技能実習生(育成就労外国人)とのトラブルには、作業ミスや無断欠勤、寮での騒音、金銭問題、失踪などがあります。
ただし、本人の性格や文化だけが原因とは限りません。
言葉の壁や労働条件の説明不足、受け入れ企業の支援体制が影響することもあります。
本記事では、技能実習生(育成就労外国人)との主なトラブル事例と対処法、相談先などを解説します。
また、現在の外国人技能実習機構は、2027年4月の制度開始に合わせて「外国人育成就労機構」へ改称される予定です。
2026年9月現在は、引き続き外国人技能実習機構が技能実習制度を運営・監督しています。
INDEX
技能実習生(育成就労外国人)とのトラブルが起こる原因
技能実習生(育成就労外国人)とのトラブルを防ぐには、問題となった行動だけでなく、その背景を確認することが重要です。
言葉や経験の違いに加え、来日前の説明と実際の労働条件とのずれ、金銭的な負担、相談相手の不在が重なる場合もあります。
ここでは、技能実習生(育成就労外国人)とのトラブルが起こる原因について解説します。
言葉の壁と「わかったふり」をしてしまう心理
技能実習生(育成就労外国人)が返事をしていても、指示を正しく理解しているとは限りません。
分からないことを日本語で説明できない場合や、質問すると評価が下がると不安に感じる場合があるためです。
口頭で一度説明するだけでは、専門用語や曖昧な指示が伝わらないことがあります。
指示後に本人から作業手順を説明してもらう、実際の動作を確認するなど、質問のしやすさと理解度の両方を確認しましょう。
参考:厚生労働省「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集
生活習慣・常識(時間感覚や報連相)のギャップ
時間管理や報告の基準は、本人の経験や前職によって認識が異なります。
日本人社員が当然だと考えるルールでも、企業から具体的に説明されていなければ、技能実習生(育成就労外国人)が正確に理解できないことがあります。
始業時刻は着替えを終えて作業を始める時刻なのか、遅れる場合は誰にいつまでに連絡するのかを明確にしましょう。
文化の違いと決め付けず、社内ルールが文書化され、本人に伝わっているかも確認します。
雇用条件や業務内容の事前のミスマッチ
来日前に聞いていた内容と実際の待遇が異なると、不満や離職、失踪につながるおそれがあります。
給与の総額だけを伝え、税金や社会保険料、寮費などの控除額を説明していない場合は、特に注意が必要です。
採用時には、次の条件を本人が理解できる言語で説明します。
- 仕事内容と勤務場所
- 賃金、控除項目、手取り支給額の目安
- 労働時間、残業、休日
- 寮費や水道光熱費
- 配属先と作業環境
実際に行わせる業務は、認定された技能実習計画(育成就労計画)と一致させなければなりません。
計画にない職種や作業へ安易に配置せず、変更する場合は、必要な手続きを監理団体(監理支援機関)や外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)へ確認しましょう。
参考:外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)「雇用契約書及び雇用条件書」「技能実習計画の変更」
来日前に負担した費用・借入れによる経済的プレッシャー
送出機関などへ支払う費用や来日前の準備費用について、本人が借入れをしている場合、入国後の手取り額が想定より少ないことが大きな負担になる場合があります。
返済や家族への仕送りへのプレッシャーが強いと、より高い収入を求めて無断で仕事をしたり、職場を離れたりするなど、別の問題につながる可能性があります。
受け入れ側は、本人がどのような費用を負担しているのかを確認するとともに、採用時に給与や控除額を正確に説明することが重要です。
「借金をしている=問題が起きる」と考えるのではなく、背景にある経済的な事情まで含めて支援することが大切です。
受け入れ企業は、監理団体(監理支援機関) などと連携し、本人が来日前に負担した費用や、そのために借入れをしているかなどを確認します。
特に、保証金や違約金などによって本人の意思決定が不当に制限されていないか、過度な経済的負担を抱えていないかを確認することが重要です。
受け入れ企業・監理団体(監理支援機関)のサポート不足と孤立
仕事や生活の相談先が分からない状態は、トラブルを深刻化させます。
技能実習生(育成就労外国人)が不満や体調不良を抱えていても、相談すると叱られる、帰国させられると考え、問題を伝えられないことがあるからです。
