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外国人社員が年金加入を拒否したらどのように対応すべきか?制度の概要、脱退一時金、社会保障協定について解説

外国人社員の年金加入、拒否されたら?

外国人社員を採用したものの、

「日本の年金は払いたくない」
「どうせ帰国するから加入しなくていい」

と言われ、対応に困っていませんか。

手取りが減ることを嫌がる気持ちは理解できますが、会社として本人の希望をそのまま受け入れてよいのかは、関係法令と照らし合わせて検討しなければなりません。

この記事では、外国人社員の年金加入に関するルールと未加入のリスク、拒否されたときの説明の手順、帰国時に保険料の一部が戻る脱退一時金、社会保障協定による例外までを順に解説します。

本人の納得を得ながら適切に手続きを進めたい経営者の方は、ぜひ最後までお読みください。

この記事の監修
安藤 祐樹
安藤 祐樹 | きさらぎ行政書士事務所 / 行政書士

きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)

外国人社員の年金加入は本人の意思で拒否できない

一定の条件を満たす社員の厚生年金加入は法律上の義務であり、本人が希望しても拒否することはできません。

こでは、加入義務の考え方、会社が負うリスク、国民年金との違い、拒否の背景にある理由を順に整理します。

外国人社員の厚生年金加入の基本概要

項目 ポイント
加入義務 国籍・性別・賃金の額に関係なく70歳未満の常時使用される方が対象
本人の拒否 本人が希望しても拒否できない
例外 社会保障協定による適用除外などの場合がある
未加入時の会社のリスク 過去にさかのぼって加入を求められ、会社負担分と社員負担分の納付を求められる可能性
未加入時の社員のリスク 障害年金や遺族年金の対象外になる

厚生年金は国籍に関係なく加入義務がある

厚生年金保険は、会社員などが加入する公的年金です。

国民年金に上乗せされる形で、将来の老齢年金や、障害・死亡時の給付を受けられる仕組みになっています。

厚生年金保険の適用事業所(加入義務のある事業所)に常時使用される70歳未満の方は、国籍、性別、賃金の額に関係なく被保険者になり、「外国人だから対象外」「本人が不要と言っているから外す」という判断は、制度上できません。

ただし、後述する社会保障協定による適用除外など、例外が認められる場合もあります。

外国人雇用に関する社会保険の基本ルール|健康保険・年金・雇用保険など制度解説

適用事業所で働く社員が加入しない場合に会社が負うリスク

加入すべき社員を未加入のままにすると、責任を問われるのは社員本人ではなく、主に事業主である会社です。

資格取得届を提出しなければ、年金事務所の調査などで未加入が判明した際に、過去にさかのぼって加入を求められることがあります。

さかのぼって加入となった場合は、会社負担分に加えて、本来は給与から控除すべきだった社員負担分についても、まとめて納付を求められる可能性があります。

社員負担分は、控除できる時期や範囲に制限があるため、結果として会社が負担せざるを得ないケースも生じます。

さらに、届出を怠った状態が続くと、法令違反として指導や罰則の対象になることがあります。

また、社員側にも不利益が及び、未加入の期間は、老齢年金だけでなく、病気やけがで障害が残ったときの障害年金、亡くなったときの遺族年金の対象外になるおそれがあります。

国民年金に加入するケースとの違い

日本の公的年金には、国民年金と厚生年金の2種類があります。

国民年金は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての方に加入義務がある制度で、国籍は問われません。

自営業者や無職の方などが自分で保険料を納めます。

また、会社が適用事業所に該当しない場合や、社員が適用除外に当たる場合は、本人が市区町村の窓口で国民年金に加入し、自分で納付します。

一方、厚生年金は、適用事業所で働く会社員が加入する制度です。

厚生年金に加入すると、国民年金にも同時に加入している扱いになり、保険料は給与から天引きされます。

保険料は会社と社員が半分ずつ負担する仕組みで、手続きも会社が年金事務所に届け出ます。

このように、会社が手続きを行う厚生年金と、本人が手続きを行う国民年金では、責任の所在が異なります。

自社がどちらに当たるのかが不明な場合は、年金事務所や社会保険労務士に確認することをおすすめします。

外国人社員が年金加入を拒否する主な理由

外国人社員が年金加入を拒否する背景には、制度への誤解や不安があることが少なくありません。

主な理由は次のとおりです。

・ 数年で帰国する予定なので、払った保険料が無駄になると考えている
・ 手取りが減ることへの抵抗感がある
・ 日本の年金制度の仕組みや目的を知らず、なぜ払うのか納得できていない
・ 母国の年金制度との違いがわからず、将来受け取れるのか不安に感じている
・ 母国と日本で二重に保険料を払うことになると思っている

