EC需要の拡大で倉庫内作業は増えているのに、
「求人を出しても応募が集まらない」
「繁忙期の倉庫内作業を今の人員だけで回せるか不安」
とお悩みではありませんか。
近年、物流倉庫業の市場規模は急激に増加しており、人材確保の難しさを感じる企業も少なくありません。
こうした中、特定技能で物流倉庫分野の受け入れが始まることになり、外国人材の活用を検討する企業も増えています。
本記事では、特定技能「物流倉庫分野」の開始時期や対象業務、外国人側・企業側に求められる許可要件を解説します。
あわせて、直接雇用や在留期限管理、許可範囲外の業務を行わせないための注意点も紹介します。
2027年度から物流倉庫分野で特定技能の受け入れが開始される
物流倉庫分野は、2026年1月23日の閣議決定により特定技能の対象分野として追加され、制度の本格的な運用は2027年度から始まる予定です。
背景として、EC市場の拡大による需要の増加や規制強化に伴う倉庫内作業の負担増加により、物流倉庫業では人手不足が深刻な課題となっています。
制度開始後にスムーズに外国人材を受け入れるには、特定技能評価試験や日本語試験、雇用契約、支援体制の整備など、事前に確認すべき事項が多くあります。
そのため、受け入れを検討する企業は、制度が始まってから動くのではなく、対象業務や企業側の要件を早めに把握し、自社の体制を整えておく必要があります。
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特定技能「物流倉庫分野」の主な特徴 |
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| 在留資格の種類 | 特定技能1号 |
| 制度開始時期 | 2027年4月予定 |
| 受入れ見込み数 | 令和10年度末までに1万1,400人 |
| 業務内容 | 物品の搬入・搬出、仕分け、流通加工、入出荷時の検品、積み卸し、積み直し、在庫管理など |
| 所管省庁 | 国土交通省、出入国在留管理庁 |
外国人材受け入れの必要性
物流倉庫分野ではEC市場の拡大などにより物品保管の需要が高まり、倉庫面積や稼働率の増加を背景として、人手不足が深刻化しています。
実際に、普通倉庫における従業員1人あたりの所管面積は令和元年度の633㎡から令和5年度の674㎡へ広がっており、限られた人員でより多くの業務を担う必要が生じています。
業界団体の調査では令和6年時点で約1万9,000人の人手不足が生じており、生産性向上や女性・高齢者の活用を進めても、令和10年度には約1万8,300人の不足が残る見込みです。
そのため、物流倉庫業界を国民生活を支える重要な産業として維持・発展させるには、一定の専門性や技能を持つ外国人材の受け入れが必要と判断されることとなりました。
受け入れ見込み数は3年間で1万1400人
物流倉庫分野では令和8年度から令和10年度までの3年間で、特定技能と育成就労を合わせて1万8,300人の受け入れが見込まれています。
そのうち、1号特定技能外国人については、3年間の受け入れ見込み数が1万1,400人とされ、令和10年度末までの上限として運用される予定です。
特定技能の受け入れ停止と再開措置
特定技能制度には、受け入れ見込み数を超えるおそれがある場合などに、入国時に必要となる在留資格認定証明書の交付を一時的に停止する仕組みがあります。
具体的には、国土交通大臣が在留者数、有効求人倍率、業界団体を通じた調査、協議会からの情報などをもとに、人手不足の状況を把握します。
そのうえで、必要な人材が確保されたと認められる場合などには、国土交通大臣が法務大臣に対し、在留資格認定証明書の交付停止を求めることがあります。
ただし、その後に再び人材確保の必要性が生じた場合には、国土交通大臣が法務大臣に対して交付再開を求めるため、停止措置は状況に応じて見直される制度設計となっています。
当面は特定技能1号のみ受け入れの対象となる
物流倉庫分野で受け入れ対象となるのは、当面は特定技能1号のみとなる予定です。
特定技能1号は、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れる在留資格で、在留期間は通算5年までとされています。
特定技能2号は在留期間の上限がなく、要件を満たせば家族帯同も認められますが、2026年2月時点の情報では物流倉庫分野は2号の対象に含まれていません。
そのため、物流倉庫業で外国人材を雇用する企業は、まず特定技能1号を前提に、5年間の雇用計画や支援体制を整える必要があります。
物流倉庫分野の業務内容
物流倉庫分野で設定される業務区分は「物流倉庫」であり、倉庫内で行われる貨物の入庫、出庫、保管などの各種作業が対象となります。
具体的には、物品の搬入・搬出、仕分け、流通加工、入出荷時の検品、積み卸し、積み直し、在庫管理など、倉庫運営に関わる幅広い業務が想定されています。