企業内に相談担当者を置き、監理団体(監理支援機関)や外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)の母国語相談窓口も案内しましょう。
参考:外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)「母国語相談(メール・電話)
【仕事編】技能実習生(育成就労外国人)のトラブル事例と対処法
仕事上のトラブルが起きたときは、技能実習生(育成就労外国人)だけを責めず、指示や教育の方法に問題がなかったか確認します。
本人が理解できる言葉や図を用い、改善すべき行動を具体的に伝えることが基本です。
1.指示が正しく伝わらず、作業ミスが多発する
作業ミスが続く場合は、日本語能力だけでなく、指示の伝え方から見直しましょう。
口頭の説明だけでは、作業の順番や品質基準、禁止事項まで正確に伝わっていない可能性があります。
短い言葉で一つずつ指示し、写真付きの手順書や実演を組み合わせます。
その後、本人に作業してもらい、理解できたか確認してください。
「気を付けて」「きちんと」など、人によって解釈が変わる表現は避けます。
2.ミスや不具合を隠して報告しない
ミスを報告しない背景には、強く叱られることへの恐れや、何をどの段階で報告すべきか分からない状況があります。
隠した行為だけを注意しても、同じ問題が繰り返される可能性があります。
早く報告すれば、事故や不良品の拡大を防げることを説明しましょう。
報告先、連絡手段、報告が必要な状況も明確にします。
本人が報告した際は、最初から責任を追及せず、発生した事実と影響を確認してください。
3.遅刻や無断欠勤が続く
遅刻や無断欠勤が続いた場合は、理由を確認したうえで、就業規則に沿って指導します。
体調不良、交通手段、職場の人間関係など、表面からは分からない事情が隠れていることもあります。
遅刻・欠勤時の連絡方法を本人が理解できる言語で説明し、指導日と本人の回答を記録しましょう。
改善が見られない場合も、直ちに解雇や帰国を命じるのではなく、監理団体(監理支援機関)や労務の専門家へ相談しましょう。
4.安全装置の不使用など社内ルールを守らない
安全ルールが守られない場合は、作業を止めて危険を取り除き、本人がルールを理解していたか確認します。
日本語の掲示だけでは、安全装置や保護具の必要性まで伝わっていない可能性があるからです。
安全衛生教育は、問題が起きた後だけでなく、雇入れ時や作業内容を変更したときにも実施します。
本人が理解できる言語、写真、イラスト、実演を使い、禁止事項と事故の危険性を具体的に説明しましょう。
参考:厚生労働省「外国人労働者の安全衛生管理」
5.日本人社員からの強い叱責による対立・意欲低下
人前での強い叱責は、技能実習生(育成就労外国人)の反発や萎縮を招き、職場内の対立を深めるおそれがあります。
指導の目的は、感情をぶつけることではなく、問題となった行動を改善してもらうことです。
指導は落ち着いて話せる場所で個別に行い、人格や国籍ではなく、具体的な行動について説明します。
暴言や暴力に発展した場合は当事者を離し、安全を確保したうえで監理団体(監理支援機関)へ連絡してください。
【生活・寮編】技能実習生(育成就労外国人)のトラブル事例と解決策
生活上のトラブルは勤務時間外に起こる場合もあります。
ただし、企業が寮を用意し、生活指導を担っている場合は、監理団体(監理支援機関)と連携して対応する必要があります。
寮のルールと私生活への過度な介入は分けて考えましょう。
6.ゴミ出しや分別ルールが守れず近隣から苦情が出る
ゴミ出しの問題には、地域のルールを本人が理解できる形で説明することが有効です。
分別方法や収集日は自治体ごとに異なり、口頭の説明だけでは覚えにくいことがあります。
自治体が提供する外国語資料や実際のゴミ袋の写真を使い、分別方法、収集日、収集場所を示しましょう。
入居時の説明だけで終わらせず、間違いがあったときは実物を見ながら確認します。
7.夜間の大音量の音楽や通話による騒音トラブル
騒音に関する苦情には、静かに過ごす時間帯と問題になる行動を具体的に示します。
本人に悪気がなくても、住宅の構造や周辺環境によって、音楽や通話の声が隣室まで響く場合があります。
寮のルールの例として、22時以降はイヤホンを使う、ベランダや廊下で長時間通話しないといった行動を明文化しましょう。
時間帯は法律上の全国共通基準ではないため、寮の状況や賃貸借契約に合わせて設定します。
8.自転車の二人乗りや逆走などの交通ルール違反
交通ルールへの違反が見つかった場合は、事故が起きる前に乗り方と通勤経路を確認します。
