとって「日本の頼れるお兄さん、お姉さん」になれるよう努めています。
一例をあげると、実習生がケガや病気をした際の病院への付き添い、実習生同士でトラブルがあった時の通訳業務などです。企業に対しては、設備や帳簿類の確認や、実習が計画通りにきちんと行われているかどうかの確認業務などがあります。特に1年目は、日本語力が高くないため「言葉の壁」によるトラブルも予想されるので、監理団体の通訳としての役割はとても大きいと言えます。
その中でも、よくあるトラブルは「お金」「住居」についてです。
給与計算や残業時間などは、受入れ企業と監理団体が連携をとりながら法律に違反する部分がないかどうか必ず確認するようにしています。日本の税金や社会保険料などの仕組みは外国から来た実習生には馴染みのない制度で「なぜ給料からお金が引かれているのか」といったトラブルになりやすいため、事前に説明の機会を設けることと書面で合意をもらうことが大切です。
住居に関しては、それぞれの国で食生活や生活習慣が異なるため、ごみの出し方や騒音、掃除の方法などで、大家さんや周辺住民からクレームが発生することもあります。居住する地域のルールなどを細かく教えて、問題に対処していくことも監理団体の仕事です。
⑦技能検定のサポート
技能実習生は実習先の企業でただ仕事をすればいいだけではなく、日本で習得した高度な技術や知識を母国に持ち帰って活用していくという大きな役目があります。
そのため、どの職種の実習でも習得具合を確認するための「技能検定」を必ず受けて、合格しなければなりません。試験勉強は、各職種ごとに専門的な内容になるので企業側が指導することになりますが、試験の申込みや日程調整、試験会場への送迎などは監理団体がサポートします。
試験に不合格になってしまった場合は1度だけ再受験することが許されますが、再受験も不合格となってしまうと残念ながらその時点で技能実習は修了となり、実習生は強制帰国となってしまいます。
また、技能検定の他に、日本語力を高めるために「日本語能力検定」も受験することが推奨されているため、監理団体は日本語勉強のサポートも行います。
その他のサポート
⑧在留資格・ビザに係る手続き
技能実習生には、基本的に1年間の在留期間が与えられます。そのため、2年目以降は毎年、出入国在留管理庁での在留資格変更もしくは更新の手続きをしなければなりません。
監理団体には、実習生の代理で申請を行える資格保有者がいるため、実習生それぞれの申請時期をすべて把握し、滞りなく更新できるようにサポートをしています。
実習中の一時帰国や技能実習生を終えて母国に帰国する際にも、実習生の希望と受入れ企業側の希望をすり合わせながら、帰国時期の相談や航空券の手配も行います。
⑨非常時の対応
自然災害や、昨今のような新型コロナウイルス等の影響で実習生の帰国が難しくなった場合には、帰国できるまでの間、監理団体が実習生のサポートを行います。受入れ企業側の経営上の問題などで実習生の受入れを続けることができなくなった場合、実習生の移籍企業を探したりすることもあります。
また、もしも実習生が失踪してしまった場合は、警察への届け出や捜索、現地の家族との連絡なども行います。そうならない為に、日頃から監理団体と実習生、受入れ企業の3者の連携・協力が大切になります。
実習生の帰国後も、母国でどのような仕事に就いたのかを確認したり、再度日本での就労を希望している場合には力になれるように相談に乗ったり、実際に日本への再入国のサポートをすることも少なくありません。
⑩業務を超えた国際的なつながり
技能実習生が実習期間の3年~5年の間に日本が好きになり、「また日本に行きたい!」「また日本で働きたい!」「これからも日本に住みたい!」と思ってもらえるようにすることや、母国に帰った実習生たちが日本の良さを周りの人たちに広めたくなるような、充実した毎日を送るためのサポートをすることも監理団体の大切な役割のひとつです。
同時に、実習生を受け入れた企業の人たちにも、実習生たちとの交流を通して、実習生たちの母国の良さを伝えていくこともできます。実際に、技能実習を終えて帰国した実習生たちと近況報告をし合って、受入れ企業の方が旅行がてら会いに行くといったこともよくあります。
技能実習制度を通じ、監理団体の手厚いサポートによって、業務上の関係を超えて、生涯にわたる国際的なつながりができるという貴重な機会でもあります。
優良な監理団体とは?
監理団体は全国で3,505団体(2022年4月30日時点)以上あり、手厚いサポートをしてくれる良い監理団体と、そうでない監理団体が存在するのが現実です。法律違反による監理団体許可の取り消しも多数発生しています。
監理団体を選びに失敗してしまうと受入れ企業も実習生もトラブルに巻き込まれてしまうので、最初の契約の時点で、3~5年の実習期間を安心して任せることができる優良な監理団体を見極めることが重要です。
実習生の紹介実績や担当者の対応、通訳のレベル、監理費用などが監理団体を選ぶポイントになってくるので、事前にしっかりと確認した上で希望条件に合った監理団体を見つけていきましょう!
▼監理団体選びのポイントはコチラの記事もご覧ください!▼
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