「現在、技能実習生を受け入れているけれど、自社の業務は育成就労制度でも受入れ対象になるのか?」
「育成就労へ移行すると、受入れの条件や企業側に求められる義務はどのように変わるのだろうか?」
と疑問に感じていませんか。
報道などで「技能実習」が廃止されるというニュースを目にした方も多いでしょう。
しかし、新たに創設される育成就労制度の詳細については、あまり報道で見かける機会は多くありません。
この記事では、技能実習廃止後の新制度である「育成就労」の詳細や開始時期、技能実習との違い、転籍の条件、特定技能への移行要件、受入上限人数などを詳しく解説します。
育成就労制度とは
育成就労制度とは、育成就労産業分野において「特定技能1号水準の人材の育成」と「育成就労産業分野の人材確保」を目的として、日本国外から外国人労働者を受け入れる制度です。
令和5年11月30日に法務大臣に提出された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告書で、「現行の技能実習制度を発展的に解消し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度を創設することが望ましい」と提言されたことがきっかけで、この制度が創設されることとなりました。
その後、令和6年6月に育成就労法が成立し公布され、令和9年4月1日施行予定となっています。
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育成就労制度の基本概要 |
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| 制度の目的 | 人材の確保及び育成 |
| 制度開始時期 | 2027年4月1日 |
| 受入れ対象の産業分野 | 17分野 |
| 育成就労外国人の在留期間 | 原則3年 |
| 転籍の可否 | 条件を満たせば転籍可 |
育成就労産業分野とは
育成就労産業分野とは、育成就労制度を利用して外国人を受け入れることができる産業分野のことです。
制度開始時には17分野が受入れ対象となることが決定していますが、国内での人材育成になじまない分野は対象外とされており、特定技能制度の対象分野である自動車運送業と航空分野は、育成就労産業分野には含まれていません。
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育成就労産業分野一覧(17分野) |
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いつから施行されるのか
育成就労制度は、2027年(令和9年)4月1日に施行されることが決定しています。
制度開始後の一定期間は技能実習制度と並行して運用され、経過措置を経たうえで、2030年頃を目途に育成就労制度へ移行していく予定です。
なお、育成就労計画の認定申請は、制度施行に先立って2026年(令和8年)9月1日から受け付けが開始されます。
そのため、施行後早い段階から、育成就労外国人の入国・就労が始まることが想定されています。
育成就労の分野別受入れ上限人数
育成就労の受入れ人数は分野ごとに上限が定められています。
各分野の令和10年末までの受入れ上限人数は以下の通りです。
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育成就労の分野別受入れ上限人数 |
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| 分野名 | 令和10年末までの受入れ上限人数 |
| 介護 | 3万 3,800 人 |
| ビルクリーニング | 7,300 人 |
| リネンサプライ | 3,400 人 |
| 工業製品製造業 | 11 万 9,700 人 |
| 建設 | 12 万 3,500 人 |
| 造船・舶用工業 | 1万 3,500 人 |
| 自動車整備 | 9,900 人 |
| 宿泊 | 5,200 人 |
| 鉄道 | 1,100 人 |
| 物流倉庫 | 6,900 人 |
| 農業 | 2万 6,300 人 |