日本では自転車が軽車両に位置付けられており、原則として車道の左側を通行しなければなりません。
信号、一時停止、夜間のライト点灯、二人乗りの禁止などを、映像や実地確認を通じて説明しましょう。
歩道を通行できる条件や、歩道では歩行者を優先するルールも重要です。
2026年4月1日から、16歳以上の自転車運転者を対象とする交通反則通告制度、いわゆる「青切符」が導入されました。
ただし、すべての交通違反が一律に青切符の対象となるわけではなく、一定の反則行為が対象です。
警察庁は、悪質・危険な違反について重点的に取締りを行う考え方を示しています。
自転車利用者にはヘルメット着用の努力義務もあります。
また、自転車保険への加入を義務または努力義務としている自治体もあるため、居住地や自転車を利用する地域の条例を確認してください。
参考:警察庁「自転車は車のなかま」
参考:国土交通省「自転車損害賠償責任保険等への加入促進について」
9.病気や怪我を我慢して悪化させる
体調不良を申告しない技能実習生(育成就労外国人)には、受診したことを理由に直ちに解雇や帰国となるわけではないと伝えます。
医療機関の利用方法が分からない、費用が不安、日本語で症状を説明できないといった事情から、受診をためらう場合があるためです。
必要に応じて通訳を手配し、医療機関への同行や受診方法の案内を行いましょう。
仕事や通勤が原因のけが・病気は、労災保険の対象となる可能性があります。
健康保険を使う前に、医療機関へ仕事中または通勤中に発生したことを伝えてください。
緊急時は監理団体(監理支援機関)への連絡を待たず、119番へ通報します。
10.同室の実習生同士での喧嘩・人間関係の悪化
技能実習生(育成就労外国人)同士の喧嘩が起きた場合は、当事者を離して安全を確保し、それぞれから事情を聞きます。
同じ国の出身者であっても、生活習慣や金銭、共同生活の負担をめぐって対立することがあります。
企業が一方の説明だけで判断すると、対立が深まるおそれがあります。
必要に応じて通訳を介し、双方の認識を確認しましょう。
暴力や負傷がある場合は、警察や医療機関へ連絡し、監理団体(監理支援機関)にも共有します。
【金銭・失踪編】技能実習生(育成就労外国人)のトラブル事例と重大リスク
金銭や失踪に関する問題は、在留資格や犯罪に関係する可能性があります。
企業だけで処理せず、監理団体(監理支援機関)や外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)、警察などへ早めに相談することが重要です。
11.実習生同士や外部とのお金の貸し借り
金銭の貸し借りによる問題が起きた場合は、貸した金額、日付、返済の約束を双方から確認します。
当事者間の認識が異なると、口論や暴力に発展するおそれがあるためです。
企業は事情を確認しても、返済方法を一方的に決めたり、給与から返済額を差し引いたりしないようにします。
当事者間で解決できない場合は、弁護士や法テラスなどの相談先を案内しましょう。
12.休日に無断でアルバイト(資格外活動)をする
技能実習生(育成就労外国人) は、認定された技能実習計画(育成就労計画)に基づく活動を行うことが前提であり、一般的な副業を自由に行えるわけではありません。
技能実習生(育成就労外国人)が本来の活動以外の仕事を行うことについて、資格外活動許可があれば当然に認められるというものでもないため、具体的なケースでは出入国在留管理局や専門家への確認が必要です。
無断のアルバイトが判明した場合は、勤務先、仕事内容、開始時期を確認し、監理団体(監理支援機関)や出入国在留管理局へ相談しましょう。
別の企業や店舗で無許可のまま報酬を得て働くと、資格外活動や不法就労に該当する可能性があります。
参考:出入国在留管理庁「資格外活動許可申請」
13.SNSを通じた犯罪(口座売買・闇バイト)への巻き込み
SNS上で高収入をうたう仕事や名義貸しに誘われ、犯罪に巻き込まれる可能性があります。
孤立や金銭的な負担を抱えている人が、勧誘の標的になることも考えられます。
銀行口座を売買する、在留カードを貸す、他人に使わせる目的で携帯電話を契約・譲渡するといった行為には応じないよう周知しましょう。
不審な勧誘を受けた場合は相手に返信せず、企業や監理団体(監理支援機関)、警察へ相談するよう伝えます。
すでに口座や金銭が関係している場合は、メッセージや送金記録などを保存して警察へ相談してください。
技能実習生(育成就労外国人)全体を犯罪と結び付けず、個別の事情を確認することも重要です。