このうち、帰国後の保険料の扱いや二重払いの不安については、脱退一時金や社会保障協定という制度で対応できる場合があります。

ただし、利用できるかどうかは社員の国籍や在留状況によって異なります。

まずは拒否の理由を丁寧に聞き取り、誤解を解くところから始めることが大切です。

外国人社員が年金加入を拒否したときの対応手順

外国人社員から「年金には入りたくない」と言われたときは、まずは落ち着いて、本人が何に不安を感じているのかを確認することが大切です。

ここでは、経営者や人事担当者が実際に取るべき対応を、順を追ってご説明します。

理解できる言語で丁寧に制度の説明をする

年金加入を拒否する背景には、制度そのものが理解されていないケースが少なくありません。

「なぜ給与から保険料が引かれるのか」
「自分は数年で帰国するのに意味があるのか」

といった疑問が、拒否という形で表れることがよくあります。

まずは本人の母国語、または日常会話より少し易しい日本語や英語など、本人が理解できる言語で厚生年金が法律で定められた義務であることを伝えます。

説明の際は、日本年金機構が公開している外国語版のパンフレットを活用すると便利です。

英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、ベトナム語、ネパール語など、複数の言語に対応した資料が用意されています。

口頭だけでなく資料を手渡すことで、本人が家族と相談したり、後から読み返したりしやすくなります。

保険料の負担と将来の給付について伝えるポイント

説明では、手取りが減るという不安に正面から答えることが重要です。

厚生年金の保険料は、本人と会社が半分ずつ負担する仕組みです。

本人の負担分だけが天引きされるわけではなく、会社も同額を負担していることを伝えると、納得を得やすくなります。

あわせて、納めた保険料が掛け捨てになるわけではないことも説明します。

伝えるべき主なポイントは次のとおりです。

・ 老齢年金だけでなく、病気やけがで障害が残ったときの障害年金、万一のときの遺族年金にも備えられること
・ 帰国する場合には、一定の条件のもとで脱退一時金を請求できる制度があること
・ 母国と日本が社会保障協定を結んでいる場合は、加入期間の通算や二重加入の免除が受けられる可能性があること

面談の場では、制度があることを案内したうえで、具体的な金額や適用の可否は年金事務所で確認できると伝えておくと、誤った説明を避けられます。

帰国時に保険料が戻る脱退一時金の仕組み

外国人社員が年金への加入に消極的な場合、帰国時に保険料の一部が戻る脱退一時金という制度があることを伝えると、納得を得やすくなります。

ただし、受け取れるのは一定の条件を満たした人に限られ、請求できる期間にも限りがあります。

ここでは、経営者として最低限知っておきたい仕組みと、案内するときの注意点を整理します。

外国人の脱退一時金とは?受給要件・計算方法・必要書類を解説!

請求できる人の条件と請求期限

脱退一時金とは、日本の年金制度に加入していた外国人が、年金を受け取れないまま帰国する場合に、納めた保険料の一部を払い戻す制度です。

請求できるのは、次の条件をすべて満たす方です。

・ 日本国籍を持っていないこと
・ 国民年金の保険料納付済期間等、または厚生年金保険の被保険者期間のいずれかが6か月以上あること
・ 老齢年金を受け取るための資格期間(原則10年)を満たしていないこと
・ 日本国内に住所を有しなくなっていること
・ 障害手当金など、年金の給付を受けたことがないこと

請求期限は、日本に住所を有しなくなった日から2年以内です。

期限を過ぎると請求できなくなるため、退職や帰国が決まった段階で、社員に期限を伝えておくことが大切です。

支給額と上限の考え方(最大60か月分)

支給額は、加入していた期間の平均的な給与水準と、加入月数に応じて決まります。

加入期間が長いほど金額は増えますが、計算の対象になる月数には上限があり、現行制度では60か月(5年)分までです。

5年を超えて働いた場合でも、60か月を超える分は支給額に反映されません。

なお、本人の給与から天引きされた保険料と同額が戻るわけではない点に注意が必要です。

支給額は法令の定める計算式で算出されるため、社員から「いくら戻るのか」と聞かれたときは、日本年金機構が公開している支給額表や年金事務所で確認するよう案内するのが確実です。

単純出国と住所の扱いに関する注意点

脱退一時金を請求するためには、日本国内に住所を有していないことが必要です。

帰国に伴って日本での居住を終了する場合は、原則として市区町村で転出届を提出し、住民登録を適切に整理しておきましょう。

転出届を出さないままだと、日本に住所があるものとして扱われ、請求が認められないことがあります。

請求手続きは、出国後に海外から郵送で行うのが一般的です。

厚生年金保険の脱退一時金には、所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

帰国後に源泉徴収された税金の還付を受ける場合は、日本国内に納税管理人を選任し、還付申告を行う必要があります。

また、再入国許可を持ったまま出国する場合は、脱退一時金を請求できなくなる方向で制度が見直しされる予定となっているため注意が必要です(2029年6月19日までに政令で定められる予定)。