| 漁業 | 2,600 人 |
| 飲食料品製造業 | 6万 1,400 人 |
| 外食業 | 5,300 人 |
| 林業 | 500 人 |
| 木材産業 | 2,200 人 |
| 資源循環 | 3,600 人 |
技能実習制度はなぜ廃止されるのか
技能実習制度は、「人材育成を通じた国際貢献」を目的に平成5年に創設されました。
数々の制度改正を経て現在に至りますが、実態としては「人材確保」のための手段として利用されてきた側面があり、創設当初に掲げた基本理念とのかい離が指摘されています。
また、技能実習制度では、原則として転籍(転職)は認められず、やむを得ない事情がある場合を除き、実習先を変更することができません。
暴行など悪質な法令違反を受けた場合は転籍可能ですが、技能実習生の自由な意思による転籍は認められません。
本来は、「人材確保」のためではない制度を労働力の供給源として利用することによりさまざまな問題が発生しているため、「人材育成」と「人材確保」の両方の実態に即した新制度の創設が必要と判断されました。
以下に現行の技能実習制度で発生しやすいトラブルについて解説します。
問題点1:賃金・労働時間のトラブル
厚生労働省によると、令和6年の一年間で、全国の労働基準監督機関が11,355件の監督指導を行い、その73.2%に当たる8,310件の実習実施者で労働基準関係法令違反が認められたと報告しています。
そのうち、「賃金の支払いに関する違反」が1,046件、「割増賃金の支払いに関する違反」が1,774件、「労働時間に関する違反」が1,412件と多くを占めており、給与や労働時間に関する問題が多数発生しています。
令和6年の実習実施者の総数は67,886者であり、全体の12.2%の割合で違反行為が行われていたことが判明しています。
問題点2:職場内のハラスメント
各種報道やSNSなどで技能実習生に対する暴行やハラスメントの問題が度々話題になります。
具体例としては、「上司や同僚からの暴行・暴言」や「不当なノルマを課される」「セクシャルハラスメント」「妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント」などが挙げられます。
出入国在留管理庁の調査では、技能実習生全体のうち54.7%が借金をして来日していることが判明しています。
そのため、多くの技能実習生は、仕事を失うリスクを避けるために、暴行やハラスメントの問題を強く訴えることなく我慢をしてやり過ごそうとする傾向があります。
このような問題は一部の限られた実習先だけで起こることではありますが、発覚が遅れる要因などは技能実習制度そのものの問題であるため、制度全体が抜本的に見直されることとなりました。
問題点3:労働災害の発生率
技能実習生の労働災害による年間死傷者数は、令和5年の数字で1,692人です。
技能実習生1000人のうち、4.1人が死傷していることとなり、これは日本人を含む全ての労働者の死傷率と比較すると約1.7倍高い数字です。
技能実習の対象職種・作業には、労働災害の発生率の高い仕事が多く含まれているため、単純比較はできませんが、言語や労働環境の違いなどが事故発生率増加の一因になっていると考えられます。
有識者会議では、技能実習の技能検定試験について、「労働安全衛生上の視点が不足している」との指摘があったため、育成就労制度では労働安全衛生に関する規制が強化されることとなります。
問題点4:多数の失踪者
令和5年の技能実習生の失踪者数は9,753人です。
失踪者の中には、在留期限が切れる前に出国する者も含まれているため、全てが不法滞在に繋がるわけではありませんが、これだけの数の技能実習生の失踪は大きな問題となっています。
失踪の主な原因は、「賃金の不払い」「労働条件のミスマッチ」「職場内での孤立」「SNSなどの違法な仕事の誘い」などです。
有識者会議においては、失踪問題の対策として「悪質な送り出し機関の排除」や「外国人技能実習機構の監理団体に対する監督指導権限の強化」「外国人技能実習機構の職員増員及び予算拡大」が提言され、今後の状況改善が求められています。
参考:送り出し機関は問題だらけ?認定要件や選び方を徹底解説します!