参考:出入国在留管理庁「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」
14.突然の失踪(夜逃げ)と不法滞在化
技能実習生(育成就労外国人)本人と連絡が取れなくなり、無断欠勤が続いたり、寮から荷物がなくなったりした場合は、最後に連絡が取れた日時や状況を確認します。
そのうえで、本人への連絡、同居人や職場関係者への確認を行い、速やかに監理団体(監理支援機関) へ通知しましょう。
事件、事故、自殺、犯罪被害などの可能性がある場合には、監理団体(監理支援機関)からの指示を待つのではなく、警察への相談も検討します。
また、失踪の背景は一つとは限りません。
- 賃金や労働条件への不満
- 暴力やハラスメント
- 来日前に負った借金
- 職場や寮での人間関係
- 外部からの違法な仕事への勧誘
- 本人や家族の事情
失踪した時点で、直ちに不法残留となるわけではありません。
ただし、正当な理由なく、在留資格に応じた活動を継続して一定期間行っていない場合には、在留資格取消しの対象となることがあります。
技能実習(育成就労)についても、制度上定められた要件に該当すれば在留資格取消しの対象となるため、失踪を確認した場合は企業だけで判断せず、速やかに関係機関へ相談しましょう。
在留資格が取り消された場合や、在留期間・特例期間を経過した後も日本に滞在している場合などには、不法残留となる可能性があります。
また、失踪を本人だけの責任と決め付けず、自社の労働環境や相談体制も確認しましょう。
参考:出入国在留管理庁「在留資格の取消し」
参考:外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)「技能実習実施困難時の届出」
技能実習生(育成就労外国人)のトラブルが発生した際の対応方法
トラブルが起きた直後は、感情的に叱責したり、その場で解雇や帰国を命じたりせず、安全確保と事実確認を優先します。
重大性に応じて監理団体(監理支援機関)や関係機関へ連絡し、対応の経過を記録してください。
ここでは、技能実習生(育成就労外国人)のトラブルが発生した際の対応方法について解説します。
人命と現場の安全確保・現状維持
事故や暴力が起きた場合は、人命と現場の安全を最優先にします。
負傷者の救護や危険な機械の停止が必要な状況で、現場をそのままにしてはいけません。
必要に応じて119番や110番へ通報し、関係者を安全な場所へ移動させます。
安全を確保した後、発生時刻、設備の状態、現場の写真などを記録しましょう。
物を動かす必要がある場合は、可能であれば変更前の状況を撮影します。
業務中の事故などによって技能実習生(育成就労外国人)が死亡または休業した場合は、労働者死傷病報告が必要です。
休業日数によって提出時期が異なるため、所轄の労働基準監督署へ確認してください。
母国語通訳を介した丁寧な事実確認
事情を聞く際は、本人が十分に理解できる言語を使い、必要に応じて通訳を介します。
日本語で詳しく説明できないことを理由に、本人の話が事実ではないと判断してはいけません。
複数人の前で問い詰めず、落ち着いて話せる場所を用意します。
「いつ、どこで、誰が、何をしたか」を順番に確認しましょう。
当事者が複数いる場合は別々に話を聞き、説明に違いがあっても、その場で一方を責めないことが重要です。
日時・内容・発言の客観的な記録化
トラブルへの対応は、後から経緯を確認できるように記録します。
記憶だけに頼ると、本人の説明が変わった場合や、監理団体(監理支援機関)・関係機関へ報告する際に事実を整理できません。
主に次の内容を残します。
- 発生日時と場所
- 当事者と目撃者
- 起きた行為と被害
- 本人や関係者の説明
- 写真や防犯カメラなどの資料
- 企業が行った対応
- 関係機関への連絡日時
- 今後の指導内容
発言は評価や推測を交えず、可能な限り本人の言葉に沿って記録します。
個人情報を含むため、閲覧できる担当者も限定してください。
監理支援機関(または外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)・警察)への即時報告
企業だけで判断するのが難しい問題は、内容に応じた関係機関へ速やかに連絡します。
失踪、病気・けが、経営上の事情などによって技能実習(育成就労)の実施が困難となった場合には、技能実習実施困難時(育成就労実施困難時届出書)の届出が必要となることがあります。
団体監理型では、実習実施者から監理団体(監理支援機関) へ通知し、その後の届出を含めて所定の手続きを進めます。
企業単独型では、実習実施者が外国人技能実習機構(外国人育成就労機構) へ届け出る仕組みです。