また、物流機器の操作や点検、管理業務に加え、作業全体の管理に関する業務も対象に含まれるため、単なる軽作業だけを前提とした制度ではありません。
なお、日本人従業員が通常行う連絡・報告、作業場所の整理整頓や清掃、災害に備えた貨物移動などの関連業務には、付随的に従事することが認められています。
外国人側の許可要件
特定技能で働くには、本人が一定の基準を満たしている必要があります。
そのため、採用前には技能、日本語能力、在留資格の共通要件を分けて確認することが大切です。
ここでは、物流倉庫分野で外国人本人に求められる主な要件を整理します。
物流倉庫分野特定技能1号評価試験に合格していること
物流倉庫分野で特定技能1号の在留資格を取得するには、原則として物流倉庫分野特定技能1号評価試験に合格している必要があります。
この試験は、倉庫内作業に必要な知識や技能を確認するためのもので、物流倉庫で即戦力として働ける水準に達しているかを判断する役割を持ちます。
そのため、物流倉庫分野で外国人材を採用する場合は、候補者が評価試験に合格しているか、または受験予定や試験開始時期を含めて確認しておくことが重要です。
JLPTN4相当以上の日本語試験に合格していること
物流倉庫分野で特定技能1号の在留資格を取得するには、技能面だけでなく日本語能力の基準も満たす必要があります。
具体的には、国際交流基金日本語基礎テストに合格するか、日本語能力試験でN4以上に合格するなど、日本語教育の参照枠A2相当以上の力が求められます。
この水準は、仕事や生活に関係する基本的な表現を理解し、身近な内容であれば簡単なやり取りができる程度とされています。
そのため、企業が候補者を採用する際は、試験の合格状況だけでなく、現場での指示理解や報告・連絡が可能かどうかも確認しておくとよいでしょう。
税や社会保険について適切に納付していること
日本国内に在留している外国人を採用する場合は、本人が税金や社会保険料を適切に納付しているかも重要な確認事項になります。
特定技能の申請では、技能や日本語能力だけでなく、日本での在留状況や公的義務の履行状況も審査の対象となります。
そのため、過去に留学や就労の在留資格で日本にいた候補者については、住民税、国民健康保険料、国民年金保険料などに未納がないかを事前に確認しておくことが大切です。
未納がある場合は、申請前に納付状況を整理し、必要に応じて領収書や納付証明書などを準備することで、在留資格申請時の不安を減らしやすくなります。
企業側の許可要件
特定技能制度では、外国人を受け入れる企業側にも複数の基準が定められています。
物流倉庫分野では、事業内容や現場体制に関する独自基準の確認も必要です。
ここからは、企業が事前に押さえておくべき主な要件を見ていきます。
許可または登録を受けて倉庫作業を実施する者であること
物流倉庫分野で受け入れ機関となるには、倉庫業の登録を受けた倉庫業者として、貨物の入出庫や保管などの倉庫作業を自ら行う者であることが必要です。
また、登録を受けた倉庫業者から業務委託を受け、その倉庫業者が占有する営業用倉庫で作業を行う事業者も対象に含まれます。
そのほか、一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可を受け、占有する倉庫で倉庫作業を行う事業者も対象となります。
そのため、自社がどの事業形態に該当するのか、登録や許可、委託関係を事前に確認しておくことが重要です。
入出庫および在庫管理システムを利活用すること
物流倉庫分野の受け入れ機関は、入庫管理、在庫管理、出庫管理の機能を持つシステムや、これに準ずるシステムを利活用することが求められます。
あわせて、そのシステムと連携して作業の省力化や労働安全衛生の向上につながる機器・システムを、継続して活用する必要があります。
そのうえで、これらの利活用状況については、特定技能の協議会が定める方法により、入会からおおむね1年を目途に報告し、確認を受けることになります。
委託業者が特定技能の受け入れをする場合は委託元と共同で責任を持つこと
倉庫業者から業務委託を受け、委託元が占有する営業用倉庫で作業を行う事業者が受け入れ機関になる場合は、雇用の継続性に関する確認が必要です。
具体的には、受け入れる特定技能外国人の雇用について、委託元の倉庫業者と委託を受けた事業者の双方が共同で責任を持つ内容の協議書を作成し、取り交わすことが求められます。
そのため、構内作業を請け負う企業が受け入れを検討する場合は、自社だけで判断せず、委託元との協力体制を早い段階で整理しておくことが重要です。
特定技能の協議会の構成員となり必要な協力を行うこと
物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、分野ごとに設けられる特定技能の協議会に加入し、構成員となる必要があります。