育成就労制度移行に伴う技能実習からの変更点
育成就労制度は、技能実習制度で指摘されてきた課題を踏まえて設計された新たな制度であり、受入れの仕組みや外国人の待遇、転籍、支援体制など、さまざまな点が見直されています。
ここでは、技能実習制度から変更される主なポイントや、育成就労制度で新たに設けられる仕組みについて詳しく解説します。
外国人技能実習機構の権限強化
技能実習から育成就労への制度移行に伴い、外国人技能実習機構は外国人育成就労機構に名称が変更されます。
技能実習制度が抱えていた多くの問題点を解消すべく、育成就労移行後はさまざまな権限が強化されることとなります。
変更が予定されている具体的な内容は以下の通りです。
- 職員の増員と予算の拡大
- 受け入れ機関に対する監督指導機能の強化
- 外国人に対する支援・保護機能の強化
- 労働基準監督署との相互通報の取り組みの強化
- 地方出入国在留管理局との連携強化
- 転籍支援に関するハローワークとの連携
- 特定技能の相談援助業務を新たに開始する
転籍制限の緩和
技能実習制度においては、やむを得ない事情がある場合を除き、転籍は原則として認められていませんでした。
しかし、育成就労制度では、一定の条件を満たせば、育成就労外国人本人の意向による転籍が認められます。
本人意向による転籍の主な条件は、以下のとおりです。
- 同一機関での就労が分野ごとに設定された期間(1年または2年)を超えていること
- 技能検定試験基礎級等に合格していること
- 日本語能力A1相当(JLPT N5相当)以上の試験に合格していること
- 転籍前と同じ業務区分であること
- 適切な転籍先であること
- 転籍先が、一定の要件を満たす適切な育成就労実施者であること
- 民間の職業紹介事業者等を介した転籍ではないこと
なお、転籍制限期間や転籍時に求められる日本語能力の水準は、育成就労産業分野ごとに定められます。
政府の基本方針では転籍制限期間は1年を目指すとしつつ、当分の間は各分野について1年から2年の範囲で設定されます。
また、日本語能力についても、分野によって求められる水準が異なる場合があります。
転籍時の「初期費用の補填」
本人意向による転籍では、転籍先となる育成就労実施者が、転籍元となる育成就労実施者に対して、転籍元がその外国人を受け入れる際に支出した初期費用の一部を補填する仕組みが設けられています。
ここでいう初期費用には、制度設計上、例えば以下のような費用が想定されています。
- 職業紹介費
- 送出機関への送出手数料
- 入国後講習費
- その他、外国人材の入国・受入れに必要となる費用
つまり、転籍時のお金の流れは、転籍元企業が外国人を受け入れる際に初期費用を負担し、その後、外国人本人が一定の条件を満たして企業Bへ転籍した場合、転籍先企業Bが転籍元企業Aに初期費用の一部を補填するという仕組みです。
外国人本人にお金が返ってくる制度ではなく、転籍先の企業から転籍元の企業へ支払われる補填である点に注意しましょう。
なお、転籍元で初期費用が発生していない場合などには、補填が不要となるケースがあります。
補填額は、転籍元企業が実際に負担した初期費用をそのまま全額請求する仕組みではありません。
法務大臣及び厚生労働大臣が告示で定める基準額に、転籍元での育成就労期間に応じた按分率を掛けて算定します。
1回目の本人意向による転籍の場合、現在示されている按分率は以下のとおりです。
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補填額の算定基準表 |
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| 転籍前の受入れ機関での在籍年数 | 掛け率 |
| 1年以上1年6か月未満 | 6分の5 |
| 1年6か月以上2年未満 | 3分の2 |
| 2年以上2年6か月未満 | 2分の1 |
| 2年6か月以上 | 4分の1 |
つまり、転籍元での在籍期間が短いほど補填額が大きく、長く在籍するほど補填額は小さくなる仕組みです。
なお、転籍先の育成就労実施者は、新たな育成就労計画の認定申請時に、この補填を行うことを誓約する必要があります。
認定後6か月以内に、補填額を実際に支払ったことを証明する書類を機構へ提出することも求められています。
出入国在留管理庁:育成就労制度における本人意向による転籍の制限(案)について
外部監査人の義務化
技能実習制度の監理団体においては、外部監査人の設置は任意ですが、育成就労制度においては外部監査人の設置が義務化されます。
技能実習制度においても、外部監査人として弁護士や行政書士、社会保険労務士などが選任されている実情がありましたが、制度の見直しにあたっては、一定の資格を有する者等から外部監査人を選任することを義務付け、その氏名などを公表する措置を講ずるべきとの提言がなされました。
これを踏まえ、育成就労制度では、監理支援機関に対して外部監査人の選任が義務付けられることとなりました。
前職要件と帰国後従事要件の撤廃
現行の技能実習制度においては、日本で従事する予定の業務と同種の業務に母国で従事した経験(前職要件)を有することが求められます。