参考:外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)「技能実習実施困難時の届出」
技能実習生(育成就労外国人)のトラブルを防ぐ方法
トラブルの予防には、技能実習生(育成就労外国人)への注意だけでなく、企業側の受け入れ体制の整備が欠かせません。
来日前の説明、分かりやすい作業指示、定期面談、日本人社員への教育を継続して行いましょう。
ここでは、技能実習生(育成就労外国人)のトラブルを防ぐ方法について解説します。
採用面接時に「手取り額と生活費」を正確に伝える
採用面接では、給与の額面だけでなく、控除予定額と手取り支給額の目安まで伝えます。
本人が母国で想定していた収入との差が大きいと、借金返済や仕送りの計画が崩れる可能性があるためです。
税金、社会保険料、寮費などの控除項目を示し、欠勤や残業がない場合の手取り支給額を説明しましょう。
食費など給与から控除しない生活費も示すと、本人の手元に残る金額をイメージしやすくなります。
残業時間は業務量によって変わるため、残業代を前提に収入を多く見せてはいけません。
参考:外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)「雇用契約書及び雇用条件書」
写真や母国語を使った「視覚的なルールブック」を作る
仕事と生活のルールは、写真やイラストを使った資料にまとめます。
文章を翻訳しただけでは、危険な行動やゴミの分別方法などを具体的にイメージできないことがあるからです。
ルールブックには、作業手順、安全装置、緊急連絡先、寮の使い方、交通ルールを掲載します。禁止事項には正しい行動も併記しましょう。
内容を説明した後は本人に実演してもらい、理解できたか確認します。
指示出しのルールを社内で統一する(やさしい日本語の活用)
担当者によって指示や注意の基準が変わらないよう、社内で伝え方を統一します。
同じ作業でも説明が異なると、技能実習生(育成就労外国人)はどの指示に従えばよいか判断できません。
一文を短くし、一度に一つの内容を伝える「やさしい日本語」を活用しましょう。
「適当に」「なるべく早く」などの曖昧な言葉を避け、数量や時刻を具体的に示します。
作業手順書と現場での指示を一致させることも重要です。
月1回の定期面談で「小さな不満」を早期に解消する
月1回を目安に企業内で面談を行い、仕事や生活の悩みを早めに把握します。
日常的な不満や困りごとが長期間放置されると、無断欠勤や人間関係の悪化など、別の問題につながる可能性があります。
本人が相談しやすい環境を整え、早い段階で原因を把握することが、重大なトラブルの予防につながります。
面談では、次の項目を確認しましょう。
- 仕事内容と指導方法
- 健康状態
- 寮や日常生活
- 職場と寮の人間関係
- 金銭面や不審な勧誘
- 企業や監理団体(監理支援機関)への要望
月1回という頻度は、企業が本人の状況を確認するための目安です。
監理団体(監理支援機関) による訪問指導・監査とは別の企業内での面談として考えましょう。
周囲を気にせず話せるよう、原則として個別に面談してください。
なお、2027年4月1日から始まる育成就労制度では、監理支援機関の監理・支援・保護機能が強化される予定であるため、企業内での面談と監理支援機関による支援を役割分担して考えることが重要です。
日本人社員向けの「異文化理解・指導法研修」を実施する
技能実習生(育成就労外国人)だけでなく、日本人社員にも教育が必要です。
現場の指導者が制度や文化の違いを理解していなければ、本人の経験や教育状況を確認せず、国籍に原因を求めてしまうおそれがあります。
研修では、技能実習制度の目的、やさしい日本語、指導方法、ハラスメント防止を扱います。
人前で怒鳴る、差別的な呼び方をする、できない理由を確認せず能力不足と決め付けるといった対応を避け、行動に焦点を当てて指導する基準を共有しましょう。
サポート力と通訳体制の整った監理団体(監理支援機関)を選ぶ
実習監理を担う機関を選ぶ際は、費用だけでなく、実習中の支援体制を確認します。
契約前に確認したい項目は次のとおりです。
- 訪問指導と監査の体制
- 対応できる言語と通訳の手配方法
- 夜間や休日に問題が起きた場合の連絡手順
- 技能実習生(育成就労外国人)から相談を受ける体制
- 送出機関を確認する方法
- トラブル発生時の対応手順
技能実習(育成就労)を受け入れる企業は、外国人技能実習機構(外国人育成就労機構) が公開している許可監理団体の一覧で、候補となる監理団体の許可状況や事業区分を確認しましょう。