協議会は、制度の適正な運用や受け入れ状況の把握を行うための仕組みであり、企業は協議会で決定された事項を守ることが求められます。
加えて、協議会から調査や情報提供を求められた場合には、必要な協力を行うことも受け入れ機関の要件に含まれます。
国土交通省が行う調査・指導に対し必要な協力を行うこと
物流倉庫分野の受け入れ機関は、国土交通省が実施する調査や指導に対して、必要な協力を行うことが求められます。
これは、制度の運用状況や受け入れの適正性を確認し、物流倉庫分野で外国人材の雇用が適切に行われるようにするための仕組みです。
具体的には、受け入れ状況に関する情報提供や、協議会を通じた確認、国土交通省から求められる対応への協力などが想定されます。
入管法に定められた外国人支援を適切に実施すること
特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、入管法に基づく支援計画を作成し、その内容に沿って支援を実施する必要があります。
具体的には、入国前の事前ガイダンス、住居確保の支援、生活に必要な手続きの案内、日本語学習機会の提供などが求められます。
これらの支援には専門的な知識や多言語対応が必要になるため、自社だけで対応できる体制があるかを確認しておくことが大切です。
特定技能の義務的支援10項目は以下のとおりです。
- 事前ガイダンスの実施
- 入国・帰国時の送迎
- 住居の確保や生活に必要な契約支援
- 生活オリエンテーションの実施
- 公的手続等への同行
- 日本語学習の機会の提供
- 相談・苦情への対応
- 日本人との交流促進支援
- 転職時の支援(人員整理等の場合)
- 定期的な面談と行政機関への報告
支援業務は登録支援機関に委託できる
自社で支援体制を整えることが難しい場合は、1号特定技能外国人への支援業務を登録支援機関に委託できます。
登録支援機関に委託することで、事前ガイダンスや生活相談、日本語学習支援などを外部の専門機関に任せられます。
ただし、物流倉庫分野で支援を受託する登録支援機関も、協議会に加入し、協議会や国土交通省から求められる必要な協力を行うことが求められます。
そのため、委託先を選ぶ際は、特定技能制度だけでなく物流倉庫分野の独自要件にも対応できるかを確認することが大切です。
特定技能外国人受け入れの注意点
特定技能制度を活用する際は、採用できるかだけでなく、受け入れ後の運用にも注意が必要です。
ここからは、受け入れ前に確認しておきたい実務上の注意点を整理します。
雇用形態は直接雇用のみ
物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れる場合、雇用形態は直接雇用に限られます。
特定技能制度では、季節による業務量の変動が大きい農業分野と漁業分野を除き、派遣形態での受け入れは認められていません。
受け入れ企業は、自社で雇用契約を結び、賃金や労働時間、社会保険、支援体制まで責任を持って管理する必要があります。
定期的な在留期限管理が必要
特定技能1号の在留期間は一度に4カ月~3年まで付与されますが、在留カードに記載された期限を超える前に都度期間更新の手続きを行わなければ就労を継続することはできません。
そのため、受け入れ企業は本人任せにせず、在留期限や更新時期を定期的に確認する管理体制を整える必要があります。
期限が近づいてから慌てるのではなく、在留期間更新許可申請に必要な書類を早めに準備することが大切です。
万が一、更新を失念すると不法就労につながるおそれがあるため、担当者を決めて期限管理表などで継続的に把握しておきましょう。
許可範囲外の業務を行わせることはできない
物流倉庫分野の特定技能で雇用する場合、従事させられる業務は、許可された業務区分の範囲内に限られます。
そのため、物流倉庫の在留資格で採用した外国人に、自動車運送業のドライバー業務や自動車整備分野の作業を主な業務として行わせることはできません。
担当業務を変更する場合は、現在の在留資格で対応できる範囲かを確認し、必要に応じて在留資格変更の手続きを検討することが重要です。
まとめ
この記事では、2027年度から開始予定の特定技能「物流倉庫分野」について、制度創設の背景、受け入れ見込み数、対象業務、外国人本人と企業側に求められる主な要件を解説しました。
物流倉庫分野では、入出庫や保管、在庫管理などの業務が対象となる一方で、直接雇用や協議会加入、システム利活用などの独自要件にも注意が必要です。
物流倉庫業で人手不足に悩んでいる場合、制度開始後に慌てて準備するのではなく、自社が対象となる事業者か、支援体制を整えられるかを早めに確認しておくことが大切です。
まずは登録・許可、委託関係、業務内容を整理し、必要に応じて専門家へ相談しながら受け入れ準備を進めましょう。
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