この前職要件は、技能実習生が日本に入国した後の労働安全上のリスクを軽減させる観点から重要なものとされていました。
しかし、実情としてブローカーが介入し、手数料を取って前職の証明書を発行するなど、制度が形骸化していることが指摘されています。
そのため、育成就労制度においてこの前職要件は撤廃されることとなりました。
また、技能実習制度は、開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を目的としているため、技能実習修了後に帰国し、日本で修得した技能等を母国で活用することを前提とした要件が設けられています。
一方、育成就労制度は、人材育成と人材確保を目的とする制度であることから、技能実習制度における帰国後の従事に関する要件についても撤廃されます。
再入国制限の緩和
技能実習制度では、帰国後に改めて日本に入国し、再実習をすることは原則として認められません。
一方で、育成就労制度においては、本人事情や業務内容のミスマッチを理由に帰国した場合であっても、通算滞在年数が2年以下であれば、再度業種を変えて3年間の育成就労の活動を行うことが認められます。
ただし、未熟練労働者である育成就労外国人の再入国を無制限に認めるのは適切ではないため、通算の滞在期間は最長5年までに限るとされています。
日本語能力向上の方策
育成就労制度では、受入れ対象となる職種・業務に必要な技能だけでなく、育成就労外国人の日本語能力を段階的に向上させることも重要な育成目標として位置付けられています。
日本語能力については、原則として育成就労の3年間を通じて、「日本語教育の参照枠」のA2相当(JLPT N4相当、JFT-Basic等)の水準を目指します。
また、育成就労開始後1年以内には、A1相当(JLPT N5相当等)の日本語能力を修得し、試験を受けることが中間的な目標として設定されています。
分野によっては、これより高い日本語能力が求められる場合があります。
ここで注意したいのは、育成就労の日本語教育には、「A1相当(JLPT N5相当)の講習」と「A2相当(JLPT N4相当)を目標とする講習」の2つがあることです。
① A1相当(JLPT N5相当)の日本語講習:入国後講習
育成就労を開始するまでに、原則としてA1相当(JLPT N5相当等)の日本語能力を確認できる試験に合格していること、またはA1相当の日本語講習を受講していることが求められます。
そのため、A1相当以上の日本語能力試験に合格したことを示す証明書等を提出できない場合には、入国後講習などでA1相当の日本語講習を受ける必要があります。
この講習は、原則として文部科学大臣の認定を受けた認定日本語教育機関の「就労のための課程」で実施されます。当分の間は経過措置として、一定の要件を満たす登録日本語教員による講習も認められています。
講習はオンラインで行うこともできますが、同時双方向で実施することなど、一定の要件があります。
A1相当講習については、100時間以上の授業時間が必要です。
なお、すでにA1相当の日本語能力試験に合格している場合には、改めてこの講習を受ける必要はありません。
② A2相当(JLPT N4相当)を目標とする日本語講習:育成就労期間中の100時間
もう一つが、育成就労の開始後、原則3年間の育成就労期間中に受講するA2相当(JLPT N4相当)を目標とする日本語講習です。
育成就労実施者は、育成就労外国人がこの講習を受講する機会を提供するために必要な措置を講じる必要があり、100時間以上の講習を受講できるようにすることが求められています。
この講習も、原則として認定日本語教育機関の「就労のための課程」で実施されます。
当分の間は、一定の要件を満たす登録日本語教員による講習も認められています
なお、すでにA2相当(JLPT N4相当等)の日本語能力試験に合格している場合や、入国前講習・入国後講習で所定のA2相当講習をすでに修了している場合には、改めてA2相当目標講習を受講する機会を提供する義務はありません。
日本語講習の費用は誰が負担する?
ここは受入企業にとって非常に重要なポイントです。
A2相当(JLPT N4相当)目標講習については、育成就労実施者が育成就労外国人に受講機会を提供し、外国人本人が希望して講習を受講する場合、その講習費用を育成就労実施者が負担することが求められています。
また、適切に受講できる環境を整えることも求められています。
したがって、A2相当(JLPT N4相当)目標講習の費用を育成就労外国人本人に負担させる前提で計画することはできません。
実務上は、受入企業が、監理支援機関等を通じて日本語教育機関等を手配し、その費用を負担する形になるケースが中心になると考えられます。
ただし、制度上の役割分担については、監理支援機関との関係や講習の実施方法も含めて、育成就労計画を作成する際に整理しておく必要があります。
なお、入国前・入国後のA1相当(JLPT N5相当等)講習についても、日本語能力向上のための必要な措置として制度上位置付けられているため、誰が講習を手配し、どの費用を誰が負担するのかを、受入企業・監理支援機関・送出側で事前に確認しておくことが重要です。
日本語講習は勤務時間内に行う必要がある?