この時に、行政処分などの公表情報もあわせて確認しておくと安心です。
なお、2027年4月1日からは育成就労制度が始まり、監理団体は監理支援機関へ移行します。
すでに移行準備が進んでいるため、今後受け入れを開始する場合は、育成就労制度での取扱い予定や許可申請の状況も確認しておくとよいでしょう。
すべての監理団体(監理支援機関)に24時間対応が一律に義務付けられているわけではありません。
そのため、夜間や休日に事故、病気、暴力、失踪などが発生した場合に、誰へ連絡するのかを契約前に確認しておきましょう。
緊急時には、監理団体(監理支援機関)からの回答を待たず、119番や110番への通報が必要となるケースもあります。
技能実習生(育成就労外国人)に対して受け入れ企業がしてはいけない行為
トラブルが起きても、受け入れ企業が技能実習生(育成就労外国人)の権利を侵害する対応をしてはいけません。
旅券の保管、私生活の不当な制限、帰国の強要などは、本人を管理する手段として認められるものではありません。
パスポート(旅券)や在留カードを取り上げる
受け入れ企業や監理団体(監理支援機関)は、技能実習生(育成就労外国人) の旅券や在留カードを保管してはいけません。
技能実習法(育成就労法)では、本人の同意があるかどうかや、保管する理由にかかわらず、技能実習(育成就労)関係者による旅券・在留カードの保管が禁止されています。
特に、本人の意思に反して保管した場合は、罰則の対象となることがあります。
なお、在留資格変更など法令上の手続きのために一時的に預かる場合は、必要最小限の期間にとどめるなど、適切に取り扱う必要があります。
旅券や在留カードは本人が管理することを基本とし、紛失防止が必要な場合も、本人が自由に出し入れできる保管方法を検討しましょう。
外出禁止やスマホ没収など私生活を不当に制限する
受け入れ企業や監理団体(監理支援機関)は、技能実習生(育成就労外国人)の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはいけません。
寮を管理している場合でも、業務外の行動に無制限に介入できるわけではありません。
例えば、本人が所有する携帯電話などの私物を取り上げることや、合理的な理由なく外出を一律に禁止することは、不当な私生活の制限に該当する可能性があります。
外国人技能実習機構も、こうした行為を具体例として示しています。
防犯や共同生活に必要なルールは設定できますが、目的と範囲を明確にする必要があります。
門限に遅れたことを理由にスマートフォンを没収したり、合理的な理由なく休日の外出を全面的に禁止したりするなどの対応は避けましょう。
「国へ帰すぞ」と脅迫し、意に反して帰国を強要する
問題行動や病気を理由に、本人の意思を無視して帰国を強要してはいけません。
「従わなければ帰国させる」と脅す行為も不適切です。
本人が技能実習期間の満了前に帰国を希望する場合は、通訳を介し、意に反する帰国ではないことを書面で確認します。
原則として、帰国が決まった段階で帰国前に技能実習実施困難時届出書を提出する必要があるため、団体監理型では監理団体(監理支援機関)と手続きを進めましょう。
参考:外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)「技能実習実施困難時の届出」
途中で辞めた場合の「違約金」や「罰金」を契約させる
受け入れ企業は、技能実習生が途中で辞めたことを理由として、あらかじめ違約金や損害賠償額を定める契約をしてはいけません。
誓約書や覚書など別の書面を使った場合でも、実質的に途中退職などに対する違約金を定める内容であれば問題となる可能性があります。
雇用契約書とは別の誓約書に記載した場合や、「罰金」「保証金」など別の名称を使った場合も、内容によっては技能実習法や労働基準法に抵触します。
実際に企業へ損害が生じた場合も、損害額を給与から一方的に差し引くことは避けてください。
本人の責任や損害額は個別に判断する必要があるため、弁護士などの専門家へ相談しましょう。
暴力、暴言、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント
技能実習生(育成就労外国人)に対する暴力、暴言、ハラスメントは認められません。
指導を目的としていても、殴る、物を投げる、人前で侮辱する、性的な言動をするといった行為は正当化できません。
相談を受けた場合は、本人と加害を指摘された人を分けて話を聞き、目撃者や関係資料を確認します。
企業内で隠さず、監理団体(監理支援機関)へ共有しましょう。