その他、脱退一時金を受け取ると、その期間は日本の年金加入期間として扱われなくなります。

社会保障協定の相手国の場合は、加入期間を通算して将来の年金に結びつけられる可能性があるため、受け取る前によく検討するよう促すことが大切です。

請求手続きそのものは社員本人が行うものですので、会社としては制度の存在と期限を伝えることを中心に対応しましょう。

社会保障協定で日本の年金加入が不要になる場合

社会保障協定は、一定の条件を満たす外国人社員について、日本の年金制度への加入が不要になる場合があることを定めた国どうしの取り決めです。

ここでは、協定の目的、会社が準備する手続き、対象国の確認方法を順に解説します。

協定の目的(二重加入の防止と加入期間の通算)

社会保障協定には、大きく2つの目的があります。

1つ目は「二重加入の防止」です。

海外から日本へ派遣された社員が、母国と日本の両方の年金に加入し、保険料を二重に負担する事態を避けるため、どちらの制度に加入するかを二国間で調整します。

2つ目は「加入期間の通算」です。

年金を受け取るには、一定期間の加入が必要な国が多くあります。
そのため、短い期間だけ加入しても年金に結びつかないことがあります。

協定では、両国の加入期間を合算して受給資格を判断できるようにしています。ただし、すべての協定に通算の仕組みがあるわけではありません。

日本年金機構の案内によると、英国、韓国、中国、イタリアとの協定は、保険料の二重負担防止のみが対象です。

また、協定で免除されるのは、母国の制度に加入したまま日本に一時的に派遣されている社員などに限られます。

日本で現地採用した社員は、原則として日本の制度に加入します。

協定締結国の確認方法と内容の違い

協定の発効状況は、日本年金機構の「社会保障協定」のページで確認できます。
同ページでは、2025年12月1日にオーストリアとの協定が発効し、日本は24か国との間で協定が発効すると案内されています。

協定の内容は、多くの点で共通していますが、相手国の制度に合わせて、対象となる保険制度などが異なります。

たとえば、年金のみを対象とする協定もあれば、医療保険なども含む協定もあります。

海外から派遣される社員など、社会保障協定の対象となる可能性がある場合は、派遣元の国と日本との協定内容や適用証明書の有無を確認してください。

参考:日本年金機構|社会保障協定

年金未加入・未払いのリスク

外国人社員が年金に加入しない、あるいは保険料を納めない状態が続くと、会社だけでなく本人にも大きな不利益が生じます。

特に見落とされやすいのが、在留資格に関わる手続きへの影響です。

永住許可申請・在留資格更新で社会保険の納付状況の審査がある

在留資格の更新や変更、永住許可の申請では、出入国在留管理庁が本人の公的義務の履行状況を確認します。

公的義務とは、税金や年金、健康保険の保険料の納付などを指します。

特に永住許可では、年金や健康保険の納付状況が審査の対象とされており、未加入や未納があると不許可になる可能性が高まります。

在留期間の更新でも、納付状況が消極的な事情として考慮される場合があります。

なお、永住許可の審査では、直近の一定期間にわたる納付状況の確認資料を求められるのが一般的です。

会社の側にも、適用事業所でありながら資格取得届を出していなければ、未加入の状態を放置した責任が問われます。

社員のキャリアに支障が出てから対応するのでは遅いため、加入手続きと保険料の給与天引きを、入社時から確実に行うことが大切です。

まとめ

外国人社員が年金加入を拒否しても、厚生年金は国籍や本人の意思に関係なく、適用事業所で働く一定の条件を満たす社員に加入義務があります。

会社の判断で手続きを省略することはできず、未加入のままにすると、会社にも本人にも不利益が生じます。

まずは、本人が何に不安を感じているのかを確認し、理解できる言語で、保険料の負担と将来の給付、帰国時に請求できる脱退一時金の仕組みを具体的に伝えると、納得が得られやすくなります。

制度の運用や手続きは変更される場合があるため、実際の対応の際は、年金事務所や出入国在留管理庁の最新の案内もご確認ください。

この記事の監修
安藤 祐樹
安藤 祐樹 | きさらぎ行政書士事務所 / 行政書士

きさらぎ行政書士事務所代表。20代の頃に海外で複数の国を転々としながら農業や観光業などに従事し、多くの外国人と交流する。その経験を通じて、帰国後は日本で生活する外国人の異国での挑戦をサポートしたいと思い、行政書士の道を選ぶ。現在は入管業務を専門分野として活動中。愛知県行政書士会所属(登録番号22200630号)


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