A2相当(JLPT N4相当)目標講習について、講習の受講時間を労働時間として扱うことは、育成就労制度上の義務ではありません。
そのため、必ずしも勤務時間内に受講させる必要はなく、勤務時間外に受講する機会を設けることも制度上可能です。
ただし、ここで重要なのは、「勤務時間外に設定すれば必ず労働時間にならない」という意味ではないことです。
例えば、
「毎週水曜日の18時から20時まで、会社の指示で必ず日本語講習を受講すること」
というように、会社が受講を業務上義務付けている場合には、労働基準法上の労働時間に該当する可能性があります。
厚生労働省も、会社が参加を義務付けている研修・教育訓練などは、労働時間として取り扱う必要があるとしています。
したがって、受入企業としては、
「勤務時間内に講習を組み込む」
のか、
「勤務時間外に、本人の希望に応じて受講できる環境を整える」
のかを、労務管理も含めて整理しておく必要があります。
100時間の日本語講習は、どうやって管理する?
100時間の講習については、「会社側が自己申告で100時間と数える」というより、講習実施者側の受講記録を活用して、企業側でも進捗を確認できる状態にしておくことが重要です。
例えば、
- 講習の実施日・時間
- 受講者
- 出席状況
- 講習内容
- オンライン講習の場合の受講記録
- 修了証明・受講証明等
を整理して保存します。
また、育成就労計画では日本語能力の育成が重要な目標として扱われています。
A2相当(JLPT N4相当)目標講習については、単に「N4の試験を受けさせる」だけでは足りず、必要な講習を受ける機会を実際に提供することが求められています。
必要な措置を講じず、単に就労させて試験の受験機会だけを与える場合には、育成就労計画の認定取消しの対象となるおそれがあります。
なお、国が全国共通の「100時間管理用タイムカード」のような様式を指定しているわけではありません。
そのため、教育機関等の出席記録・受講証明などを保存し、企業側でも累計受講時間を確認できる運用を構築するのが実務的です。
育成就労中の技能検定と日本語試験は別物
育成就労では、「技能」と「日本語」の双方を段階的に高めることが求められます。
ここで混同されやすいのが、技能検定の中に日本語試験(JLPT N4相当)が含まれているわけではないという点です。
技能検定等は技能・知識を評価する試験であり、日本語能力については別途、A1相当(JLPT N5相当等)やA2相当(JLPT N4相当等)の日本語能力試験によって確認します。
育成就労制度では、技能の試験と日本語能力の試験は別々に扱われています。
■育成就労における技能・日本語の目標
| 時期 | 技能 | 日本語 |
| 育成就労開始まで | 分野ごとの必要な技能・要件 | A1相当(JLPT N5相当等)の試験合格、または必要な講習の受講 |
| 開始後1年以内 | 分野別に定められた1年目試験 | A1相当を超える水準など、分野別運用方針に基づく目標 |
| 育成就労修了まで | 技能検定3級等、分野別に定める技能試験 | A2相当(JLPT N4相当等)以上 |
| 育成就労期間中 | 技能習得 | A2相当(JLPT N4相当)を目標とする100時間以上の講習 |
※実際の試験・水準は分野別運用方針によって異なる場合があります。
企業が押さえておきたいポイント
育成就労の日本語教育については、「外国人にN4の勉強をさせればよい」という単純な話ではありません。
- A1相当(JLPT N5相当等)の入国・就労開始前の日本語要件
- A1相当講習100時間以上が必要となるケース
- 育成就労期間中のA2相当(JLPT N4相当)を目標とする100時間以上の講習
- A2相当(JLPT N4相当等)の日本語能力試験
をそれぞれ区別して考える必要があります。
そして、特に重要なのが「100時間」という数字が2つの異なる場面で登場することです。
- A1相当(JLPT N5相当)の講習:就労開始前に、必要な場合は100時間以上
- A2相当(JLPT N4相当)目標講習:育成就労期間中に100時間以上の受講機会を提供
この2つを混同しないことが、受入企業にとって重要です。