犯罪の可能性や身の危険がある場合は、警察や外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)のSOS相談窓口につなぎます。
賃金の不当な天引きや残業代の未払い
寮費や水道光熱費、弁償代を理由に、企業の判断だけで賃金から天引きしてはいけません。
所得税、住民税、社会保険料など法令に基づくもの以外を控除するには、原則として労使協定が必要です。
しかし、労使協定を締結していても、寮費や水道光熱費を企業が自由に設定できるわけではありません。
借上物件の居住費は、賃料などを入居する技能実習生の人数で除した額以内、水道・光熱費は実際に要した費用を居住者数などで除した額以内とする考え方が示されています。
高額な費用を徴収すると、技能実習生の生活に支障が生じる可能性もあるため、実費相当など適正な金額にすることが重要です。
なお、技能実習生(育成就労外国人)の報酬は、同程度の技能や経験を持つ日本人が同じ仕事に従事する場合と同等以上に設定する必要があります。
法定労働時間を超えて働かせた場合や、法定休日・深夜に働かせた場合は、労働基準法に基づく割増賃金も支払います。
技能実習生(育成就労外国人)のトラブルの相談先
トラブルが起きたときは、その内容に合った窓口へ相談します。
緊急性がある場合は、監理団体(監理支援機関)からの回答を待たず、警察や消防へ連絡してください。
| 相談内容 | 主な相談先 |
| 実習や生活上の問題 | 監理団体(監理支援機関) |
| 制度違反や実習継続に関する問題 | 外国人技能実習機構(外国人育成就労機構) |
| 賃金、残業代、労働時間 | 労働基準監督署 |
| 解雇や雇用契約 | 総合労働相談コーナー 弁護士 社会保険労務士 |
| パワハラ・セクハラ | 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) 総合労働相談コーナー |
| 在留資格や資格外活動 | 地方出入国在留管理官署 外国人在留総合インフォメーションセンター |
| 在留申請書類の作成・取次ぎ | 届出済みの行政書士または弁護士 |
| 暴行、窃盗、事件・事故が疑われる行方不明 | 警察 |
| けがや急病 | 医療機関 消防 |
| 技能実習生(育成就労外国人)本人からの相談 | 外国人技能実習機構(外国人育成就労機構)の母国語相談・SOS相談窓口 |
| 外国人の採用や雇用管理 | ハローワーク 外国人雇用サービスセンター |
| 技能実習生(育成就労外国人)の受け入れ | 許可を受けた監理団体(監理支援機関) |
| 外国人採用の依頼先選び・受け入れに関する相談 | 外国人採用の窓口 |
「外国人採用の窓口」では、外国人材の受け入れを検討する企業に対し、採用支援会社の選定や比較を無料でサポートしています。
監理団体(監理支援機関)や人材紹介会社など、採用・受け入れの依頼先選びに迷っている場合はご相談ください。
外国人技能実習機構では、技能実習生からの相談を電話などで受け付けており、母国語による相談にも対応しています。
本人が企業や監理団体を介さず、直接相談できる窓口も用意されています。
なお、2027年4月の育成就労制度開始後は、外国人育成就労機構へ改称され、相談・支援機能も引き継がれる予定です。
まとめ
技能実習生(育成就労外国人) とのトラブルは、本人の性格や文化の違いだけで起こるものではありません。
雇用条件の説明不足、職場での指導方法、生活上の困りごと、相談体制の不足など、受け入れ側の環境が原因の一つとなることもあります。
問題が発生したときは、まず安全確保と事実確認を行い、対応内容を記録したうえで、監理団体(監理支援機関) や労働基準監督署、警察など、問題に応じた関係機関へ相談することが重要です。
また、採用前の条件説明、分かりやすい指示、定期的な面談、日本人社員への教育を続けることで、トラブルが大きくなる前に原因を把握しやすくなります。
なお、2027年4月1日からは育成就労制度が始まるため、今後受け入れを行う企業は、現在の技能実習制度だけでなく、新制度の支援・保護の仕組みも確認しておくとよいでしょう。
※本記事は2026年9月時点の情報をもとに作成しています。
技能実習制度は2027年4月1日から育成就労制度へ移行する予定であり、施行前から関係する申請・準備が進められています。
実際の受け入れ・トラブル対応にあたっては、出入国在留管理庁、外国人技能実習機構、厚生労働省などの最新情報をご確認ください。
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