また、A2相当目標講習については、育成就労実施者が受講機会を提供し、必要な講習費用を負担することが求められており、外国人本人に受講費用を負担させる前提で計画することはできません。
受入れ開始前に、
「どの講習を受ける必要があるのか」
「どの教育機関・教員が実施するのか」
「費用を誰が負担するのか」
「勤務時間内・時間外のどちらで受講するのか」
「受講時間をどのように記録するのか」
「A1相当・A2相当の試験をいつ受験するのか」
まで整理しておくと、制度開始後の混乱を防ぎやすくなります。
特定技能制度への移行ルール
技能実習制度においては、「技能実習2号または3号を良好に修了すること」が特定技能1号移行の要件とされています。
一方で育成就労制度では、特定技能1号に移行するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 技能検定試験3級等または特定技能1号評価試験合格
- 日本語能力A2相当以上の試験(N4相当)合格
なお、育成就労制度では分野ごとに育成就労の目標が定められており、技能検定の合格のみが目標として設定されている場合には、特定技能1号評価試験を育成就労の目標として設定することはできません。
ただし、育成就労期間中に目標として設定した技能検定に不合格となった場合であっても、特定技能1号評価試験に合格していれば、育成就労の目標自体は未達成として扱われるものの、特定技能1号への在留資格変更は認められます。
また、育成就労期間中に特定技能1号への移行に必要な技能試験または日本語試験に不合格となった場合には、一定の要件のもと、試験への再受験に必要な範囲で最長1年間の在留継続が認められる仕組みも設けられています。
監理団体は監理支援機関に変わる
技能実習の監理団体は、育成就労制度移行後に「監理支援機関」に名称が変更されます。
監理支援機関が行う「監理支援」の業務は大きく分けて、「雇用のあっせん」と「育成就労実施者(受入れ企業など)に対する監理」の2点です。
技能実習制度においては、同じ意味で「実習監理」という言葉が使用されています。
技能実習の監理団体と育成就労の監理支援機関の位置づけや業務内容には大きな違いはありませんが、育成就労制度においては「中立性・独立性の確保」「職員の配置」「財政基盤」「相談対応体制」などの許可要件が厳格化されます。
特に大きな変更点の一つが、監理支援事業に従事する常勤役職員1人当たりが担当できる受入れ企業数と育成就労外国人数に基準が設けられることです。
技能実習制度では、この点について同様の人数制限は設けられていませんでしたが、育成就労制度では、監理支援事業に従事する常勤役職員1人当たりの受入れ企業数が8社未満、かつ、育成就労外国人数が40人未満となる体制を確保する必要があります。
大都市圏への過剰な流入を防ぐ指定区域の枠組み
育成就労制度では、育成就労外国人が東京圏や大阪圏などの大都市圏へ過度に集中することを防ぐため、「指定区域」の仕組みが設けられています。
これは、人材不足が深刻な地方で安定的に外国人材を確保するとともに、地域間の人材偏在を防ぐことを目的とした制度です。
指定区域に指定された地域では、育成就労外国人が本人の希望によって転籍する場合、原則として指定区域外への転籍が制限されます。
一方で、指定区域外から指定区域内への転籍は認められており、地方への人材流入を促す仕組みとなっています。
指定区域は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県以外のすべての地域です。
ただし、これらの8都府県内でも以下の表に記載されている市区町村は指定地域に該当します。
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8都府県中、指定区域に含まれる地域 |
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| 埼玉県 | 秩父市、ときがわ町、皆野町、長瀞町、小鹿野町、東秩父村、神川町 |
| 千葉県 | 旭市、勝浦市、鴨川市、南房総市、匝瑳市、香取市、山武市、いすみ市、東庄町、九十九里町、長南町、大多喜町、鋸南町 |
| 東京都 | 檜原村、奥多摩町、大島町、新島村、三宅村、八丈町、青ヶ島村 |
| 神奈川県 | 真鶴町 |
| 愛知県 | 新城市、設楽町、東栄町、豊根村 |
| 京都府 | 福知山市、綾部市、宮津市、京丹後市、南丹市、木津川市、笠置町、和束町、南山城村、京丹波町、伊根町、与謝野町 |
| 大阪府 | 豊能町、能勢町、岬町、千早赤阪村 |
| 兵庫県 | 洲本市、豊岡市、丹波篠山市、養父市、丹波市、南あわじ市、朝来市、淡路市、宍粟市、たつの市、多可町、市川町、神河町、佐用町、香美町、新温泉町 |
外国側の送出機関の適正化
育成就労制度では、外国人が来日前に高額な手数料や不当な費用を負担することを防ぐため、外国側の送出機関についても適正化が図られます。
具体的には、原則として日本と送出国との間で二国間取決め(MOC)を作成し、送出国政府が認定した送出機関を利用する仕組みとすることで、悪質な送出機関や仲介事業者の排除を進めます。
二国間取決めに基づいて送出機関の適正化を図る仕組み自体は技能実習制度にも設けられていますが、法務省及び厚生労働省は、育成就労制度において適正な送出しを確保するために仕組みを整備・強化する方針を示しています。
また、育成就労外国人が送出機関に支払う手数料について上限を設定するなど、本人の経済的負担を抑えるための措置も講じられます。
具体的には、送出機関が育成就労の対象となろうとする外国人から徴収できる費用の上限は月給の2か月分となり、上限を超える費用は受入れ企業または監理支援機関が負担することとなります。
これにより、来日前に多額の借金を抱えることが、失踪や不適切な就労につながるリスクを軽減することが期待されています。
育成就労と技能実習の違い比較表
以下の表では、育成就労制度と技能実習制度の主な違いを項目ごとに比較しています。
なお、育成就労制度は2026年8月現在、施行前の段階にあるため、今後の法令改正や関係省令・告示等により、制度の詳細が変更・追加される可能性があります。
| 制度の種類 | 技能実習 | 育成就労 |
| 制度の目的 | 技術移転による国際貢献 | 人材育成と人材確保 |
| 受け入れ可能な分野 | 91職種(167作業) | 17の育成就労産業分野
※特定技能の19分野から国内での育成になじまない2分野を除いた分野 |
| 在留期間 | 最大5年
※1号(1年)、2号(2年)、3号(2年) |
原則3年
※具体的な期間の決定基準は現状不明 |
| 転籍 | やむを得ない事情がある場合を除き不可 | 入国時の受入企業で1~2年以上在籍するなど、一定条件を満たせば本人希望の転籍も可能 |
| 前職要件 | 従事予定の業務と同種の業務の経験が必要 | なし |
| 帰国後従事要件 | 帰国後の技術移転が求められる | なし |
| 同一目的での再入国 | 帰国後の再実習は原則不可 | 通算2年以下で帰国した場合は異なる分野で再入国可能(通算5年まで) |
| 在留資格の種類 | 技能実習1号~3号(イ、ロ) | 育成就労(予定) |
| 雇用のあっせんをする機関 | 監理団体 | 監理支援機関 |
| 外部監査人の選任 | 任意 | 選任義務有り |
| 特定技能1号への移行要件 | 技能実習2号または3号を良好に修了 | 技能試験及び日本語試験の合格が必要 |
| 特定技能以外の在留資格への変更 | 原則不可 | 現状不明 |
| 他の在留資格から育成就労への変更 | 不可 | 現状不明 |
まとめ
育成就労制度については大枠がすでに決定していますが、2026年8月現在は施行前であり、「育成就労」の計画認定や在留資格の審査もまだ開始されていないため、今後も制度の具体的な運用に関する新たな情報が順次公表されることになります。
また、制度の運用要領や制度に関するQ&Aなどでも今後さまざまな情報が追加される予定ですが、当分の間は経過措置により技能実習制度と育成就労制度が一定期間並行して運用されます。
受入れ企業としては、両制度の違いを正しく把握したうえで、自社に適用される制度や要件を確認しながら最新情報を収集することが重要です。
育成就労制度は、受入れ要件や転籍、日本語教育、監理支援など多くのルールが設けられる複雑な制度ですが、専門的な知識を持つ監理団体や監理支援機関のサポートを受けながら適切な受入れ体制を整えることで、外国人材の育成と人材確保につなげることができます。
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